「くそ・・・。」
「私の勝ちね。」
また負けた。あと少しだったのに。
「今日の当番は魔理沙でよろしく。」
特に苦労した様子もなく、紅白の服と頭の大きなリボンを揺らしながら平然と言ってのける。
最初は私が有利だったはずだった。
なのに、徐々にイニシアティブをとられ、避けるのに精一杯になっていった。
やがて一つの弾幕に気を取られ始め、別方向から弾が飛んできているのには気がつかなかった。
そして案の定、ピチューン、だ。
「今日もつかれたわね、本当に。」
うそつけ、息すら切らしていないくせに。
私が喋るのも苦になるほどの苦労を、いつもこいつは難なくこなす。
そう思ううちに、やがて自らの無様な姿が、みじめに感じてくるようになった。
埃だらけの服を、帽子を、バサバサと乱暴に振り払い、
「用事があるんだ、今日のところは見逃してくれ。」
逃げるようにその場を飛び去った。
――――――
本がうっそうと置かれた広大なこの空間、その中でただ一人、私は本を読み進める。
私はこの図書館の支配者。
全ての本たちは私に読まれるべくおとなしく棚の中で待機し、
私の手に触れるとその未知の扉を悦んで開くのだ。
カチコチと、最近道具屋から購入した大きな振り子時計が揺れる中、
ただただひたすら、
私は本を読み進める。
静寂の中、聞こえるのは時計が時を刻む一定のリズムの音と、私の息使い、そして……、
「パチュリー様!またあの白黒です!」
……時折訪れる喧騒である。
はあ……。
「何度も言ったはずよ、貴様に貸し出す本は無いと。」
「こんなにたくさんの宝があるんだ、一つぐらい無くたって変わりはないだろ?」
まるで録音されたレコードのように、いつものお決まりの言葉とともに白黒の鼠から繰り出されるのは、
その言葉使いに似合わぬクルクルキラキラと輝く星を模した弾。
その星はまるで本物と見間違うほどの光を放ち、
近くを通り過ぎる度にぽかぽかと、まるで恒星のようなぬくもりに包まれる。
……ま、ペンタグラムなんてものは、物語内における空想上の星の表現でしかないのだが。
ちなみにいつぞやの月の住民によると、この星は甘いらしい。
案外読書中に飲むコーヒーに入れるシュガー代わりになるかもしれない。
しかし、今日の星々には、いつものぽかぽかとした陽気を感じられない、
光もやや普段に比べて輝きが弱く感じる。
それに……、いつもは楽々と避ける私の弾幕にも、どこか反応が鈍く感じる。
まるで、なにかに気を取られているように。
そう考えると、私との勝負をどうでもいいことのようにとらえられているような気がして、
いささか気分が悪くなってきた。
魔理沙、貴様は魔法使いを志しているのだったわね。
いずれはその道の先輩になるかもしれない者との勝負を生半可な気持ちで受けるというのは、
「げ、しまった!」
感心しないわよ?
日符「ロイヤルフレア」
ピチューン……
――――――
いてて……、霊夢だけじゃなく、パチュリーにも遅れをとるなんてな……。
でも、私の実力ってのは、案外こんな物だったのかもしれないな。
みんな私が異変解決をする時や、数年に一度のお祭りの時は手加減をしているだけで、
本来の実力は、私の思っているよりもっと……。
「ねえ。」
よくよく考えてみれば、おかしい話だったんだ。
あんな天賦の才と謳われた霊夢が任されている異変解決のいくつかを、
ただの家出娘である私が解決していた時点で気付くべきだったのかもしれない。
「ねえってば。」
みんなきっと、なんの力も持たない子供が粋がっているのを陰で笑っているんだ。
無駄なのに、無謀なことを、と陰で憐れみながら見ているに違いない。
でもなければ……。
「霧雨魔理沙!」
そこまで思いを巡らせた時、突然聞こえた私を呼ぶ声に驚き、はっと現実に帰った。
箒に跨ったまま落ち、ぺたりとふとももまで床についたまま見上げると、
動かない大図書館こと、パチュリーノーレッジが腕を組んで眉間に皺をよせ、こちらをにらんでいる。
「……なんだよ。」
自分でも定番と思うほどのいつもの憎まれ口を叩き、パチュリーをにらみ返す。
きっと私が今まで借りていった本を返せというのだろう。
どうせ私の負けだ、要求ぐらいいくらでも受け入れてやる。
なんならこの場で最近覚えた転送陣を使って全部ここにぶちまけてやる。
パチュリーはそれに対して文句を言うだろうが、憎まれること位なれている。
……しかし、パチュリーから飛んできたのは、私がまったく予想をしていないものだった。
「……なにかあったの?」
私は驚いた。
散々屋敷や図書館の物を壊し、駄目だと言われている本の持ち出しを何度も行った。
恨み言や、きつい要求を受けてもいいはずだった。
なのにパチュリーは……。
「ひどい顔しているわよ?」
そんなに顔に出ていたのだろうか。ポーカーフェイスは得意な方だと思っていたのだが。
「わたしにできることがあれば言いなさい。なんなら、ここの本を好きに使ってもいいわ。」
「さっき私に貸す本は無いって言っていたじゃないか。」
「当然貸し出しはダメ。」
やっぱりか。
「……でも、読むことまでは禁止していないわ。ここで読んで、役に立つ魔法があったら、私でよければ協力するわ。」
……なんでだよ、なんでそんな、優しい言葉をかけるんだよ。
お前たちは、私の事を嘲笑っているんだろ?
バカな奴だ、巫女にかなうはずがないのにと、無謀な勝負を挑む私にため息ついているんだろ?
なのに……
「なんで……。」
「え?」
「なんでそんなに私に優しくするんだよ!」
言った、言ってしまった。
でもきっと、パチュリーも今の言葉で目が覚めただろう、
私みたいな奴に手を差し伸べるなど、無意味で、愚かな行為だと・・・。
むぎゅ!
その時、私のほほに何か固いものが当たった。
これは、本?
「言っておくけど、これはお前に貸すものじゃないの。」
「はあ?」
「本の表紙を見てみなさい。」
パチュリーに促され、私はその本を手に取り、まじまじと見つめる。
その本は、私がよく見かけた本だった。
「……これ、アリスのか?貸し出すのは禁止しているくせに、自分は借りるのか。」
「たとえ私が本を借りるとしても、お前みたいなずうずうしい事はしないわ。それにこれは借り物じゃないの。忘れ物よ。」
ずうずうしいという言葉に若干抵抗を感じたが、忘れ物、か。
アリスらしくもない。
「届けものってことか?それくらい自分で行けよ。少しは動かないとカビが生えるぞ?」
今はアリスに合う用事もないし、正直今の私は気分もよくない。
……よくないのかな。でも心がどこかいつもとおかしい。
そんなわけだから、今日はもう帰って寝たかった。
「あら、敗者が勝者に従うのは弾幕ごっこのルールでしょ?」
……忘れていた。今は私が敗者で、パチュリーが勝者。
私もスペルカードルールの恩恵にすがっているがゆえに、勝者の言うことは絶対だ。
「……わかった。」
私はしぶしぶと、十字に封印が施された魔導書、『グリモワールオブアリス』をパチュリーから受け取る。
「ん、よろしくね。」
「へいへい。」
本を帽子の中にしまいこみ、案外掃除が行き届いているのか、
さして埃がつかなかったスカートを念のため軽くはらい、
高いとおころから落ちたというのに折れるどころか曲がりもしなかった箒をほめながら跨った。
そしてまさに飛び立とうとしたときに声がかかった。
「魔理沙。」
「……なんだよ。」
「たまには『あなた』とも、読書をしたいものね。」
……こそばゆい、いつもよりおかしい心がもっとおかしくなっていく。
私は帽子を深くかぶり、逃げるように飛翔した。
――――――
「よかったんですか?せっかく盗まれた本を取り返せるチャンスだったのに。」
私の図書館のただ一人の司書、……と言うより居候という言葉の方が正しいか。
小悪魔は、白黒魔法使いが飛んでいった方を見ながら言った。
そう、『盗む』。小悪魔は、いつもこの表現を使う。
まあ、それもそうだ。『死ぬまで借りる。』など、生涯借りるというものなのだから、盗んでいるのと同じ、
道具屋に行った時に見かけた本に書いてあった、いわば『借りパク』のようなものだ。
……でも、それは同じ人間同士での話。でも私は便宜上は妖怪、寿命も、老化のスピードも違う。
私が50年、いや、あの白黒の事だ、60年は生きるかもしれない。それくらいの時を軽く歩めば、
あの白黒、魔理沙は、この世にいないか、本も読めないほど、衰弱しているに違いない。
60年など、私たち妖怪にとってはここから屋敷の出口まで歩く程度の長さでしかない。
それだけ待てば、魔理沙に持って行かれた本たちは、魔理沙の何度も読み耽った跡を付けて帰ってくる。
その程度なら、盗んだということにはならない。汚れも貸出本には付き物だ。苦は無い。
だから私は、私だけは彼女の行為を窃盗とは呼ばない。
あくまで友人などへの長期の貸出として見ている。
もっとも、先も彼女に言ったとおり、ここは貸出しを認めてはいないのだけれど。
「それに、パチュリー様、どうしてあのねずみとの勝負をいつもスペルカードルールにのっとって行うんですか?
あんな人間に有利にしか働かないルールなんて使わずに、
パチュリー様の魔法でドカーンと脅かしてしまえばいいのでは?」
ドカーン、ね。
ふふ、懐かしいわ。初めてここに住み着いた小悪魔を見つけた時、おびき出すために行使した魔法だったわね。
軽く手加減したつもりなのに、床に大穴を開けて、レミィにこっぴどく叱られたっけ。
たしかにあの魔法を使えば、図太い魔理沙も少しは怖気づくかもしれない。
「……でも、それじゃあ駄目。」
「え?」
ふともれてしまった言葉に、小悪魔はぶんと振り返る。
「私は、あの子の手で返してもらいたいの。それも、大きな事を成し遂げた、得意げな顔を見せて、ね。」
今は小さな小さな星の子供。
でもやがて大きなもう一つの恒星になって、この図書館を、屋敷を、果ては幻想郷を照らす時が来るまで、
私はこの図書館で本を読み続けよう。
そして星魔法使いは愛される -2- に続く……
「私の勝ちね。」
また負けた。あと少しだったのに。
「今日の当番は魔理沙でよろしく。」
特に苦労した様子もなく、紅白の服と頭の大きなリボンを揺らしながら平然と言ってのける。
最初は私が有利だったはずだった。
なのに、徐々にイニシアティブをとられ、避けるのに精一杯になっていった。
やがて一つの弾幕に気を取られ始め、別方向から弾が飛んできているのには気がつかなかった。
そして案の定、ピチューン、だ。
「今日もつかれたわね、本当に。」
うそつけ、息すら切らしていないくせに。
私が喋るのも苦になるほどの苦労を、いつもこいつは難なくこなす。
そう思ううちに、やがて自らの無様な姿が、みじめに感じてくるようになった。
埃だらけの服を、帽子を、バサバサと乱暴に振り払い、
「用事があるんだ、今日のところは見逃してくれ。」
逃げるようにその場を飛び去った。
――――――
本がうっそうと置かれた広大なこの空間、その中でただ一人、私は本を読み進める。
私はこの図書館の支配者。
全ての本たちは私に読まれるべくおとなしく棚の中で待機し、
私の手に触れるとその未知の扉を悦んで開くのだ。
カチコチと、最近道具屋から購入した大きな振り子時計が揺れる中、
ただただひたすら、
私は本を読み進める。
静寂の中、聞こえるのは時計が時を刻む一定のリズムの音と、私の息使い、そして……、
「パチュリー様!またあの白黒です!」
……時折訪れる喧騒である。
はあ……。
「何度も言ったはずよ、貴様に貸し出す本は無いと。」
「こんなにたくさんの宝があるんだ、一つぐらい無くたって変わりはないだろ?」
まるで録音されたレコードのように、いつものお決まりの言葉とともに白黒の鼠から繰り出されるのは、
その言葉使いに似合わぬクルクルキラキラと輝く星を模した弾。
その星はまるで本物と見間違うほどの光を放ち、
近くを通り過ぎる度にぽかぽかと、まるで恒星のようなぬくもりに包まれる。
……ま、ペンタグラムなんてものは、物語内における空想上の星の表現でしかないのだが。
ちなみにいつぞやの月の住民によると、この星は甘いらしい。
案外読書中に飲むコーヒーに入れるシュガー代わりになるかもしれない。
しかし、今日の星々には、いつものぽかぽかとした陽気を感じられない、
光もやや普段に比べて輝きが弱く感じる。
それに……、いつもは楽々と避ける私の弾幕にも、どこか反応が鈍く感じる。
まるで、なにかに気を取られているように。
そう考えると、私との勝負をどうでもいいことのようにとらえられているような気がして、
いささか気分が悪くなってきた。
魔理沙、貴様は魔法使いを志しているのだったわね。
いずれはその道の先輩になるかもしれない者との勝負を生半可な気持ちで受けるというのは、
「げ、しまった!」
感心しないわよ?
日符「ロイヤルフレア」
ピチューン……
――――――
いてて……、霊夢だけじゃなく、パチュリーにも遅れをとるなんてな……。
でも、私の実力ってのは、案外こんな物だったのかもしれないな。
みんな私が異変解決をする時や、数年に一度のお祭りの時は手加減をしているだけで、
本来の実力は、私の思っているよりもっと……。
「ねえ。」
よくよく考えてみれば、おかしい話だったんだ。
あんな天賦の才と謳われた霊夢が任されている異変解決のいくつかを、
ただの家出娘である私が解決していた時点で気付くべきだったのかもしれない。
「ねえってば。」
みんなきっと、なんの力も持たない子供が粋がっているのを陰で笑っているんだ。
無駄なのに、無謀なことを、と陰で憐れみながら見ているに違いない。
でもなければ……。
「霧雨魔理沙!」
そこまで思いを巡らせた時、突然聞こえた私を呼ぶ声に驚き、はっと現実に帰った。
箒に跨ったまま落ち、ぺたりとふとももまで床についたまま見上げると、
動かない大図書館こと、パチュリーノーレッジが腕を組んで眉間に皺をよせ、こちらをにらんでいる。
「……なんだよ。」
自分でも定番と思うほどのいつもの憎まれ口を叩き、パチュリーをにらみ返す。
きっと私が今まで借りていった本を返せというのだろう。
どうせ私の負けだ、要求ぐらいいくらでも受け入れてやる。
なんならこの場で最近覚えた転送陣を使って全部ここにぶちまけてやる。
パチュリーはそれに対して文句を言うだろうが、憎まれること位なれている。
……しかし、パチュリーから飛んできたのは、私がまったく予想をしていないものだった。
「……なにかあったの?」
私は驚いた。
散々屋敷や図書館の物を壊し、駄目だと言われている本の持ち出しを何度も行った。
恨み言や、きつい要求を受けてもいいはずだった。
なのにパチュリーは……。
「ひどい顔しているわよ?」
そんなに顔に出ていたのだろうか。ポーカーフェイスは得意な方だと思っていたのだが。
「わたしにできることがあれば言いなさい。なんなら、ここの本を好きに使ってもいいわ。」
「さっき私に貸す本は無いって言っていたじゃないか。」
「当然貸し出しはダメ。」
やっぱりか。
「……でも、読むことまでは禁止していないわ。ここで読んで、役に立つ魔法があったら、私でよければ協力するわ。」
……なんでだよ、なんでそんな、優しい言葉をかけるんだよ。
お前たちは、私の事を嘲笑っているんだろ?
バカな奴だ、巫女にかなうはずがないのにと、無謀な勝負を挑む私にため息ついているんだろ?
なのに……
「なんで……。」
「え?」
「なんでそんなに私に優しくするんだよ!」
言った、言ってしまった。
でもきっと、パチュリーも今の言葉で目が覚めただろう、
私みたいな奴に手を差し伸べるなど、無意味で、愚かな行為だと・・・。
むぎゅ!
その時、私のほほに何か固いものが当たった。
これは、本?
「言っておくけど、これはお前に貸すものじゃないの。」
「はあ?」
「本の表紙を見てみなさい。」
パチュリーに促され、私はその本を手に取り、まじまじと見つめる。
その本は、私がよく見かけた本だった。
「……これ、アリスのか?貸し出すのは禁止しているくせに、自分は借りるのか。」
「たとえ私が本を借りるとしても、お前みたいなずうずうしい事はしないわ。それにこれは借り物じゃないの。忘れ物よ。」
ずうずうしいという言葉に若干抵抗を感じたが、忘れ物、か。
アリスらしくもない。
「届けものってことか?それくらい自分で行けよ。少しは動かないとカビが生えるぞ?」
今はアリスに合う用事もないし、正直今の私は気分もよくない。
……よくないのかな。でも心がどこかいつもとおかしい。
そんなわけだから、今日はもう帰って寝たかった。
「あら、敗者が勝者に従うのは弾幕ごっこのルールでしょ?」
……忘れていた。今は私が敗者で、パチュリーが勝者。
私もスペルカードルールの恩恵にすがっているがゆえに、勝者の言うことは絶対だ。
「……わかった。」
私はしぶしぶと、十字に封印が施された魔導書、『グリモワールオブアリス』をパチュリーから受け取る。
「ん、よろしくね。」
「へいへい。」
本を帽子の中にしまいこみ、案外掃除が行き届いているのか、
さして埃がつかなかったスカートを念のため軽くはらい、
高いとおころから落ちたというのに折れるどころか曲がりもしなかった箒をほめながら跨った。
そしてまさに飛び立とうとしたときに声がかかった。
「魔理沙。」
「……なんだよ。」
「たまには『あなた』とも、読書をしたいものね。」
……こそばゆい、いつもよりおかしい心がもっとおかしくなっていく。
私は帽子を深くかぶり、逃げるように飛翔した。
――――――
「よかったんですか?せっかく盗まれた本を取り返せるチャンスだったのに。」
私の図書館のただ一人の司書、……と言うより居候という言葉の方が正しいか。
小悪魔は、白黒魔法使いが飛んでいった方を見ながら言った。
そう、『盗む』。小悪魔は、いつもこの表現を使う。
まあ、それもそうだ。『死ぬまで借りる。』など、生涯借りるというものなのだから、盗んでいるのと同じ、
道具屋に行った時に見かけた本に書いてあった、いわば『借りパク』のようなものだ。
……でも、それは同じ人間同士での話。でも私は便宜上は妖怪、寿命も、老化のスピードも違う。
私が50年、いや、あの白黒の事だ、60年は生きるかもしれない。それくらいの時を軽く歩めば、
あの白黒、魔理沙は、この世にいないか、本も読めないほど、衰弱しているに違いない。
60年など、私たち妖怪にとってはここから屋敷の出口まで歩く程度の長さでしかない。
それだけ待てば、魔理沙に持って行かれた本たちは、魔理沙の何度も読み耽った跡を付けて帰ってくる。
その程度なら、盗んだということにはならない。汚れも貸出本には付き物だ。苦は無い。
だから私は、私だけは彼女の行為を窃盗とは呼ばない。
あくまで友人などへの長期の貸出として見ている。
もっとも、先も彼女に言ったとおり、ここは貸出しを認めてはいないのだけれど。
「それに、パチュリー様、どうしてあのねずみとの勝負をいつもスペルカードルールにのっとって行うんですか?
あんな人間に有利にしか働かないルールなんて使わずに、
パチュリー様の魔法でドカーンと脅かしてしまえばいいのでは?」
ドカーン、ね。
ふふ、懐かしいわ。初めてここに住み着いた小悪魔を見つけた時、おびき出すために行使した魔法だったわね。
軽く手加減したつもりなのに、床に大穴を開けて、レミィにこっぴどく叱られたっけ。
たしかにあの魔法を使えば、図太い魔理沙も少しは怖気づくかもしれない。
「……でも、それじゃあ駄目。」
「え?」
ふともれてしまった言葉に、小悪魔はぶんと振り返る。
「私は、あの子の手で返してもらいたいの。それも、大きな事を成し遂げた、得意げな顔を見せて、ね。」
今は小さな小さな星の子供。
でもやがて大きなもう一つの恒星になって、この図書館を、屋敷を、果ては幻想郷を照らす時が来るまで、
私はこの図書館で本を読み続けよう。
そして星魔法使いは愛される -2- に続く……
というか魔理沙が嫌われる要因は性格もしくはその作者のキャラ付けが原因じゃないですかね。
良いご意見をありがとうございます。今後の参考に検討をさせていただきます。
ありがとうございます!
いや好きです魔理沙 魔理沙と魔理沙が好きな奴が好きです
魔理沙が嫌いな人やその人が好きなものは多分嫌いです
魔理沙がいるだけで物語になります 魔理沙が物語で物語が魔理沙です(錯乱)
ていうかもっと堂々として書いていいのよ?とは思いましたね
最後の文についてはありがとうございます。
でもここからは個人的な意見になりますが、その前の文には申し訳ありませんが同意しかねます。
ハッキリ言ってしまうと、魔理沙だけでは物語にはなりません。
魔理沙やそれを取り巻く人々、
逆に物語の主人公に相当するキャラクターに関連するのであれば、魔理沙自身、
他人(人間だけじゃありませんが)とのつながりが多い魔理沙にとってはどちらも必要な存在です。
作る側としてもその方が楽です。
まあ、創作する上で魅力的なキャラクターであることには違いありませんが。
とにかく満点ありがとうございます。
それがなければ好かれるキャラだと思います
魔理沙の設定に「変な奴らに好かれる」と明記されてますし
書籍や原作EDでも妖精を始め人間や妖怪とも仲の良い描写は多いですよ。
実際宴会の幹事を務め様々な勢力や妖怪と繋がりがあり、口授でも各宗教家からスカウト受けてますしね。
魔理沙とのあまり見ない組み合わせ楽しみにしています。
それも魔理沙を表現する上では重要なファクターです。
無視をすることはできません。
評価ありがとうございます。
>>11
評価ありがとうございます。
自らの集中力の無さと実力不足故、非常にまったりとしたペースになりそうですが
完結目指して頑張りたいと思います。
>>14
ありがとうございます!
次回は物語の関係上、魔理沙との組み合わせでメジャーなアリスとなってしまいますが、
次回以降はそうなるようにするつもりです。