今日のコンサートはそれなりに成功だった。
さすがに伝統あるプリズムリバー楽団にはまだまだ及ばないが、私たちの名前もそれなりに売れてきたように思う。
私たちの拠点で、小さな打ち上げパーティ。
最近できるようになった料理をふるまうと妹と雷鼓さんはおいしそうに食べてくれた。
買ってきたお酒も大体呑みつくしてしまって、八橋は一足先につぶれて寝てしまった。
寝所まで運んでおふとんをかけてあげると、寝言で「ありがとー、大好きぃ……」なんて言ってくる。かわいい。
「八橋は寝ましたか」
「ええ。ぐっすりです。……そういえば、あれは何だったんです?」
コンサート前に雷鼓さんが囁いた、「このコンサートが成功したら、お話があります」という言葉。
死亡フラグか何かかと思って、内心こわごわとしていたのだけど。
「あ、そうですね、うん」
こほんと雷鼓さんは咳払いをする。
飲みすぎたせいか、だいぶ顔が赤い。大丈夫なのだろうか。
そんな私の心配をよそに、雷鼓さんはしばらく視線を泳がせた後、私を見た。
「あの、その……。好きです。付き合ってください……」
……ええ????
「ここのところ……考えるのは寝ても覚めてもあなたのことばかり……。弁々さん、どうか私を受け入れてください……」
いつになくしおらしく、うるんだ目でこちらを見つめてくるその様は、いつもの威勢のいい姉貴分である彼女からはにわかに想像したがいもの。
まるで捨てられた子猫のように不安げに揺れるその姿に、不覚にも胸がきゅんきゅんして、彼女を抱きしめてしまいそうになる。
でも、少し冷静になって考えてみよう。これこそ噂に聞く、『さーくるくらっしゅ』というものの前兆ではないだろうか。
私と雷鼓さんが結ばれてしまっては、残された八橋はどうなってしまうのか。姉妹の契りを交わしてからまだそう時間も経っていないというのに。
「ら、雷鼓さん。お気持ちは嬉しいわ。でも、私たちはまだ志半ばの身じゃないですか。それに、八橋もいるし……」
結局、私は雷鼓さんにそんな消極的な返事しか出来なかった。
「もし、今の私たちに何のしがらみもなければ、あなたは私を受け入れてくれましたか?」
「ええ……もちろんです」
雷鼓さんは私たちの恩人だし、とてもかっこいい女性だ。
そういう関係になるのも、まぁ、吝かではない。
「わかりました……それを聞けば、この気持ちを伝えた甲斐もあるというもの」
そう言うと雷鼓さんは、少しさびしげに笑んだ。
「ただ、一つだけ、証をもらえませんか?」
「え?」
雷鼓さんはそう言って顔を近づけ、私の顔に手を添える。
否応なく、私の鼓動がどきどきと早鐘を打つ。きっと雷鼓さんもそんなビートを奏でていることだろう。
「この場だけでもいい。ですから……」
ああ、やっぱりこの人はかっこいい。
私は、彼女の醸し出す雰囲気に抗えず、流されるままに――
ちゅ
それから、雷鼓さんとはお付き合い、と胸を張っていえるような行動は、あまりしていない。
ただ、たまにキスをする。物陰で、こっそりと。
コンサートの前に、ちゅっ。
拠点でふと二人になったときに、ちゅっ。
お出かけしたときに、ちゅっ。
これが、やめられない。
どちらが誘うというわけでもなく、なんとなくそーゆー雰囲気になって、ちゅっ。
キスし終わった後の、雷鼓さんのとろけたよーな笑顔がたまらない。
私としては付き合うギリギリ手前で留めたつもりになっていたけど、端から見るとこの雰囲気、完全に付き合ってる人のそれではないだろうか。
まぁいいかぁ、とそれでも思う。
きっともう、私も雷鼓さんなしではいられないもの。
私はとっても、幸せだもの。
だが、二人きりの幸せは長くは続かなかった。
あまりにも夢中になっていて、ついに妹に見られてしまったのである。
「姉さん……ひどいよ……」
「や、八橋、これはね……」
あたふたして上手い言葉が見つからない。
そうこうする間に八橋は見る間に涙を溜めて、そうして叫んだ。
「私もまとめて愛してよ!!」
えっ。
さすがに伝統あるプリズムリバー楽団にはまだまだ及ばないが、私たちの名前もそれなりに売れてきたように思う。
私たちの拠点で、小さな打ち上げパーティ。
最近できるようになった料理をふるまうと妹と雷鼓さんはおいしそうに食べてくれた。
買ってきたお酒も大体呑みつくしてしまって、八橋は一足先につぶれて寝てしまった。
寝所まで運んでおふとんをかけてあげると、寝言で「ありがとー、大好きぃ……」なんて言ってくる。かわいい。
「八橋は寝ましたか」
「ええ。ぐっすりです。……そういえば、あれは何だったんです?」
コンサート前に雷鼓さんが囁いた、「このコンサートが成功したら、お話があります」という言葉。
死亡フラグか何かかと思って、内心こわごわとしていたのだけど。
「あ、そうですね、うん」
こほんと雷鼓さんは咳払いをする。
飲みすぎたせいか、だいぶ顔が赤い。大丈夫なのだろうか。
そんな私の心配をよそに、雷鼓さんはしばらく視線を泳がせた後、私を見た。
「あの、その……。好きです。付き合ってください……」
……ええ????
「ここのところ……考えるのは寝ても覚めてもあなたのことばかり……。弁々さん、どうか私を受け入れてください……」
いつになくしおらしく、うるんだ目でこちらを見つめてくるその様は、いつもの威勢のいい姉貴分である彼女からはにわかに想像したがいもの。
まるで捨てられた子猫のように不安げに揺れるその姿に、不覚にも胸がきゅんきゅんして、彼女を抱きしめてしまいそうになる。
でも、少し冷静になって考えてみよう。これこそ噂に聞く、『さーくるくらっしゅ』というものの前兆ではないだろうか。
私と雷鼓さんが結ばれてしまっては、残された八橋はどうなってしまうのか。姉妹の契りを交わしてからまだそう時間も経っていないというのに。
「ら、雷鼓さん。お気持ちは嬉しいわ。でも、私たちはまだ志半ばの身じゃないですか。それに、八橋もいるし……」
結局、私は雷鼓さんにそんな消極的な返事しか出来なかった。
「もし、今の私たちに何のしがらみもなければ、あなたは私を受け入れてくれましたか?」
「ええ……もちろんです」
雷鼓さんは私たちの恩人だし、とてもかっこいい女性だ。
そういう関係になるのも、まぁ、吝かではない。
「わかりました……それを聞けば、この気持ちを伝えた甲斐もあるというもの」
そう言うと雷鼓さんは、少しさびしげに笑んだ。
「ただ、一つだけ、証をもらえませんか?」
「え?」
雷鼓さんはそう言って顔を近づけ、私の顔に手を添える。
否応なく、私の鼓動がどきどきと早鐘を打つ。きっと雷鼓さんもそんなビートを奏でていることだろう。
「この場だけでもいい。ですから……」
ああ、やっぱりこの人はかっこいい。
私は、彼女の醸し出す雰囲気に抗えず、流されるままに――
ちゅ
それから、雷鼓さんとはお付き合い、と胸を張っていえるような行動は、あまりしていない。
ただ、たまにキスをする。物陰で、こっそりと。
コンサートの前に、ちゅっ。
拠点でふと二人になったときに、ちゅっ。
お出かけしたときに、ちゅっ。
これが、やめられない。
どちらが誘うというわけでもなく、なんとなくそーゆー雰囲気になって、ちゅっ。
キスし終わった後の、雷鼓さんのとろけたよーな笑顔がたまらない。
私としては付き合うギリギリ手前で留めたつもりになっていたけど、端から見るとこの雰囲気、完全に付き合ってる人のそれではないだろうか。
まぁいいかぁ、とそれでも思う。
きっともう、私も雷鼓さんなしではいられないもの。
私はとっても、幸せだもの。
だが、二人きりの幸せは長くは続かなかった。
あまりにも夢中になっていて、ついに妹に見られてしまったのである。
「姉さん……ひどいよ……」
「や、八橋、これはね……」
あたふたして上手い言葉が見つからない。
そうこうする間に八橋は見る間に涙を溜めて、そうして叫んだ。
「私もまとめて愛してよ!!」
えっ。