「ねぇ大ちゃん」
「はい?」
「10月31日ってなんかあったっけ?」
10月31日の良く晴れた午後、霊夢と大妖精は縁側で並び茶を啜っていた。
「10月31日……んー、わからないです。なにかあったんですか?」
『魔理沙がね、朝突然来て、『とりっくおあとりーと』だったかな? 何回も繰り返し言うものだから何かの呪文? って聞き返したの。そしたら呆れたような顔をして帰っちゃってね……」
そう言って不思議そうに首をひねる霊夢。その様子を見ながら大妖精は「トリックオアトリート……トリックオアトリート……」と口の中で繰り返していた。
「あっ」
「どうしたの?」
「そういえばチルノちゃんも家でトリックオアトリートって言っていました。文さんに教えてもらったって」
「文に? するとイベントでもやっているのかしらね」
そう言うと霊夢は茶を啜った。冬を近く寒くなってきた所為か湯飲みの中身は冷めかかっていた。霊夢は眉を顰めると急須に新しい湯を補充しに炊事場へと向かった。
大妖精はやわらかく降り注ぐ日光に促されるように目を薄く閉じて後ろに倒れる。床は日光で暖められており、硬さに目を瞑れば十分に心地よいものだった。小さく欠伸をして背中を丸め、膝を抱えると意識をゆっくりと手放していった。
「トリックオアトリートって結局なんなんのかしら……」
「その答え、教えてあげましょうか?」
霊夢が水を入れたヤカンを火に掛けて待っている間、ずっと考えている疑問をぼそりと呟いた。その瞬間、よく知っている妖怪の声が話しかけてきた。八雲紫、幻想郷の管理者という重要なポジションを受け持っている妖怪だ。その紫が隙間に腰掛けて何故かクッキーが入っている袋を片手に持っている。袋はきちんと放送されていてプレゼントされた物だということが見て取れる。
「あら紫、もう冬眠したと思っていたんだけど?」
「今日はまだ10月30日。冬は11月からよ霊夢」
そう言うと紫は隙間から飛び降りた。霊夢は紫の持っている袋からクッキーを一枚摘み口に放り込む。バターの微かな甘みだけのシンプルな味で飽きが来ないようにしてある。おそらくアリスの焼いた物だろうと推測する。
「それで、なんであんたがアリスの焼いたクッキーを食べているの?」
クッキーを咀嚼し終えると霊夢は間髪入れずにそう訊く。紫は笑みを浮かべたまま霊夢の質問に答える。
「それは10月31日だからよ」
「だからそんなのわかってるって」「そう急かずに続きを聞きなさいな」
紫に呆れ顔でそういわれると霊夢は不満げな顔で顎をしゃくる。その動作を『話を続けろ』と言う意味に解釈した紫は話の続きを始めた。
「外の世界で10月31日はハロウィンというイベントが行われているの」
「はろうぃん?」
「そう、ハロウィン。元々はとある宗教の祭りだったのだけど、それが大衆に広がるにつれて別の形をとり始めたの。それは子供たちが西洋の妖怪の仮装をして、家々を回ってお菓子をもらうのよ。その時に言う言葉が」「トリックオアトリート?」「そういうこと。訳すと『お菓子くれなきゃ悪戯するぞ!』っていう意味よ」
「それはそれは……可愛らしい強盗ね」
そう言うと霊夢は肩をすくめた。もう少しまともな表現はできないかと笑みが若干引きつる紫をよそに、魔理沙の行動について納得する。
「霊夢、一人考え事をしている時に悪いのだけど」
「ん?」
紫を見るとどこかに指を向けている。その先には火に掛けていたヤカンが沸騰して中身がひっくり返りそうになっていた。慌ててヤカンを火から話しながら、紫にハロウィンのことを教えてくれたことに対しての礼と茶を飲んでいくかと訊く。「先ほどアリス宅で飲んだから気持ちだけ受け取っておく」と言うと紫は霊夢に別れを告げてスキマヘ消えていった。
おそらく明日からの冬眠に備えるのだろうと判断した霊夢は、新しい茶葉を入れた急須に熱湯を注ぎ、大妖精が待っている縁側へと歩いていった。
霊夢が急須を持って縁側に戻ると、大妖精は小さな体を丸めて寝ていた。霊夢が近づいても反応がないことから、熟睡していることがわかる。
「ふむ……」
とりあえず持っている急須を置いてよく寝ていることを確認した霊夢は、毛布を押入れから引っ張り出して掛けてやる。まだ寒さも本格的ではないが、基本薄着の妖精なら風邪を引くかもしれないと思ったからだ。
それから霊夢は大妖精の横に座ると、湯飲みの中に残っている冷めた茶を庭に撒くと淹れたての茶を湯飲みの中に入れる。一口それを口に含むと湯飲みをそばに置いて何気無しに若草色の髪を手で梳く。日光で温まった髪は、その細さとさらさらとした触り心地も相まって霊夢の指先に心地よい感触を伝えた。しばらくその体勢のまま髪を撫でていた霊夢だが、この体勢では撫で辛い事に気がついた。
そこで霊夢は正座を少し崩す。それから寝ている大妖精が起きないように静かに頭を浮かせて太ももに載せる。いわゆる膝枕だ。こうすれば無理のない体勢で髪を撫でられると考えたのだ。因みに他人に見られたら確実に誤解されることに霊夢は気づいていなかった。
熱かった茶が程よく温くなるころに大妖精は目を覚ますと微かな違和感を覚えた。頭をおいていたところは床で硬いはずなのに、やわらかい。頭を少し動かして周囲を見渡すとすぐに赤い巫女装束が目には飛び込んできたところで、大妖精は霊夢に膝枕されていることに気がついた。
「霊夢さん、なんで私は膝枕されているのでしょう?」
「ん~? それはね、私があなたの髪を触りたいからよ。
霊夢はそう言いながら髪を梳き続ける。大妖精も寝起きの所為か柔らかい日差しのせいか分からないが、特に抵抗する気も起きずに霊夢にされるがままだった。
「そういえばトリックオアトリートの意味が分かったわよ」
「え? 結局なんだったんですか?」
しばらくして霊夢がそう切り出すと大妖精は興味をそそられたのか食いついてくる。その様子を見て霊夢はクスリと小さく笑い、言葉を続ける。
「『お菓子くれなきゃ悪戯するぞ』って意味なんだって。外の世界ではそう言って家々を練り歩くんだって」
「へぇ~、そんな行事があるんですか。それでもしお菓子がなかったら悪戯されちゃうんでしょうか」
「そうかもね」
そう言いながら霊夢の頭の中ではとある考えが浮上していた。そしてそれを実行しようと霊夢はできるだけ優しげな声で大妖精に語りかける。
「ねぇ大ちゃん?」
「なんです?」
大妖精が返事をすると霊夢は大妖精の体を抱えて膝の上に座らせる。それから自分の腕を大妖精の脇の下に通して後ろから抱きつくような体勢になる。
そして耳元でくすぐる様な声で話し続ける。
「トリックオアトリート」
大妖精は突然そう言われて混乱した。それはそうだろう。誰だって突然抱きしめられてお菓子を請求されれば困惑する。
そんな大妖精を無視して霊夢は囁き続ける。
「大ちゃんお菓子くれないの?」
「ぅ、ぁっぉ、お菓子なんて持っていませんよぉ……」
「そうなの? だったら悪戯しちゃおっかなぁ~」
笑いながら霊夢は自分のテンションがおかしいことに気がついた。が、そのまま振り切ってしまえと大妖精の頬に顔を近づけて舐める。
「ひゃぁああ!」
驚いた大妖精は声を上げる。ちなみにこれが見られた場合、確実に社会的抹殺は間違いないだろう。霊夢は楽しそうに笑みを浮かべると腕に力を入れて大妖精を抱きしめる。大妖精は混乱したままだ。あうあうと言い続ける大妖精を抱えて寝転んだ。
「れ、霊夢さん」
「ん~、なぁに?」
「い、悪戯って私のほっぺた舐めることですか……」
「うぅん、それはついでよ。このまま寝ちゃおっかなって思って」
「え、じゃあなんで私を抱えたままなんです……?」
大妖精は困惑した声で霊夢にそう訊く。それに対して霊夢は飄々と受け答える。
「抱き枕になってもらおうかなって。それが私の悪戯」
「えぇ……」
そう言うが早いか霊夢はすでに目を閉じかけていた。大妖精の体温と日差しの暖かさもあり眠りに誘われるのは早かった。
霊夢がすでに寝息を立て始めたことに気がつくと大妖精は何を言っても無駄だと判断した。別に瞬間移動で抜け出してもいいのだが霊夢の寝顔を見るとそんな気も失せることに気がついた。何故自分は抜け出そうと思わないのか大妖精は不思議だった。しかし何故なのか考える気力も沸かず、霊夢と一緒に眠りについた。
「ほんとごめんね。ちょっと調子に乗っちゃって」
「いえ、晩御飯を出していただいて、こちらこそありがとうございます」
「それはお詫びよ」
二人とも夕方までぐっすりと寝込んでしまい、目が覚めたらもう日も落ちていた。帰ろうとする大妖精を「夜道は危ないから」と説得し、大妖精は博麗神社に泊まることになった。
二人は同じ部屋で布団に包まっていた。本来霊夢は一人で寝ているため自室で寝ようと思っていたのだが、大妖精の強い希望で一緒に寝ることになったのだ。
灯りを消して大妖精の横に寝転ぶ。
「今日はほんとありがとうございます。お風呂まで借りちゃって」
「あ~、いいのよ。元はといえば私が悪いしね」
霊夢は苦笑しながらそう言うと大妖精はクスリと笑った。
「それにしてもお昼あんなに寝ちゃいましたけど、眠れるんでしょうか?」
「じゃあ眠くなるまでお話しようか」
「そうですね。では、霊夢さんひとつお聞きしたいのですが」
「ん、なに?」
「Trick or Treat?」
「え?」
大妖精にそう言われて霊夢は呆気にとられた。そんな霊夢を放って大妖精は楽しげな声で霊夢に言葉をかける。
「お返事がないってことは、お菓子はないみたいですね」
「……大ちゃん、お菓子が食べたいならとってくるけど」
「それはダメですよ霊夢さん。私は霊夢さんに『イタズラ』したいんですよ」
「はぁ……でもイタズラってなにするの?」
「それはですねぇ……霊夢さんを食べちゃおうと思います!」
「へっ?」
そう言うと大妖精は霊夢の体に覆いかぶさってきた。目の前に迫った大妖精の顔に霊夢は驚いて引き止めるチャンスを失う。そんな霊夢を大妖精は楽しそうな顔で見ると、
「いただきます♪」
「はい?」
「10月31日ってなんかあったっけ?」
10月31日の良く晴れた午後、霊夢と大妖精は縁側で並び茶を啜っていた。
「10月31日……んー、わからないです。なにかあったんですか?」
『魔理沙がね、朝突然来て、『とりっくおあとりーと』だったかな? 何回も繰り返し言うものだから何かの呪文? って聞き返したの。そしたら呆れたような顔をして帰っちゃってね……」
そう言って不思議そうに首をひねる霊夢。その様子を見ながら大妖精は「トリックオアトリート……トリックオアトリート……」と口の中で繰り返していた。
「あっ」
「どうしたの?」
「そういえばチルノちゃんも家でトリックオアトリートって言っていました。文さんに教えてもらったって」
「文に? するとイベントでもやっているのかしらね」
そう言うと霊夢は茶を啜った。冬を近く寒くなってきた所為か湯飲みの中身は冷めかかっていた。霊夢は眉を顰めると急須に新しい湯を補充しに炊事場へと向かった。
大妖精はやわらかく降り注ぐ日光に促されるように目を薄く閉じて後ろに倒れる。床は日光で暖められており、硬さに目を瞑れば十分に心地よいものだった。小さく欠伸をして背中を丸め、膝を抱えると意識をゆっくりと手放していった。
「トリックオアトリートって結局なんなんのかしら……」
「その答え、教えてあげましょうか?」
霊夢が水を入れたヤカンを火に掛けて待っている間、ずっと考えている疑問をぼそりと呟いた。その瞬間、よく知っている妖怪の声が話しかけてきた。八雲紫、幻想郷の管理者という重要なポジションを受け持っている妖怪だ。その紫が隙間に腰掛けて何故かクッキーが入っている袋を片手に持っている。袋はきちんと放送されていてプレゼントされた物だということが見て取れる。
「あら紫、もう冬眠したと思っていたんだけど?」
「今日はまだ10月30日。冬は11月からよ霊夢」
そう言うと紫は隙間から飛び降りた。霊夢は紫の持っている袋からクッキーを一枚摘み口に放り込む。バターの微かな甘みだけのシンプルな味で飽きが来ないようにしてある。おそらくアリスの焼いた物だろうと推測する。
「それで、なんであんたがアリスの焼いたクッキーを食べているの?」
クッキーを咀嚼し終えると霊夢は間髪入れずにそう訊く。紫は笑みを浮かべたまま霊夢の質問に答える。
「それは10月31日だからよ」
「だからそんなのわかってるって」「そう急かずに続きを聞きなさいな」
紫に呆れ顔でそういわれると霊夢は不満げな顔で顎をしゃくる。その動作を『話を続けろ』と言う意味に解釈した紫は話の続きを始めた。
「外の世界で10月31日はハロウィンというイベントが行われているの」
「はろうぃん?」
「そう、ハロウィン。元々はとある宗教の祭りだったのだけど、それが大衆に広がるにつれて別の形をとり始めたの。それは子供たちが西洋の妖怪の仮装をして、家々を回ってお菓子をもらうのよ。その時に言う言葉が」「トリックオアトリート?」「そういうこと。訳すと『お菓子くれなきゃ悪戯するぞ!』っていう意味よ」
「それはそれは……可愛らしい強盗ね」
そう言うと霊夢は肩をすくめた。もう少しまともな表現はできないかと笑みが若干引きつる紫をよそに、魔理沙の行動について納得する。
「霊夢、一人考え事をしている時に悪いのだけど」
「ん?」
紫を見るとどこかに指を向けている。その先には火に掛けていたヤカンが沸騰して中身がひっくり返りそうになっていた。慌ててヤカンを火から話しながら、紫にハロウィンのことを教えてくれたことに対しての礼と茶を飲んでいくかと訊く。「先ほどアリス宅で飲んだから気持ちだけ受け取っておく」と言うと紫は霊夢に別れを告げてスキマヘ消えていった。
おそらく明日からの冬眠に備えるのだろうと判断した霊夢は、新しい茶葉を入れた急須に熱湯を注ぎ、大妖精が待っている縁側へと歩いていった。
霊夢が急須を持って縁側に戻ると、大妖精は小さな体を丸めて寝ていた。霊夢が近づいても反応がないことから、熟睡していることがわかる。
「ふむ……」
とりあえず持っている急須を置いてよく寝ていることを確認した霊夢は、毛布を押入れから引っ張り出して掛けてやる。まだ寒さも本格的ではないが、基本薄着の妖精なら風邪を引くかもしれないと思ったからだ。
それから霊夢は大妖精の横に座ると、湯飲みの中に残っている冷めた茶を庭に撒くと淹れたての茶を湯飲みの中に入れる。一口それを口に含むと湯飲みをそばに置いて何気無しに若草色の髪を手で梳く。日光で温まった髪は、その細さとさらさらとした触り心地も相まって霊夢の指先に心地よい感触を伝えた。しばらくその体勢のまま髪を撫でていた霊夢だが、この体勢では撫で辛い事に気がついた。
そこで霊夢は正座を少し崩す。それから寝ている大妖精が起きないように静かに頭を浮かせて太ももに載せる。いわゆる膝枕だ。こうすれば無理のない体勢で髪を撫でられると考えたのだ。因みに他人に見られたら確実に誤解されることに霊夢は気づいていなかった。
熱かった茶が程よく温くなるころに大妖精は目を覚ますと微かな違和感を覚えた。頭をおいていたところは床で硬いはずなのに、やわらかい。頭を少し動かして周囲を見渡すとすぐに赤い巫女装束が目には飛び込んできたところで、大妖精は霊夢に膝枕されていることに気がついた。
「霊夢さん、なんで私は膝枕されているのでしょう?」
「ん~? それはね、私があなたの髪を触りたいからよ。
霊夢はそう言いながら髪を梳き続ける。大妖精も寝起きの所為か柔らかい日差しのせいか分からないが、特に抵抗する気も起きずに霊夢にされるがままだった。
「そういえばトリックオアトリートの意味が分かったわよ」
「え? 結局なんだったんですか?」
しばらくして霊夢がそう切り出すと大妖精は興味をそそられたのか食いついてくる。その様子を見て霊夢はクスリと小さく笑い、言葉を続ける。
「『お菓子くれなきゃ悪戯するぞ』って意味なんだって。外の世界ではそう言って家々を練り歩くんだって」
「へぇ~、そんな行事があるんですか。それでもしお菓子がなかったら悪戯されちゃうんでしょうか」
「そうかもね」
そう言いながら霊夢の頭の中ではとある考えが浮上していた。そしてそれを実行しようと霊夢はできるだけ優しげな声で大妖精に語りかける。
「ねぇ大ちゃん?」
「なんです?」
大妖精が返事をすると霊夢は大妖精の体を抱えて膝の上に座らせる。それから自分の腕を大妖精の脇の下に通して後ろから抱きつくような体勢になる。
そして耳元でくすぐる様な声で話し続ける。
「トリックオアトリート」
大妖精は突然そう言われて混乱した。それはそうだろう。誰だって突然抱きしめられてお菓子を請求されれば困惑する。
そんな大妖精を無視して霊夢は囁き続ける。
「大ちゃんお菓子くれないの?」
「ぅ、ぁっぉ、お菓子なんて持っていませんよぉ……」
「そうなの? だったら悪戯しちゃおっかなぁ~」
笑いながら霊夢は自分のテンションがおかしいことに気がついた。が、そのまま振り切ってしまえと大妖精の頬に顔を近づけて舐める。
「ひゃぁああ!」
驚いた大妖精は声を上げる。ちなみにこれが見られた場合、確実に社会的抹殺は間違いないだろう。霊夢は楽しそうに笑みを浮かべると腕に力を入れて大妖精を抱きしめる。大妖精は混乱したままだ。あうあうと言い続ける大妖精を抱えて寝転んだ。
「れ、霊夢さん」
「ん~、なぁに?」
「い、悪戯って私のほっぺた舐めることですか……」
「うぅん、それはついでよ。このまま寝ちゃおっかなって思って」
「え、じゃあなんで私を抱えたままなんです……?」
大妖精は困惑した声で霊夢にそう訊く。それに対して霊夢は飄々と受け答える。
「抱き枕になってもらおうかなって。それが私の悪戯」
「えぇ……」
そう言うが早いか霊夢はすでに目を閉じかけていた。大妖精の体温と日差しの暖かさもあり眠りに誘われるのは早かった。
霊夢がすでに寝息を立て始めたことに気がつくと大妖精は何を言っても無駄だと判断した。別に瞬間移動で抜け出してもいいのだが霊夢の寝顔を見るとそんな気も失せることに気がついた。何故自分は抜け出そうと思わないのか大妖精は不思議だった。しかし何故なのか考える気力も沸かず、霊夢と一緒に眠りについた。
「ほんとごめんね。ちょっと調子に乗っちゃって」
「いえ、晩御飯を出していただいて、こちらこそありがとうございます」
「それはお詫びよ」
二人とも夕方までぐっすりと寝込んでしまい、目が覚めたらもう日も落ちていた。帰ろうとする大妖精を「夜道は危ないから」と説得し、大妖精は博麗神社に泊まることになった。
二人は同じ部屋で布団に包まっていた。本来霊夢は一人で寝ているため自室で寝ようと思っていたのだが、大妖精の強い希望で一緒に寝ることになったのだ。
灯りを消して大妖精の横に寝転ぶ。
「今日はほんとありがとうございます。お風呂まで借りちゃって」
「あ~、いいのよ。元はといえば私が悪いしね」
霊夢は苦笑しながらそう言うと大妖精はクスリと笑った。
「それにしてもお昼あんなに寝ちゃいましたけど、眠れるんでしょうか?」
「じゃあ眠くなるまでお話しようか」
「そうですね。では、霊夢さんひとつお聞きしたいのですが」
「ん、なに?」
「Trick or Treat?」
「え?」
大妖精にそう言われて霊夢は呆気にとられた。そんな霊夢を放って大妖精は楽しげな声で霊夢に言葉をかける。
「お返事がないってことは、お菓子はないみたいですね」
「……大ちゃん、お菓子が食べたいならとってくるけど」
「それはダメですよ霊夢さん。私は霊夢さんに『イタズラ』したいんですよ」
「はぁ……でもイタズラってなにするの?」
「それはですねぇ……霊夢さんを食べちゃおうと思います!」
「へっ?」
そう言うと大妖精は霊夢の体に覆いかぶさってきた。目の前に迫った大妖精の顔に霊夢は驚いて引き止めるチャンスを失う。そんな霊夢を大妖精は楽しそうな顔で見ると、
「いただきます♪」
神を触りたい→髪を触りたい、やね
こういうディープなのは嫌いじゃないので、頑張ってください
話も分かりやすいし二次創作としても逸脱していない、ありふれた普通のSSだと思います。大ちゃんの髪触りたい。
内容は全体的にのんびりとしていて面白かったです。
あと、大ちゃんの髪触りたい
書式の洗練、今後に期待です。霊夢ちゃんぺろぺろ