「はぁ……ひとりというのは案外寂しいものだな」
と、私は独り呟き年期の入った丸い卓袱台の前に腰を据えた。
どうもこの部屋は居心地が余り宜しくない。
一家団欒を過ごす大きさに設計された居間は私には少々広すぎである。
今日辺り橙でも訪ねてきてくれれば退屈が凌げるのだがなぁ、と思うものの生憎外は空っ風がヒューヒューと音を立てて吹き付けている。
猫又の式神である橙がこの寒い中を駆け抜けて来るのは少々辛かろう。
ならば次橙が来た時にたっぷり遊べるように掃除を今日中にしっかり済ませとくか。
プラス思考に切り替えさっさと目の前の食事に口をつける。
冬の間は私の主人である紫様が冬眠していらっしゃるので食事は味噌汁に白米と少々のお漬物と大変質素なものだ。
白い湯気を立てて自己主張をしている味噌汁を口に含むと鼻腔に味噌の仄かな甘い香りが広がり寂しさを紛らわせてくれる。
こうして朝食を済ませた私は右手を箸から箒へと様変わりさせた。
サッサッサと軽快なリズムを刻みながら玄関から掃いていく。
落ちているのは私の尻尾の抜け毛ぐらいで1時間もしないうちにあらかた掃除が終わってしまった。
私は残りの部屋である紫様の寝室の前にそっと行き荒い木目が目立つ襖をそっと開け、睡眠の邪魔にならないようそっと息を潜めて中に入る。
どこか静謐な空気に包まれてる中、我が主は布団に包まり寝ていらっしゃった。
白磁のような肌に閉じた漆黒の睫毛がコントラストを鮮やかに描き、シルクのように麗しい金色の髪が鮮やかに布団の上を流れている。
そんな主の寝顔の横に普段被っている真紅のリボンが付いた帽子が置いてあった。
主の端正な顔立ちとは反対に帽子は若干の糸のほつれや若干の汚れなどが見られた。
そういえば出会った当初からこの帽子を身につけていらっしゃったなどとふっと思い返す。
お節介かもしれないが新しい帽子を紫様の為に縫おうと思った。
私はその後お邪魔にならないよう箒を動かし部屋を後にした。
居間に戻り戸棚から裁縫道具を取り出す。
ひと針ひと針丹精を込めて縫う。そうすることで紫様とのお思い出を温めながら縫うことができる。
紫様と初めて出会った時私は荒んでたなーとかしみじみと思い出す。
毎日人を騙したり貶めたりしては笑い転げていたっけ。
そんな私に手を差し伸べてくれて今の生活を与えてくださった紫様。
従者となった今、普段の紫様のぐーたらさに呆れたりすることもあるけど感謝の念が改めて堰を切ったように溢れ出る。
そんなことを考えいるうちにいつの間にか新しい帽子は出来ていた。
それを紫様の枕元にそっと置き、そっと後にした。
冬を重苦しく覆っていた雪が溶け桜の花が蕾を膨らませ春を目前に控えた季節。
私は長い眠りから目を覚まし、ゆっくりと体を起こす。
起きたばっかはどうも体が怠くていけない。
思わずうーんっと体を伸ばす。
――あれ? 何故かしら....?
いつもの帽子を被ろうと横を見ると何故か帽子が二つになっていた。
私は思わず笑みが零れ、綺麗な方の帽子を被った。
「今度あの子の尻尾でも久々にブラッシングでもしようかしら。」
と、私は独り呟き年期の入った丸い卓袱台の前に腰を据えた。
どうもこの部屋は居心地が余り宜しくない。
一家団欒を過ごす大きさに設計された居間は私には少々広すぎである。
今日辺り橙でも訪ねてきてくれれば退屈が凌げるのだがなぁ、と思うものの生憎外は空っ風がヒューヒューと音を立てて吹き付けている。
猫又の式神である橙がこの寒い中を駆け抜けて来るのは少々辛かろう。
ならば次橙が来た時にたっぷり遊べるように掃除を今日中にしっかり済ませとくか。
プラス思考に切り替えさっさと目の前の食事に口をつける。
冬の間は私の主人である紫様が冬眠していらっしゃるので食事は味噌汁に白米と少々のお漬物と大変質素なものだ。
白い湯気を立てて自己主張をしている味噌汁を口に含むと鼻腔に味噌の仄かな甘い香りが広がり寂しさを紛らわせてくれる。
こうして朝食を済ませた私は右手を箸から箒へと様変わりさせた。
サッサッサと軽快なリズムを刻みながら玄関から掃いていく。
落ちているのは私の尻尾の抜け毛ぐらいで1時間もしないうちにあらかた掃除が終わってしまった。
私は残りの部屋である紫様の寝室の前にそっと行き荒い木目が目立つ襖をそっと開け、睡眠の邪魔にならないようそっと息を潜めて中に入る。
どこか静謐な空気に包まれてる中、我が主は布団に包まり寝ていらっしゃった。
白磁のような肌に閉じた漆黒の睫毛がコントラストを鮮やかに描き、シルクのように麗しい金色の髪が鮮やかに布団の上を流れている。
そんな主の寝顔の横に普段被っている真紅のリボンが付いた帽子が置いてあった。
主の端正な顔立ちとは反対に帽子は若干の糸のほつれや若干の汚れなどが見られた。
そういえば出会った当初からこの帽子を身につけていらっしゃったなどとふっと思い返す。
お節介かもしれないが新しい帽子を紫様の為に縫おうと思った。
私はその後お邪魔にならないよう箒を動かし部屋を後にした。
居間に戻り戸棚から裁縫道具を取り出す。
ひと針ひと針丹精を込めて縫う。そうすることで紫様とのお思い出を温めながら縫うことができる。
紫様と初めて出会った時私は荒んでたなーとかしみじみと思い出す。
毎日人を騙したり貶めたりしては笑い転げていたっけ。
そんな私に手を差し伸べてくれて今の生活を与えてくださった紫様。
従者となった今、普段の紫様のぐーたらさに呆れたりすることもあるけど感謝の念が改めて堰を切ったように溢れ出る。
そんなことを考えいるうちにいつの間にか新しい帽子は出来ていた。
それを紫様の枕元にそっと置き、そっと後にした。
冬を重苦しく覆っていた雪が溶け桜の花が蕾を膨らませ春を目前に控えた季節。
私は長い眠りから目を覚まし、ゆっくりと体を起こす。
起きたばっかはどうも体が怠くていけない。
思わずうーんっと体を伸ばす。
――あれ? 何故かしら....?
いつもの帽子を被ろうと横を見ると何故か帽子が二つになっていた。
私は思わず笑みが零れ、綺麗な方の帽子を被った。
「今度あの子の尻尾でも久々にブラッシングでもしようかしら。」
少しずつシーンごとの密度(文字の多さではなく)を上げていくと良いと思いますです。
あ、私も結構好きです。