Coolier - 新生・東方創想話

クラブばんきっきーズ「かにチーズまんばんき」

2016/02/28 12:26:36
最終更新
サイズ
16.52KB
ページ数
1
閲覧数
2159
評価数
9/18
POINT
570
Rate
6.26

分類タグ

○登場人物
 ・赤蛮奇     飛頭蛮。中背。ジト目、口隠し。ポエマー。
 ・わかさぎ姫   人魚。下半身は魚。女中服。中背。熱血、直撃、自爆。
 ・今泉影狼    狼女。背はやや高。女中服。
 ・二ッ岩マミゾウ 狸の大将。もふもふしっぽ。背は高、豊満、眼鏡。年寄り臭いがつるつるたまご肌。
 ・ナズーリン   ダウザー鼠。身体は小さくつるぺた。だぶだぶ浴衣姿。
 ・寅丸星     虎の妖怪。命蓮寺の御本尊。背は高く豊満。浴衣姿に蓮の冠。
 ・幽谷響子    山彦妖怪。犬耳と尻尾。背は低。ミニスカ割烹着。
 ・ミスティア   夜雀。おかみすちーで割烹着。背は低だがゲタを履いていてやや低ほど。

 エキストラの里の町人は基本的に着物で。
 特に指定のないかぎり、登場人部の基本的な服装は原作準拠です。





   「クラブばんきっきーズ ―かにチーズまんばんき―」



○人間の里上空 (昼、快晴)
  雲一つ無い青空。
  ガランガラン。ベルの音が鳴り響く。
  影狼「大当た~りィ!」


○人間の里の福引所 (昼、快晴)
  ガランガラン、ガランガラン。
  きょとんとする赤蛮奇。目をぱちくりさせる。
  大勢の人で賑わう通りに面した福引所の、これまた大勢の人で賑わう狭い福引所内に、おおーっ、と歓声が上がる。
  割烹着姿で三角巾を目深に被った影狼がハンドベルを振っている。
  ガランガラン、ガランガラン。
 影狼「特賞、特賞だよ~っ!」
  ガランガラン、ガランガラン。
  周囲の視線がいっぺんに赤蛮奇に集まる。
  何が起こったのか分からず、キョロキョロとキョドる赤蛮奇。
  ガランガラン、ガランガラン。
 影狼「特賞はなんと、今話題の『花の温泉郷』の名物旅館、ぎゃてみす亭の一泊、ペアチケットだ~!」
  おお~っ。
  再び歓声が巻き上がる。
  福引台の向こうからひょこっと顔を出したわかさぎ姫(やはり三角巾を目深に被る)、赤蛮奇にチケットを差し出す。
 わかさぎ姫「はい。賞品ですよ~。ぎゃてみす亭は『かにチーズまん』が名物なんですよ。どうぞご賞味あれ~」
  放心状態でチケットを受け取る赤蛮奇。影狼にもわかさぎ姫にも気付かない。
  受け取ったチケットを見てみると、デフォルメされた可愛いカニとチーズの絵が描かれている。
  ガランガラン、ガランガラン。
 かげわか「おめでと~!」
  周囲からパチパチと拍手が巻き起こる。
  キョロキョロキョドる赤蛮奇。顔を真っ赤にして、でろんでろんに照れまくり、頭を掻く。
  それを尻目に、くるりと後ろを振り向く影狼とわかさぎ姫。
  三角巾をとって、悪いカオでニヤリと笑う。


○人間の里の目貫通り (昼、快晴)
  道行く人々が首を回して道の向こうを見やっている。
  赤蛮奇、ステップふみふみ、くるくる回りながら道の向こうからやってくる。
  その顔はでろんでろんのにやけ顔。
 赤蛮奇「るんたったーるんたったー♪」
  手に入れたチケットを空にかざし、くるくる回りながら道の彼方に消えてゆく。
  道行く人々が首を回して、道の彼方を見やる。


○人間の里上空 (昼、快晴)
  雲一つ無い青空。
 赤蛮奇「ああっ、カニ。カニ……カニッ!」


○人里の公園 (昼、快晴)
  公園に人影はまばら。紅葉の葉が地面に散らばっている。
  愛しそうにチケットを抱きしめる赤蛮奇。
 赤蛮奇「毛蟹かしら、ズワイかしら、花咲かしら……」
  チケットを力一杯抱きしめて、期待に顔を輝かせる。
 赤蛮奇「それとも、まさかまさかまさか、幻想郷では滅多に手に入らない、マボロシのタラバ様が入ってたりして!」
  再びチケットを空にかざして透かす。
  スッと目を閉じて空を仰ぐ赤蛮奇。
 赤蛮奇「天高し 期待むくむく かにチーズ」
  目を開けた赤蛮奇の、満面の笑み。


○ぎゃてみす亭のラウンジ (夜、快晴)
  ジト目の赤蛮奇。
 マミゾウ「わっはははは! まあ飲め飲め!」
  酔っ払ってるマミゾウ。
  ソファの隣に座って、笑いながら赤蛮奇の背をバシバシ叩く。ほっぺたに手にした瓢箪を押し付けている。
  ぎゅうぎゅう押されて、ますます眉がくねる赤蛮奇。
 赤蛮奇「なんでこんなことになってるのよぉ……」
  瓢箪の酒を呷るマミゾウ。
 マミゾウ「オヌシが言ったのではないか、一緒に行く相手がいないと」

   ×   ×   ×
(フラッシュ)
  公園にて、チケットを風で飛ばされる赤蛮奇。
 赤蛮奇「あー!」
   ×   ×   ×

   ×   ×   ×
(フラッシュ)
  チケットを手にするマミゾウ。
 マミゾウ「なんじゃこりゃ、ペアチケット?」
   ×   ×   ×

   ×   ×   ×
(フラッシュ)
  涙目でマミゾウに掴みかかる赤蛮奇。
  マミゾウはチケットを高く挙げて赤蛮奇から遠ざける。
 赤蛮奇「返してッ、私のカニを返してェーッ!」
 マミゾウ「わっははは、ワシが拾ったんじゃからワシのもんじゃー」
   ×   ×   ×

   ×   ×   ×
(フラッシュ)
  チケットを大切そうに胸に抱く赤蛮奇。
 マミゾウ「大体オヌシ、一緒に行く相手はおるのか」
 赤蛮奇「う……」
   ×   ×   ×

   ×   ×   ×
(フラッシュ)
  赤蛮奇の頭の上にもやもやとイメージが浮かぶ。
  赤蛮奇+影狼、わかさぎが余る。
  赤蛮奇+わかさぎ、影狼が余る。
 赤蛮奇「ううん……」
   ×   ×   ×

  ジト目の赤蛮奇。相変わらず、瓢箪をぎゅうぎゅう押し付けられている。
 赤蛮奇「大体、ペアチケットって使いづらいのよぉ……」
 マミゾウ「わっはははは! そのおかげで今こうして酒を飲めておるんじゃ、感謝感謝」
  響子に導かれて、ラウンジに浴衣姿のナズーリンと星が入ってくる。
  ほっぺにぎゅうぎゅうされながら、それをぼーっと見ている赤蛮奇。
  ナズーリンは明らかに酔っ払って、フラフラしている。星はしゃんとしていて、ニコニコしている。
  響子と星に支えられながらソファにどっかりと座ったごきげんナズーリン。隣には星が行儀よくちょこんと座る。
  星は机の上にあったコップに水を注ぎ、ナズーリンに手渡す。
 星「ほら、ナズナズ、お水ですよ」
 ナズーリン「おお、おお、悪いねぇ」
  目がぐるぐる回っていて受け取れない。
 星「(嬉しそうに)しょうがないですねえ」
  ナズーリンの口元にコップを押し付けると、親鳥にエサをもらう雛みたいに水を飲むナズーリン。だらだらと水が溢れるが、気にも留めない。
  ふひゅぅぅ、とだらけきった顔で息を吐く。
  手を上げてヒラヒラと振る。
 ナズーリン「おーい、女将~。かにチーズまん、しこたまもってきてくれ~」
 星「あ、こっちにはあんまんをお願いします~」
  ぴくり、と赤蛮奇の耳が動く。
  響子がお盆を胸にとてとてと走ってゆく。
  ぱっと顔を明るくする赤蛮奇。
 赤蛮奇「そうよ、かにチーズまんよ!」
 マミゾウ「うん?」
 赤蛮奇「わっ、わたしも……」
  キョロキョロと辺りを見回す赤蛮奇。
  マミゾウ、酒を呷りながらそれを見ている。
 ミスティア「あらっ、オーナーじゃないですか」
  赤蛮奇とマミゾウ、振り返る。
  割烹着姿のミスティアがハタキ片手に立っている。
 ミスティア「あらら、ばんきっきも一緒じゃない」
 マミゾウ「おや、女将。知り合いかの?」
 ミスティア「(カラカラ笑う)ウチの屋台のお得意さんなんですよ」
  ミスティア、赤蛮奇の頬をぷにぷにとつつく。
 ミスティア「ばんきっきったら、かにチーズまん食べに来たんでしょ。やっぱり好きなのねー、カニ」
 マミゾウ「ほお、そうなのか。カニ好きとは話の分かる輩じゃ」
 赤蛮奇「(顔を真っ赤にして)ちっ、ちっげーし! ちょっと夢に出てくるほど恋焦がれてるだけだしぃ!」
 ミスティア「人それを好物と言う。ま、味は期待しててよ。タラバ様をふんだんに使った、私の自信作なのよ」
  ばちこーんとウインクするミスティア。
 赤蛮奇「タラバ様!」
  キラキラと子供のように目を輝かせる赤蛮奇。
 マミゾウ「売上は順調かの?」
 ミスティア「大繁盛ですよ。でもねー、紅白巫女に目を付けられちゃって。ショバ代要求してくるんですよ。助けて下さいよ、オーナー」
 マミゾウ「(呆れる)そんなことまでしとるのかい、あの巫女。しょうがない、わしが話を付けてやろう」
 ミスティア「さっすがオーナー。頼りになるぅ」
  くいくい、とミスティアの袖が引っ張られる。
 ミスティア「ん?」
 赤蛮奇「お、女将さん、そのっ、そのっ……」
  もじもじ赤蛮奇の様子を察して、ははぁん、とミスティアは笑う。
 ミスティア「ああ、かにチーズまんね。まかせて、すぐに用意してあげるから」
 赤蛮奇「うん! うん!」
  満面の笑みで、嬉しそうに何度もこくこく頷く赤蛮奇。

○ぎゃてみす亭の温泉 (夜、快晴)
  かぽーん。
  上限の月が煌々と照っている。その下には草深い谷。
  それらを遠景に、岩に囲まれた温泉。湯に反射して月が揺らめく。湯けむりに包まれ、幻想的な光景。
  ジト目の赤蛮奇。頭に手ぬぐい、バスタオルを全身に巻いている。
 赤蛮奇「なんで風呂に入ってるのよぉ」
  隣には同じく湯に浸かるマミゾウ。極楽顔で頭に手ぬぐいと眼鏡を乗せ、そばにお銚子の乗ったお盆を浮かべている。
 マミゾウ「馬鹿者。旅館に来たら風呂、メシ、風呂じゃろーが。外の世界では常識じゃぞ」
 赤蛮奇「あんた一人で行けばよかったじゃん」
 マミゾウ「連れない事を言うでない。今日の儂らはペアではないか」
 赤蛮奇「大体あんた、ここのオーナーなら、チケットなんていらないじゃないの」
 マミゾウ「いやーしかし、いい湯じゃのー。酒が進むわい」
  強引に話を変えるマミゾウ。お猪口を呷って、くぅ~たまらん!
 赤蛮奇「ん……」
  赤蛮奇も腕を伸ばしてお猪口を取り、口に運ぶ。くぅ~たまらん!
  ふやけ顔で湯に沈む赤蛮奇。
  突然、パシャパシャとフラッシュが焚かれる。
 マミゾウ「な、なんじゃ?」
  何事かとキョロキョロ辺りを見回すマミゾウと赤蛮奇。
  ザバァッ、と目の前で湯が盛り上がり、二つの人影が湯の中から現れる。
  ゴーグルとシュノーケルをつけ、びっしょびしょの女中服を着た影狼とわかさぎ姫。
  ゴーグルとシュノーケルを脱ぎ捨てながら、
 影狼「ちょっと姫、早いわよう!」
 わかさぎ姫「だってだってだって、待ちきれなかったんだものぉ!」
 影狼「確かに今の表情はサイコーにグッド! だったけどぉ」
  目をぱちくりさせて驚く赤蛮奇。
 赤蛮奇「わかさぎ姫、それに影狼も!」
  二人の手の中にある、きゅうりマークのついた天狗のトイカメラを見つける。
 赤蛮奇「今のフラッシュ……!」
 影狼「ククク……お察しの通りよ!」
 わかさぎ姫「ばんきっきのサービスショット、たしかに頂いたわ!」
  赤蛮奇、ひっ、と声を漏らし、湯に沈んでぷるぷると震えだす。
  立ち上がるマミゾウ。すすっ、とその影に隠れる涙目赤蛮奇。
 マミゾウ「なんじゃなんじゃお前達。オトメの風呂を盗撮なんぞ、洒落にならんことしおって! しかもその制服、ここの従業員じゃろ。こんなところで何を油売っとるんじゃ!」
 わかさぎ姫「オトメェ? ババァはすっこんでなさいよ! 私達はばんきっき以外に興味無いわ!」
 マミゾウ「ババ……な、なにおう! 儂の履歴書の年齢欄はずっと昔から十七じゃわい! 見ろ、このつるつるたまご肌を!」
 影狼「……くさそう」
  固まるマミゾウ。
 マミゾウ「く、くさ……。ええい貴様ら、そこに直れっ!」
  二人に飛びかかるマミゾウ。
  大きくバック転して避ける二人。スカるマミゾウ、バシャン、と湯の中にすっ転ぶ。
  影狼が着地したのは湯船の外。落ちてきたわかさぎ姫をお姫様抱っこで受け止め、そこにあった車輪の付いた大きな浴槽の中に入れる。
  浴槽から身を乗り出して、バーン! わかさぎ姫、完全体!
  かげわかの立つその場所には、思わせぶりな紐が天井からぶら下がっている。
 わかさぎ姫「ふふん、お楽しみはまだこれからよ! 影狼ちゃん、ゴー!」
 影狼「わんっ!」
  紐を引く影狼。
  左右からライトが光る。かげわかの背後、湯けむりのスクリーンに、大きく口を開けてまんじゅうを頬張るナズーリンと星の姿がでかでかと映し出される。
  驚く赤蛮奇。
  バッシャア! と勢い良く湯の中から起き上がったマミゾウにも驚く。
 マミゾウ「なっ、なんじゃあ?」
 影狼「どう? 驚いた? 河童に泣き土下座して造ってもらった、『てれびじょん』よ」
 マミゾウ「……えっ、何のために? てか、すごいな河童」
  幸せそうなナズーリンの顔。
  ぼーっと見ていた赤蛮奇だが、にわかに目を見開く。
 赤蛮奇「まっ、まさか……!」
 わかさぎ姫「うふふ。気付いたみたいね」
  両手でまんじゅうを持って、幸せそうにもぐもぐと食べるナズーリン。隣の星もまんじゅうを食べている。
  二人の目の前には、山のように積まれたまんじゅう。
  ナズーリンの皿には、カニとチーズの烙印が押してある。
 影狼「お察しの通り、あの小鼠が食べてるのは、当店名物かにチーズまんよっ!」
 わかさぎ姫「知ってた? あの鼠、ものっそい大食いなのよ。しかも隣には虎!」
  もぎゅるもぎゅるとまんじゅうを食べるナズーリン。
  星に至ってはもう、右手と左手で交互にまんじゅうを口に入れまくっている。
  見る見る減ってゆく、まんじゅうの山。
  悪~い笑顔を浮かべるかげわか。
 影狼「さらに絶望的な情報を与えてやろう。かにチーズまんは数量限定なのよッ」
 わかさぎ姫「つまり……あの小鼠達の分が最後ッ!」
  ドーン、と赤蛮奇を指差す二人。
  顔を青くする赤蛮奇。
 赤蛮奇「そっ、そんな……!」
  立ち上がり、駆け出そうと温泉の縁に足をかける。
  が、阻むように両手を広げ、立ちふさがる、かげわか。
 わかさぎ姫「ククク……私達がタダで通すと思って?」
 影狼「ここでこのまま、小鼠共に蹂躙されるタラバ様を拝んでいなさいな」
  バシャバシャと湯をかき分け、二人に近寄るマミゾウ。
 マミゾウ「なんじゃお前ら、なんでこんなことするんじゃ、一体何者じゃお前らは!」
  ニャリと笑うかげわか。
 影狼「よくぞ聞いてくれたわ! 私たちは、ばんきっきの親友!」
 わかさぎ姫「『草の根妖怪ネットワーク』の仲間!」
 影狼「私たちは先の異変であの恐ろしい巫女達にボッコボコにされて以来、その縁で、友情を深めて来たわ」


○(回想)花畑 (朝、晴れ)
  花畑で環を作り、花の冠づくりをする赤蛮奇、影狼、わかさぎ姫。
  手にした花の環をわかさぎ姫と影狼の頭に乗せて、ニコニコ笑う赤蛮奇。
  あははは、うふふ、とやさしい笑い声が響く。
  赤蛮奇、次の環を作ろうと花に手を伸ばすも、
 赤蛮奇「いたっ!」
  血の出た指。
  それを咥える赤蛮奇。痛みをこらえて、涙目でぷるぷる震える。
 わかさぎ姫「(ナレーション)でもある日、私たちは気づいてしまったの。『あれっ? ばんきっきって、めちゃカワイイんじゃね?』ってね!」
  それを見た影狼の口から、つーっとよだれ。わかさぎ姫の鼻からつつーっと鼻血。


○ぎゃてみす亭の温泉 (夜、快晴)
  影狼はよだれがだらだらこぼし。わかさぎ姫は鼻血をドバドバ流している。
 わかさぎ姫「あの日から、私と影狼ちゃんは新たな秘密結社を作ったわ!」
 影狼「そうよっ! 我々こそは!」
 わかさぎ姫「ばんきっきの泣き顔が大好物の!」
 影狼「『くっそかわいいラブリーミルキーばんきっきーをマジ泣きしない程度にいじめてハァハァし隊』!」
 わかさぎ姫「人呼んで!」
  二人の腕で大きなハートマークを作る。
 かげわか「クラブ! ばんきっきーズ!」
  ひゅう、と風が吹く。
 マミゾウ「おヌシ、友達は選んだほうがいいぞ……」
 赤蛮奇「わ、私、知らない……」
  涙目で首をプルプル振る赤蛮奇。
 わかさぎ姫「ククク。ばんきっきの好物がカニだってことは知っていたわ」
 影狼「ワナとも知らず、ノコノコやってきおってからに」
 わかさぎ姫「目の前で小鼠にカニが蹂躙される様を眺めておるがいいわっ!」
 影狼「そしてその宝石のような涙を流すがいいわっ!」
  マミゾウ、首を振って、
 マミゾウ「ええい、とにかく、オトメの秘密が写ったそのカメラは渡してもらう!」
  駆け出すマミゾウ。
 影狼「甘いわッ! 姫ッ!」
 わかさぎ姫「オッケェイ! 必殺、シャボンランチャー!」
  わかさぎ姫の手のひらから大量の泡が吹き出し、マミゾウの足元に津波となって押し寄せる。
 マミゾウ「わっ、たっ、とぅ! なんのこれしき……!」
  上手にバランスをとるマミゾウだが、その時、腰のくびれに電撃が走る!
 マミゾウ「はうッ!」
  どてっ、と倒れるマミゾウ。
 マミゾウ「ぎゃああ、腰がぁぁ!」
  赤蛮奇の足元で、のたうち回るマミゾウ。
  赤蛮奇は可哀想なものを見るような目でそれを見ている。
 わかさぎ姫「ふっふっふ。おじゃま虫はこれで消えたわ」
  視線をかげわかの後方へ向ける赤蛮奇。
  幸せナズーリンの口の中に次々と消えていくまんじゅう達。まるでわんこそば。
  映像に手を伸ばし、あああ……と声にならない声を出す。
  鼻息荒く、トイカメラを構えるかげわか。
 わかさぎ姫「さあ! さあさあさあ! ばんきっきよ!」
 影狼「口惜しさと恥辱に震えるその顔を、我らに晒すがいい!」
  カッ、と目を見開く赤蛮奇。
  次の瞬間、九つに分裂した赤蛮奇の頭が宙を飛び、かげわかを取り囲む。
  ポカン、とするかげわか。
 影狼「えっ?」
 わかさぎ姫「あれっ?」
  ビカビカ光出す赤蛮奇の目。
 赤蛮奇「飛べば泡なんてカンケーないしぃ」
  抱き合って泣くかげわか。
 かげわか「でっ、ですよねー!」
  赤蛮奇達の目から一斉に赤いビームが放たれる。
 かげわか「ぎえぇぇぇー!」
  直撃し、爆炎があがる。


○ぎゃてみす亭の廊下 (夜、快晴)
  ドガン!
  扉を吹き飛ばし、バスタオル一枚の赤蛮奇が全力疾走。
  アスリートのように綺麗なフォーム。
 赤蛮奇「間に合え、間に合えェーッ!」
  徐々に強くなる光に向かって、ひた走る!


○ぎゃてみす亭の食堂 (夜、快晴)
  真っ白に燃え尽きてうなだれる赤蛮奇。
  目の前には、ぽっこりお腹のナズーリンが畳の上で大の字になっている。
  皿は既に空。
 ナズーリン「(ふやけ顔)うまかったぁ~」
  放心状態の赤蛮奇。
  そこへ、白いまんじゅうが一つ、差し出される。
  目を向けると、手を差し伸べたのは星。
 星「あの。実は一つ、取っておいたんですよ。よかったら、貴女もどうです?」
  にっこり笑う星。
 赤蛮奇「あっ、ああっ、あああ!」
  赤蛮奇、みるみる色を取り戻し、涙を浮かべて星に手を合わせる。
  星の背後にまばゆい光が差し、色とりどりの花が咲き乱れる。吹き荒れる、天使のファンファーレ。
 赤蛮奇「ああっ! 女神さま~っ!」
  まんじゅうを前に手を擦り合わせ、周囲にハートマークを浮かべる赤蛮奇。
  その隣には、後光が消えて、ニコニコ顔で正座する星。
  赤蛮奇、ニコニコしながらまんじゅうを一口かじる。
  途端、無表情になる。
  星が人懐っこい笑顔で赤蛮奇に話しかける。
 星「どうです? おいしいですか?」


○ぎゃてみす亭のラウンジ (夜、快晴)
  うつ伏せになったマミゾウ。響子が背中をマッサージしている。
  響子が腰を押した途端、マミゾウがのたうつ。


○ぎゃてみす亭 外観 (夜、快晴)
  煌々と月が照る。湯面に写った月がゆらゆら揺らめく。
  近くには、車輪付きの浴槽。その中には、目を回してぐったりとしている、影狼とわかさぎ姫。
  あおーん。
  狼の遠吠えが響く。
 赤蛮奇「(ナレーション)あんこだ、これ……」


 <終>
 実はこの話、シリーズの二作目に当たる話です。
 また、東方創想話様で連投させていただいている「死体探偵」シリーズの四話及び五話にも関連しています。
 しかし、出来るだけ前の話を読まずとも分かる構成を心がけたつもりです。
 シナリオ形式をもう少し普及させたいなあと思い、筆をとってみたのですが、いかがでしたでしょうか。
 批評や文句、ご感想をいただけると、大変うれしいです。

 
 2016/02/28追記
 ご意見ご感想ありがとうございます。かなり辛辣な評価になるだろうとは覚悟していましたが、そのとおりになってしまいました。ひとえに私の力不足です。やっぱり、ギャグを書くのは難しいですね。お目汚し申し訳ありませんでした。でもダメなものにはきちんとダメと言って貰えて、作者としては幸せです。
 一部だけ、コメント返しを。
 
 >台本形式は個人的には読みづらく
 読み方知っていないと、やっぱりそうですよね。読者の事を考えていなかったのは私の落ち度です。申し訳ありません。

 >何もかもぶち壊しな気がします
 このご意見が一番ダメージ大きかったです。ナズーリンのキャラ性を描写しきれていなかったのは私の実力不足ですが、自分で思っていたよりも乖離が大きいようです。もっと精進致します。立ち直れないと判断したら全部消させていただこうと思います。

 >脚本としてみても使えない物になってしまってる
 な、なるほど。自分でも少しだけ違和感を感じていたのですが、それだったのか! 脚本なのに描写をしすぎているのは自分の課題かもしれません。このご意見を頂けて、本当によかったです。ありがとうございます。
 せめてこの話だけでも、少し書きなおしてみる事にします。

 >形式うんぬん以前のアレな出来栄えになってしまった
 私も出来るだけ脚本の体裁を目指したつもりですが、勘違いや実力不足が原因で、そうなることが出来なかったようです。申し訳ない、本当に恥ずかしい。

 >出来に全く自信のない作品を投稿するというのは読者を馬鹿にしていると思います
 すみません、正直言うと、今まで自分では面白くしたつもりで書いたものに、あまり感想を頂けたことが無かったので、自信がなかった次第でございます。案の定面白く無かったみたいですね。頑張ったつもりだったのですが、力不足だったようです。面目ありません。
 あと、面白くないとのご意見を頂いたので前書きを削除しましたが、道義に欠けていましたね。復活させておきます。

2016/03/03追記
 ト書きの書き方等を一般的な形式に修正しました。
 また、不要な演出面の記述を出来るだけ削除してみました。それに伴い、シーンの変更も少し行っています。少しは読みやすくなっているといいのですが。

 さて。
 どうしようか非常に迷ったのですが、皆様に不快な思いをさせてしまった以上、説明するのが責任かなーと思いましたので、私の意図を簡単に解説させていただこうと思います。

 誤解を恐れずに言えば、この作品はこのままでは未完成です。何故か。シナリオは大抵、映像になって完成するからです。シナリオのゴールは映像化、舞台化等、様々にありますが、私はこのシナリオのゴールを、皆様の頭の中に可愛い赤蛮奇を映像として投影すること、としていました。このシナリオを読まれて、僅かなりとも映像は浮かびましたでしょうか? もし浮かんで頂けたのなら、それが私の作ろうとした、私と貴方、共同の作品です。ですので、文章作品として中途半端だと思われるのはその通りで、全く正しいことだと思います。
 ではどのように楽しむことを私が意図していたかというと、皆様が頭の中で映像をあれやこれやと組み立て自由に改変していただき、赤蛮奇を可愛いらしく動かしていただくことを意図していました。言うなれば、皆様に監督になったつもりで読んでいただきたかったという事ですね。
 これはシナリオの読み方としてはわりと一般的なのではないかと思っています。どのシーンをどうやってカメラで撮るか、役者にどういう芝居をさせるか。そういうのを想像して楽しむというのが、シナリオの楽しい読み方だと思います。これは即ちクリエイターの視点での読み方です。映像をより良くするために、このシナリオのこういう部分をこう変えたほうがいい、とか、こういうのを追加したほうがいいい、とか、自分が撮るならこうする、とか。そういうことを想像してもらいたかった。小説が完成されたフィギュアを様々な角度から見て楽しむものだとするなら、シナリオは材料と設計書を基に自分で創り上げるプラモ、ってとこでしょうか。そういう、創りの楽しみというのが、シナリオの魅力だと思います。
 つまり私は皆様に、読者ではなくクリエイターとしての読み方を強要した次第でございます。
 これは傲慢と罵られても仕方のないことだと認識しています。たぶん読者様は小説を読んで楽しまれる事を望まれていたのでしょうが、私は楽しい映像を作るのを手伝ってくれ、と言ったわけですから。しかもそのために私が提出したシナリオは(私個人としては勿論精一杯努力はしたつもりでありますが)出来がよろしくなく、皆様の創作意欲や情熱を掻き立てるものではなかった。さらに、コメント10様のご指摘の通り、演出面の指示を書きすぎていたため、想像の余地を消してしまっていたという致命的な失敗もありました。加えて、事前に意図も何も説明もしなかったですしね。
 なので、私を罵るのなら、傲慢で身の程知らずな焼豚野郎と罵るのが的確ではないかと思います。
 皆様がシナリオ形式の作品に慣れていらっしゃらないだろうことはある程度予想していました。酷評を覚悟していたのはそういう面もあります。本当はそういった苦手意識を吹き飛ばすほどのパワーのある作品、問答無用で映像を想像させてしまうような楽しい作品を書ければよかったのですが……。力及ばす、誠に面目次第もございません。
 シナリオ作品というのは書くのも読むのもとても面白いもので、私としてはその楽しさを伝えたかったと言うのが、シナリオ作品を投稿した意図でございます。こういう楽しみ方もあるんだということを知ってもらいなと思って。小説と同じように、シナリオ作品もたくさん世の中にあふれています。読まないのは勿体無い。それを読んで楽しめるようになれれば、楽しみが膨らみますからね。
 また、二次創作というのは実はシナリオ向きなのではないかと考えております。特に東方Projectは個々のキャラクターに顔があり、それぞれが絶妙なさじ加減で個性を確立しておりますので、想像の余地が広く、楽しい作品が出来やすいのではないかと思います。東方シナリオ作品、もっと増えて欲しいものです。
 残念ながら、今回の私の作品では皆様にシナリオの面白さを伝えられませんでしたが、世の中にはとても面白い作品もたくさんありますので、機会があればぜひ読んで頂きたいところです。私のおすすめは、結構前のドラマですが、「結婚できない男」ですね。阿部寛主演が前提で書かれた作品らしいのですが、読んでいるうちに、僕も阿部寛にこんな演技をしてもらいたい! とか、僕もこのドラマ撮ってみたい! とか、もういろいろ想像と情熱が浮かんできて、とても楽しく読めました。皆さんも読んでみてください。次の日には電気屋にビデオカメラを買いに行きたくなってると思います。
 流石にかちゃましいのでこれ以上ここに書くのはやめようと思いますが、転載先にこのシナリオのテーマや、どういう構成で作ろうとしたのか等をちょっと記載しておこうと思います。
 以上です。
 私の作品を読んで頂いた事に加え、様々なご意見、ご感想をいただき、本当にありがとうございました。
チャーシューメン
簡易評価

点数のボタンをクリックしコメントなしで評価します。

コメント



0.290簡易評価
1.無評価名前が無い程度の能力削除
え???
3.60名前が無い程度の能力削除
死体探偵シリーズは楽しませてもらっていますが、今回の作品単品で評価すると辛い点数になってしまいます。
台本形式は個人的には読みづらく、こういう形式を選択された理由もこれはというものは思い浮かびませんでした……
4.60奇声を発する程度の能力削除
うーん…
6.10名前が無い程度の能力削除
中身ペラペラな上にひたすら読みにくく、語彙も貧困。
誉めるべきところが全くない自己欺瞞に満ちた作品。
8.無評価名前が無い程度の能力削除
スマイル、オンリー・フォー・ユーのあとにこんなことがあったかと思うと何もかもぶち壊しな気がします。
9.20名前が無い程度の能力削除
死体探偵シリーズはどれも非常に良かったのですがこれはちょっと……。
10.10名前が無い程度の能力削除
この形式はここじゃ絶対に叩かれると思って読んでたら案の定だった
脚本としてみたら前半のト書きがやたらクドい
本来演出家に任せる部分も描写しないとSSとして成り立たないからそうなったんだろうけど
結果SSとしれ見ると読みにくいだけ脚本としてみても使えない物になってしまってる
11.無評価名前が無い程度の能力削除
以前ハーメルンでシナリオ形式に関するご意見拝見しましたが、何か誤解されているのではありませんか。
ネット小説界隈で特に台本形式が嫌われる理由は、

例えば、小説は書けないけど物語を書いてみたい人が、
例えば、地の文が書けないので台詞だけで書く。
例えば、キャラクターの書き分けができないので台詞の頭に人物名をつける。

そのようなくそたわけた料簡で書かれ、案の定形式うんぬん以前のアレな出来栄えになってしまったものがその大半を占めたからです。
決して本格的な脚本の体裁を目指した作品が嫌われているわけではないのですが……。
12.50名前が無い程度の能力削除
作中の蛮奇がとても可愛かった、その点に於いては良かった
13.無評価12削除
いえあの、チャーシューメン氏の仰るシナリオ形式と、巷で嫌われているいわゆる台本形式は全く別物だと思います。
と申し上げたいだけであって、チャーシューメン氏の作品がアレだと言っているわけではありませんので。
14.無評価名前が無い程度の能力削除
既に削除されておられますが、当初前書きに「楽しく書いたので皆さんもお楽しみください」というようなことを書いておられましたよね?
「かなり辛辣な評価になるだろう」と自覚していたのなら、なぜその自覚を偽って「お楽しみください」と自作を勧めたのですか?
出来に全く自信のない作品を投稿するというのは読者を馬鹿にしていると思いますが。別に締切がある訳でもないですし、納得の行く出来になるまで推敲なり書き直しなりするべきでしょう。
15.10名前が無い程度の能力削除
死体探偵シリーズを楽しませてもらっていますが今回の作品はちょっとひどい。
ギャグなんでしょうけど面白いと思えず目が滑りまくり。
半分ほど読んだどころで読むのを辞めてしまいました。
18.無評価名前が無い程度の能力削除
・最初からどういう意図で書かれているか分かっていれば、まあ普通に読めるなあと思いました。このシナリオを基に動画を作ってニコニコ動画とかで見れば、好評を得られるんじゃないかなとは思います。

・問題は「そもそもシナリオ形式に需要があるか?」ということです。シリアス路線ならその雰囲気に入ることができない。ギャグ路線でも、よっぽど突拍子も無いことが起きない限り笑えそうにないし、笑ったとしてもすぐにト書きに邪魔をされる。
今回はギャグ路線を狙ったとのことですが、そもそも真っ当なギャグってほとんどの場合「文章にするとちっとも面白くないもの」なんじゃないでしょうか?
お笑い芸人のネタを始めとする、リズムや視覚効果に訴えるタイプのお笑い作品は「考える前にオチが来るから面白い」のであって、文章にするとオチを考え付く隙が生まれて威力が激減したりするように思います。
この作品の「ラストのあんまん」を例にすると、私は星があんまんを注文した件をごく自然に覚えていたので、まんじゅうが差し出された時点で「はいはい、あんまんあんまん」となりました。これが動画作品であれば視覚による圧倒的情報量で伏線を消すことができたのかもしれませんが。
文章で笑いを取ることは不可能ではありませんが、それを狙うのは現実的ではないと思います。

・ナズ星が暴飲暴食してるように見えますが、それは仏教徒としてどうなんでしょう。確かに、ナズーリンは公式で大食いで、死体探偵シリーズでも飯のことばっかり考えていますけれども、映像としての迫力を出したかったからとはいえそういう描写にする必然性は無いわけですし……。
19.50名前が無い程度の能力削除
次回作に期待しています。
21.無評価名前が無い程度の能力削除
普段何気にみているMMDがいかに歪かよくわかった気がする
文書に起こすとこんな変なことやっていたのねって感じで
何よりキャラの限度が変すぎる
23.無評価名前が無い程度の能力削除
追記を読みましたが、あなたはシナリオ、脚本というものを根本的に勘違いしています。
シナリオは、書いてある通りに映像化するものであって、映像を自由に想像するものではありません。人物の内面を書かず、外見や行動を中心的に描写するのがシナリオの特徴ですが、これは文章をそのまま映像化するためです。
「自由に想像・創造できる」というのは、シナリオとしては最悪なんです。
読者に自由に情景を想像させたいなら、最も向いている媒体は小説です。小説は内面描写が多く、映像的な描写は少ないため、想像の余地は一番あります。あなたがやろうとしていることは、シナリオには向いていません。

あと、ここに限らず小説投稿サイトの読者の多くは、シナリオ形式に「慣れていない」訳ではありません。「読み飽きている」のです。
24.10名前が無い程度の能力削除
脚本や台本は自分のような素人というか、演技・ストーリーの枠から外れた者からすると読むのが苦痛だということを改めて実感しました。
制作するにしても、今までのような小説の形式なら読みやすさがだいぶ違ったと思います。

死体探偵シリーズはとても好きです。ああいう作品、また読みたいです。
26.無評価名前が無い程度の能力削除
すげえあとがき