「や、やめろッ!こっちに来るなッ!」
言葉が通じていないのか、それともこちらの言葉を無視しているのか、あいつはこちらに迫ってくる。
私は全力で走る。
もうどれだけこの無限に続く空間を走っているだろうか。
息も絶え絶えで、口を大きく開け酸素を取り入れながら走る。
もう止まってしまいたい。体力はもう限界だ。
でも、あいつには絶対に捕まりたくない。
捕まったら何をされるか分からない。
そう思いながら必死で走る。
地面に落ちていた何かに躓く。
顔を強く打つ。口の中に血の味が広がる。
はは、私もこれで終わりか…。
転んだ拍子に何かが転がり出る。
八卦炉…?
私、魔法使えるじゃん。
空も飛べるじゃん。
悪いな化け物。恨むなら私を襲った自分を怨め!
「マスタァァスパァァァァクッ!」
今出せる全力でマスパを撃つ。
マスパの反動で後方に吹っ飛ぶ。
はっ、私のマスパを受けて無事な奴がいるか。
立ち込める煙の中には、ぴんぴんとしている化け物が立っていた。
「……嘘…だろ?」
疲弊しているとはいえ、今出せる力を出した手加減なしの全力マスパだぞ?
逃げなきゃ…!
足に力を入れる。力を入れても少しピクリ、と動くだけ。
飛ぼうとするが、体が言うことをきかない。
何で?何で動かないんだよ!
さっきのマスパで体力が無くなったのか?
化け物がゆっくりと私に近づいて来る。近づくにつれ、咽せ返る程の酷い悪臭がする。化け物が鋭い牙が生えている口を大きく開き、鋭い爪をこちらに向ける。
もう限界だ。私は叫び声をあげる。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
眼が覚めた。汗がびっしょりだ。
今のは夢なのか?おいおい冗談はよしてくれ…。
ガタッ
「ひゃっ!」
後ろで物音がした。
後ろに得体の知れないモノがいるかもしれない。もしいたらどうする?見たくない。だけど気になって見てしまう。ゆっくりと、時間をかけて首を動かす。
…本が落ちただけじゃないか。驚かせやがって。
何で私は机で寝ているんだ?
机の上には、開きかけの本と、実験器具が並べてあった。
あぁー、そういや実験してた途中で寝たんだっけ…。
今、何時だ?窓の外を見ると、太陽が西に沈み、もう夜が始まるような時間だった。
ま、いいや。まずシャワーを浴びて汗を流したいな。そんで何か飯を食うか。
シャワーを浴びている時は少し怖かったが、なんとか大丈夫だった。
今は飯を食ってる最中なんだが、何処かから物音が聞こえる度ビクビク怯えなければいけない。
一人は怖い。どうしようか。
博麗神社なら泊めてくれるだろうか。
最近霊夢に会ってないしな。顔合わせ程度に行ってやるか。
そうと決まれば急がないとな。
部屋着を脱ぎ、いつも着ている白黒の服を身に纏い、愛用している箒を手に取る。
玄関の扉を開ける。
さっきまでは日の光があったが、辺りはもう真っ暗だ。
……行くのやめようかな。
いや、一人は怖い。暗いのなんて気合いで何とかなる!
特にこれといった事は起きずに博麗神社についた。何だ、案外怖くなかったぜ。
「おーい!霊夢ー!」
……あれ?居ないのか?此処まで来ていないとかは困るぜ?
障子を開け放つ。
…居るじゃないかよ。
魔理沙さんが来てやったってのに、霊夢の野郎、寝てやがる。
寝るなら布団で寝ろよな。風邪でもひいたらどうするんだよ。
取り合えず上がらせてもらうぜ。
「おい、霊夢起きろ!魔理沙さんが来てやったぞ!」
少し大きめな声で霊夢を起こす。
「うぅん」
そう言って寝返りをうつ。
霊夢の横にしゃがみこみ
「おい!霊夢ー起きろ!」
と声をかけ霊夢の頬をぺちぺちと叩く。
「うん?……魔理沙?」
「やっと起きたな!」
「…こんな時間にどうしたの?」
「えっ?いや、最近霊夢に会ってないなーって思ってさ」
「ふぅん。ま、どうでもいいけど」
そう言いながら空を眺めている霊夢。
雲の隙間から覗く月光が辺りをぼんやりと写し出している。
「……月が、綺麗ね」
「あっ!霊夢もそう思うだろ?空飛んでるときに見えた月がいつもよりすごく綺麗でさぁ!」
私が笑いながらそう言うと、霊夢が無言で肩を殴ってきた。軽めに殴ったんだろうけど少し痛い。
「どうしたんだ?何か気にさわることしちゃったか?」
「魔理沙が馬鹿だからよ」
なんだよそれ…。
「あ、食器洗わなきゃ。悪いけど、そこで待っててくれる?」
「おう!任せとけ!」
そう言って台所に向かう霊夢。
霊夢と会うと安心できるんだよな~。殴られたのは癪だが。
此処まで来るのは嫌だったけど、霊夢の寝顔を見れただけ良しとするか。
私がふわふわとした気持ちで霊夢を待っていると、がさがさっという物音が何処からか聞こえた。
全身から血の気が引いた。
急いで霊夢がいる台所に駆け込む。
「うわっ!魔理沙?どうしたの?」
「別に。ただの気まぐれだぜ」
「へー。変な気まぐれもあるのね」
ふぅ~、何とか誤魔化せたな。
霊夢が食器を洗い終わるまで、他愛もない会話をしていた。
最近寝不足気味だ、魔法の実験していたら途中で寝てしまった、月がいつもより明るい、吸血鬼が家出した時に神社に押し掛けてきた、とか。
霊夢の愚痴はいつまでも続いた。その話が終わると、
「私はもう寝るけど、泊まってくの?」
と聞いてきた。
「あぁ、そのつもりだが、迷惑だったか?」
できれば今日は一人で寝たくない。
「別に。あんたいつも迷惑とかお構いなしで泊まってくじゃない」
「それもそうだな」
寝室に移動する。布団を敷いて、布団の中に潜り込む。
怖い時はどんなに暑くても布団から足を出せなくなる。出していたら何かに触られそうな気がするから。
隣に霊夢がいるとはいえ、怖いものは怖い。
「なぁ、霊夢」
「…なに?」
「そっちに行ってもいいか?」
……あれ?返事がない?
「…霊夢?」
「……好きにしたら?」
「ありがと」
そう言って霊夢が寝ている布団へと転がって行く。
…あったかい。さっきまで寝ていたのにまた眠くなってきた。
周りは暗いし、霊夢はあっちを向いてるからよく見えないが、顔が赤くなってる気がする。
「なぁなぁ、さっきは何で殴ったんだ?」
「魔理沙が馬鹿だからよ…。もういいじゃないの。過ぎた事は忘れなさい」
霊夢は私を殴った理由を言わないつもりか…ならば奥の手だ!
「ひゃぁっ!ちょっ!ちょっと!魔理沙!やめなさい!」
私は霊夢の脇をくすぐる。
「嫌だ。霊夢が私を殴った理由を言うまでやめないからな」
「わ、分かったから!言う!言います!だからやめてください!」
「最初からそう言えばいいのに」
霊夢をくすぐるのをやめる。
霊夢は口で息をしている。
「……日本人は直球じゃないのよ」
「はぁ?なんだよそれ…」
「言ったでしょ?眠いんだからもう寝る。おやすみ魔理沙」
「……おやすみ」
日本人は直球じゃない?霊夢は何でも直球に言うじゃないか。妖怪にも邪魔だったら邪魔ってはっきり言い切るだろ…。もういいや。起きたら忘れてるだろうし。
やっぱり霊夢といると安心できるぜ…。怖い夢を見れたことに少しだけ良かったと感じなくもないな…。
言葉が通じていないのか、それともこちらの言葉を無視しているのか、あいつはこちらに迫ってくる。
私は全力で走る。
もうどれだけこの無限に続く空間を走っているだろうか。
息も絶え絶えで、口を大きく開け酸素を取り入れながら走る。
もう止まってしまいたい。体力はもう限界だ。
でも、あいつには絶対に捕まりたくない。
捕まったら何をされるか分からない。
そう思いながら必死で走る。
地面に落ちていた何かに躓く。
顔を強く打つ。口の中に血の味が広がる。
はは、私もこれで終わりか…。
転んだ拍子に何かが転がり出る。
八卦炉…?
私、魔法使えるじゃん。
空も飛べるじゃん。
悪いな化け物。恨むなら私を襲った自分を怨め!
「マスタァァスパァァァァクッ!」
今出せる全力でマスパを撃つ。
マスパの反動で後方に吹っ飛ぶ。
はっ、私のマスパを受けて無事な奴がいるか。
立ち込める煙の中には、ぴんぴんとしている化け物が立っていた。
「……嘘…だろ?」
疲弊しているとはいえ、今出せる力を出した手加減なしの全力マスパだぞ?
逃げなきゃ…!
足に力を入れる。力を入れても少しピクリ、と動くだけ。
飛ぼうとするが、体が言うことをきかない。
何で?何で動かないんだよ!
さっきのマスパで体力が無くなったのか?
化け物がゆっくりと私に近づいて来る。近づくにつれ、咽せ返る程の酷い悪臭がする。化け物が鋭い牙が生えている口を大きく開き、鋭い爪をこちらに向ける。
もう限界だ。私は叫び声をあげる。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
眼が覚めた。汗がびっしょりだ。
今のは夢なのか?おいおい冗談はよしてくれ…。
ガタッ
「ひゃっ!」
後ろで物音がした。
後ろに得体の知れないモノがいるかもしれない。もしいたらどうする?見たくない。だけど気になって見てしまう。ゆっくりと、時間をかけて首を動かす。
…本が落ちただけじゃないか。驚かせやがって。
何で私は机で寝ているんだ?
机の上には、開きかけの本と、実験器具が並べてあった。
あぁー、そういや実験してた途中で寝たんだっけ…。
今、何時だ?窓の外を見ると、太陽が西に沈み、もう夜が始まるような時間だった。
ま、いいや。まずシャワーを浴びて汗を流したいな。そんで何か飯を食うか。
シャワーを浴びている時は少し怖かったが、なんとか大丈夫だった。
今は飯を食ってる最中なんだが、何処かから物音が聞こえる度ビクビク怯えなければいけない。
一人は怖い。どうしようか。
博麗神社なら泊めてくれるだろうか。
最近霊夢に会ってないしな。顔合わせ程度に行ってやるか。
そうと決まれば急がないとな。
部屋着を脱ぎ、いつも着ている白黒の服を身に纏い、愛用している箒を手に取る。
玄関の扉を開ける。
さっきまでは日の光があったが、辺りはもう真っ暗だ。
……行くのやめようかな。
いや、一人は怖い。暗いのなんて気合いで何とかなる!
特にこれといった事は起きずに博麗神社についた。何だ、案外怖くなかったぜ。
「おーい!霊夢ー!」
……あれ?居ないのか?此処まで来ていないとかは困るぜ?
障子を開け放つ。
…居るじゃないかよ。
魔理沙さんが来てやったってのに、霊夢の野郎、寝てやがる。
寝るなら布団で寝ろよな。風邪でもひいたらどうするんだよ。
取り合えず上がらせてもらうぜ。
「おい、霊夢起きろ!魔理沙さんが来てやったぞ!」
少し大きめな声で霊夢を起こす。
「うぅん」
そう言って寝返りをうつ。
霊夢の横にしゃがみこみ
「おい!霊夢ー起きろ!」
と声をかけ霊夢の頬をぺちぺちと叩く。
「うん?……魔理沙?」
「やっと起きたな!」
「…こんな時間にどうしたの?」
「えっ?いや、最近霊夢に会ってないなーって思ってさ」
「ふぅん。ま、どうでもいいけど」
そう言いながら空を眺めている霊夢。
雲の隙間から覗く月光が辺りをぼんやりと写し出している。
「……月が、綺麗ね」
「あっ!霊夢もそう思うだろ?空飛んでるときに見えた月がいつもよりすごく綺麗でさぁ!」
私が笑いながらそう言うと、霊夢が無言で肩を殴ってきた。軽めに殴ったんだろうけど少し痛い。
「どうしたんだ?何か気にさわることしちゃったか?」
「魔理沙が馬鹿だからよ」
なんだよそれ…。
「あ、食器洗わなきゃ。悪いけど、そこで待っててくれる?」
「おう!任せとけ!」
そう言って台所に向かう霊夢。
霊夢と会うと安心できるんだよな~。殴られたのは癪だが。
此処まで来るのは嫌だったけど、霊夢の寝顔を見れただけ良しとするか。
私がふわふわとした気持ちで霊夢を待っていると、がさがさっという物音が何処からか聞こえた。
全身から血の気が引いた。
急いで霊夢がいる台所に駆け込む。
「うわっ!魔理沙?どうしたの?」
「別に。ただの気まぐれだぜ」
「へー。変な気まぐれもあるのね」
ふぅ~、何とか誤魔化せたな。
霊夢が食器を洗い終わるまで、他愛もない会話をしていた。
最近寝不足気味だ、魔法の実験していたら途中で寝てしまった、月がいつもより明るい、吸血鬼が家出した時に神社に押し掛けてきた、とか。
霊夢の愚痴はいつまでも続いた。その話が終わると、
「私はもう寝るけど、泊まってくの?」
と聞いてきた。
「あぁ、そのつもりだが、迷惑だったか?」
できれば今日は一人で寝たくない。
「別に。あんたいつも迷惑とかお構いなしで泊まってくじゃない」
「それもそうだな」
寝室に移動する。布団を敷いて、布団の中に潜り込む。
怖い時はどんなに暑くても布団から足を出せなくなる。出していたら何かに触られそうな気がするから。
隣に霊夢がいるとはいえ、怖いものは怖い。
「なぁ、霊夢」
「…なに?」
「そっちに行ってもいいか?」
……あれ?返事がない?
「…霊夢?」
「……好きにしたら?」
「ありがと」
そう言って霊夢が寝ている布団へと転がって行く。
…あったかい。さっきまで寝ていたのにまた眠くなってきた。
周りは暗いし、霊夢はあっちを向いてるからよく見えないが、顔が赤くなってる気がする。
「なぁなぁ、さっきは何で殴ったんだ?」
「魔理沙が馬鹿だからよ…。もういいじゃないの。過ぎた事は忘れなさい」
霊夢は私を殴った理由を言わないつもりか…ならば奥の手だ!
「ひゃぁっ!ちょっ!ちょっと!魔理沙!やめなさい!」
私は霊夢の脇をくすぐる。
「嫌だ。霊夢が私を殴った理由を言うまでやめないからな」
「わ、分かったから!言う!言います!だからやめてください!」
「最初からそう言えばいいのに」
霊夢をくすぐるのをやめる。
霊夢は口で息をしている。
「……日本人は直球じゃないのよ」
「はぁ?なんだよそれ…」
「言ったでしょ?眠いんだからもう寝る。おやすみ魔理沙」
「……おやすみ」
日本人は直球じゃない?霊夢は何でも直球に言うじゃないか。妖怪にも邪魔だったら邪魔ってはっきり言い切るだろ…。もういいや。起きたら忘れてるだろうし。
やっぱり霊夢といると安心できるぜ…。怖い夢を見れたことに少しだけ良かったと感じなくもないな…。
最近はもこたんが夢に出てきました。内容は覚えていません。あっちの方じゃなかったことは確かです。
それはともかくレイマリ最高。いつか霊夢が報われる日がくるのをお待ちしております。
正体のわからない妖怪の方が怖いのかもしれません。
しかし夏目漱石の活躍は幻想郷の隔離後ですから、魔理沙が知らなくても無理ない気もしますが。
しかし夢の中で追いかけてくる奴が鬼巫女モードの霊夢とかじゃなくて本当に良かった
怖い夢を見ると寝るのが怖くなりますね