最近は雲一つない青空が続き、少し前まではそれで良い暖かさだったけれど、あっという間に、夏はまだ始まったばかりと思わせない程にくたびれるような熱気に包まれる。普段灼熱地獄でさとり様のお手伝いをしているあたいではあるが、そういう熱さと地上の暑さは別物だということをこの場で断っておく。
物好きな吸血鬼や鬼も季節替わりには弱いのか、今日の神社にいるのは巫女の霊夢と魔法使いの霧雨魔理沙という、地底でも有名な二人である。
この日差しでさすがに日光浴する気はないので畳張りである部屋の隅で丸まっていたあたいを見て、霊夢達は地底に潜入してきた時の話を咲かせていた。
「それにしても、お前と紫って、なんか親子みたいだよな」
「あ?」
会話の中で魔理沙が何気なく放った言葉に霊夢は殺意を孕んだような声音で返す。
「落ち着け、何もこんな天気が良すぎる日に喧嘩を売ろうってわけじゃない。輝夜の時も空の時も、お前は紫と組んでたからな。それに人間と妖怪にしては、お前達は息が合いすぎてるからな。それだけだよ」
「ふん。ならあんたとアリスだって……あんた達はどちらかというと姉妹って感じね」
「まぁ、お前と紫も、よく考えてみれば親子と言うよりは孫と――」
「やめなさい。刀とスキマで喉を潰されるわよ」
何かに納得したように魔法使いは口を閉ざす。何処にあのスキマ妖怪の耳があるか、あたいとしても油断できない。
「お前にも可愛い赤ん坊の時代があるから、人間ってのは不思議なものだなぁ」
「可愛い赤ん坊?」
「なんだよ、まるでお前には赤ちゃんの時代がなかったような――」
「そうじゃなくて、赤ん坊が可愛いって……」
「赤ん坊は可愛いだろ」
「?」
「……え?」
互いが互いを信じられないような目で見つめ合っている。あたいも人里に行った時、人間の赤子は目にしたことがある。自力で動けず、意思の疎通もできない状態であったが、それで正常なのだからなんとも不思議だ。自力で歩けなければ母親の乳を飲めず死んでしまうのではないかと、時々気になってしまうものだが、その代わりに下手な獣よりけたたましい声で叫び、自らの異常を親に知らせるらしい。生まれて直ぐに親を召使い扱いするとは、なんともおかしく恐ろしい。
「赤ん坊は可愛いだろ? 小っちゃくて丸っこくて、なんかこう……守ってあげたくなるだろ。母性本能だよ!」
「そうかしら。可愛い可愛くない以前に、どれも同じ顔じゃない」
「いやそうじゃなくて、赤ん坊自体が可愛いだろ」
「そうかしら。なんか皆、馬鹿っぽい顔してるし」
二人の喰い違いはまだまだ続く。もちろんあたいは霊夢の意見に賛成である。『可愛く思う』という感情が人間にしかないのかもしれないと考えると、自らの子を『可愛い』と思うのもまた人間だけである。生殖という本能の末できた子供故、可愛いも何もない。『可愛い』などと、子供を人形と同様に扱っているのではないか。橋姫や鬼と何気なく雑談した際『可愛い子供を作っている人間達が妬ましい』という言葉に、あたいは寧ろ寒気を覚えた。橋姫の言った事だから少し話が膨らんでいるのかもしれないが、そんな理由で生まれた子供が、もし可愛くなかった、または可愛くなくなったら、その人間は子供をどうするのだろうか。人形で例えるが、人形が可愛くなくなる条件といえば、汚れるか、壊れるかだろう。極端な話、顔が可愛い人間が何らかの事故で顔を失った時、親は子供を捨てるのだろうか。自分が丁寧に作り上げた人形が壊れた際の気持ちは解らなくもない。しかし人間は生きていて人形ではない、あたいが言うのもなんだけど。もちろんこれは想像の仮定でしかないのだけれど、そんな人間がいるとしたら、それはなんとも恐ろしく滑稽だ。可愛いものが欲しいのならば魔法の森にいる魔法使いから譲ってもらえばいい。勝手に決めつけるのもあれだが、人間の子供というのはなんともかわいそうなものだ。さて、先程霊夢は赤ん坊の事を『皆同じ顔』と言っていたが、同意せざるを得ない。例えば、郭公という鳥は別の鳥の巣に卵を産み、別の親鳥に雛を育てさせている。その親鳥は自分の子ではないと理解しているのかは解らないが、果たして同じような事が起きたら第六感の鈍った人間は気付くのだろうか。恐らく気付かないであろう、というより『気付かない』という例をあたいはこの目で見てしまっている。数年前に人里を散歩した際、あたいは一人のからかさお化けと出会い、その腕には人間の赤子が二人抱かれていた。わけを尋ねると、『赤子を入れ替えて、自分達の子供が別の子供になっている、と驚かせてやる』と企んでいた。それから数日後、悪戯がばれて彼女は袋叩きにされる……事はなく、互いの親達は何食わぬ顔で過ごし、他人の子を育てていた。自分の計画が上手く行かなかった事を不満に思い、からかさお化けはその場を後にした。そのままにしたのだ。痣などの特徴を覚え、あたいは月に一回の感覚で確認しているが、尚も子供達は入れ替わったままである。それにはさすがに滑稽を通り越して呆れてしまった。当然と言えば当然だが、それぞれの両親は今の子供と血が繋がっていない事など露ほども思っていない。所詮その程度なのだろう。ある時は、子は宝、と喚いている別の人間の家にあたいは忍び込んだ。一っ跳びで辿り着いた窓は開いていて、ものの数秒で赤子の眠る布団へと辿り着いた。これほど盗みやすい宝だと逆に価値が薄くなってしまうのではないかと考えたが、よく考えればあくまで宝であらしいる赤子なんてそこいらで生まれているから、とっくに暴落しているだろう。とりあえずは、赤子を入れ替えた事を教えたら大層驚くぞ、という事をからかさお化けにいつ伝えるかだけは考えておこう。
「まっっったく。お前の親だって、きちんとお前を可愛がったから今のお前がいるわけなんだし」
「親が子を育てるのは当たり前じゃない。動物を飼うわけじゃないんだから。そもそもあんた――」
「あーうるさいうるさい。私は自分から家を出てやったんだ。もう十分可愛がってもらったんだよ」
「……そう」
そういえば、あたいは霊夢の親を見たことがない。何も知らない人からすれば、実はスキマ妖怪が霊夢の母親である、と言っても信じる可能性があると思う。霊夢の強さはそれを納得させるほど妖怪染みているのだから。霊夢の親について気にはなるが、さすがにあたいも自分の仕事をほっぽり出してまでここに居座りつづけることはできないので、運よく現れる日を待とう。
「ま、私はまともな方だと思うぜ。親に頼らずきちんと自立してるし、悪口も言わないからな」
「……そう」
親に頼ることは何も至極真っ当な事だとあたいは思う。しかし、確かに悪口は感心しない。初めから一人だけで生きていける人間なんて存在しない。犬や猫でさえも難しいのに、人間にはとても無理だろう。その代わりに知恵や心があるのだろうが、それ故に起こる事があるのが、まさかの親殺し子殺し等とは。旧地獄である地底で暮らしていると、生前にそういった行いをした霊の存在を何度か知ることはある。賢いのに愚かとは、最早救い難いものだ。
にゃーん。
恐ろしさのあまり目の前にいる人間達に一鳴きする。魔法使いが反応して近付き、私の頭を撫ではじめる。猫の姿とはいえ、髪を乱されるのは好きではない。
「妖怪はそういう悩みがなさそうでいいなぁおい。……なぁ、霊夢」
「何よ」
「今悩んでも仕方ないのかもしれないけど……。私も誰かと結婚して、子供を産んで、親になる日が来ると思う。そうなった時に私は、どんな親になればいいんだろうな」
「知らないわよ」
「もちろん自分の親を見本にしようとは思わない。おまけに私の一目置く奴は、自分の子供を可愛がるとはとても思えないやつときた」
「…………」
「子供に尊敬される親って、どんなのなんだろうな」
「強さじゃない?」
「……うーん、もう少し細かく……」
人間を相手にして悩みが解決しないなら、同じ動物である犬や猫を見て考えればいいではないか。まぁ、犬や猫の親子に尊敬という概念はないのかもしれないが、それでも野生の動物は親に従っている。従わざるを得ない、そうしないと自分が生きていけないからだ。子に尊敬されたいという気持ち自体が邪なものではあるが、それでもそれを望むのならば、常に頼られ、必要とされればいい。野良猫で言うなら、寝床の見つけ方、縄張り争いで勝つ方法、狩りの仕方など。親は子供に教え、育てる。それを続けていけばいい。常に子の知らない事を知っていて、子ができない事ができる。子より長く生きているのだから、これが確実でいて簡単だ。逆にこれすらできないのに子に必要とされたいと思うこと自体が間違っている。魔理沙にはそれができるだろうかと思ったが、よくよく考えてみれば地獄鴉に勝てる人間などそういないから、あたいも魔理沙も心配性なのかもしれない。霊夢に至っては……これも心配するだけ野暮というものかな。
未だ頭を触り続けられているあたいの考えが伝わったのか、魔理沙は「ふうむ。ま、親になった時に考えるか」と言い、あたいの頭から手を放して机に戻り、再び霊夢と談笑しだす。
幼い頭と拙い経験で考えるくらいなら、休む事と同義だ、というより休んだ方がいい。人間は妖怪と違って数十年しか生きられないのだ。長くて十数年しか生きられない猫でさえ、毎日を全力で生きている。子供が生まれる前に知恵を蓄え、心を豊かにし、力をつけてこそ、きちんとした親になれるのではないだろうか。幼い内に悩むのは滑稽だが、成長してから動く事も愚かしい。魔理沙はああ言っていたが、親は敵ではない。それこそ親から学んでいけばいいではないか。良い意味であっても、悪い意味であっても。
入れ替わった子供に人里の親達が気付くのが先か、魔理沙が自分の目指すべき親となれるのが先か、妖怪であるあたいはゆっくりと観察させてもらうことにしよう。
物好きな吸血鬼や鬼も季節替わりには弱いのか、今日の神社にいるのは巫女の霊夢と魔法使いの霧雨魔理沙という、地底でも有名な二人である。
この日差しでさすがに日光浴する気はないので畳張りである部屋の隅で丸まっていたあたいを見て、霊夢達は地底に潜入してきた時の話を咲かせていた。
「それにしても、お前と紫って、なんか親子みたいだよな」
「あ?」
会話の中で魔理沙が何気なく放った言葉に霊夢は殺意を孕んだような声音で返す。
「落ち着け、何もこんな天気が良すぎる日に喧嘩を売ろうってわけじゃない。輝夜の時も空の時も、お前は紫と組んでたからな。それに人間と妖怪にしては、お前達は息が合いすぎてるからな。それだけだよ」
「ふん。ならあんたとアリスだって……あんた達はどちらかというと姉妹って感じね」
「まぁ、お前と紫も、よく考えてみれば親子と言うよりは孫と――」
「やめなさい。刀とスキマで喉を潰されるわよ」
何かに納得したように魔法使いは口を閉ざす。何処にあのスキマ妖怪の耳があるか、あたいとしても油断できない。
「お前にも可愛い赤ん坊の時代があるから、人間ってのは不思議なものだなぁ」
「可愛い赤ん坊?」
「なんだよ、まるでお前には赤ちゃんの時代がなかったような――」
「そうじゃなくて、赤ん坊が可愛いって……」
「赤ん坊は可愛いだろ」
「?」
「……え?」
互いが互いを信じられないような目で見つめ合っている。あたいも人里に行った時、人間の赤子は目にしたことがある。自力で動けず、意思の疎通もできない状態であったが、それで正常なのだからなんとも不思議だ。自力で歩けなければ母親の乳を飲めず死んでしまうのではないかと、時々気になってしまうものだが、その代わりに下手な獣よりけたたましい声で叫び、自らの異常を親に知らせるらしい。生まれて直ぐに親を召使い扱いするとは、なんともおかしく恐ろしい。
「赤ん坊は可愛いだろ? 小っちゃくて丸っこくて、なんかこう……守ってあげたくなるだろ。母性本能だよ!」
「そうかしら。可愛い可愛くない以前に、どれも同じ顔じゃない」
「いやそうじゃなくて、赤ん坊自体が可愛いだろ」
「そうかしら。なんか皆、馬鹿っぽい顔してるし」
二人の喰い違いはまだまだ続く。もちろんあたいは霊夢の意見に賛成である。『可愛く思う』という感情が人間にしかないのかもしれないと考えると、自らの子を『可愛い』と思うのもまた人間だけである。生殖という本能の末できた子供故、可愛いも何もない。『可愛い』などと、子供を人形と同様に扱っているのではないか。橋姫や鬼と何気なく雑談した際『可愛い子供を作っている人間達が妬ましい』という言葉に、あたいは寧ろ寒気を覚えた。橋姫の言った事だから少し話が膨らんでいるのかもしれないが、そんな理由で生まれた子供が、もし可愛くなかった、または可愛くなくなったら、その人間は子供をどうするのだろうか。人形で例えるが、人形が可愛くなくなる条件といえば、汚れるか、壊れるかだろう。極端な話、顔が可愛い人間が何らかの事故で顔を失った時、親は子供を捨てるのだろうか。自分が丁寧に作り上げた人形が壊れた際の気持ちは解らなくもない。しかし人間は生きていて人形ではない、あたいが言うのもなんだけど。もちろんこれは想像の仮定でしかないのだけれど、そんな人間がいるとしたら、それはなんとも恐ろしく滑稽だ。可愛いものが欲しいのならば魔法の森にいる魔法使いから譲ってもらえばいい。勝手に決めつけるのもあれだが、人間の子供というのはなんともかわいそうなものだ。さて、先程霊夢は赤ん坊の事を『皆同じ顔』と言っていたが、同意せざるを得ない。例えば、郭公という鳥は別の鳥の巣に卵を産み、別の親鳥に雛を育てさせている。その親鳥は自分の子ではないと理解しているのかは解らないが、果たして同じような事が起きたら第六感の鈍った人間は気付くのだろうか。恐らく気付かないであろう、というより『気付かない』という例をあたいはこの目で見てしまっている。数年前に人里を散歩した際、あたいは一人のからかさお化けと出会い、その腕には人間の赤子が二人抱かれていた。わけを尋ねると、『赤子を入れ替えて、自分達の子供が別の子供になっている、と驚かせてやる』と企んでいた。それから数日後、悪戯がばれて彼女は袋叩きにされる……事はなく、互いの親達は何食わぬ顔で過ごし、他人の子を育てていた。自分の計画が上手く行かなかった事を不満に思い、からかさお化けはその場を後にした。そのままにしたのだ。痣などの特徴を覚え、あたいは月に一回の感覚で確認しているが、尚も子供達は入れ替わったままである。それにはさすがに滑稽を通り越して呆れてしまった。当然と言えば当然だが、それぞれの両親は今の子供と血が繋がっていない事など露ほども思っていない。所詮その程度なのだろう。ある時は、子は宝、と喚いている別の人間の家にあたいは忍び込んだ。一っ跳びで辿り着いた窓は開いていて、ものの数秒で赤子の眠る布団へと辿り着いた。これほど盗みやすい宝だと逆に価値が薄くなってしまうのではないかと考えたが、よく考えればあくまで宝であらしいる赤子なんてそこいらで生まれているから、とっくに暴落しているだろう。とりあえずは、赤子を入れ替えた事を教えたら大層驚くぞ、という事をからかさお化けにいつ伝えるかだけは考えておこう。
「まっっったく。お前の親だって、きちんとお前を可愛がったから今のお前がいるわけなんだし」
「親が子を育てるのは当たり前じゃない。動物を飼うわけじゃないんだから。そもそもあんた――」
「あーうるさいうるさい。私は自分から家を出てやったんだ。もう十分可愛がってもらったんだよ」
「……そう」
そういえば、あたいは霊夢の親を見たことがない。何も知らない人からすれば、実はスキマ妖怪が霊夢の母親である、と言っても信じる可能性があると思う。霊夢の強さはそれを納得させるほど妖怪染みているのだから。霊夢の親について気にはなるが、さすがにあたいも自分の仕事をほっぽり出してまでここに居座りつづけることはできないので、運よく現れる日を待とう。
「ま、私はまともな方だと思うぜ。親に頼らずきちんと自立してるし、悪口も言わないからな」
「……そう」
親に頼ることは何も至極真っ当な事だとあたいは思う。しかし、確かに悪口は感心しない。初めから一人だけで生きていける人間なんて存在しない。犬や猫でさえも難しいのに、人間にはとても無理だろう。その代わりに知恵や心があるのだろうが、それ故に起こる事があるのが、まさかの親殺し子殺し等とは。旧地獄である地底で暮らしていると、生前にそういった行いをした霊の存在を何度か知ることはある。賢いのに愚かとは、最早救い難いものだ。
にゃーん。
恐ろしさのあまり目の前にいる人間達に一鳴きする。魔法使いが反応して近付き、私の頭を撫ではじめる。猫の姿とはいえ、髪を乱されるのは好きではない。
「妖怪はそういう悩みがなさそうでいいなぁおい。……なぁ、霊夢」
「何よ」
「今悩んでも仕方ないのかもしれないけど……。私も誰かと結婚して、子供を産んで、親になる日が来ると思う。そうなった時に私は、どんな親になればいいんだろうな」
「知らないわよ」
「もちろん自分の親を見本にしようとは思わない。おまけに私の一目置く奴は、自分の子供を可愛がるとはとても思えないやつときた」
「…………」
「子供に尊敬される親って、どんなのなんだろうな」
「強さじゃない?」
「……うーん、もう少し細かく……」
人間を相手にして悩みが解決しないなら、同じ動物である犬や猫を見て考えればいいではないか。まぁ、犬や猫の親子に尊敬という概念はないのかもしれないが、それでも野生の動物は親に従っている。従わざるを得ない、そうしないと自分が生きていけないからだ。子に尊敬されたいという気持ち自体が邪なものではあるが、それでもそれを望むのならば、常に頼られ、必要とされればいい。野良猫で言うなら、寝床の見つけ方、縄張り争いで勝つ方法、狩りの仕方など。親は子供に教え、育てる。それを続けていけばいい。常に子の知らない事を知っていて、子ができない事ができる。子より長く生きているのだから、これが確実でいて簡単だ。逆にこれすらできないのに子に必要とされたいと思うこと自体が間違っている。魔理沙にはそれができるだろうかと思ったが、よくよく考えてみれば地獄鴉に勝てる人間などそういないから、あたいも魔理沙も心配性なのかもしれない。霊夢に至っては……これも心配するだけ野暮というものかな。
未だ頭を触り続けられているあたいの考えが伝わったのか、魔理沙は「ふうむ。ま、親になった時に考えるか」と言い、あたいの頭から手を放して机に戻り、再び霊夢と談笑しだす。
幼い頭と拙い経験で考えるくらいなら、休む事と同義だ、というより休んだ方がいい。人間は妖怪と違って数十年しか生きられないのだ。長くて十数年しか生きられない猫でさえ、毎日を全力で生きている。子供が生まれる前に知恵を蓄え、心を豊かにし、力をつけてこそ、きちんとした親になれるのではないだろうか。幼い内に悩むのは滑稽だが、成長してから動く事も愚かしい。魔理沙はああ言っていたが、親は敵ではない。それこそ親から学んでいけばいいではないか。良い意味であっても、悪い意味であっても。
入れ替わった子供に人里の親達が気付くのが先か、魔理沙が自分の目指すべき親となれるのが先か、妖怪であるあたいはゆっくりと観察させてもらうことにしよう。
お燐の視点といい、人妖が入り混じった幻想郷らしい作品だと思いました
ズレてて滑稽な奴がマトモな奴を滑稽だと笑うところにリアルがあると思うのですよ
創作じゃそういうことしにくいですけど、馬鹿が馬鹿な考えで人を馬鹿にすることに人間のリアルがあると思うのですよ
disの対象を滑稽で強引な理論でdisっててしかもそれに魔理沙が明確な反論を出来ないあたりにリアルを感じる
個人的に滑稽なやつがその自覚もなく、人を上から目線で見下すような話は好きですよ
そういう滑稽さこそ人間の複雑さだと思いますし、滑稽さをかっこよく感じたり感じさせるのが言葉ではうまく言い表せない何かなんだと思います
滑稽さやかっこよさこそ思想や価値観と言われるものの髄のような気がします
人里で淡々と起こされ、見過ごされる怪異になんとも言えないものを感じました。
とりあえず雰囲気は好きです
読みやすくてイイですね