「いだっ!」
頭部に走る激痛で美鈴は目を覚ました。美鈴の額には銀のナイフが深々と刺さっている。
「咲夜さん!酷いじゃないですか毎度毎度」
「それがあんたに一番効くカフェインよ」
咲夜は呆れ顏でため息を吐いた。
「まったく、お嬢様がこんな時によく居眠りできるわね...」
「あれって本当に風邪ですかねぇ」
美鈴は額のナイフを抜きながら答えた。
現在、紅魔館の主レミリアは風邪で寝込んでいる。風邪と言っても、レミリアの自称"風邪"であるが。
「これはただの風邪よ、医者を呼ぶ必要も無いわ」
レミリアは布団の中から従者や見舞い客に向かって言った。
「しばらく寝てたら治るわ」
そう言ってレミリアは目を閉じる。他の連中はただ黙って布団の中の彼女に心配そうな目を向けていた。
「おねえさまああああああああ!!!」
フランが沈黙を破り部屋に飛び込んで来る。そのままベッドに勢いよくダイブして姉に抱きついた。
「ぐえっ!」
「妹様!そんな勢いよく飛びついたらお嬢様のお身体に負担が...」
周りの従者達はフランの大胆な行動を見て慌てだした。
「お姉様!死んじゃいやよ!」
「大丈夫よ、ただの風邪だから。すぐに治るわ」
「本当に!?じゃあ、それまでフランが看病してあげるね!」
「フフフ、ありがと」
レミリアは自分にしがみつく妹の頭を優しく撫でた。
その頃、紅魔館の門前で美鈴は咲夜のナイフを見つめていた。
「何よ、そのナイフがどうかした?」
「うーん...ねえ咲夜さん、もしも私が人間だったとしても、このナイフを私に投げてました?」
そう問われた咲夜は鼻で笑った。
「まさか、そんなことしたら死んじゃうじゃない」
「...ですよね」
「何が言いたいのよ?」
美鈴は眉に皺を寄せながら言った。
「ナイフが刺さっても死なない妖怪が、はたして風邪で倒れるでしょうか?」
美鈴の言葉に咲夜も考え込む。
「ただの風邪じゃないってこと?」
「そうです。なんだか嫌な予感がします」
二人は門の前から、主人の部屋の窓を見つめた。
「大事にならなければいいけど...」
しかし、美鈴の嫌な予感は的中してしまう。
レミリアはそれから一週間経っても治らなかった。力無く寝込むレミリアの隣で、フランは毎日看病していた。
「妹様、看病なら私が...」
咲夜はおしぼりを取り替えているフランにそう声をかける。
「ダメ!私が看病するの!お姉様と約束したから...治るまで看病してあげるって、約束したから...」
「妹様...」
その時、部屋がノックされた。
レミリアが入るように声をかけると、永琳が弟子を連れて入って来た。
「診察に参りました」
「誰よ呼んだのは...医者は呼ばなくてもいいと言ったのに」
「申し訳ありません、私です」
咲夜が頭を下げて謝罪する。
「一週間もこの調子ですって?咲夜が心配するのも無理は無いわ」
永琳が診療器具を出しながらそう言った。
咲夜は主人を永琳に任せ、一礼して部屋から退出した。
そのまま門の方を見周りに行く。すると、咲夜の予想通り美鈴が居眠りをしていた。
「ぎゃ!」
咲夜のナイフが飛び、悲鳴と共に美鈴が飛び起きる。
「あんたねえ、ちゃんと見張ってなさい。また魔理沙が侵入するかもしれないんだから」
「すいません〜」
美鈴が情けない返事を返す。
「はぁ、この前だってあの魔女に館中の温度計盗まれて大変だったんだから...」
「はぁ〜い。あ、そうだお嬢様の調子はどうですか?」
「いま永琳に診てもらっているわ」
「まだ妹様は看病続けてるんですか?」
「ええ、私がやると言っても譲ってくれないのよ。よほどお嬢様の事が心配なのね」
そう言うと、咲夜は美鈴の顔をジロリと見てため息を吐いた。
「あなたもあれくらい熱心に働いてくれればねぇ...」
「ひどいなぁ、あのですね、私が居眠りしちゃうのは寂しいからなんですよ!」
「寂しいのと居眠りが関係あるの?」
「ありますよ!いいですか?私が居眠りするとですね、こうして咲夜さんが起こしに来てくれる。だから寂しさが紛れるわけです!」
美鈴の額に咲夜デコピンが炸裂した。
「いだっ!」
「あんたそれってわざと寝てるって事じゃない!」
「ほらぁ、子供が寂しくてかまって欲しくて、わざとイタズラしちゃうって言うアレですよ!」
今度は鉄拳が飛んだ。
「だったらいい加減大人になりなさい」
頭のタンコブを撫でる美鈴にそう言い放って咲夜は去って行った。
永琳の診断結果を簡単にまとめれば、"わからない"であった。どれだけ詳しく診断しても、レミリアの身体に目立った異常は無かった。ただ本人だけが、身体に力が入らないと言ってグッタリと寝こんでいる。
永琳も流石にお手上げ状態であった。
そして、そのままレミリアの症状は回復する事無く、発病から一カ月が経過した。
フランはそれでも一日も欠かさず姉のレミリアに付き添っていた。
咲夜は何度も止めたが、看病の役割を譲ることは無かった。
「お姉様、今夜も一緒に寝ましょうね」
「毎晩悪いわねフラン」
「お姉様のためだもん。平気よ」
レミリアは隣で横になっているフランを抱きしめた。
「ごめんなさい...」
「どうしたのお姉様?」
「思えばずっとあなたに寂しい思いをさせてしまっていた...」
レミリアの突然の謝罪にフランは戸惑った。
「霊夢と知り合ってから、よく神社に行くようになったわ。その度にあなたを館でお留守番させて、全然かまってあげられなかった...」
「お姉様、そんな事言わないで、私は気にしてないんだから...」
突然ノックもなく扉が開かれた。
ベッドの姉妹は驚いて飛び起きる。
「うわあああああ!今日も疲れたなああああああ」
そう言いながら部屋に侵入して来たのは美鈴だった。
「め、美鈴!なんなの急に!」
「あれ?お嬢様...あ」
美鈴は大袈裟に驚いたアクションを取った。
「うわあ!すいません!部屋間違えました〜!」
「ちょっと!お姉様の前よ!しずかにして!」
フランが怒りの表情で美鈴を叱りつける。
「申し訳ありません〜...すぐ退散しまーす」
美鈴は急いで部屋から出て行った。フランがため息を吐いた瞬間、再びドアが開かれた。
「あ、そうだそうだお嬢様」
「ちょっとノックくらいしてよ!」
開いたドアからヒョコッと出てきた美鈴を、フランがまた叱った。
「失礼しました、お嬢様、ちょっとお願いが...」
「何よ...」
「えっと〜、お嬢様のオシッコ貰えます?」
フランが飛び上がった。
「ちょ!ちょっと何言ってんの!美鈴ったら変態になったの!?」
「いやいや、勘違いしないで下さい、尿検査ですよ〜。お嬢様の病気を調べるために永琳さんの所に送るんです〜」
そう言いながら美鈴は検尿用の紙コップを取り出し、テーブルに置いた。
「ここ置いときますね〜明日朝に出たやつをお願いしまーす」
美鈴は笑顔で手を振りながら去って行った。
扉が閉められると、二人の姉妹はやれやれと言った様子で再び布団に潜った。
一方、部屋から去った美鈴の方は廊下を歩きながら考え事にふけっていた。
突然、美鈴の耳が強く引っ張られた。
「いでででででで!」
美鈴が痛む耳の方向を見ると咲夜が睨んでいた。
「な、なんですか急に!」
「あんたこんな時間にお嬢様の部屋で何してたの?」
咲夜は睨んだ顔のまま腰に手を当てて仁王立ちになる。
「いやいや、検尿コップをお渡しにですね...」
美鈴の額にナイフが刺さった。
「ぎゃあ!」
「こんな遅くに迷惑でしょう!」
「はいぃ〜すいません」
美鈴は額のナイフを抜くと、咲夜に返そうとした。
「ちゃんと気をつけな...ん?」
説教しようとした咲夜は、美鈴の異変に気付き言葉を止めた。
美鈴は自分が持っているナイフを我を忘れたかのように凝視していた。
「ナイフ...銀のナイフ...銀...」
美鈴はナイフを見つめたままブツブツと独り言を呟いている。
「ちょっと!どうしたのよ!」
咲夜が美鈴の肩を掴むと、はっと顔を上げて美鈴が叫んだ。
「咲夜さん!このナイフなんで銀なんですか!?」
突然の反応に驚きながら咲夜は答えた。
「え、なんで突然?」
「銀は吸血鬼の弱点ですよ!そんなもの所持してたらお嬢様に怒られるでしょう?」
「あら、知らないの?お嬢様に銀は効かないわよ」
美鈴は目を大きく開いて、咲夜にグイッと顔を近づけた。
「それ、どこからの情報です?」
「お嬢様本人がそう仰ったのよ」
それを聞くと、美鈴は目を輝かせて咲夜の手を握った。咲夜は意味がわからずポカンとしている。
「咲夜さん!お手柄です」
美鈴が咲夜のナイフを掲げてみせる。
「やはりお嬢様の病気はただの病気ではありませんでした。何者かによって毒を盛られたのです。そして、この銀のナイフがその犯人を特定してくれました」
翌日、美鈴は永琳の元を訪れて尿検査の結果を受け取った。レミリアに使われた毒が何なのか知っていた美鈴にとって、検査結果は予想通りのものだった。
美鈴は紅魔館に帰ると、その足でおレミリアの元へ向かった。部屋では、いつものようにフランが看病をしていた。レミリア本人はベッドで寝息を立てている。
「あー...妹様、ちょっとお話しよろしいですか〜。場所を移して貰えれば助かります」
フランは不満そうな顔で言った。
「やだよ、今はお姉様の看病をしているんだから」
「そのお嬢様の病気を治す方法が見つかったんですよ」
「ほ、本当に?」
「はい、これは妹様にしか頼めないことなんで、どうかお願いします」
「しょうがないなぁ」
咲夜を呼び看病を任せると、フランと美鈴は部屋を後にした。向かったのは美鈴の部屋だ。
部屋に入るなりフランは言った。
「さあ教えて!お姉様を治す方法」
「あー...それなんですが〜あ、そうだ!そういえば妹様、お嬢様とずいぶん仲良くやってるみたいじゃないですか〜昨日なんか一緒のベッドで寝ちゃったりして〜」
「今はそんな話じゃないでしょ!ねえ!教えてよ!」
フランが怒って叫んだ。
美鈴は少し黙った後、口を開いた。
「あのですね〜お嬢様は誰かに毒を飲まされたんです。それであんな状態に...」
フランが驚いて目を丸くする。
「だ、誰よ、そんな事したのは...」
美鈴はフランの方に手を差し出しながら、言った。
「あなたですね、妹様」
「は?」
美鈴の言葉を聞いた途端、フランから怒気が発せられた。彼女の目は紅く光り、怒りの表情で美鈴を睨みつける。いつ美鈴に襲いかかってもおかしく無い状態だった。
「どういう意味よ!私がそんな事する訳...」
「えー...今日お嬢様の尿検査をして貰いました」
怒るフランを前にしても美鈴は落ち着いた雰囲気で語り出す。
「結果、お嬢様の身体には水銀が大量に蓄積されている事が分かりました。お嬢様が飲まされた毒の正体は水銀です」
「だから何でそれをやったのが私なの!根拠も無いのに!」
「普通の人間が水銀を飲んだりしたら中毒で大変な事になりますが、吸血鬼の肉体ならば水銀中毒にはならないでしょう。しかし、別の問題が発生します」
「私の質問に答えてよ!私はそんな事してない!」
フランは机を粉々に破壊した。
それでも美鈴は冷静に続ける。
「銀は吸血鬼の弱点です。その銀がお嬢様の身体に入り込んだんです。体調を崩して当然です。水銀は体内に吸収されるとなかなか排出されません。ですから長期間に渡りお嬢様はあんな状態に...これはウィルスなどでは無く、ただ吸血鬼特有の体質によって起こった病気です。だから永琳にも原因が分からなかった...」
「いい加減にしないと殺すよ!」
フランが殺気を放ちながら荒い息で怒鳴る。
「妹様、落ち着いてください。あなたがやったという根拠もちゃんとあるのです」
フランは美鈴に飛びかかろうとする衝動を抑え、聞いた。
「じゃあ見せてよ!嘘だったら美鈴を殺すからね!」
そう言われても美鈴は冷静な態度のまま、続けた。
「前に温度計が紅魔館中から消える事件がありました。咲夜さんは魔理沙を疑っていたようですが〜...本当は妹様が犯人ですね?目的は温度計に使われている水銀を集める事でしょう?」
「知らないよ温度計なんか!」
「えー...まあそれは重要では無いんです。妹様が水銀を使ったと確信させてくれた物がコレです」
美鈴は銀のナイフを取り出した。前もって咲夜から借りて来た物だ。
「ご存知だと思いますが咲夜さんのナイフです。銀製です。」
「それが何だと言うの?」
「おかしいですね〜、こんな物持ち歩いてお嬢様に近寄っても良いのでしょうか〜?銀が苦手な吸血鬼なら普通こんな事は許しません」
フランは苛立ち始めた。いくら聞いても美鈴の言いたい事が見えて来ないからだ。こんな話がこれ以上続くようならば美鈴の首を切り裂いてやろうと、フランは自分の腕に力を込めた。
フランから殺気を感じつつも、美鈴は続けた。
「これはですね、カムフラージュですよ。あえてそうする事で自分に銀が効かないと思い込ませる為です。お嬢様は銀が弱点なのに効かないフリをしていた。当然でしょう自分の弱点はなるべく知られたく無いものです」
殺気を放つフランに怯む事なく、美鈴はズンズンと彼女に歩み寄った。
「これがどういう事か分かりますか?妹様」
威圧しているにも関わらず逃げるどころか逆に迫ってくる美鈴に、フランの方が一瞬怯んでしまった。美鈴はもう彼女の目と鼻の先まで近づいている。
そして、フランは近づいて来た美鈴と目を合わせた。
フランを真っ直ぐ見つめる美鈴の目は確信に満ちていた。真実を導き出し、それを確信している目に違い無かった。
心の奥に入り込んでくるようなその視線を前にして、フランの戦意が揺らいだ。
もう何もかも見抜かれていると直感で伝わったのだ。
「犯人はお嬢様が秘密にしていたにも関わらず、銀が効くことを知っている人物です。妹様ならば弱点の事を知る事が出来たはずです。何故ならお嬢様と同じ体質を持っているからです」
フランは美鈴から目を反らし、ゆっくり俯いた。
「そしてさらに、お嬢様に毒入り料理を食べさせる事が可能なのはそれ程お嬢様に信頼されている人物。その条件で絞ると...妹様、あなたしか居ないのです」
フランは下を向いたまま黙っている。
しかし、フランがもう白旗をあげている事は美鈴に十分伝わっていた。
「寂しかったんですね?」
美鈴にそう問われ、フランは俯いたまま語り始めた。
「怖かったの。お姉様が誰かに取られてしまいそうで...紅魔館にはどんどん訪問者が増えて、お姉様自身もどこかに出かける日が多くなって...お姉様はどんどん私から離れていく、だから...」
そこまで言って、フランは顔をあげた。
「でも、私間違ったと思ってない!昨日ね、言ってくれたの!私に、寂しい思いさせて悪かったって!だから、これで正しかったの!このままずっとお姉様はベッドの中で、私がずっと側に居る。それがお姉様にとっても私とっても幸せなんだよ、きっと」
黙って聞いていた美鈴は眉間に皺を寄せた。
「あー...本当にそうなんでしょうかー...」
美鈴はそう呟くと苦笑いをした。
「実はですねー、お嬢様の病気はだいぶ前に回復しているんですよ。今も実はピンピンしています」
美鈴の言っている意味をフランは理解できず、首を傾げた。
「何言ってるの?だってお姉様はずっとベッドの中に」
「ええ、でもお嬢様の身体の水銀はもう無いんです。あ、さっき尿に反応があったと言うのは嘘です。妹様を白状させる為に言いました。本当は何の異常もありません」
「でも私は確かに水銀を...」
美鈴は苦笑いをしたまま説明を始めた。
「勘違いしているようですが水銀にも色々種類があります。温度計に使われているものは安全性の高いもので、体内に入ったとしても殆ど便と一緒に排出されます」
「でも、お姉様はずっと寝たきりだよ。もう一カ月も...」
「はい、ですからね...」
美鈴は少しためらう仕草をする。
「お嬢様のアレは仮病ですよ。妹様の為に演技をしているんです。永琳さんも解決できなかった本当の原因はこれです。」
美鈴の言葉に、フランは焦った。顔が青ざめて汗が吹き出る。
「これは完全に私の考えですが。お嬢様は水銀に気付いていたのだと思います。気付いたうえで飲んだんです。そして妹様に看病される中であなたの気持ちに気付き、お嬢様は反省されたのでしょう。自分のせいで妹がこんな行動に出たのだと自分を責めて、お嬢様は...」
フランは拳を強く握ったまま黙っている。
「妹様、お嬢様の病気を治せるのは妹様しか居ないのです。お嬢様に、今までのことを全て告白して頂ければ、きっとお嬢様は元に戻ります。これが、お嬢様を治す方法です」
フランは再び下を向き考え込んだ。美鈴はこれ以上は何も言わずにその姿を見つめている。
部屋の中に数分間の沈黙が続いた。
そして、フランは何も答えないまま美鈴に背を向けゆっくり歩き始めた。
「何処へ行かれるのですか?」
美鈴の問いに、フランは振り向かずに答えた。
「決まってる。私はお姉様を看病するって、約束したんだから」
そう言って去っていくフランの背に、美鈴は深々とお辞儀をした。
「行ってらっしゃいませ」
頭部に走る激痛で美鈴は目を覚ました。美鈴の額には銀のナイフが深々と刺さっている。
「咲夜さん!酷いじゃないですか毎度毎度」
「それがあんたに一番効くカフェインよ」
咲夜は呆れ顏でため息を吐いた。
「まったく、お嬢様がこんな時によく居眠りできるわね...」
「あれって本当に風邪ですかねぇ」
美鈴は額のナイフを抜きながら答えた。
現在、紅魔館の主レミリアは風邪で寝込んでいる。風邪と言っても、レミリアの自称"風邪"であるが。
「これはただの風邪よ、医者を呼ぶ必要も無いわ」
レミリアは布団の中から従者や見舞い客に向かって言った。
「しばらく寝てたら治るわ」
そう言ってレミリアは目を閉じる。他の連中はただ黙って布団の中の彼女に心配そうな目を向けていた。
「おねえさまああああああああ!!!」
フランが沈黙を破り部屋に飛び込んで来る。そのままベッドに勢いよくダイブして姉に抱きついた。
「ぐえっ!」
「妹様!そんな勢いよく飛びついたらお嬢様のお身体に負担が...」
周りの従者達はフランの大胆な行動を見て慌てだした。
「お姉様!死んじゃいやよ!」
「大丈夫よ、ただの風邪だから。すぐに治るわ」
「本当に!?じゃあ、それまでフランが看病してあげるね!」
「フフフ、ありがと」
レミリアは自分にしがみつく妹の頭を優しく撫でた。
その頃、紅魔館の門前で美鈴は咲夜のナイフを見つめていた。
「何よ、そのナイフがどうかした?」
「うーん...ねえ咲夜さん、もしも私が人間だったとしても、このナイフを私に投げてました?」
そう問われた咲夜は鼻で笑った。
「まさか、そんなことしたら死んじゃうじゃない」
「...ですよね」
「何が言いたいのよ?」
美鈴は眉に皺を寄せながら言った。
「ナイフが刺さっても死なない妖怪が、はたして風邪で倒れるでしょうか?」
美鈴の言葉に咲夜も考え込む。
「ただの風邪じゃないってこと?」
「そうです。なんだか嫌な予感がします」
二人は門の前から、主人の部屋の窓を見つめた。
「大事にならなければいいけど...」
しかし、美鈴の嫌な予感は的中してしまう。
レミリアはそれから一週間経っても治らなかった。力無く寝込むレミリアの隣で、フランは毎日看病していた。
「妹様、看病なら私が...」
咲夜はおしぼりを取り替えているフランにそう声をかける。
「ダメ!私が看病するの!お姉様と約束したから...治るまで看病してあげるって、約束したから...」
「妹様...」
その時、部屋がノックされた。
レミリアが入るように声をかけると、永琳が弟子を連れて入って来た。
「診察に参りました」
「誰よ呼んだのは...医者は呼ばなくてもいいと言ったのに」
「申し訳ありません、私です」
咲夜が頭を下げて謝罪する。
「一週間もこの調子ですって?咲夜が心配するのも無理は無いわ」
永琳が診療器具を出しながらそう言った。
咲夜は主人を永琳に任せ、一礼して部屋から退出した。
そのまま門の方を見周りに行く。すると、咲夜の予想通り美鈴が居眠りをしていた。
「ぎゃ!」
咲夜のナイフが飛び、悲鳴と共に美鈴が飛び起きる。
「あんたねえ、ちゃんと見張ってなさい。また魔理沙が侵入するかもしれないんだから」
「すいません〜」
美鈴が情けない返事を返す。
「はぁ、この前だってあの魔女に館中の温度計盗まれて大変だったんだから...」
「はぁ〜い。あ、そうだお嬢様の調子はどうですか?」
「いま永琳に診てもらっているわ」
「まだ妹様は看病続けてるんですか?」
「ええ、私がやると言っても譲ってくれないのよ。よほどお嬢様の事が心配なのね」
そう言うと、咲夜は美鈴の顔をジロリと見てため息を吐いた。
「あなたもあれくらい熱心に働いてくれればねぇ...」
「ひどいなぁ、あのですね、私が居眠りしちゃうのは寂しいからなんですよ!」
「寂しいのと居眠りが関係あるの?」
「ありますよ!いいですか?私が居眠りするとですね、こうして咲夜さんが起こしに来てくれる。だから寂しさが紛れるわけです!」
美鈴の額に咲夜デコピンが炸裂した。
「いだっ!」
「あんたそれってわざと寝てるって事じゃない!」
「ほらぁ、子供が寂しくてかまって欲しくて、わざとイタズラしちゃうって言うアレですよ!」
今度は鉄拳が飛んだ。
「だったらいい加減大人になりなさい」
頭のタンコブを撫でる美鈴にそう言い放って咲夜は去って行った。
永琳の診断結果を簡単にまとめれば、"わからない"であった。どれだけ詳しく診断しても、レミリアの身体に目立った異常は無かった。ただ本人だけが、身体に力が入らないと言ってグッタリと寝こんでいる。
永琳も流石にお手上げ状態であった。
そして、そのままレミリアの症状は回復する事無く、発病から一カ月が経過した。
フランはそれでも一日も欠かさず姉のレミリアに付き添っていた。
咲夜は何度も止めたが、看病の役割を譲ることは無かった。
「お姉様、今夜も一緒に寝ましょうね」
「毎晩悪いわねフラン」
「お姉様のためだもん。平気よ」
レミリアは隣で横になっているフランを抱きしめた。
「ごめんなさい...」
「どうしたのお姉様?」
「思えばずっとあなたに寂しい思いをさせてしまっていた...」
レミリアの突然の謝罪にフランは戸惑った。
「霊夢と知り合ってから、よく神社に行くようになったわ。その度にあなたを館でお留守番させて、全然かまってあげられなかった...」
「お姉様、そんな事言わないで、私は気にしてないんだから...」
突然ノックもなく扉が開かれた。
ベッドの姉妹は驚いて飛び起きる。
「うわあああああ!今日も疲れたなああああああ」
そう言いながら部屋に侵入して来たのは美鈴だった。
「め、美鈴!なんなの急に!」
「あれ?お嬢様...あ」
美鈴は大袈裟に驚いたアクションを取った。
「うわあ!すいません!部屋間違えました〜!」
「ちょっと!お姉様の前よ!しずかにして!」
フランが怒りの表情で美鈴を叱りつける。
「申し訳ありません〜...すぐ退散しまーす」
美鈴は急いで部屋から出て行った。フランがため息を吐いた瞬間、再びドアが開かれた。
「あ、そうだそうだお嬢様」
「ちょっとノックくらいしてよ!」
開いたドアからヒョコッと出てきた美鈴を、フランがまた叱った。
「失礼しました、お嬢様、ちょっとお願いが...」
「何よ...」
「えっと〜、お嬢様のオシッコ貰えます?」
フランが飛び上がった。
「ちょ!ちょっと何言ってんの!美鈴ったら変態になったの!?」
「いやいや、勘違いしないで下さい、尿検査ですよ〜。お嬢様の病気を調べるために永琳さんの所に送るんです〜」
そう言いながら美鈴は検尿用の紙コップを取り出し、テーブルに置いた。
「ここ置いときますね〜明日朝に出たやつをお願いしまーす」
美鈴は笑顔で手を振りながら去って行った。
扉が閉められると、二人の姉妹はやれやれと言った様子で再び布団に潜った。
一方、部屋から去った美鈴の方は廊下を歩きながら考え事にふけっていた。
突然、美鈴の耳が強く引っ張られた。
「いでででででで!」
美鈴が痛む耳の方向を見ると咲夜が睨んでいた。
「な、なんですか急に!」
「あんたこんな時間にお嬢様の部屋で何してたの?」
咲夜は睨んだ顔のまま腰に手を当てて仁王立ちになる。
「いやいや、検尿コップをお渡しにですね...」
美鈴の額にナイフが刺さった。
「ぎゃあ!」
「こんな遅くに迷惑でしょう!」
「はいぃ〜すいません」
美鈴は額のナイフを抜くと、咲夜に返そうとした。
「ちゃんと気をつけな...ん?」
説教しようとした咲夜は、美鈴の異変に気付き言葉を止めた。
美鈴は自分が持っているナイフを我を忘れたかのように凝視していた。
「ナイフ...銀のナイフ...銀...」
美鈴はナイフを見つめたままブツブツと独り言を呟いている。
「ちょっと!どうしたのよ!」
咲夜が美鈴の肩を掴むと、はっと顔を上げて美鈴が叫んだ。
「咲夜さん!このナイフなんで銀なんですか!?」
突然の反応に驚きながら咲夜は答えた。
「え、なんで突然?」
「銀は吸血鬼の弱点ですよ!そんなもの所持してたらお嬢様に怒られるでしょう?」
「あら、知らないの?お嬢様に銀は効かないわよ」
美鈴は目を大きく開いて、咲夜にグイッと顔を近づけた。
「それ、どこからの情報です?」
「お嬢様本人がそう仰ったのよ」
それを聞くと、美鈴は目を輝かせて咲夜の手を握った。咲夜は意味がわからずポカンとしている。
「咲夜さん!お手柄です」
美鈴が咲夜のナイフを掲げてみせる。
「やはりお嬢様の病気はただの病気ではありませんでした。何者かによって毒を盛られたのです。そして、この銀のナイフがその犯人を特定してくれました」
翌日、美鈴は永琳の元を訪れて尿検査の結果を受け取った。レミリアに使われた毒が何なのか知っていた美鈴にとって、検査結果は予想通りのものだった。
美鈴は紅魔館に帰ると、その足でおレミリアの元へ向かった。部屋では、いつものようにフランが看病をしていた。レミリア本人はベッドで寝息を立てている。
「あー...妹様、ちょっとお話しよろしいですか〜。場所を移して貰えれば助かります」
フランは不満そうな顔で言った。
「やだよ、今はお姉様の看病をしているんだから」
「そのお嬢様の病気を治す方法が見つかったんですよ」
「ほ、本当に?」
「はい、これは妹様にしか頼めないことなんで、どうかお願いします」
「しょうがないなぁ」
咲夜を呼び看病を任せると、フランと美鈴は部屋を後にした。向かったのは美鈴の部屋だ。
部屋に入るなりフランは言った。
「さあ教えて!お姉様を治す方法」
「あー...それなんですが〜あ、そうだ!そういえば妹様、お嬢様とずいぶん仲良くやってるみたいじゃないですか〜昨日なんか一緒のベッドで寝ちゃったりして〜」
「今はそんな話じゃないでしょ!ねえ!教えてよ!」
フランが怒って叫んだ。
美鈴は少し黙った後、口を開いた。
「あのですね〜お嬢様は誰かに毒を飲まされたんです。それであんな状態に...」
フランが驚いて目を丸くする。
「だ、誰よ、そんな事したのは...」
美鈴はフランの方に手を差し出しながら、言った。
「あなたですね、妹様」
「は?」
美鈴の言葉を聞いた途端、フランから怒気が発せられた。彼女の目は紅く光り、怒りの表情で美鈴を睨みつける。いつ美鈴に襲いかかってもおかしく無い状態だった。
「どういう意味よ!私がそんな事する訳...」
「えー...今日お嬢様の尿検査をして貰いました」
怒るフランを前にしても美鈴は落ち着いた雰囲気で語り出す。
「結果、お嬢様の身体には水銀が大量に蓄積されている事が分かりました。お嬢様が飲まされた毒の正体は水銀です」
「だから何でそれをやったのが私なの!根拠も無いのに!」
「普通の人間が水銀を飲んだりしたら中毒で大変な事になりますが、吸血鬼の肉体ならば水銀中毒にはならないでしょう。しかし、別の問題が発生します」
「私の質問に答えてよ!私はそんな事してない!」
フランは机を粉々に破壊した。
それでも美鈴は冷静に続ける。
「銀は吸血鬼の弱点です。その銀がお嬢様の身体に入り込んだんです。体調を崩して当然です。水銀は体内に吸収されるとなかなか排出されません。ですから長期間に渡りお嬢様はあんな状態に...これはウィルスなどでは無く、ただ吸血鬼特有の体質によって起こった病気です。だから永琳にも原因が分からなかった...」
「いい加減にしないと殺すよ!」
フランが殺気を放ちながら荒い息で怒鳴る。
「妹様、落ち着いてください。あなたがやったという根拠もちゃんとあるのです」
フランは美鈴に飛びかかろうとする衝動を抑え、聞いた。
「じゃあ見せてよ!嘘だったら美鈴を殺すからね!」
そう言われても美鈴は冷静な態度のまま、続けた。
「前に温度計が紅魔館中から消える事件がありました。咲夜さんは魔理沙を疑っていたようですが〜...本当は妹様が犯人ですね?目的は温度計に使われている水銀を集める事でしょう?」
「知らないよ温度計なんか!」
「えー...まあそれは重要では無いんです。妹様が水銀を使ったと確信させてくれた物がコレです」
美鈴は銀のナイフを取り出した。前もって咲夜から借りて来た物だ。
「ご存知だと思いますが咲夜さんのナイフです。銀製です。」
「それが何だと言うの?」
「おかしいですね〜、こんな物持ち歩いてお嬢様に近寄っても良いのでしょうか〜?銀が苦手な吸血鬼なら普通こんな事は許しません」
フランは苛立ち始めた。いくら聞いても美鈴の言いたい事が見えて来ないからだ。こんな話がこれ以上続くようならば美鈴の首を切り裂いてやろうと、フランは自分の腕に力を込めた。
フランから殺気を感じつつも、美鈴は続けた。
「これはですね、カムフラージュですよ。あえてそうする事で自分に銀が効かないと思い込ませる為です。お嬢様は銀が弱点なのに効かないフリをしていた。当然でしょう自分の弱点はなるべく知られたく無いものです」
殺気を放つフランに怯む事なく、美鈴はズンズンと彼女に歩み寄った。
「これがどういう事か分かりますか?妹様」
威圧しているにも関わらず逃げるどころか逆に迫ってくる美鈴に、フランの方が一瞬怯んでしまった。美鈴はもう彼女の目と鼻の先まで近づいている。
そして、フランは近づいて来た美鈴と目を合わせた。
フランを真っ直ぐ見つめる美鈴の目は確信に満ちていた。真実を導き出し、それを確信している目に違い無かった。
心の奥に入り込んでくるようなその視線を前にして、フランの戦意が揺らいだ。
もう何もかも見抜かれていると直感で伝わったのだ。
「犯人はお嬢様が秘密にしていたにも関わらず、銀が効くことを知っている人物です。妹様ならば弱点の事を知る事が出来たはずです。何故ならお嬢様と同じ体質を持っているからです」
フランは美鈴から目を反らし、ゆっくり俯いた。
「そしてさらに、お嬢様に毒入り料理を食べさせる事が可能なのはそれ程お嬢様に信頼されている人物。その条件で絞ると...妹様、あなたしか居ないのです」
フランは下を向いたまま黙っている。
しかし、フランがもう白旗をあげている事は美鈴に十分伝わっていた。
「寂しかったんですね?」
美鈴にそう問われ、フランは俯いたまま語り始めた。
「怖かったの。お姉様が誰かに取られてしまいそうで...紅魔館にはどんどん訪問者が増えて、お姉様自身もどこかに出かける日が多くなって...お姉様はどんどん私から離れていく、だから...」
そこまで言って、フランは顔をあげた。
「でも、私間違ったと思ってない!昨日ね、言ってくれたの!私に、寂しい思いさせて悪かったって!だから、これで正しかったの!このままずっとお姉様はベッドの中で、私がずっと側に居る。それがお姉様にとっても私とっても幸せなんだよ、きっと」
黙って聞いていた美鈴は眉間に皺を寄せた。
「あー...本当にそうなんでしょうかー...」
美鈴はそう呟くと苦笑いをした。
「実はですねー、お嬢様の病気はだいぶ前に回復しているんですよ。今も実はピンピンしています」
美鈴の言っている意味をフランは理解できず、首を傾げた。
「何言ってるの?だってお姉様はずっとベッドの中に」
「ええ、でもお嬢様の身体の水銀はもう無いんです。あ、さっき尿に反応があったと言うのは嘘です。妹様を白状させる為に言いました。本当は何の異常もありません」
「でも私は確かに水銀を...」
美鈴は苦笑いをしたまま説明を始めた。
「勘違いしているようですが水銀にも色々種類があります。温度計に使われているものは安全性の高いもので、体内に入ったとしても殆ど便と一緒に排出されます」
「でも、お姉様はずっと寝たきりだよ。もう一カ月も...」
「はい、ですからね...」
美鈴は少しためらう仕草をする。
「お嬢様のアレは仮病ですよ。妹様の為に演技をしているんです。永琳さんも解決できなかった本当の原因はこれです。」
美鈴の言葉に、フランは焦った。顔が青ざめて汗が吹き出る。
「これは完全に私の考えですが。お嬢様は水銀に気付いていたのだと思います。気付いたうえで飲んだんです。そして妹様に看病される中であなたの気持ちに気付き、お嬢様は反省されたのでしょう。自分のせいで妹がこんな行動に出たのだと自分を責めて、お嬢様は...」
フランは拳を強く握ったまま黙っている。
「妹様、お嬢様の病気を治せるのは妹様しか居ないのです。お嬢様に、今までのことを全て告白して頂ければ、きっとお嬢様は元に戻ります。これが、お嬢様を治す方法です」
フランは再び下を向き考え込んだ。美鈴はこれ以上は何も言わずにその姿を見つめている。
部屋の中に数分間の沈黙が続いた。
そして、フランは何も答えないまま美鈴に背を向けゆっくり歩き始めた。
「何処へ行かれるのですか?」
美鈴の問いに、フランは振り向かずに答えた。
「決まってる。私はお姉様を看病するって、約束したんだから」
そう言って去っていくフランの背に、美鈴は深々とお辞儀をした。
「行ってらっしゃいませ」
独り言:フランが毒を盛った動機は、美鈴が「寂しかったんですね?」と訊いているシーンで明らかにされていると思う。
カットしたシーンとして挙げられているものは、カットして正解だったんじゃないですかね。
というか入れる隙が無いように思われます。上二つは「美鈴が推理を披露して読者にネタばらしする」という形式である以上、普通は描かれないシーンでしょう。
また、三つ目のは「紅魔館内の事件でチルノが証人になりうるのか?」というのがネックです。
水銀と銀は元素からして全く別の物質なので、
「フランが水銀と銀を同一視して勘違いしていて、実は水銀は吸血鬼に無害でレミリアは一貫して仮病だった」
といった話の流れにすべきだったと思います。
独り言:こんな風に書いておけばコメにコメじゃないなんていうのは規約の本質を無視したただの戯言。
そんなフランやナイフ投げられる職場のため自分の命を張るめーりんも印象的だった
なので一緒に地獄に落ちようぜ
ただ、レミリアが隠してあり姉妹しか知らないはずの弱点を美鈴が始めから知っているのは推理モノとして情報の出しかたが突然すぎる気がします。
証拠ならありますよ……作者さんは後書きでシーンを削ったと言っています……これは読者を推理させるための情報を出す必要が無かったということを意味しています!
ていうかタイトルに答えまで書いてあるし!
ペロこれは水銀!AgとHgの違いはあるけどどっちも吸血鬼に効きそうな気がする!
美鈴が弱点を知っていたのはホラ、多分お嬢様にめっちゃ信頼されてるんだよ。
は?描写がない?同人誌のご都合主義って便利な言葉だよね!
娯楽小説として面白かったです
真の犯人は仮病使って妹とイチャイチャするお嬢様
やたら感が冴えてて扱いに文句言わず間を取り持つ美鈴すげぇ良い奴
(一方で米9さんみたいな被害者が嘘の証言をしているミステリーでも面白かったんじゃないかと思う)
大事なのはそこじゃないと思いますから
智勇仁ともに素晴らしいめいりんだと思います
完璧ですね
仁というものがどれほど難しいかって話ですね
愛や仁には相応の智と勇気がいるのですよ
他のあなたの作品をふまえて考えるに智と勇気が稚拙な仁など嘲笑すべき悪でしかないという冷たい皮肉にも思えます
少なくともこの作品のように愛すべき対象すら馬鹿だったり歪んだりするし
賢い善人ですら嘘をつくこともあるのですから
この話で一番のキモはナイフで折檻されたりする職場で
幼くかつ歪んでおそらくは逆上して命すら奪いかねない対象にここまでした仁ですかね
智も勇も複雑なら仁も相応に複雑になるみたいな
あと集団ストーカーはいけませんよ
めっですよ