「あら、また来たの?」
リリカがこいしを連れてってから一週間ほどたった頃、あの時のように、青空の晴れ渡る昼下がりに、またまたリリカがやってきた。
「一週間ぶりー」
力なく飛んできたリリカは、霊夢に言われる前に縁側に腰掛ける。
「あら、元気ないじゃない?」
「あーやっぱりわかる? 疲れちゃってさ」
疲労の色が見えるくらいの顔を浮かべるリリカ。姉に負けないくらいに元気が見えない。霊夢は溜息をつくと、リリカのために、お茶と甘い饅頭を用意した。
「どうしたの?」
「もう、こいしちゃんが言うこと聞かなくて……」
「まぁ、そうでしょうね」
ずずずとお茶をすする霊夢。
「今日も行方知らずで。本当にもうー!」
大きな声で叫ぶも、虚しく青い空に響くだけ。リリカはがっくしと肩を落とす。
「練習には来ないし、来ても遊んでばっか。練習したかと思うと、すぐどこかに行っちゃうし。そのくせ、弾幕勝負すごい強い」
「まぁ、あの子は風来坊だから」
霊夢の言葉に頷くリリカ。ビックな才能に心躍らせて、何としてでも、一流のアーティストにしようと奮闘したものの、結果が虚しく。骨折り損のくたびれ儲け。効率主義のリリカにはあまりにも耐えがたい出来事であった。
「そういえば、魔理沙は?」
「今日は来てないわね。多分、この時間になっても来ないなら一日来ないわ」
「そっかー。共感覚について色々聞きたかったのになぁ」
口をだらしなく開けるリリカ。いつものキタテの良い雰囲気も感じられない。
「興味あるの?」
「もちろんだよ。あんな才能、あったらほしいわ。音楽に色だなんて、ただでさえ素敵な音楽がもっと素敵な音楽になるのよ?」
ベートーベンがカーマインレッド。ショパンはコバルトブルーとか言ってみたいわー。と、笑顔で話すリリカ。
「でも、不思議ね。人によって世界の見え方が変わるなんてさ。言われてみれば当たり前なんだけど。でも、人それぞれに世界があって、音楽の感じ方も違う。なんだか、それってとっても素敵じゃない?」
「そうね」
「いつか、私たちとは違う感じ方――それこそ、色で見える人たちにとって美しいといえる音楽を作ってみたいなぁ」
きれいな色の旋律。鮮やかなメロディ。耳ではなく目で楽しむ音楽。まだまだ、音楽の可能性は深い。リリカはそう思わずにはいられなかった。
「霊夢は、共感覚は欲しくないの?」
「んー」
リリカの言葉に、霊夢は空を見上げる。
「ゴチャゴチャするから、遠慮しとくわ」
霊夢の視界に広がる青い空。雲一つない、透き通った、目の覚めるような青。その奥に、広がる紫の世界。そこに刻まれた、いくつもの色で描かれた、文字、記号、数字。それが組み合わさり、規則正しく羅列され、形作る。空に浮かむ八雲の公式。
今日の博麗大結界は、ほころびのない美しい姿であった。
こいしの共感覚も解説が結構納得いきました。
絵が無くともそんな感じがする
しかしオチが弱かった気もする
でも綺麗
話のシメも良かったです
最初に書きたい題材があって、そこから作られた作品ではないかなと思いましたが、
登場人物や物語の展開に引っかかるところもなく自然に読むことができました。
初投稿とはうごご
リリカがこいしの能力に惚れ込んでから、
育成が上手くいかずにがっかりするまでの心理描写がとても鮮明で
可愛らしかったです。