そこは異様な空間へと変わりつつあった。
時節は木枯らし吹く師走。例年よりずっと早くやってきた寒波により、外は凍える寒さだ。しかし、人口二十五万人ほどのこの街にある市民会館は、外界を無視するかのように、奇妙な熱気に包まれている。
三百人を収容できる大ホール、そこを六分の一ほど埋めて、とある集団が前方の舞台へと熱い視線を投げかけていた。
市民会館を管理する人々は、また訳の分からない宗教団体の類いがやってきたとため息をついた。一般的な常識から判断すれば、団体が市民会館側に説明した集会の内容はあまりにも荒唐無稽だった。馬鹿馬鹿しいと言えるかもしれない。
団体の名は『幻想郷を絶対に許さない会』。
彼ら曰く、妖怪が与える被害について考える会だという。
「皆さん、遂に我々が声をあげる時がやってきました! 決起集会の始まりです! 一年前から準備を始め、ここに会は動き始めるのです!」
大ホールの前方、舞台に置かれた壇上で男は叫ぶ。男はきっちりとした七三分け、小太りなスーツ姿。短い腕を振り回しながら、のべつ幕無しにしゃべり続けていた。
「ここにいらっしゃる皆様は年齢も性別も出身地も違います。しかし、ある一点において共通することがある!」
男の言うとおり、なにもかもがバラバラな、一見ほとんど関連性を見出せない五十人ほどの集団は、けれど真剣な面持ちで壇上を見つめている。
彼らが集うのは今日が初めて。だが、そこには強い一体感が存在した。
「それは幻想郷の妖怪によって、多大なる被害を受けてしまわれたということです!」
幻想郷。
その言葉が発せられた瞬間、大ホール内の人々は自らの心の中に、怒りの感情を沸き上がらせた。
妖怪たちが住み着く幻想郷。人間に危害を与える悪鬼の住まう幻想郷。
その場のほとんどの人間が手を握り締める。
「妖怪! 一種おかしみすら感じさせる、一般社会ではファンタジーの産物と思われている妖怪! だがしかし、それは確かに実在するのです! 私たち、『幻想郷を絶対に許さない会』運営部は実際に幻想郷に潜入し、映像を撮りました。また常識では説明できない様々な物品も回収いたしました。何度でも言います! 妖怪は実在する!」
「そうだ、その通りだ!」
席上の一部から同意の声があがる。声をあげなかった他多数も、大きくうなずいた。
……彼ら自身、最初は『幻想郷を絶対に許さない会』という怪しげな団体に対して、強い疑いの目を向けていた。だが、彼らは確かに「不可思議な」体験をしていたのだ。世間が絶対に信用してくれない奇妙な体験を。会はそれを信用してくれた。そして幻想郷の存在を教え、その憎むべき敵と共に戦うと言ってくれた。
「不可思議な」体験が、「悲しい」体験であった彼らにとって、それは確かに一種の救いだったのだ。
「ではここで、皆様の体験を語っていただきましょう。挙手制です。……はい、あなた! 壇上に上がってきてください!」
「え、えっと。みなさんこんにちは。私の名前は……え、言わなくていいんですか? そうですか……それでは、申し訳ありませんが、匿名でいかせていただきます。今回の集会には夫に内緒で参加しまして……。
私はとある街の高校で、教師をしています。
その高校は女子校で、いわゆるお嬢様学校と世間では言われているようです。品行方正で礼儀正しい子たちばかりが揃っていると、ありがたい評価をいただいております。
ですが、問題が無いわけではありません。他の学校と同じように、ナイーブな思春期の子供たちがそこにはいるのですから。問題があるに、決まっています。問題を抱えている子供がいるに、決まっています。
仮に……アイ、とその娘のことを呼びましょうか。アイは私が担任をしているクラスにいた、一人の女の子です。アイは、お嬢様学校と呼ばれている我が校の中でも特別にお嬢様であると、クラスメートから称されていました。深窓の令嬢、とでもいえば言いのでしょうか。艶やかな黒髪に、物憂げな瞳が印象的な、とても美しい女の子でした。
アイはクラスの中心にいたというわけではありませんが、それでもその言葉一つ一つに何か重みのようなものを感じさせていて、だれもが彼女に意見を求めました。その憂いに満ちた言葉の数々は、少し高校生離れしていたと言えるかもしれません。
これは私見ですが……本来、明るく無邪気なはずの子供が、その顔に陰を見せるとき、そこにはほとんどの場合、家庭の問題が横たわっています。
私はアイとその母親を気に掛けていました。アイの家庭には問題がありました。
アイの母親には精神的な障害があったのです。
障害は年々酷くなっていき、やがてアイの母親は家から一歩も外に出ることが出来なくなってしまいました。
アイは、母親の介護をしなくてはいけなくなりました。複雑な、あまりにも複雑な事情によりアイと母親は、本来彼女たちを庇護すべき父親から見捨てられていました。一定の生活費、養育費は支払われていたようですが、それ以外は無視。アイは自分ひとりで母親の面倒を見なくてはいけなくなったのです。
だんだんアイは学校に来なくなりました。たまに学校に来たときには、顔に大きな痣をつくっていたときもありました。私はアイの家に何度も通いました。どうか私に相談してください、一緒に考えていきましょう。そう説得しました。けれど、
『先生は心配しないで。母さんのことは、全部ボクが背負っていくからさ』
彼女は、あまりにも、大人すぎたのでしょう。もっともっと子供でいてよかったのに、大人すぎたのです。
しばらくして、アイの母親が自殺したという連絡が届きました。
それからすぐに、アイが自殺未遂をしたという連絡が届きました。
そして、アイが、病院から忽然と姿を消したという連絡が届きました。
わずか三日の出来事ですよ、信じられますか? わたしは呆然と、呆然と……。
……そして、あの日。月がやけに眩しかった夜。
私はショックが癒えぬまま、ふらふらと夜の帰り道を歩いていました。
人通りの滅多にない道へ入ったときです。私の前に、一人の女の子が立っていました。月の光に照らされて、その顔ははっきりと見えました。
その女の子は、確かに、確かにアイでした。病院服姿のアイでした。私は感情が溢れ出しそうになり、アイに抱きつこうと、走り出しました。
しかし。
アイのすぐ傍にはもう一人……いえ、『もう一匹』誰かがいました。
小学生ぐらいの背丈、緑色の髪……そして、まるで昆虫のような触覚。見た目は人間に似通っていましたが、明らかに人間ではありえない部分があったのです。
私がぎょっとして立ち止まると、その人間に似た存在は……人間に似た存在は……。
……うう、あ、あ……ああ……! ああ……!
……ごめんなさい、大丈夫です、大丈夫です。最後まで、言わせてください。言いたいんです。言わなくちゃいけないんです。
……『妖怪』はアイにむかって足を振り上げました。
そのまま、アイの、首を、へし折りました。
……アイは! アイは! 倒れて、そのまま動かなくなって! 首はありえない方向にだらんとたれて!
私は何も出来なかった! アイが妖怪に殺されるのを黙って見ていただけだった!
アイを殺した妖怪はきょっとんとした顔で言った!
『あれ? 獲物は狩ったけど……ここどこだろう?』
アイのことを、獲物と!
そいつはしばらくして姿を消した! 一瞬で姿を消した! 幻想郷に戻ったんだ!
私は会の人たちにあの妖怪の名前を教えてもらった! アイを殺した妖怪の名前を教えてもらった!
リグル・ナイトバグ!
リグル・ナイトバグ!
リグル・ナイトバグ!
ああ、ああ! ああああああああああ!
……ごめんなさい……本当にごめんなさい。取り乱しました……。
アイは、妖怪に、殺されてしまいました。
どうして彼女が殺されなければいけなかったのですか
私はアイを助けたかった。苦しみに喘ぐ彼女を助けたかった。
彼女はまだ十八歳。まだまだこれからだったのに。
どうして、どうして。本当に良い子だったのに」
それからも幻想郷に対する弾劾は続いた。
ひきこもりの兄が部屋で頭を半分抉られていたのを目撃したと語った少女がいた。
友人が幻想郷に行き、発狂して戻ってきたことを嘆く男がいた。
中には、幻想郷に行ったことがあると証言し、そこで片手をもぎ取られたことをしゃべり続ける女がいた。
彼らは幻想郷の妖怪たちに、己や親しい人を傷つけられた。そしてその後、彼らの多くは自らの不可思議かつ悲惨な体験の真相を探ろうとした。
『幻想郷を絶対に許さない会』は彼らの調査に気づくと、かたっぱしから声をかけた。あなたが憎むべき存在は幻想郷である、共に戦おう、と。
苦しみの淵にあった彼らにとって、それは確かに一種の救いであった。
「はい、ありがとうございました! これもまた、まことに、まことに胸を打つ証言でした!」
何人目かの体験談が終わって、最初にのべつ幕なしに演説していた運営部の男が、再び声をあげた。
「言いにくかったこともあるでしょう、胸が張り裂けそうなこともあったでしょう。それでも真実を語っていただいたことに、一同心より感激いたしております!」
ばっ、と男は右手を天へ高々と振り上げた。
「いま、ここに私たちは確信の度を深めました! 幻想郷は実在する、妖怪は実在する! もはや疑う余地すらありません!」
そして男の言葉は、もはや絶叫に近づいていた。
「我々は幻想郷の映像を全世界に公開します! 疑う人間も出てくることでしょう、しかし知ったことか! 真実は我らと共にあり! 大切な人を奪い去った幻想郷を、許すことは出来ない!」
「そのとおりだ!」
市民会館大ホール内のほぼ全ての人々が、その目に涙を浮かべていた。感情は最高潮に達し、もう自分たちが悲しくて泣いているのか、それとも感動して泣いているのかすら分からない。
けれどただ一つ、幻想郷との戦いはこれから始まるのだということは分かる。幻想郷から様々な妨害や、直接的な攻撃がやってくるかもしれない。だが、自分たちは決して屈したりしないと心の中で誓う。
もういなくなってしまった人たちに誓う。
「さて、それでは! 締めのお言葉はこの方に語ってもらいましょう! 幻想郷を絶対に許さない会会長のお言葉です!」
男は、舞台上の端のイスに座っていた女性に発言を促した。会の会長。そういえば、集会が始まってから一度も喋っていないな、と人々は思った。
かつて『アイ』という教え子がいた教師は、会長の目を見た瞬間、言い知れぬ恐怖を覚えた。これと同じような種類の目を、私はどこかで見たことがある。
豪奢な金髪に、紫色のドレスを着た女性は、言った。
「こんにちは皆さん」
にこりと微笑んで、
「『幻想郷を絶対に許さない会』会長、八雲紫です」
時節は木枯らし吹く師走。例年よりずっと早くやってきた寒波により、外は凍える寒さだ。しかし、人口二十五万人ほどのこの街にある市民会館は、外界を無視するかのように、奇妙な熱気に包まれている。
三百人を収容できる大ホール、そこを六分の一ほど埋めて、とある集団が前方の舞台へと熱い視線を投げかけていた。
市民会館を管理する人々は、また訳の分からない宗教団体の類いがやってきたとため息をついた。一般的な常識から判断すれば、団体が市民会館側に説明した集会の内容はあまりにも荒唐無稽だった。馬鹿馬鹿しいと言えるかもしれない。
団体の名は『幻想郷を絶対に許さない会』。
彼ら曰く、妖怪が与える被害について考える会だという。
「皆さん、遂に我々が声をあげる時がやってきました! 決起集会の始まりです! 一年前から準備を始め、ここに会は動き始めるのです!」
大ホールの前方、舞台に置かれた壇上で男は叫ぶ。男はきっちりとした七三分け、小太りなスーツ姿。短い腕を振り回しながら、のべつ幕無しにしゃべり続けていた。
「ここにいらっしゃる皆様は年齢も性別も出身地も違います。しかし、ある一点において共通することがある!」
男の言うとおり、なにもかもがバラバラな、一見ほとんど関連性を見出せない五十人ほどの集団は、けれど真剣な面持ちで壇上を見つめている。
彼らが集うのは今日が初めて。だが、そこには強い一体感が存在した。
「それは幻想郷の妖怪によって、多大なる被害を受けてしまわれたということです!」
幻想郷。
その言葉が発せられた瞬間、大ホール内の人々は自らの心の中に、怒りの感情を沸き上がらせた。
妖怪たちが住み着く幻想郷。人間に危害を与える悪鬼の住まう幻想郷。
その場のほとんどの人間が手を握り締める。
「妖怪! 一種おかしみすら感じさせる、一般社会ではファンタジーの産物と思われている妖怪! だがしかし、それは確かに実在するのです! 私たち、『幻想郷を絶対に許さない会』運営部は実際に幻想郷に潜入し、映像を撮りました。また常識では説明できない様々な物品も回収いたしました。何度でも言います! 妖怪は実在する!」
「そうだ、その通りだ!」
席上の一部から同意の声があがる。声をあげなかった他多数も、大きくうなずいた。
……彼ら自身、最初は『幻想郷を絶対に許さない会』という怪しげな団体に対して、強い疑いの目を向けていた。だが、彼らは確かに「不可思議な」体験をしていたのだ。世間が絶対に信用してくれない奇妙な体験を。会はそれを信用してくれた。そして幻想郷の存在を教え、その憎むべき敵と共に戦うと言ってくれた。
「不可思議な」体験が、「悲しい」体験であった彼らにとって、それは確かに一種の救いだったのだ。
「ではここで、皆様の体験を語っていただきましょう。挙手制です。……はい、あなた! 壇上に上がってきてください!」
「え、えっと。みなさんこんにちは。私の名前は……え、言わなくていいんですか? そうですか……それでは、申し訳ありませんが、匿名でいかせていただきます。今回の集会には夫に内緒で参加しまして……。
私はとある街の高校で、教師をしています。
その高校は女子校で、いわゆるお嬢様学校と世間では言われているようです。品行方正で礼儀正しい子たちばかりが揃っていると、ありがたい評価をいただいております。
ですが、問題が無いわけではありません。他の学校と同じように、ナイーブな思春期の子供たちがそこにはいるのですから。問題があるに、決まっています。問題を抱えている子供がいるに、決まっています。
仮に……アイ、とその娘のことを呼びましょうか。アイは私が担任をしているクラスにいた、一人の女の子です。アイは、お嬢様学校と呼ばれている我が校の中でも特別にお嬢様であると、クラスメートから称されていました。深窓の令嬢、とでもいえば言いのでしょうか。艶やかな黒髪に、物憂げな瞳が印象的な、とても美しい女の子でした。
アイはクラスの中心にいたというわけではありませんが、それでもその言葉一つ一つに何か重みのようなものを感じさせていて、だれもが彼女に意見を求めました。その憂いに満ちた言葉の数々は、少し高校生離れしていたと言えるかもしれません。
これは私見ですが……本来、明るく無邪気なはずの子供が、その顔に陰を見せるとき、そこにはほとんどの場合、家庭の問題が横たわっています。
私はアイとその母親を気に掛けていました。アイの家庭には問題がありました。
アイの母親には精神的な障害があったのです。
障害は年々酷くなっていき、やがてアイの母親は家から一歩も外に出ることが出来なくなってしまいました。
アイは、母親の介護をしなくてはいけなくなりました。複雑な、あまりにも複雑な事情によりアイと母親は、本来彼女たちを庇護すべき父親から見捨てられていました。一定の生活費、養育費は支払われていたようですが、それ以外は無視。アイは自分ひとりで母親の面倒を見なくてはいけなくなったのです。
だんだんアイは学校に来なくなりました。たまに学校に来たときには、顔に大きな痣をつくっていたときもありました。私はアイの家に何度も通いました。どうか私に相談してください、一緒に考えていきましょう。そう説得しました。けれど、
『先生は心配しないで。母さんのことは、全部ボクが背負っていくからさ』
彼女は、あまりにも、大人すぎたのでしょう。もっともっと子供でいてよかったのに、大人すぎたのです。
しばらくして、アイの母親が自殺したという連絡が届きました。
それからすぐに、アイが自殺未遂をしたという連絡が届きました。
そして、アイが、病院から忽然と姿を消したという連絡が届きました。
わずか三日の出来事ですよ、信じられますか? わたしは呆然と、呆然と……。
……そして、あの日。月がやけに眩しかった夜。
私はショックが癒えぬまま、ふらふらと夜の帰り道を歩いていました。
人通りの滅多にない道へ入ったときです。私の前に、一人の女の子が立っていました。月の光に照らされて、その顔ははっきりと見えました。
その女の子は、確かに、確かにアイでした。病院服姿のアイでした。私は感情が溢れ出しそうになり、アイに抱きつこうと、走り出しました。
しかし。
アイのすぐ傍にはもう一人……いえ、『もう一匹』誰かがいました。
小学生ぐらいの背丈、緑色の髪……そして、まるで昆虫のような触覚。見た目は人間に似通っていましたが、明らかに人間ではありえない部分があったのです。
私がぎょっとして立ち止まると、その人間に似た存在は……人間に似た存在は……。
……うう、あ、あ……ああ……! ああ……!
……ごめんなさい、大丈夫です、大丈夫です。最後まで、言わせてください。言いたいんです。言わなくちゃいけないんです。
……『妖怪』はアイにむかって足を振り上げました。
そのまま、アイの、首を、へし折りました。
……アイは! アイは! 倒れて、そのまま動かなくなって! 首はありえない方向にだらんとたれて!
私は何も出来なかった! アイが妖怪に殺されるのを黙って見ていただけだった!
アイを殺した妖怪はきょっとんとした顔で言った!
『あれ? 獲物は狩ったけど……ここどこだろう?』
アイのことを、獲物と!
そいつはしばらくして姿を消した! 一瞬で姿を消した! 幻想郷に戻ったんだ!
私は会の人たちにあの妖怪の名前を教えてもらった! アイを殺した妖怪の名前を教えてもらった!
リグル・ナイトバグ!
リグル・ナイトバグ!
リグル・ナイトバグ!
ああ、ああ! ああああああああああ!
……ごめんなさい……本当にごめんなさい。取り乱しました……。
アイは、妖怪に、殺されてしまいました。
どうして彼女が殺されなければいけなかったのですか
私はアイを助けたかった。苦しみに喘ぐ彼女を助けたかった。
彼女はまだ十八歳。まだまだこれからだったのに。
どうして、どうして。本当に良い子だったのに」
それからも幻想郷に対する弾劾は続いた。
ひきこもりの兄が部屋で頭を半分抉られていたのを目撃したと語った少女がいた。
友人が幻想郷に行き、発狂して戻ってきたことを嘆く男がいた。
中には、幻想郷に行ったことがあると証言し、そこで片手をもぎ取られたことをしゃべり続ける女がいた。
彼らは幻想郷の妖怪たちに、己や親しい人を傷つけられた。そしてその後、彼らの多くは自らの不可思議かつ悲惨な体験の真相を探ろうとした。
『幻想郷を絶対に許さない会』は彼らの調査に気づくと、かたっぱしから声をかけた。あなたが憎むべき存在は幻想郷である、共に戦おう、と。
苦しみの淵にあった彼らにとって、それは確かに一種の救いであった。
「はい、ありがとうございました! これもまた、まことに、まことに胸を打つ証言でした!」
何人目かの体験談が終わって、最初にのべつ幕なしに演説していた運営部の男が、再び声をあげた。
「言いにくかったこともあるでしょう、胸が張り裂けそうなこともあったでしょう。それでも真実を語っていただいたことに、一同心より感激いたしております!」
ばっ、と男は右手を天へ高々と振り上げた。
「いま、ここに私たちは確信の度を深めました! 幻想郷は実在する、妖怪は実在する! もはや疑う余地すらありません!」
そして男の言葉は、もはや絶叫に近づいていた。
「我々は幻想郷の映像を全世界に公開します! 疑う人間も出てくることでしょう、しかし知ったことか! 真実は我らと共にあり! 大切な人を奪い去った幻想郷を、許すことは出来ない!」
「そのとおりだ!」
市民会館大ホール内のほぼ全ての人々が、その目に涙を浮かべていた。感情は最高潮に達し、もう自分たちが悲しくて泣いているのか、それとも感動して泣いているのかすら分からない。
けれどただ一つ、幻想郷との戦いはこれから始まるのだということは分かる。幻想郷から様々な妨害や、直接的な攻撃がやってくるかもしれない。だが、自分たちは決して屈したりしないと心の中で誓う。
もういなくなってしまった人たちに誓う。
「さて、それでは! 締めのお言葉はこの方に語ってもらいましょう! 幻想郷を絶対に許さない会会長のお言葉です!」
男は、舞台上の端のイスに座っていた女性に発言を促した。会の会長。そういえば、集会が始まってから一度も喋っていないな、と人々は思った。
かつて『アイ』という教え子がいた教師は、会長の目を見た瞬間、言い知れぬ恐怖を覚えた。これと同じような種類の目を、私はどこかで見たことがある。
豪奢な金髪に、紫色のドレスを着た女性は、言った。
「こんにちは皆さん」
にこりと微笑んで、
「『幻想郷を絶対に許さない会』会長、八雲紫です」
ただ、貴重なボクっ娘なお嬢様を殺したリグルは許されない
紫の知力は侮れない・・・
すみません
また古今東西人間は己を偽るストレスを抱えており、誰もが正直という暴露をしたいと思っている それが重要なことなら尚更だ
だから正直になれと誘惑し策を弄する曲者もあとを絶た無い
それが重要なことなら尚更だ
特に悲願とも言える目標の暴露は古今東西大変な喜びと共に大変なリスクを伴う
ゆかりんエゲツないわ
あと自分は今回やられた人間みたいに人を思いやって仇をとろうとする人間になりたい(淀んだ目をしながら)
しかし、東方の世界観は幻想入りというこの世界で忘れ去られたもの達、そのたどり着く先として描かれているものです
なので、ひとこと言わせていただくのでしたら
『これ東方でやる意味ありました?』