そこは霧の中に隠れ一年中陽が当たらないと言われている紅魔館です。
誰もが恐れ、敬い、そして避けている吸血鬼の館です。
実際はそうでもありません。
そこにはフランが住んでいます。
フランは差し込んできた朝の光に照らされて目を覚ましました。そして大きく伸びをして、にんまりと笑いました。にんまり笑ったのは当然で、今日は誕生日の丁度半年後だったからです。誕生日の反対の日になったら、日頃のお礼としてみんなにプレゼントをあげようと前から決めていたのです。
フランは早速レミリアの所へ出掛けました。レミリアはとても気高く優しく格好良い吸血鬼です。こいしのお姉さんとは全く違うらしいのですが、フランはそう思いません。さとりさんも優しくて格好良いです。フランはレミリアの事が大好きです。だから日頃のお礼を込めてプレゼントを渡しました。
喜んでもらえると良いな。
「おい!」
しかしレミリアに叩かれました。
「何で銀のナイフを投げてきた!」
プレゼントだからです。
「だから、銀のフォークとスプーンを投げてくんな!」
でもレミリアにプレゼントを渡したいのです。喜んでもらえる様に一所懸命に考えて選んできたプレゼントなのです。
「好い加減にしろ!」
レミリアに叩き出されてしまいました。
レミリアが昔、偶には銀の食器で食事を取ってみたいわぁと言っていたのを聞いていました。だから喜んでくれると思ったのです。
でも駄目でした。
きっとフランが駄目だからです。
残念な気持ちになりましたが、まだプレゼントを渡す相手は残っています。
今度は咲夜に会いに行きました。
十六夜咲夜は優しくて有能で瀟洒なメイドです。いつもそこそこ優しいし、屋敷を管理してくれているので、とても助かっています。だから日頃のお礼を込めてプレゼントを渡しました。
喜んでくれると良いな。
でも喜んでくれませんでした。
最初咲夜は嬉しそうに箱の包を解いたのですが、箱を開けた途端、無表情になってしまいました。
「これは?」
それは腰痛用のギブスとボケ防止のサプリと本、それから老後の趣味の為の園芸の種です。
「何故、これを私に?」
おばあちゃんの咲夜が素敵な毎日を暮らせる様に。
咲夜は黙ったまま固まってしまいました。
良く分かりませんが、喜んでいない事は間違いありません。
しばらくすると、「私はまだ若いです」と落ち込んだ様子で何処かへ言ってしまいました。
でも前にフランは聞きました。こう忙しいと腰も痛くなるし忘れっぽくなりますわと咲夜が言うと、魔理沙はおばあちゃんみたいだなと笑っていたのです。だから喜んでくれると思ったのです。でも駄目でした。
フランにはどうしてか分かりません。
とにかくプレゼントを喜んでくれないのが悲しくて泣きそうになりました。
次に、美鈴の所に行きました。
美鈴は門の所に集まっていた妖精達と楽しそうにお喋りをしていました。
フランに気がつくと、美鈴がお喋りに誘ってくれました。
美鈴はいつものんびりしていて優しくて格好良くてとっても強い門番です。美鈴はいつもいつも優しいので、フランはとても大好きです。だから日頃のお礼を込めてプレゼントを渡しました。
するとプレゼントを見た妖精達は一斉に逃げ出して、後には美鈴だけが残されてしまいました。
美鈴の泣きそうな顔を見ると、喜んでくれていない事は明白です。
「あの、これは?」
それは子供の裸を集めた写真集です。
みんな美鈴は子供好きだと言っていたので、喜んでくれると思いました。
「いえ、それはそういう意味ではなくて、もっと純粋な意味で」
良く分かりませんでした。
でも美鈴を悲しませてしまった事は良く分かりました。
美鈴は黙って泣きそうです。
フランも何も言えなくて泣きそうです。
居ても立っても居られなくなって、走って逃げました。
部屋の中で泣きました。
みんなに喜んで貰いたかったのに、みんなを怒らせてしまいました。
みんなに嫌われてしまいます。
もうみんなに顔向け出来ません。
真っ暗な部屋の中で泣き続けました。
しばらくしてノックの音が聞こえました。
誰だろうと思って開けると、パチュリーでした。パチュリーは引きずっていた魔理沙をその場に捨てると、優しく微笑んで言いました。
「話は聞かせてもらったわ」
フランは安堵してパチュリーに抱き着きました。
みんなに嫌われてしまった事を話し、どうしたら無かった事に出来るのか聞きました。
するとパチュリーは首を振りました。
「起こった事は元に戻らない」
どうする事も出来無い。
自分の体がきゅっと締め付けられた様な恐ろしい気持ちになりました。
もうみんなに許してもらえない。みんなに嫌われて、怒られて、また閉じ込められてしまう。
そう考えると怖くて怖くて仕方無くて、どうしようもなくて、もう何もかも壊してしまおうと思った時、パチュリーが抱き締めてくれました。
「でも許してらう事は出来る。謝って許してもらうの」
それは分かります。でも駄目なのです。ごめんなさいと言ってもみんなを傷付けてしまった事は変わりありません。またフランが悪戯をしたととても怒っているに違いないのです。単に謝っただけで許してもらえる訳が無い。床に転がりぼろ雑巾の様になった魔理沙を見れば分かります。
震えるフランに向かって、パチュリーは微笑みながら首を横に振りました。
「フランがプレゼントを用意してくれた事はみんな嬉しいに決まっているわ。だから大丈夫。みんなありがとうって思っているの。ただきっかけが必要なのよ、フランにとってのね」
フランには良く分かりません。
ですがパチュリーは謝るべきだと繰り返しました。
パチュリーが言うのなら間違いありません。
それに万に一つでも許してもらえるのなら、そうするしかありません。
フランが頷くと、パチュリーは床に落ちた魔理沙を引きずって去って行きました。
フランはそれから何度も深呼吸をして、心を落ち着けました。そして頭の中で謝る練習をして食堂に向かいました。
食堂には夕飯が並んでいて、みんな集まっていました。
みんなの視線がフランに集まります。
フランは一瞬喉が締め付けられた様な苦しさを感じましたが、勇気を出して謝りました。ごめんなさいと沢山言って、頭をいっぱい下げました。
そして恐る恐る顔を上げました。
するとそこにいるみんなは、なんと笑ってくれていました。
さっきは怒っていたレミリアも笑顔です。
「ごめんなさい、プレゼントだったのね」
無表情だった咲夜もレミリアがつつくと笑顔になりました。
「私はまだ若いですし、こういった物は必要ありませんが、プレゼントですし、ありがたく頂戴致しますわ」
泣きそうだった美鈴も少し持ち直していました。
「お気持ちだけはありがたく」
レミリアは「プレゼントも良いけどもうちょっと良く考えて、それからまともな人に相談しなさい」と言いました。
フランはその通りだと思いました。
今回は間違ってしまって、みんなを悲しませてしまいました。
だから次はみんなに喜んでもらえる様に、頑張ろうと思いました。
今回みんなに嫌な思いをさせてしまった分、もっと沢山喜んでもらおうと思いました。
レミリアが最後に「何にせよ、プレゼントありがとう」と言ってくれたので、私は良かったなと思いました。
こころに手伝ってもらい、得意の高砂を踊り、みんなは益益笑顔になりました。
パチュリーは優しくて頭の良い魔法の上手な図書館です。
いつもフランに本を貸してくれたり魔法を教えてくれたり助言をくれたり優しいので、日頃のお礼を込めてプレゼントを渡す事にしました。
こいしやこころと相談して本をあげる事にしました。でもパチュリーはどんな本でも持っているので、世界に一冊の童話を書いて渡す事にしました。
パチュリーは喜んでありがとうと言ってくれました。
でも「盛り上げようとするのは分かるけど、血とかの暴力的な表現は控えた方が良いわよ」とか「お友達が教えてくれたから書きたいのは分かるけど、流石に能を最初から最後まで描写するのはどうかと思うわ」とか「お友達がそう書く様に言ったんでしょうけど、あまり友達のお姉さんを悪く書いちゃ駄目よ」とか「憧れているのは分かるけど、自分の名前は美鈴じゃなくてちゃんとフランと書きなさい」とか、言いました。フランはその通りだと思って書き直したら、パチュリーはもっと喜んでくれました。そうして書き直したのが右に書いた童話なのです。
まだあります。みんなへのプレゼントを考えて準備してくれた魔理沙にも、永遠亭で貰った打撲と切り傷に効く薬と輸血パックをあげました。
顔が包帯で巻かれていて表情は見えませんでしたが、「ありがとう」と言ってくれたので、魔理沙も喜んでくれたのだと思います。
みんなが喜んでくれてフランは嬉しいです。
Real friend of the underdogs ~残酷潜在仮面即興劇~
I, said the blue birds ~内向独善調和即興劇~
Harmonic Household ~反故即興劇~
Historical Hysteric Poetry ~冷索即興劇~
Flowers in the sea of sunny ~時分陽溜即興劇~
You're just an invisible man, I mean ~透明探究殺戮即興劇~
Lovely Lovey ~贈答即興日記~
誰もが恐れ、敬い、そして避けている吸血鬼の館です。
実際はそうでもありません。
そこにはフランが住んでいます。
フランは差し込んできた朝の光に照らされて目を覚ましました。そして大きく伸びをして、にんまりと笑いました。にんまり笑ったのは当然で、今日は誕生日の丁度半年後だったからです。誕生日の反対の日になったら、日頃のお礼としてみんなにプレゼントをあげようと前から決めていたのです。
フランは早速レミリアの所へ出掛けました。レミリアはとても気高く優しく格好良い吸血鬼です。こいしのお姉さんとは全く違うらしいのですが、フランはそう思いません。さとりさんも優しくて格好良いです。フランはレミリアの事が大好きです。だから日頃のお礼を込めてプレゼントを渡しました。
喜んでもらえると良いな。
「おい!」
しかしレミリアに叩かれました。
「何で銀のナイフを投げてきた!」
プレゼントだからです。
「だから、銀のフォークとスプーンを投げてくんな!」
でもレミリアにプレゼントを渡したいのです。喜んでもらえる様に一所懸命に考えて選んできたプレゼントなのです。
「好い加減にしろ!」
レミリアに叩き出されてしまいました。
レミリアが昔、偶には銀の食器で食事を取ってみたいわぁと言っていたのを聞いていました。だから喜んでくれると思ったのです。
でも駄目でした。
きっとフランが駄目だからです。
残念な気持ちになりましたが、まだプレゼントを渡す相手は残っています。
今度は咲夜に会いに行きました。
十六夜咲夜は優しくて有能で瀟洒なメイドです。いつもそこそこ優しいし、屋敷を管理してくれているので、とても助かっています。だから日頃のお礼を込めてプレゼントを渡しました。
喜んでくれると良いな。
でも喜んでくれませんでした。
最初咲夜は嬉しそうに箱の包を解いたのですが、箱を開けた途端、無表情になってしまいました。
「これは?」
それは腰痛用のギブスとボケ防止のサプリと本、それから老後の趣味の為の園芸の種です。
「何故、これを私に?」
おばあちゃんの咲夜が素敵な毎日を暮らせる様に。
咲夜は黙ったまま固まってしまいました。
良く分かりませんが、喜んでいない事は間違いありません。
しばらくすると、「私はまだ若いです」と落ち込んだ様子で何処かへ言ってしまいました。
でも前にフランは聞きました。こう忙しいと腰も痛くなるし忘れっぽくなりますわと咲夜が言うと、魔理沙はおばあちゃんみたいだなと笑っていたのです。だから喜んでくれると思ったのです。でも駄目でした。
フランにはどうしてか分かりません。
とにかくプレゼントを喜んでくれないのが悲しくて泣きそうになりました。
次に、美鈴の所に行きました。
美鈴は門の所に集まっていた妖精達と楽しそうにお喋りをしていました。
フランに気がつくと、美鈴がお喋りに誘ってくれました。
美鈴はいつものんびりしていて優しくて格好良くてとっても強い門番です。美鈴はいつもいつも優しいので、フランはとても大好きです。だから日頃のお礼を込めてプレゼントを渡しました。
するとプレゼントを見た妖精達は一斉に逃げ出して、後には美鈴だけが残されてしまいました。
美鈴の泣きそうな顔を見ると、喜んでくれていない事は明白です。
「あの、これは?」
それは子供の裸を集めた写真集です。
みんな美鈴は子供好きだと言っていたので、喜んでくれると思いました。
「いえ、それはそういう意味ではなくて、もっと純粋な意味で」
良く分かりませんでした。
でも美鈴を悲しませてしまった事は良く分かりました。
美鈴は黙って泣きそうです。
フランも何も言えなくて泣きそうです。
居ても立っても居られなくなって、走って逃げました。
部屋の中で泣きました。
みんなに喜んで貰いたかったのに、みんなを怒らせてしまいました。
みんなに嫌われてしまいます。
もうみんなに顔向け出来ません。
真っ暗な部屋の中で泣き続けました。
しばらくしてノックの音が聞こえました。
誰だろうと思って開けると、パチュリーでした。パチュリーは引きずっていた魔理沙をその場に捨てると、優しく微笑んで言いました。
「話は聞かせてもらったわ」
フランは安堵してパチュリーに抱き着きました。
みんなに嫌われてしまった事を話し、どうしたら無かった事に出来るのか聞きました。
するとパチュリーは首を振りました。
「起こった事は元に戻らない」
どうする事も出来無い。
自分の体がきゅっと締め付けられた様な恐ろしい気持ちになりました。
もうみんなに許してもらえない。みんなに嫌われて、怒られて、また閉じ込められてしまう。
そう考えると怖くて怖くて仕方無くて、どうしようもなくて、もう何もかも壊してしまおうと思った時、パチュリーが抱き締めてくれました。
「でも許してらう事は出来る。謝って許してもらうの」
それは分かります。でも駄目なのです。ごめんなさいと言ってもみんなを傷付けてしまった事は変わりありません。またフランが悪戯をしたととても怒っているに違いないのです。単に謝っただけで許してもらえる訳が無い。床に転がりぼろ雑巾の様になった魔理沙を見れば分かります。
震えるフランに向かって、パチュリーは微笑みながら首を横に振りました。
「フランがプレゼントを用意してくれた事はみんな嬉しいに決まっているわ。だから大丈夫。みんなありがとうって思っているの。ただきっかけが必要なのよ、フランにとってのね」
フランには良く分かりません。
ですがパチュリーは謝るべきだと繰り返しました。
パチュリーが言うのなら間違いありません。
それに万に一つでも許してもらえるのなら、そうするしかありません。
フランが頷くと、パチュリーは床に落ちた魔理沙を引きずって去って行きました。
フランはそれから何度も深呼吸をして、心を落ち着けました。そして頭の中で謝る練習をして食堂に向かいました。
食堂には夕飯が並んでいて、みんな集まっていました。
みんなの視線がフランに集まります。
フランは一瞬喉が締め付けられた様な苦しさを感じましたが、勇気を出して謝りました。ごめんなさいと沢山言って、頭をいっぱい下げました。
そして恐る恐る顔を上げました。
するとそこにいるみんなは、なんと笑ってくれていました。
さっきは怒っていたレミリアも笑顔です。
「ごめんなさい、プレゼントだったのね」
無表情だった咲夜もレミリアがつつくと笑顔になりました。
「私はまだ若いですし、こういった物は必要ありませんが、プレゼントですし、ありがたく頂戴致しますわ」
泣きそうだった美鈴も少し持ち直していました。
「お気持ちだけはありがたく」
レミリアは「プレゼントも良いけどもうちょっと良く考えて、それからまともな人に相談しなさい」と言いました。
フランはその通りだと思いました。
今回は間違ってしまって、みんなを悲しませてしまいました。
だから次はみんなに喜んでもらえる様に、頑張ろうと思いました。
今回みんなに嫌な思いをさせてしまった分、もっと沢山喜んでもらおうと思いました。
レミリアが最後に「何にせよ、プレゼントありがとう」と言ってくれたので、私は良かったなと思いました。
こころに手伝ってもらい、得意の高砂を踊り、みんなは益益笑顔になりました。
パチュリーは優しくて頭の良い魔法の上手な図書館です。
いつもフランに本を貸してくれたり魔法を教えてくれたり助言をくれたり優しいので、日頃のお礼を込めてプレゼントを渡す事にしました。
こいしやこころと相談して本をあげる事にしました。でもパチュリーはどんな本でも持っているので、世界に一冊の童話を書いて渡す事にしました。
パチュリーは喜んでありがとうと言ってくれました。
でも「盛り上げようとするのは分かるけど、血とかの暴力的な表現は控えた方が良いわよ」とか「お友達が教えてくれたから書きたいのは分かるけど、流石に能を最初から最後まで描写するのはどうかと思うわ」とか「お友達がそう書く様に言ったんでしょうけど、あまり友達のお姉さんを悪く書いちゃ駄目よ」とか「憧れているのは分かるけど、自分の名前は美鈴じゃなくてちゃんとフランと書きなさい」とか、言いました。フランはその通りだと思って書き直したら、パチュリーはもっと喜んでくれました。そうして書き直したのが右に書いた童話なのです。
まだあります。みんなへのプレゼントを考えて準備してくれた魔理沙にも、永遠亭で貰った打撲と切り傷に効く薬と輸血パックをあげました。
顔が包帯で巻かれていて表情は見えませんでしたが、「ありがとう」と言ってくれたので、魔理沙も喜んでくれたのだと思います。
みんなが喜んでくれてフランは嬉しいです。
Real friend of the underdogs ~残酷潜在仮面即興劇~
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