目が覚めると、まぶしい光が飛び込んできた。
「旦那、目が覚めました?」
肩にかけられた女もののケープ、そして細かい手触りの着物。ふと顔に違和感を感じて顎に手を触れるとひげもさっぱり剃られている。外の様子を伺うと、どうやら表通りにある飲み屋の中にいる。
「代金はいただいてます」
私にこんなところに入って夜を明かすような金もないし、こんな服など着た覚えがない。そもそも、私は表通りを歩くような身分でもなし。
「酔いがさめません? 部屋で休みます?」
いや、帰ると慌てて立ち上がる、懐を探っても手斧や銃もなくなっている、代わりに懐中カイロや洒落た時計、革の財布、足元はピカピカ黒塗りの下駄と真っ白な足袋。やや和洋折衷の衣装。 夢でも見ているのか。
体や頭がかなり痛む、頭を押さえて正気を疑っていると店の旦那らしき男が
「魔理沙様からたっぷり、そりゃあたっぷりもらってますので、迎え酒でもどうです?」
と、酒をだされた。
懐を探ると、包帯がまいてあるものの、傷自体はふさがっているし、骨折も治っていた。いったい何が起きたんだ。
思い出せる記憶は、霧雨魔理沙らしき少女が私の顔を覗き込んでいたところまでだ。酒をなめながら考えるに、霧雨魔理沙が私を救ってくれたのだろう。でなければこんな超常的なことが起こるわけがない、骨折や刀傷が一瞬で治るわけがないし、あの距離を短時間で里まで移動できるわけがない。
しかし一番妙なのが、私の恰好がまるで、まるでそこらの旦那様のような恰好をしていることだ、いったいどういうことだろう。霧雨魔理沙という人物の風評というか人となりを考えていたら、さっと血の気が引いた。
あわてて、あちこち懐を探ってみる。
やはりない、私の生涯を変えうる、財産がない。財布には銀貨がいくらか入っているから、しばらくは困ることはないかもしれないが。
金貨20枚、私の命よりも大切なものがないのである。
そのかわりに財布の中から一枚の紙きれが出てきた。
『
お命のお代金、金貨二十枚は確かに預かった
袴、銀時計、肩掛けは御奉公
金貨20枚を改めて受け取りたくば
一週間後、博麗神社にて受渡し候
』
彼女が泥棒家業に手を出しているというのは、やはり本当だったのか。
私の大切な金貨20枚はもう戻ってこない、今着ているお上品な服を売りに払えばどうにかなるだろうか。私の仕事道具は予備があるから、今着ている服を売りに払えばもう少しいいものがそろえられるかもしれない・・・博麗神社にもう一度行くしかないのかもしれない。台をたたきつけて憤っていると店の店主が仰天して酒を落とした。一枚硬貨を渡して、私は貧困街の住処に戻ることにした。
私のお上品な格好を見て、貧困街の訳の分からない連中が絡んできたから、ぶちのめして隅にころがした。
『地を這う生き物』
今は神社の倉庫で魔理沙と一緒に荷物を眺めている。魔理沙は得意げに手帳を見せびらかしながら演説を始めた。
「調べが付いたぜ」
私は私の脚ほどの太さがある柄の斧を持ってみる。重くて持ち上げられない。
「貧困街に住んでいる自称妖怪退治は星の数ほどいるが」
「そうなの?」
「そう、だが、里で妖怪退治っていったら、こいつの事を言うってよ」
「私に言えばいいのに」
こちとら、仕事がなくて暇だというのに、なぜみんなそいつに頼むんだろうか。
「霊夢、博麗の巫女に仕事を頼むときにかかる金の額を聞いたことあるか?」
「ロハでしょ」
魔理沙がいくらかかるか話し始めると、私は気が遠くなった。紫のやつ仲買量をどれだけふんだくっているんだろう。
「そういう貧乏人はみんな連中に厄介ごとを頼むんだ、こいつはその元締めさ。あと、こいつが仕事をする理由は、完全に金だ。妖怪だけじゃなくて、場合によっちゃ人間も殺してるらしい」
前に私が殺した易者みたいな人間も殺しまわっているらしい。幻想郷でそういう人間は珍しくないと思っていたが、私の知らないところでこいつが殺していた人間もかなりいるのかもしれない。
「以前は蚕の布を織る仕事をしてた家の子供だが、妖怪に母親と姉を殺されて、それから父親がおかしくなったらしい」
ありそうな話だ、妖怪に殺された孤児が行き場がなくなって盗みに手を出して貧困街のワルになったのだろう。
「それをきっかけに父親が敵討ちに妖怪退治に転職して家財を売り払っちまった。こいつはイカレた親父が売った家財を取り戻して家を元に戻したいんだとよ、残念ながら霊夢目当てじゃなく、仕事を貰いに来たらしい」
ぼろきれをつまみ上げて匂いを嗅ぐと、とんでもないものがこみ上げてきた。それを魔理沙に投げてよこすと「なにしやがる!」と魔理沙が怒鳴った。
「おーくせぇ・・・」
「お風呂入ってないのかしら…」
「そのぼろきれは、殺した妖怪を詰めておくもんなんだと、妖怪の中じゃ有名らしいぜ」
魔理沙が盗んできた中に油でどろどろになった分厚いナイフがある、魔理沙はそれを握って軽く振る。
「ぶつぎりにして、妖怪に喰われた人間の遺品とかを抜き取るんだ。妖怪たちはこいつのことをブギーマンって呼んでる」
ブギーマンというのは、パチュリーとかアリスとかそういう顔立ちの人間が住んでいる国のお化けの総称だ、大抵は大柄の男で、不死身の体をしていて、倒す方法がなく、子供を袋に詰めて殺したり、攫ったりするという。
「ブギーマンに狙われないように、里に住んでる妖怪連中は大人しくせにゃならん、狙われたら最後、ブギーマンがやってきて斧でバラバラにされて袋に詰められて喰われちまうんだとよ」
「人間なのよね?」
「私が見た限りじゃ人間だな、それに」
「それに?」
「風呂に入れて顔をそらせたら、男前だったぜ」
魔理沙がにやりとわらう。
「どうだ、俄然興味が出てきたんじゃないか?」
男の霊夢って感じだぜ、と魔理沙が私を指さして言う。私は妖怪をぶつ切りにして袋に詰めたりなどしない。
「けど、もう来ないんでしょ、次の集会には」
ブギーマンは、もうそういう風に呼ぶことにするが、藍に20枚金貨を貰っているからやってくるはずもない。しかも、どうやら目的は私ではなかったようだからやっぱりやってくる必要もない。それはそれで屈辱のような気もしたが。
「かもな、けどもしかしたら来るかもしれないぜ」
魔理沙は帽子から良い音のする金貨20枚の入った巾着を取り出し、チャラチャラと鳴らした。
「あんた・・・それ」
「せいぜい悪い子を懲らしめに来るのを待とうぜ霊夢」
「紫様、いま天狗衆から連絡が・・・」
山の天狗の幹部が、不始末のために降格した。そういう連絡がここ最近絶え間なく耳に届く。参加者同士の潰しあいだ
その程度の奴なら最初からお断りだ。あれほどいた参加者も残り5名だ。実に妖怪らしからぬ、区切りの細かさで事が進んでいる。
「なぜ?」
「部下が境内で転がっていたそうです」
手足をもがれて、と藍が付け加えた。その瞬間何が起こっていたのか理解した。あの天狗は私直々に制裁を加えてやろう。神聖な神社の中で汚い殺しをやろうとしていたわけだ。その程度の経緯で博麗神社に足を踏み入れたのか。
「どの参加者を襲ったの?」
「例の退治屋です」
「霊夢が興味を持っているようで、魔理沙が探りを入れています」
面倒なことになった。だからと言って今から退治屋を殺してしまえば霊夢にどう思われるかわからない。
いや、そもそも殺せるのだろうか?
「魔理沙が退治屋に接触して元の身分を・・・」
ますます面倒なことになった。人間が鬼の退治方法を知っていた頃、一人前の妖怪退治と戦ったのはずっと昔だが、その時には死ぬ思いをした。一通りのことを知っている退治屋というのは幻想郷からは排除しきったはずだ、それは霊夢をも含めた妖怪退治を旨とする人間だが、あんな汚い街の隅にいるとは思いもしなかった。戦って負ける気はしないが、どんなしっぺ返しを食らうかわかったものではない。
「魔理沙は、我々の渡した手間賃を盗んでいます。次やってくるかもしれません」
力のある男なら、霊夢の伴侶にふさわしい、それは間違いない。だが、私は知っている。あの人間をどうしても選べないある理由があるのだ。
それを霊夢が知ったら、霊夢はどれだけ傷つくだろうか。想像もできない。
「紫様、なぜそこまであの人間を排除しようとなさるのですか?」
「あなたは知らなくてもよいことよ」
「はい」
「いきなさい」
藍は一礼すると、部屋を出て行った。霊夢は勘のいい子だ、会って話せばきっと気が付いてしまうだろう。気が付かなかったとしても、霊夢が博麗の巫女としての役目に影響が出るほどの衝撃を与えてしまうかもしれない。
いまさら、あの子を渡すものか。幻想郷であれほど完璧な才能と容姿を持った生まれたものはいない。
あの子は私の子だ、誰にも渡すものか。
森近夫妻、つまり今の僕が居を構えているの場所は里の真ん中、僕は普段は家にいて相変わらず、つまらない店の店主をしているし、妻は里の寺子屋で教師として働いている。ただ、僕は時々ため息をつく。所帯を持つというのは、がんじがらめになることだ。一人の時はふらりと夜に出かけてものをひろったり、酒を飲みに行ったり、不審な客の対応をしてみたり、好きなものを身の回りに飾ってみたり。それはもうスリルを追いかける、男の隠れ家的暮らしをしていたが、今そんなことをすれば怖い奥様から頭突きをくらうか、もしくは夜のお勤めがとんでもないことになるとかそういうアダルティーな展開になる。それはまぁやぶさかではないのだが、最近とんと男同士の付き合いというものをしていないのである。
「はぁ…」
店をぐるりと見渡す。以前と違い、使い方の分からない道具ではなく、里の人間が一見して使い方の判明する日用品や、かわいらしい女性向きの装飾品なども飾ってある、需要があれば男向けの衣装や大工道具、本当に時たまだが、魔術的な非常に高価な品を店主自ら作成して高値で売ったりもする。奥様である慧音が「こちらのほうが売り上げが出るだろう?」とまぁ、ごくごく当たり前のことをのたまったから店の経営方針ががらりとかわった。実際売り上げは以前の200倍はあった。そういうファンシーなご婦人向けの衣装をちくちくと裁縫してみたり、おべっかを使って商品を売りさばいてみたり、注文の発注を承ったり、霧雨店との旧交を深めてみたり。
とてもつまらない退屈な日々を送っていた。
慧音とふとしたことから一夜を共にして、既成事実というやつを作ってしまってから、あれほど足しげく店にやってきていた少女たちとも会っていない。妹分である魔理沙とも最近は話をしていない、なにかとさみしくもある。だが、この店に移る前までは、ある特定の贔屓にしてくれる人もいたのだ。
大柄の不審な男は、そういう少女たちの脚が途絶えてから常連になった人間だ。彼が決まって注文するのは、外の世界の漂着物。 道路凍結防止用の塩、肥料、石灰、鉄パイプ。外の世界の道具らしきものを抱えてカウンターまで持ってくる。
全く関連の無さそうな品をきまって持っていく彼には並々ならぬ興味を抱いていた。
「何に使うんだ?」
と聞いたこともあるが、霖之助に対してその不審な男は決まって「農作業をするんだ」といって去っていった。油まみれの指先や、髭まみれのあご、血なまぐさい体臭からしてそんなまっとうなことをしている人間には絶対に見えなかった。
今思えば、ああいうものを僕は望んでいたのかもしれない。不思議な店と怪しげな客、そこにこそロマンがあった。そして彼は必ず里の通貨を使わなかった。どの国かもわからない硬貨や紙幣のこともあった。あの時が一番楽しかった。
だがいまはどうだ?
「店長、これちょーだーい」
「試着なさいますか? ・・・とてもよくお似合いですよ」
自分でもとんでもない表情してるだろうなとおもいながらも笑顔を向けると、いかにもお金持ちのご息女らしい少女たちはきゃっきゃとはしゃぎまわっている。
あぁ、なんて退屈なんだ…
どうしようもない虚無感、人生に対する後悔、そういったものを禁じ得なかった。
そして、僕の手に握られているのは10銭硬貨。売り上げた商品を帳簿に記して僕は裁縫を再開した。僕の奥底に眠る魂が囁く、
今からでも遅くない、男の自分に戻るんだ、あのがけっぷちの生活に戻っちまえ
「今戻ったぞ」
怖い奥様の登場で僕のそういう部分は暗い闇の中に堕ちていく。
「さぁ、今日はもう店じまいだ、お前たち、もう遅いから家に帰りなさい」
「えーっ」
慧音が優しい教師の声で子供たちを諭す。
奥様がやたら人払いをするので何のつもりかと思っていたら。
そういえば今日満月じゃないか・・・。
「今日は疲れたね」
「私は元気いっぱいだ」
「疲れているだろう、いい酒があるんだよ」
こうなればよいつぶして有耶無耶にしてしまおう。僕は酒は強い方なんだ。
「気が利くな、私も肴を買ってきたんだ」
うーん、あの妙な光沢のある一見して蛇のような魚・・・あれはうん、ウナギだなぁ。ヤツメウナギだよなぁ。食べると滋養にとてもいいという噂の魚だ。それが桶いっぱいに泳いでいる。
「今から絞めるよ、一緒に食べよう」
「あ、うん」
とてもいい笑顔で言われた。もはやこれまでか。そう思った瞬間、店の戸ががらりと開く。
「いらっしゃいませ!」
僕は満面の笑みを向けた。店に現れたのはあまり見かけない大柄の旦那様といった具合の男だ。この店ではあまり見かけない類の人種。この男がとんでもない無理難題な注文をしてくることを祈るばかりだった。慧音はあからさまにしかめっ面でこちらを威嚇している。少し角が出ていた。
客は、どうやら魔理沙の事を探している人間らしい。魔理沙と僕が魔術的な関連があるというのはけっこう噂になっていることだ。これはかなりの面倒ごとに違いない。僕は歓喜し、難しい顔で言った。
「はい…あの、魔理沙がどうかしましたか?」
聞けば、彼の財産、それも金貨20枚を魔理沙に取られてしまったのだという。これはとんでもないことだった。
「なんですって! それは大変だ!」
慧音は「まだ片付かないのか?」と開きにしたウナギを串に通しながら台所で叫んでいる。やってきた男はいや、命の恩人だから訴えるとか文句を言う気はない、だが魔理沙と親しい僕に話をつけてほしいのだといった。これはもう今から魔理沙の家に行って、直接話をしなければならないだろう。しかもこの男いまはきれいな身なりをしているが、昔の常連で、実は貧困街の退治屋をしているという。
これは、そう、なんてややこしい話なんだ!
「霖之助! まだか!」
「慧音、これは事件だよ。まずは冷静に話を聞くんだ」
「夫婦の夜の営みよりもか!」
慧音は満月の夜は常識のねじが何本か飛ぶ、だから満月の夜に慧音と二人きりになるのは絶対に嫌だった。
「ん?お前・・・神社で見たな…」
挙句慧音も彼に見覚えがあるらしい。「確か」と慧音が言うには、博麗神社で現在開催されている乱痴気騒ぎの参加者らしい。慧音も男に「まぁ、上がれ」と彼を家にあげる様だ。
きっとこの男は、男の生き方を忘れかけていた僕に神が遣わした、守矢とか秋の神とかああいうものではなくて、そういう存在に違いなかった。
あぁ、この男から漂う並々ならぬ崖っぷちの雰囲気。まるで昔の僕に戻ったようだった。
今日僕はかなりついてる!
「霊夢、霊夢」
紫が呼んでいる。
「なに」
私が答えると紫は小さな隙間からすっと姿を現す。
「霊夢、もしかして」
紫が息を溜める。
「なに」
「私に隠していることがあるんじゃない?」
あぁ、紫は頭がいい、けど、私には隠し事ができない。他の人間には簡単に隠せることを私には隠すことを忘れる。紫はこういうことを私にしか言わない。紫はあちこちで私の事をずっと見ている。それを紫は知らないと思っているのだ。
「あるわ」
「悪い子ねぇ」
「怒ってるの?」
「まさか、怒ってなんていないわ」
ニコニコと紫は答える、紫は、何か相当に大変な状況にいる、焦っていた。そしてそれは私に関係することだとわかった。
「教えてくれる?」と紫は諭すように言う。私も「ばれたら仕方ないわ」といった。私も紫が何を隠しているか知りたかった。
「魔理沙に、あの人間の事を調べてもらったの」
「ふぅん」
紫はこともなさげに呟く。
「気になるの、だってそうでしょ」
紫は、口を開けたり閉じたりして、「そんなものかしら」といった。
「明日は、残った人と話せるのでしょう? あの人間は来るの?」
「来るかどうかは、その者の自由よ」
紫は私が次何を言うかじっとうかがっていた。なにか、私があの人間と会うと困ることがあるのだ。そこまでして紫が焦る姿を私も初めて見るので、私も少し怖くなった。
「紫が、ダメというなら、会わないわ」
「そう、そうね、そうしましょう」
そして、私の頭の中に最悪の想像が駆け巡った。
「紫、お酒とかない?」
「お酒?」
ほっと明らかに息をつく紫に酒をねだると、さっと隙間に手を突っ込んで酒瓶ときれいなガラスのコップを取り出した。
「ねぇ紫、結婚したらさ、博麗の巫女は廃業かしら?」
「霊夢はどうしたいの?」
「次の巫女の当てができるまでは続けたいわ」
紫は「好きにするといいわ」といった。ゆったりとした自然な姿だ。私は最悪の想像を確認することにした。
「紫覚えてる? 私が初めて紫に稽古してもらったときの事」
「私の家で、そう、お風呂に入れた後で、祝詞を教えてあげたわね」
「覚えてる?」と紫がいうので、私は「もちろん」といった。
「覚えが早くて驚いたわ」
「前は辛かったわ、寂しくて」
「私は霊夢に寂しい思いなんてさせないわ」
私は、その時に確信した。あの男がどういう人間なのかを。詳しくはもちろんわからないけれど、私は紫の安心した心地よい笑みを見てわかってしまった。
「あのね、紫、魔理沙がさ、その人のお金取っちゃったの」
「あら」
「一緒になることはしないけど、お金もあずかってるし、腕のいい退治屋みたいだし、しばらくは巫女も続けたいから、ちょっとだけいいでしょ?」
そうね、なら、いいわ。
紫は、ちょっとだけ不安そうだったけれど、何かを考えたようにしてから、そういった。
私は昔のことをなるべく思い出せるような夢が見れるよう祈りながら、
酒をなめた。
「旦那、目が覚めました?」
肩にかけられた女もののケープ、そして細かい手触りの着物。ふと顔に違和感を感じて顎に手を触れるとひげもさっぱり剃られている。外の様子を伺うと、どうやら表通りにある飲み屋の中にいる。
「代金はいただいてます」
私にこんなところに入って夜を明かすような金もないし、こんな服など着た覚えがない。そもそも、私は表通りを歩くような身分でもなし。
「酔いがさめません? 部屋で休みます?」
いや、帰ると慌てて立ち上がる、懐を探っても手斧や銃もなくなっている、代わりに懐中カイロや洒落た時計、革の財布、足元はピカピカ黒塗りの下駄と真っ白な足袋。やや和洋折衷の衣装。 夢でも見ているのか。
体や頭がかなり痛む、頭を押さえて正気を疑っていると店の旦那らしき男が
「魔理沙様からたっぷり、そりゃあたっぷりもらってますので、迎え酒でもどうです?」
と、酒をだされた。
懐を探ると、包帯がまいてあるものの、傷自体はふさがっているし、骨折も治っていた。いったい何が起きたんだ。
思い出せる記憶は、霧雨魔理沙らしき少女が私の顔を覗き込んでいたところまでだ。酒をなめながら考えるに、霧雨魔理沙が私を救ってくれたのだろう。でなければこんな超常的なことが起こるわけがない、骨折や刀傷が一瞬で治るわけがないし、あの距離を短時間で里まで移動できるわけがない。
しかし一番妙なのが、私の恰好がまるで、まるでそこらの旦那様のような恰好をしていることだ、いったいどういうことだろう。霧雨魔理沙という人物の風評というか人となりを考えていたら、さっと血の気が引いた。
あわてて、あちこち懐を探ってみる。
やはりない、私の生涯を変えうる、財産がない。財布には銀貨がいくらか入っているから、しばらくは困ることはないかもしれないが。
金貨20枚、私の命よりも大切なものがないのである。
そのかわりに財布の中から一枚の紙きれが出てきた。
『
お命のお代金、金貨二十枚は確かに預かった
袴、銀時計、肩掛けは御奉公
金貨20枚を改めて受け取りたくば
一週間後、博麗神社にて受渡し候
』
彼女が泥棒家業に手を出しているというのは、やはり本当だったのか。
私の大切な金貨20枚はもう戻ってこない、今着ているお上品な服を売りに払えばどうにかなるだろうか。私の仕事道具は予備があるから、今着ている服を売りに払えばもう少しいいものがそろえられるかもしれない・・・博麗神社にもう一度行くしかないのかもしれない。台をたたきつけて憤っていると店の店主が仰天して酒を落とした。一枚硬貨を渡して、私は貧困街の住処に戻ることにした。
私のお上品な格好を見て、貧困街の訳の分からない連中が絡んできたから、ぶちのめして隅にころがした。
『地を這う生き物』
今は神社の倉庫で魔理沙と一緒に荷物を眺めている。魔理沙は得意げに手帳を見せびらかしながら演説を始めた。
「調べが付いたぜ」
私は私の脚ほどの太さがある柄の斧を持ってみる。重くて持ち上げられない。
「貧困街に住んでいる自称妖怪退治は星の数ほどいるが」
「そうなの?」
「そう、だが、里で妖怪退治っていったら、こいつの事を言うってよ」
「私に言えばいいのに」
こちとら、仕事がなくて暇だというのに、なぜみんなそいつに頼むんだろうか。
「霊夢、博麗の巫女に仕事を頼むときにかかる金の額を聞いたことあるか?」
「ロハでしょ」
魔理沙がいくらかかるか話し始めると、私は気が遠くなった。紫のやつ仲買量をどれだけふんだくっているんだろう。
「そういう貧乏人はみんな連中に厄介ごとを頼むんだ、こいつはその元締めさ。あと、こいつが仕事をする理由は、完全に金だ。妖怪だけじゃなくて、場合によっちゃ人間も殺してるらしい」
前に私が殺した易者みたいな人間も殺しまわっているらしい。幻想郷でそういう人間は珍しくないと思っていたが、私の知らないところでこいつが殺していた人間もかなりいるのかもしれない。
「以前は蚕の布を織る仕事をしてた家の子供だが、妖怪に母親と姉を殺されて、それから父親がおかしくなったらしい」
ありそうな話だ、妖怪に殺された孤児が行き場がなくなって盗みに手を出して貧困街のワルになったのだろう。
「それをきっかけに父親が敵討ちに妖怪退治に転職して家財を売り払っちまった。こいつはイカレた親父が売った家財を取り戻して家を元に戻したいんだとよ、残念ながら霊夢目当てじゃなく、仕事を貰いに来たらしい」
ぼろきれをつまみ上げて匂いを嗅ぐと、とんでもないものがこみ上げてきた。それを魔理沙に投げてよこすと「なにしやがる!」と魔理沙が怒鳴った。
「おーくせぇ・・・」
「お風呂入ってないのかしら…」
「そのぼろきれは、殺した妖怪を詰めておくもんなんだと、妖怪の中じゃ有名らしいぜ」
魔理沙が盗んできた中に油でどろどろになった分厚いナイフがある、魔理沙はそれを握って軽く振る。
「ぶつぎりにして、妖怪に喰われた人間の遺品とかを抜き取るんだ。妖怪たちはこいつのことをブギーマンって呼んでる」
ブギーマンというのは、パチュリーとかアリスとかそういう顔立ちの人間が住んでいる国のお化けの総称だ、大抵は大柄の男で、不死身の体をしていて、倒す方法がなく、子供を袋に詰めて殺したり、攫ったりするという。
「ブギーマンに狙われないように、里に住んでる妖怪連中は大人しくせにゃならん、狙われたら最後、ブギーマンがやってきて斧でバラバラにされて袋に詰められて喰われちまうんだとよ」
「人間なのよね?」
「私が見た限りじゃ人間だな、それに」
「それに?」
「風呂に入れて顔をそらせたら、男前だったぜ」
魔理沙がにやりとわらう。
「どうだ、俄然興味が出てきたんじゃないか?」
男の霊夢って感じだぜ、と魔理沙が私を指さして言う。私は妖怪をぶつ切りにして袋に詰めたりなどしない。
「けど、もう来ないんでしょ、次の集会には」
ブギーマンは、もうそういう風に呼ぶことにするが、藍に20枚金貨を貰っているからやってくるはずもない。しかも、どうやら目的は私ではなかったようだからやっぱりやってくる必要もない。それはそれで屈辱のような気もしたが。
「かもな、けどもしかしたら来るかもしれないぜ」
魔理沙は帽子から良い音のする金貨20枚の入った巾着を取り出し、チャラチャラと鳴らした。
「あんた・・・それ」
「せいぜい悪い子を懲らしめに来るのを待とうぜ霊夢」
「紫様、いま天狗衆から連絡が・・・」
山の天狗の幹部が、不始末のために降格した。そういう連絡がここ最近絶え間なく耳に届く。参加者同士の潰しあいだ
その程度の奴なら最初からお断りだ。あれほどいた参加者も残り5名だ。実に妖怪らしからぬ、区切りの細かさで事が進んでいる。
「なぜ?」
「部下が境内で転がっていたそうです」
手足をもがれて、と藍が付け加えた。その瞬間何が起こっていたのか理解した。あの天狗は私直々に制裁を加えてやろう。神聖な神社の中で汚い殺しをやろうとしていたわけだ。その程度の経緯で博麗神社に足を踏み入れたのか。
「どの参加者を襲ったの?」
「例の退治屋です」
「霊夢が興味を持っているようで、魔理沙が探りを入れています」
面倒なことになった。だからと言って今から退治屋を殺してしまえば霊夢にどう思われるかわからない。
いや、そもそも殺せるのだろうか?
「魔理沙が退治屋に接触して元の身分を・・・」
ますます面倒なことになった。人間が鬼の退治方法を知っていた頃、一人前の妖怪退治と戦ったのはずっと昔だが、その時には死ぬ思いをした。一通りのことを知っている退治屋というのは幻想郷からは排除しきったはずだ、それは霊夢をも含めた妖怪退治を旨とする人間だが、あんな汚い街の隅にいるとは思いもしなかった。戦って負ける気はしないが、どんなしっぺ返しを食らうかわかったものではない。
「魔理沙は、我々の渡した手間賃を盗んでいます。次やってくるかもしれません」
力のある男なら、霊夢の伴侶にふさわしい、それは間違いない。だが、私は知っている。あの人間をどうしても選べないある理由があるのだ。
それを霊夢が知ったら、霊夢はどれだけ傷つくだろうか。想像もできない。
「紫様、なぜそこまであの人間を排除しようとなさるのですか?」
「あなたは知らなくてもよいことよ」
「はい」
「いきなさい」
藍は一礼すると、部屋を出て行った。霊夢は勘のいい子だ、会って話せばきっと気が付いてしまうだろう。気が付かなかったとしても、霊夢が博麗の巫女としての役目に影響が出るほどの衝撃を与えてしまうかもしれない。
いまさら、あの子を渡すものか。幻想郷であれほど完璧な才能と容姿を持った生まれたものはいない。
あの子は私の子だ、誰にも渡すものか。
森近夫妻、つまり今の僕が居を構えているの場所は里の真ん中、僕は普段は家にいて相変わらず、つまらない店の店主をしているし、妻は里の寺子屋で教師として働いている。ただ、僕は時々ため息をつく。所帯を持つというのは、がんじがらめになることだ。一人の時はふらりと夜に出かけてものをひろったり、酒を飲みに行ったり、不審な客の対応をしてみたり、好きなものを身の回りに飾ってみたり。それはもうスリルを追いかける、男の隠れ家的暮らしをしていたが、今そんなことをすれば怖い奥様から頭突きをくらうか、もしくは夜のお勤めがとんでもないことになるとかそういうアダルティーな展開になる。それはまぁやぶさかではないのだが、最近とんと男同士の付き合いというものをしていないのである。
「はぁ…」
店をぐるりと見渡す。以前と違い、使い方の分からない道具ではなく、里の人間が一見して使い方の判明する日用品や、かわいらしい女性向きの装飾品なども飾ってある、需要があれば男向けの衣装や大工道具、本当に時たまだが、魔術的な非常に高価な品を店主自ら作成して高値で売ったりもする。奥様である慧音が「こちらのほうが売り上げが出るだろう?」とまぁ、ごくごく当たり前のことをのたまったから店の経営方針ががらりとかわった。実際売り上げは以前の200倍はあった。そういうファンシーなご婦人向けの衣装をちくちくと裁縫してみたり、おべっかを使って商品を売りさばいてみたり、注文の発注を承ったり、霧雨店との旧交を深めてみたり。
とてもつまらない退屈な日々を送っていた。
慧音とふとしたことから一夜を共にして、既成事実というやつを作ってしまってから、あれほど足しげく店にやってきていた少女たちとも会っていない。妹分である魔理沙とも最近は話をしていない、なにかとさみしくもある。だが、この店に移る前までは、ある特定の贔屓にしてくれる人もいたのだ。
大柄の不審な男は、そういう少女たちの脚が途絶えてから常連になった人間だ。彼が決まって注文するのは、外の世界の漂着物。 道路凍結防止用の塩、肥料、石灰、鉄パイプ。外の世界の道具らしきものを抱えてカウンターまで持ってくる。
全く関連の無さそうな品をきまって持っていく彼には並々ならぬ興味を抱いていた。
「何に使うんだ?」
と聞いたこともあるが、霖之助に対してその不審な男は決まって「農作業をするんだ」といって去っていった。油まみれの指先や、髭まみれのあご、血なまぐさい体臭からしてそんなまっとうなことをしている人間には絶対に見えなかった。
今思えば、ああいうものを僕は望んでいたのかもしれない。不思議な店と怪しげな客、そこにこそロマンがあった。そして彼は必ず里の通貨を使わなかった。どの国かもわからない硬貨や紙幣のこともあった。あの時が一番楽しかった。
だがいまはどうだ?
「店長、これちょーだーい」
「試着なさいますか? ・・・とてもよくお似合いですよ」
自分でもとんでもない表情してるだろうなとおもいながらも笑顔を向けると、いかにもお金持ちのご息女らしい少女たちはきゃっきゃとはしゃぎまわっている。
あぁ、なんて退屈なんだ…
どうしようもない虚無感、人生に対する後悔、そういったものを禁じ得なかった。
そして、僕の手に握られているのは10銭硬貨。売り上げた商品を帳簿に記して僕は裁縫を再開した。僕の奥底に眠る魂が囁く、
今からでも遅くない、男の自分に戻るんだ、あのがけっぷちの生活に戻っちまえ
「今戻ったぞ」
怖い奥様の登場で僕のそういう部分は暗い闇の中に堕ちていく。
「さぁ、今日はもう店じまいだ、お前たち、もう遅いから家に帰りなさい」
「えーっ」
慧音が優しい教師の声で子供たちを諭す。
奥様がやたら人払いをするので何のつもりかと思っていたら。
そういえば今日満月じゃないか・・・。
「今日は疲れたね」
「私は元気いっぱいだ」
「疲れているだろう、いい酒があるんだよ」
こうなればよいつぶして有耶無耶にしてしまおう。僕は酒は強い方なんだ。
「気が利くな、私も肴を買ってきたんだ」
うーん、あの妙な光沢のある一見して蛇のような魚・・・あれはうん、ウナギだなぁ。ヤツメウナギだよなぁ。食べると滋養にとてもいいという噂の魚だ。それが桶いっぱいに泳いでいる。
「今から絞めるよ、一緒に食べよう」
「あ、うん」
とてもいい笑顔で言われた。もはやこれまでか。そう思った瞬間、店の戸ががらりと開く。
「いらっしゃいませ!」
僕は満面の笑みを向けた。店に現れたのはあまり見かけない大柄の旦那様といった具合の男だ。この店ではあまり見かけない類の人種。この男がとんでもない無理難題な注文をしてくることを祈るばかりだった。慧音はあからさまにしかめっ面でこちらを威嚇している。少し角が出ていた。
客は、どうやら魔理沙の事を探している人間らしい。魔理沙と僕が魔術的な関連があるというのはけっこう噂になっていることだ。これはかなりの面倒ごとに違いない。僕は歓喜し、難しい顔で言った。
「はい…あの、魔理沙がどうかしましたか?」
聞けば、彼の財産、それも金貨20枚を魔理沙に取られてしまったのだという。これはとんでもないことだった。
「なんですって! それは大変だ!」
慧音は「まだ片付かないのか?」と開きにしたウナギを串に通しながら台所で叫んでいる。やってきた男はいや、命の恩人だから訴えるとか文句を言う気はない、だが魔理沙と親しい僕に話をつけてほしいのだといった。これはもう今から魔理沙の家に行って、直接話をしなければならないだろう。しかもこの男いまはきれいな身なりをしているが、昔の常連で、実は貧困街の退治屋をしているという。
これは、そう、なんてややこしい話なんだ!
「霖之助! まだか!」
「慧音、これは事件だよ。まずは冷静に話を聞くんだ」
「夫婦の夜の営みよりもか!」
慧音は満月の夜は常識のねじが何本か飛ぶ、だから満月の夜に慧音と二人きりになるのは絶対に嫌だった。
「ん?お前・・・神社で見たな…」
挙句慧音も彼に見覚えがあるらしい。「確か」と慧音が言うには、博麗神社で現在開催されている乱痴気騒ぎの参加者らしい。慧音も男に「まぁ、上がれ」と彼を家にあげる様だ。
きっとこの男は、男の生き方を忘れかけていた僕に神が遣わした、守矢とか秋の神とかああいうものではなくて、そういう存在に違いなかった。
あぁ、この男から漂う並々ならぬ崖っぷちの雰囲気。まるで昔の僕に戻ったようだった。
今日僕はかなりついてる!
「霊夢、霊夢」
紫が呼んでいる。
「なに」
私が答えると紫は小さな隙間からすっと姿を現す。
「霊夢、もしかして」
紫が息を溜める。
「なに」
「私に隠していることがあるんじゃない?」
あぁ、紫は頭がいい、けど、私には隠し事ができない。他の人間には簡単に隠せることを私には隠すことを忘れる。紫はこういうことを私にしか言わない。紫はあちこちで私の事をずっと見ている。それを紫は知らないと思っているのだ。
「あるわ」
「悪い子ねぇ」
「怒ってるの?」
「まさか、怒ってなんていないわ」
ニコニコと紫は答える、紫は、何か相当に大変な状況にいる、焦っていた。そしてそれは私に関係することだとわかった。
「教えてくれる?」と紫は諭すように言う。私も「ばれたら仕方ないわ」といった。私も紫が何を隠しているか知りたかった。
「魔理沙に、あの人間の事を調べてもらったの」
「ふぅん」
紫はこともなさげに呟く。
「気になるの、だってそうでしょ」
紫は、口を開けたり閉じたりして、「そんなものかしら」といった。
「明日は、残った人と話せるのでしょう? あの人間は来るの?」
「来るかどうかは、その者の自由よ」
紫は私が次何を言うかじっとうかがっていた。なにか、私があの人間と会うと困ることがあるのだ。そこまでして紫が焦る姿を私も初めて見るので、私も少し怖くなった。
「紫が、ダメというなら、会わないわ」
「そう、そうね、そうしましょう」
そして、私の頭の中に最悪の想像が駆け巡った。
「紫、お酒とかない?」
「お酒?」
ほっと明らかに息をつく紫に酒をねだると、さっと隙間に手を突っ込んで酒瓶ときれいなガラスのコップを取り出した。
「ねぇ紫、結婚したらさ、博麗の巫女は廃業かしら?」
「霊夢はどうしたいの?」
「次の巫女の当てができるまでは続けたいわ」
紫は「好きにするといいわ」といった。ゆったりとした自然な姿だ。私は最悪の想像を確認することにした。
「紫覚えてる? 私が初めて紫に稽古してもらったときの事」
「私の家で、そう、お風呂に入れた後で、祝詞を教えてあげたわね」
「覚えてる?」と紫がいうので、私は「もちろん」といった。
「覚えが早くて驚いたわ」
「前は辛かったわ、寂しくて」
「私は霊夢に寂しい思いなんてさせないわ」
私は、その時に確信した。あの男がどういう人間なのかを。詳しくはもちろんわからないけれど、私は紫の安心した心地よい笑みを見てわかってしまった。
「あのね、紫、魔理沙がさ、その人のお金取っちゃったの」
「あら」
「一緒になることはしないけど、お金もあずかってるし、腕のいい退治屋みたいだし、しばらくは巫女も続けたいから、ちょっとだけいいでしょ?」
そうね、なら、いいわ。
紫は、ちょっとだけ不安そうだったけれど、何かを考えたようにしてから、そういった。
私は昔のことをなるべく思い出せるような夢が見れるよう祈りながら、
酒をなめた。
こーりんの結婚はどうやら本当に一夜の過ちだったようですね(笑
>仲買量
仲介料?