Coolier - 新生・東方創想話

髪を切る音

2016/02/09 23:29:20
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 人の夢が幻想になる。だから、幻想の抱く夢は脆いのだ。


     ―――◇―――

 髪を切る鋏の音と、妖怪の身につける鈴の音が、同時に響いた。
 水で濡れ纏まっていた銀髪がするりと零れ落ちていく。その音もまた、その部屋の中ではしっかりと、切る者と切られる者の耳に届いていた。 
「だいぶ伸びましたねー咲夜さん」
 艶のある銀髪を少しずつ梳きながら、紅髪の妖怪が言った。咲夜はそれに首を傾げる。そんな風には感じていなかったが、そう言われると確かにいつもより髪が多かった気がしなくもない。
「そう?」
「肩を超えるくらいです。もうちょっと伸ばせばアレンジも色々増えますよ」
「髪が伸びるのは成長している証拠。いいことよ」
「だったら、たまには切らずに伸ばせばいいのに」
 もう一度切る音が響く。髪が落ちる。その髪を、名残惜しそうな目で妖怪は見ていた。
 妖怪はこれまでに何度も咲夜の髪を整えてきた。しかし動きづらいだろうという理由だけで短くしていた髪を、咲夜は中々変えさせてはくれなかった。
「髪が長いのもいいと思いますけどね、私は」
「あら、長いほうが好きなの?」
「どちらでもお似合いになるでしょう」
 優しげに。控えめに。まるで宝石でも扱うかのごとく丁寧に。妖怪は人間の髪に鋏を入れていく。
 それからしばらくは、ずっと言葉はなく。ただ髪の切る音だけが部屋に満ちていた。
 妖怪は迷わずに鋏を入れていく。もうどんな風に仕上げるかは、頭の中で完成されている。
 けれども一度、妖怪が鋏を閉じて、襟足の長さを指で確認した。まだ想定よりは幾分長い。
「いつもよりはちょっと長くしましょうか」
「どうして?」
「うなじが寒いのは嫌でしょう?」
「ふふ、じゃあお任せするわ」
 まだまだ肌寒い時期は続く。暖かくなった頃にまた鋏を入れればいいだろう。
 鋏が鳴る。髪が落ちる。ゆっくりと、髪が積もっていく。
「今日の晩御飯はどうします?」
「ふふ、まだ午前の10時よ? いくらなんでも早すぎない?」
 妖怪は笑う。そう言われれば早い。すぐさま適当な言い訳を考える。
「何事も早いに越したことはありませんから」
「そうねぇ、久しぶりにグラタンでも作ろうかしら」
 こうして乗ってくれるのが咲夜という人間である。咲夜は妖怪との会話が好きだし、当然妖怪も咲夜との会話が好きだ。
 特に二人は、料理の話をよくする。
 料理はいい。それは人生に彩りを与える。体を作り、心を癒やし、活力を得る。二人で料理を作ることもしばしばある。昼ごはんから酒の摘みまで、彼女たちのレパートリーは幅広い。
 意識ある者にとって、それから生ずる欲を満たすことこそが活力となる――というのは紅髪の妖怪の考えであった。
「いいですねぇ。ハンバーグとかフランスパンとか、付け合せにも期待しちゃいます」
「トマトソースで鶏肉を煮てもいいかも。それともミネストローネ?」
「それなら鶏肉のトマト煮がいいですねぇ。それから白ワインを開けたらどうでしょう」
「なるほど、じゃあ採用するわ」
 また鋏が鳴る。髪が落ちる。それがまるで、二人の会話の一部であるように。
「夜がグラタンなら、お昼はサンドイッチにでもしましょうか」
「じゃあ買い物がてら、ピクニックにでも行きますか?」
「そうねぇ」
 咲夜は笑う。それを鏡越しに見ながら紅髪の妖怪も笑う。
 そしてまた、鈴の音が鳴る。

     ―――◇―――

 鋏が鳴るたびに、その音に反応して、魔理沙はびくりと身を震わせる。
「いい加減慣れなさいよ」
「何度やられてもこれだけは慣れない……」
 ふぅと、鋏を持った金髪の魔法使いが呆れたように溜息を吐いた。
「毎度のことだから、いいけどね」
「ホントにごめん……」
 また、鋏が鳴った。うぅ、と魔理沙は唸る。
 鋏の鳴る音以外に、部屋から聞こえる音は殆ど無い。ただその家の二階でカタカタと稼働するミシンは、遠くから絶えず耳に入っていた。それに時折魔法の森から奇妙な鳥の鳴き声も聞こえる。
 けれど、やはりそれは静かな空間を阻害することはない。窓から差し込むやわらかな陽光が、その部屋に穏やかさを与えていた。
 ぱさりと髪が落ちる音。魔理沙は瞑っていた目を開く。
「自分が使う分には平気なんだけどなぁ……」
「まさか自分で髪を切るわけにもいかないでしょうに」
「それをやってお前に笑われてからは絶対しないって決めたんだ」
「だからって私にカットを頼むのはどうなの?」
「お前以外にカットしてくれそうな知り合いがいない」
「人里にも床屋はあるじゃない」
「カットの後にご飯を出してくれるなら喜んでいくよ」
「ウチはヘアサロンでもレストランでもないのに……」
 鋏が鳴る。何かを言おうとした魔理沙の口が止まった。
 しばらく鋏が鳴り続けた。やがてある程度梳き終えたら、魔法使いは控えていた人形に鋏を渡し、代わりに櫛を受け取って魔理沙の髪に通し始める。
「長さは少し落とした程度だから、あまり見た目は変わらないわね」
「そんなばっさりやらないで、いつもぐらいにしてくれよ。魔法に影響が出たら嫌だ」
「え? あぁ、髪に魔力が宿るって話? あれ迷信でしょ?」
「魔力波動の伝達と拡散に関わってるって聞いたけど」
「ふぅん……でも、そもそも貴女の魔法の大半は魔法の森の植物が源じゃない」
「いきなり空が飛べなくなるかもしれないだろ!」
「その時は上海たちに運ばせて送ってあげるわよ」
 後ろ髪は長さ、ボリュームともにオーダー通りだ。
 魔法使いは魔理沙の前へと立ち位置を移し、前髪に櫛を通す。前回のカットから大分時間が立っているので、前髪はもう眉下にかかるくらいだ。
 普段なら大雑把に流す魔理沙でも、それでは流しきれないのが現状であった。
「ここも短くして、軽くしましょう」
「ついに前髪か~」
「怖いなら寝てなさい」
「そう簡単には眠れないな。何か歌ってくれ」
「あのねぇ……」
 再び呆れた魔法使いだったが、ふと思いついたように部屋の隅へ赴き、置かれていた小箱を開く。すると中から、十数体ほどの人形が、まるでオーケストラの楽団として楽器を持ちながら並ぶ台座が連動して競りあがってきた。
 魔法使いが箱の側面に備え付けられたボタンを一つ押すと、それらの人形が動き出し、音楽を奏でる。音楽は優しい音色を中心に緩やかなテンポで、魔理沙はそれに聞き惚れてしまう。
「すごいな。作ったのか?」
「私だけじゃないんだけどね。これは試作品」
「風情があっていいな」
「作るのに半年もかからなければ、売れるものにはなるんだけどねぇ」
 半年という時間の詰まったからくり箱を改めて目を剥いて凝視し、魔理沙は感嘆の溜息を吐く。
 相変わらずこの魔法使いは、技巧に優れ、拘りも深い。嫉妬してしまうほどに。
「さぁ、続けるわよ」
「ひ~!」
 けれどどれだけ安心できる音楽が流れようと、魔理沙がカットに慣れるにはまだまだ時間がかかりそうだ。
 魔法使いが小箱の音楽に合わせて鼻歌を歌いながら、霧吹きで魔理沙の前髪を濡らしていく。
 そして、そのハミングとともに鋏が鳴る。
 ただ、それらの音は魔法使いの目論見通り、魔理沙の緊張をいくらか解していた。
「なぁ」
 魔理沙も心に余裕ができ、長らく考えていた事を口にする。
「今度、お前の髪を切らせてくれないか?」
「絶対イヤ」
 素気無く断られてしまい、魔理沙は口を窄めて悲しんだ。
「なんでだよぅ……」
「貴女の練習台になるなんて、真っ平だわ」
「じゃあ、人形でもいい。私にカットを教えてくれ。いつかお前の髪を整えてみたいんだ」
「はいはい、何年後になるかしらねぇ」
 魔理沙は絶対に年内には認めてもらえるようになろうと、その時固く心に決めた。 

     ―――◇―――

 鋏が鳴る。白い髪がぱさりと落ちる。身じろぎ一つせず、妖夢はただ正座でそれが終わるのを待っていた。
「緊張してるの?」
「そう見えます?」
 また鋏が鳴った。やはり妖夢は動じない。
「だって、剣を握ってる時みたいに静かだから」
「これでも安心してます。穏やかですよ、すごく」
 亡霊は不思議そうに首を傾げ、彼女の桃髪がさらりと垂れた。
「ふぅ」
「ひっ!」
 亡霊の吐息が耳にかかり、妖夢は肩を震わせて小さく悲鳴を上げ、慌てて吹きかけられた耳を抑えて亡霊を睨んだ。
「やめてください!」
「あっはは。かわいい~」
「あのですね……」
「ごめんごめん」
「もうやらないでくださいね」
 ぼやきながらも再び正座する。亡霊も今度は真面目な顔で鋏を持ち、それを鳴らした。
「妖夢は可愛いから、つい悪戯しそうになっちゃうわ」
「髪を切る時くらいは控えてくださいよ……」
「久しぶりだから、ちょっともったいないような気がしてね」
「勿体無い、ですか?」
 それには答えず、代わりに亡霊はまた鋏を鳴らして髪を切る。
「次に貴女の髪に鋏を入れるのはいつになるのかしらね」
 惜しむように呟いて、亡霊は妖夢の髪を撫でた。
「中々伸びませんからね、私の髪は」
「まぁ、ばしばし伸ばされて切るのも嫌だけどね。こういうのはこうやって、たまーにくらいが丁度いいのかも」
 櫛で襟足の髪を梳いていく。長さを確認し、いつも通りの長さになっていることに満足気な笑みを浮かべた。
「でも、勿体無いといえば、別の髪型にしないのは勿体無いわ。貴女くらいの年頃の子は、髪を長くして色々変えているのに」
「うーん。一度伸ばすと切るを躊躇しますし、長いと動くのも不便ですし、今はいつもの髪型がいいです」
「勿体無いわぁ、勿体無い」
 そう言いつつも亡霊の鋏裁きに迷いはない。一度決めた事を簡単に曲げる妖夢でないことをその亡霊は分かっていたし、本気で口を出す気もない。
 ただ少しづつ、亡霊は囁いていくのだ。
 じわりじわりと、染みこませるように。
 濡れた前髪を、ばつりと大きく切る。この雛人形のような髪から、量を減らしつつ毛先を細くし、軽くバラしていく。
「次に貴女の髪を切る時は、もっと別の髪型にしましょうか」
「えぇ~、いいですよ別に。私には似合いませんて」
「そんなことないわ。妖夢はもっと自信を持ちなさい」
 妖夢の頬がほんのりと朱に染まった。こういうところが本当に可愛らしいと亡霊は思う。
 けれどもやはり、姿勢は微動だにしない。昔ならちょっとは崩れていただろうに。
 少しだけそれに寂しさを覚えつつ、亡霊は妖夢の前髪に鋏を入れ始めた。
 
     ―――◇―――
 
 頭を幾度か撫でられている。早苗は自身が微睡んでいることに気付いた。
「あら、起こしちゃったか」
「すみません。つい気持ちよくて……」
 切られた髪が多く床に落ちており、頭髪が軽くなっている。頭髪を区画分けしていたヘアゴムやダッカールクリップの感触も無くなっていた。
 櫛で髪を梳かれているが、早苗は首を動かして櫛を持つ神霊に目を向ける。
「もう終わっちゃいました?」
「うん。あとは長さを見て、調整する感じだよ」
「そうですか……久しぶりでしたから、ちょっと勿体無かったですね」
「言えばいつでも切ってあげるわよ。貴女くらいの歳は、短くしたって色々と纏める方法があるでしょうから」
「うーん。でも今は冬ですから、長めがいいです」
「はいはい」
 神霊が折りたたみ式の鏡を持って、早苗の前でそれを広げた。早苗が髪避けから手を出して毛先を摘んだ。それから手櫛で長さを見る。
 まだ少し長い。どうやら長さの方はほとんど手を加えてないようだった。
「短くしようか?」
「そうですね。もう少しだけ、短くしてください」
 神霊は鏡を畳んで、もう一度早苗の後ろに回った。
 一方で早苗は、今度は寝まいと意識に活を入れる。
 神霊の掌が早苗の頭を撫でた。くしゃりと髪を掻き分け、包み込まれる。温かく、女性の手ではあるがどこか強さを感じさせる。早苗は彼女に撫でられるのが好きだった。
「冬は冷えるからねぇ。量も減らしてないけど、大丈夫?」
「はい」
 神霊が鋏を持つ。後ろ髪に一度、鋏の音が鳴る。
 しばらく鋏の音が鳴り続けた。早苗はそれを、目を瞑りじっくりと味わった。
「……後ろはこんなもんかな」
 早苗の後ろ髪を、神霊の手櫛がするりと梳いた。髪の長さは早苗の肩甲骨辺りまで、まだ長いかもしれない。
 神霊は少し悩んだが、言った手前もう一度変更するのも嫌なので、この長さで納得する。
 今度は前髪を梳いてみる。早苗の髪は少し癖があるが、強くはなく、濡れてもいるのでおおよそ真っ直ぐになった。量、長さ共に問題はない。
神霊は早苗の髪を、中心を大きく纏めて軽くサイドに流した。
「横はどうする? いつも通り?」
「お願いします」
 なら、もう殆ど終わりだった。
 神霊は一度早苗から距離をとって、頭髪のバランスを見る。
 変わった所はない。髪が乾いても、おかしくはならないだろう。
「うん。じゃあ乾かそうか」
「はーい」
 早苗の部屋にはコンセントがあり、ドライヤーもある。河童による施工は一応の成功で、今のところ外の世界と同じように使えていた。
 ドライヤーで早苗の髪を乾かしていく。神霊は昔からこういう風に早苗の髪を整えてきた。もう随分懐かしい頃の日々だった。
 ついつい思い出に浸りそうになったが、それでも乾かす手を止めることはない。慣れた手つきで早苗の髪に温風を当て続けた。
「早苗がもっと大きくなったら、その内必要もなくなっちゃうのかねぇ」
「え、そうなんですか?」
「自由自在だからね、姿形はさ」
「なら何回でも整えてもらえますね」
「はは、おうとも。いつでも言いなさい」
 嬉しくもあり、寂しくもあった。
 髪を切り終えたら、久しぶりに昔の写真を見てみようか。
 早苗はそう考えながら、ドライヤーの温かさと神霊の手を、目を瞑って感じていた。

     ―――◇―――

 ぱさり、と髪が一束、床に落ちた。
「ホント、綺麗な髪よね、貴女って」
 妖怪がそう言い、手にとっていた霊夢の髪を見つめていた。黒く艶やかな髪は真っ直ぐに伸び、一層の潤いを保って衰えることがない。
「あんたのその金髪程じゃないわよ」
「人間の話よ。外の世界じゃ、こういう髪を保つのに貴女ほどの年頃の女の子や、成人した人だって躍起になるくらいなのに」
「そうは言ってもねぇ。前に言ってたりんす? とかとりーとめんと? 私はやってないわよ」
「だから不思議なの」
 きっと霊力が影響しているのだろうと妖怪は見当をつける。彼女の霊力は清澄で穏やかに流れている。それが、身体にも反映されているに違いない。
 妖怪は霊夢の後ろ髪の量を減らしていく。といってもそれほど多く減らすなとの要望なので、妖怪はわざと悩んでいるふりをしながらこの時間を引き延ばしていた。やろうと思えばすぐにでも終わらせられるが、そんなことをしては勿体ない。折角冬場に起きているのだ、精々この状況を楽しもうじゃないか。
「それにしても窮屈だわ。外じゃ髪を切るのにこんな風に縛ったりするの?」
「そうよー。こうやって色々区画分けして、周りのバランスを気にしながらカットして、髪型を変えていくの」
「めんどくさ~。ばっさりカットすればいいのに」
 妖怪が鋏を鳴らす。髪が床に落ちる。
「あのねぇ、貴女も女の子なんだからおしゃれに気を使いなさいよ。若いうちしか似合わない物だってあるのよ?」
「ん~、じゃああんたが変えてよ。なんでもいいからさ」
「短くしたら怒るくせに」
「リボンが結べなくなるから」
 妖怪が鋏を鳴らす。また、髪が床に落ちる。
「クリップで止めるようなリボンを作ってあげましょうか?」
「どうせ藍か霖之助さんに頼むんでしょ?」
「何々? 私に作って欲しかったの? お手製をご所望?」
「そんなことひとっことも言ってない」
 鋏を鳴る。髪が落ちる。
「人間、寿命は百年も無いし、その内で可愛く入られる期間はもっと少ない。時間を大切に使いなさい」
「釈迦に説法して楽しい?」
「楽しいわよ。それが生き甲斐だから」
「性格悪~」
 妖怪は鋏を置き、手櫛で霊夢の髪を梳いていく。加えて彼女の髪を優しく撫でる。霊夢には見えなかったが、その時の妖怪の笑みは、いつもよりも明るく穏やかな物だった。
「うーん、もうちょっと弄りたいわね」
「余計なことしなくていいから」
「は~い」
 妖怪は霊夢の頭からピンやゴムを取り外していく。ふわりと自重に従って垂れ下がり、その様は雛人形のよう。妖怪は髪に残っている毛髪を梳き落としながら、机に置かれた手鏡を取り、霊夢に渡した。
「うん、丁度いい」
「当然」
 霊夢から髪避けを取り去る。その下から、汚れのない白装束が露わになる。そこから付着していた髪も払い、他と同じく床へと落ちていく。霊夢は立ち上がり、髪を払いつつ妖怪へと向き直った。
「ありがとう」
「どういたしまして」
 たったそれだけの、本当にそっけない、感謝の言葉。けれど両者の間にわだかまる物はない。
 いつもの事であったし、妖怪にとってはそれだけで十分だった。嬉しくて自然と口角が上がるくらいには。
「悪いわね、冬眠中に。お昼食べてく? これから作るけど」
「う~ん。なんなら作ってあげようか?」
 そうして妖怪が逆に提案すると、霊夢の顔には予想していなかったであろう驚愕と恐怖が織り交ざった表情が浮かび、その答えは思わず声を震わせるほどだった。
「アンタが、料理……? で、出来るの?」
「これでも昔はよく作ってたんですぅ」
「想像できないわ。じゃあその内作ってよ。今日は部屋の掃除をお願い」
「分かったわよぅ」
 断られてしまい、妖怪は頬を膨らませながら髪の掃除を始める。
 丁度そんな気分だっただけに、出鼻を挫かれた妖怪は面白くない気分だ。
 ただまぁ、あれだけ驚かれるなら、もっと驚かしてやろうという悪戯心が間を置かずに妖怪の胸に湧く。
 献立を考えると、ついつい楽しくなってくる。適当に歌いながら、妖怪は髪避けに敷いていた布を畳み始めた。


.
 ここまでお読みいただき、有難うございます。

 髪が伸びるのは成長している証拠。とは一概に言いきれないのが幻想郷なわけですが、さてはて霊夢たちはどうなのやら。

 自機繋がりでうどんげの話も考えましたが、月兎は性質的には幻想側かなぁと思い、書けませんでした。でも多分、切るのは彼女のお師匠様かなぁとぼんやりながら思います。まぁ、そんなことを言ったら、妖夢は半分幽霊ですけど…。
 それに半霊を書いたのなら、半妖はどうなんだという話ですね。すみません。

 原作の設定、性格を重んじておりますが、時系列や把握ミス、誤字脱字などの抜けがあるかもしれません。発見された際には、ご指摘のほどをお願いいたします。
泥船ウサギ
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コメント



0.930簡易評価
9.100名前が無い程度の能力削除
よかったです
12.100名前が無い程度の能力削除
各々女の子らしくて可愛いなぁ
そういえば霊夢は陰陽玉があれば太らない設定あったね、あれがスタイルや髪の毛のキューティクルにも影響してたりして
16.100名前が無い程度の能力削除
おだやかでいい作品でした
成長に合わせて髪が伸びて、それを切っても成長は残るんですね
人と幻想では変わる速度が違いますが成長していくことでいつか切る人と切られる人の立場や関係も変わっていくのでしょうか
それとも変わらないのでしょうか
どちらにせよ幸せに過ごしている彼女たちを嬉しく思います
17.100名前が無い程度の能力削除
切る側の名前を出さないあたりにこだわりを感じました