冬は嫌いだ。
何度呟いたか分からないその言葉を、私はまた呟く。
地底で異変が起こる前に何時の間にか幻想郷に来た外来人達によって、冬は一変した。
何でも、外の世界では「くりすます」だの、「ばれんたいんでー」だの、「ほわいとでー」だとか言う行事が人気になっているらしく、その外来人…主に東風谷早苗がその行事を広めていたらしい。
まあ、実質広めたのだろう。証拠に数年前からその行事達が行われる事になった。
地上との交流も再会…と言うより地上と地下に対する条約があやふやになった今、その情報を聞きとって地下に広めた妖怪も多数いる。
その所為で今、私は―――
「いちゃつく相手が居て妬ましい、ですか。分からない訳では有りませんが、それで何故此処に来るのです?」
「心を読む前に答えてやるわよ。いちゃつく相手が居ない残念な貴方と話しながらいちゃつく奴を嫉妬するのよ。どぅーゆーあんだーすたん?」
そう、此処は地霊殿、別名動物園。そして私は今さとりと話をしている。
「…私にはお燐とかお空とかこいしが居ますが」
「私が何の根拠も無しに移動するタイプだと思う?人型になれるペットは全員他のとくっ付いてるわよ、妬ましい事に。そして妹さんはさっき地上に向かって行ったわ」
「な…」
さとりが慌てる。恐らく「誰かが私と一緒に今夜を過ごす人が居るだろう」とでも思っていたのだろう。だが現実は残酷だ。そんな淡い期待は真っ先に壊される物だ。ちなみにこいしは妬ましいとか思ってたら何時の間にか橋を渡っていた。恐らく今は地上を適当にぶらついているのだろう。
言っていなかったが今日がその「くりすます」と言う日であり、どうやら「よーろっぱ」と言う区分で「きりすと教」を広めた「いえす」とか言う奴の誕生祭らしい。なんでそんなのを私達が祝うんだ。そしてそこを譲ったとしてもなんでそれがカップルがいちゃいちゃする日になるんだ妬ましい。
話を逸らすと年を越して直ぐに来る「ばれんたいんでー」とか「ほわいとでー」も簡単に言えばいちゃいちゃする日だ。なんで冬はこうも妬ましい行事が多いのだろうか。私が嫉妬の妖怪と言ってもこうも嫉妬する行事が間髪を容れずに来ると嫉妬死してしまう。現に去年は魘された。夢の中でも色んな奴がいちゃいちゃしてやがった、嗚呼思い出すだけでも妬ましい。
「そんな…パルシィも辛い思いをしていたのですね…そして私も構ってくれる人も居ないなんて…悲しいです」
「言っとくけど発音間違ってるわよ。『シ』じゃなくて『ス』だから」
「間違いは誰にでもあります」
単に憶えて無いだけじゃないかと言おうとしたが、思うだけに留めておいた。図星だったとしてもどうという事は無いし。
「…じゃあ、本題に移りましょう。まず――」
~~~
「――とそろそろ簡単に纏めようかしら。とりあえず知ってて損が無いのはマリアリとマリパチュね。そしてアリスもパチュリーも魔理沙以外の人脈があんまり無いのよ。それに今日はクリスマスと言う特別な日。魔理沙がどちらを選んだとしても、もう片方がとっても寂しい思いをするのよ。どぅーゆーあんだーすたん?」
「え、ええ…」
こう言うパルスィは適当に相槌を打っておくに限る。
彼女は嫉妬に関して話すとほぼ周りの声は聞えないのだ。
「そして選ばれなかった片方は思うわ。『どうして私じゃ無くて彼女なんだ』と。それこそ嫉妬ね。そして大体その嫉妬は色々な場所で起こるわ。例えば霊夢とレミリアなんて物もあるけどそうしたら咲夜が黙っちゃいないだろうし、美鈴なんかはめーさくじゃない限り無理でしょうね。レティと大妖精がチルノを取り合うし、此処に話を移せば鬼なんかもそうだったりするかもね」
「めー…れて…ち…貴方地上に言った事ってありましたっけ?」
「無いわよ?ただね、こういった日に地上から流れて来る重い嫉妬は意外と言葉として回収できるのよ」
「何ですかそのトンデモ設定!?」
かなり驚いた。嫉妬を言語として回収とか、過大評価すれば幻想郷中の醜い心の声が聞こえてしまう様な物だ。
「トンデモって酷いわね…まあ兎に角、何が言いたいかって言うと、金髪の子妬ましい。之に限るわね」
「ああ…はい」
貴方も金髪じゃないですかねと小声で言ったが気にしないなんて思われた。聞えたなら返しても良いのに。
「それで、別にカップルに対しては年中無休で妬ましいと思っているけども、態々クリスマスに見せびらかす様にいちゃいちゃしてるのが凄く妬ましいと感じるのよ。分かる?」
「まあ…分かりはしますが」
「でしょう?」
だからと繋ぐパルスィに対し、時間とは意外と早く流れる物か、地霊殿中に鐘の音が鳴り響いた。時計を見ると、短針は6の所で丁度止まっていた。六時を伝える為の鐘だった。
「あらあら…もうこんな時間。クリスマスにぼっちは確定の私は帰りましょう」
そう言ってパルスィは私にまたねと言うと、部屋のドアを開ける前に振り向いてこう言った。
「今更だけど急に来てかなりの時間私の相手をしてくれてありがとうね」
「いえ、貴女によれば私も今日はぼっちの日らしいので」
多少の皮肉を込めてそう言った。
「ふふ…そうね。それじゃあ、また何時か」
そう言って私はドアを開け、パルスィは私に付いて行く。
周りから忘れかけられているが私は地霊殿の主だ。お客さんが帰る時はきちんと玄関まで送るのは…まあ、今人型になれないペットが居ないので当然と言えば当然なのだが。
歩いている間パルスィの心でも読んでいようかと考えていたが、妬ましいとか嫉妬とかそう言った物しか無かったので、止めてしまおうかと考えていた。
が、結局それは実現されなかった。
「あれ、さとり、どうしたの?」
「…そう言えば、私は怒るべき事がありました」
「?」
「パルスィ、先程まで私と話をしていましたね」
「ええ、そうだけど」
「分からない、ですか。では言いましょう」
「貴女が急に来て私はかなりの時間を潰してしまいました。事前予約の無い地霊殿の長時間の滞在は、罰として私と一緒に夕飯を作って貰います」
何度呟いたか分からないその言葉を、私はまた呟く。
地底で異変が起こる前に何時の間にか幻想郷に来た外来人達によって、冬は一変した。
何でも、外の世界では「くりすます」だの、「ばれんたいんでー」だの、「ほわいとでー」だとか言う行事が人気になっているらしく、その外来人…主に東風谷早苗がその行事を広めていたらしい。
まあ、実質広めたのだろう。証拠に数年前からその行事達が行われる事になった。
地上との交流も再会…と言うより地上と地下に対する条約があやふやになった今、その情報を聞きとって地下に広めた妖怪も多数いる。
その所為で今、私は―――
「いちゃつく相手が居て妬ましい、ですか。分からない訳では有りませんが、それで何故此処に来るのです?」
「心を読む前に答えてやるわよ。いちゃつく相手が居ない残念な貴方と話しながらいちゃつく奴を嫉妬するのよ。どぅーゆーあんだーすたん?」
そう、此処は地霊殿、別名動物園。そして私は今さとりと話をしている。
「…私にはお燐とかお空とかこいしが居ますが」
「私が何の根拠も無しに移動するタイプだと思う?人型になれるペットは全員他のとくっ付いてるわよ、妬ましい事に。そして妹さんはさっき地上に向かって行ったわ」
「な…」
さとりが慌てる。恐らく「誰かが私と一緒に今夜を過ごす人が居るだろう」とでも思っていたのだろう。だが現実は残酷だ。そんな淡い期待は真っ先に壊される物だ。ちなみにこいしは妬ましいとか思ってたら何時の間にか橋を渡っていた。恐らく今は地上を適当にぶらついているのだろう。
言っていなかったが今日がその「くりすます」と言う日であり、どうやら「よーろっぱ」と言う区分で「きりすと教」を広めた「いえす」とか言う奴の誕生祭らしい。なんでそんなのを私達が祝うんだ。そしてそこを譲ったとしてもなんでそれがカップルがいちゃいちゃする日になるんだ妬ましい。
話を逸らすと年を越して直ぐに来る「ばれんたいんでー」とか「ほわいとでー」も簡単に言えばいちゃいちゃする日だ。なんで冬はこうも妬ましい行事が多いのだろうか。私が嫉妬の妖怪と言ってもこうも嫉妬する行事が間髪を容れずに来ると嫉妬死してしまう。現に去年は魘された。夢の中でも色んな奴がいちゃいちゃしてやがった、嗚呼思い出すだけでも妬ましい。
「そんな…パルシィも辛い思いをしていたのですね…そして私も構ってくれる人も居ないなんて…悲しいです」
「言っとくけど発音間違ってるわよ。『シ』じゃなくて『ス』だから」
「間違いは誰にでもあります」
単に憶えて無いだけじゃないかと言おうとしたが、思うだけに留めておいた。図星だったとしてもどうという事は無いし。
「…じゃあ、本題に移りましょう。まず――」
~~~
「――とそろそろ簡単に纏めようかしら。とりあえず知ってて損が無いのはマリアリとマリパチュね。そしてアリスもパチュリーも魔理沙以外の人脈があんまり無いのよ。それに今日はクリスマスと言う特別な日。魔理沙がどちらを選んだとしても、もう片方がとっても寂しい思いをするのよ。どぅーゆーあんだーすたん?」
「え、ええ…」
こう言うパルスィは適当に相槌を打っておくに限る。
彼女は嫉妬に関して話すとほぼ周りの声は聞えないのだ。
「そして選ばれなかった片方は思うわ。『どうして私じゃ無くて彼女なんだ』と。それこそ嫉妬ね。そして大体その嫉妬は色々な場所で起こるわ。例えば霊夢とレミリアなんて物もあるけどそうしたら咲夜が黙っちゃいないだろうし、美鈴なんかはめーさくじゃない限り無理でしょうね。レティと大妖精がチルノを取り合うし、此処に話を移せば鬼なんかもそうだったりするかもね」
「めー…れて…ち…貴方地上に言った事ってありましたっけ?」
「無いわよ?ただね、こういった日に地上から流れて来る重い嫉妬は意外と言葉として回収できるのよ」
「何ですかそのトンデモ設定!?」
かなり驚いた。嫉妬を言語として回収とか、過大評価すれば幻想郷中の醜い心の声が聞こえてしまう様な物だ。
「トンデモって酷いわね…まあ兎に角、何が言いたいかって言うと、金髪の子妬ましい。之に限るわね」
「ああ…はい」
貴方も金髪じゃないですかねと小声で言ったが気にしないなんて思われた。聞えたなら返しても良いのに。
「それで、別にカップルに対しては年中無休で妬ましいと思っているけども、態々クリスマスに見せびらかす様にいちゃいちゃしてるのが凄く妬ましいと感じるのよ。分かる?」
「まあ…分かりはしますが」
「でしょう?」
だからと繋ぐパルスィに対し、時間とは意外と早く流れる物か、地霊殿中に鐘の音が鳴り響いた。時計を見ると、短針は6の所で丁度止まっていた。六時を伝える為の鐘だった。
「あらあら…もうこんな時間。クリスマスにぼっちは確定の私は帰りましょう」
そう言ってパルスィは私にまたねと言うと、部屋のドアを開ける前に振り向いてこう言った。
「今更だけど急に来てかなりの時間私の相手をしてくれてありがとうね」
「いえ、貴女によれば私も今日はぼっちの日らしいので」
多少の皮肉を込めてそう言った。
「ふふ…そうね。それじゃあ、また何時か」
そう言って私はドアを開け、パルスィは私に付いて行く。
周りから忘れかけられているが私は地霊殿の主だ。お客さんが帰る時はきちんと玄関まで送るのは…まあ、今人型になれないペットが居ないので当然と言えば当然なのだが。
歩いている間パルスィの心でも読んでいようかと考えていたが、妬ましいとか嫉妬とかそう言った物しか無かったので、止めてしまおうかと考えていた。
が、結局それは実現されなかった。
「あれ、さとり、どうしたの?」
「…そう言えば、私は怒るべき事がありました」
「?」
「パルスィ、先程まで私と話をしていましたね」
「ええ、そうだけど」
「分からない、ですか。では言いましょう」
「貴女が急に来て私はかなりの時間を潰してしまいました。事前予約の無い地霊殿の長時間の滞在は、罰として私と一緒に夕飯を作って貰います」