Coolier - 新生・東方創想話

お茶飲む?

2014/03/21 02:09:51
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風が心地いい
私は一人だった、気付いた時には博麗の巫女として働き、毎日、毎日神社の掃除をして、お茶を飲んでーーそんな日々を送っていた。
親の顔なんてものは記憶の片隅にもなく、そもそも私は人間の腹から生まれてきたのだろうか、そんなことまで考えていたーーそれでも、今、私が多くの友人と冗談を言い合いながら毎日を過ごせているのはーーやっぱりあいつの影響が強いんだろうなー、なんてらしくもないことを考えていたりする。
実際のところあいつと関わって無かったら私は今でも一人ぼっちのままだっただろう。
ーーそういえば、あいつと始めて会った日もこんな気持ちの良い風が吹いていた気がする。

☆☆☆

「・・・寒い」
当時、私は9、10歳くらいだったと覚えている、普通そのくらいの年齢だったら人里で他の子供たちと活発に遊んでいるものである。
当然、私も人里で皆と遊んでいるーーと思うだろうが、当時の私は遊び、とか友達、家族、というものを知らなかったように感じる。
友達は一人も居なく、家族すらいなかった私は、紫から言われていた、博麗大結界の管理(と言っても、毎日、結界に異常がないか確認するだけの簡単なお仕事だが)をしていた。
改めて考えると、紫は私のことを自分なりに心配していたように感じるーー事あるごとに私に人里に遊びに行けと言ってきたり、私をお風呂に入れようとしたりーーおそらく紫は私に同年代の友人を作らせたり、母親の愛を私に教えようと頑張っていたのだろう、しかし、冷めた子供だった私には何故人里に行って他の子供と遊ばないといけないのかーーまた、何故、自分で出来るようなことを人にやってもらうのか、愛とはなんなのかーーそれすらわからなかった。
そんな日々を過ごしていたある日のことだった。
私は日課である掃除とお賽銭箱の確認(もちろん入っていない)をこなし、さてーーお茶でも飲むか、と思い、腰を上げると、もう何回使い回したかしらないお茶を湯呑みに入れ、縁側に腰を下ろしていた。
「ほんとに寒い」
今日何度言ったのかわからないつぶやきを漏らし、空が青いなー、なんてどうでもいいことを考えつつ、お茶を飲んだ。
その時だった、私の才能(なのか?)であるよく当たる勘、これがなにか、今まで私が遭遇したことのないものが近づいてくるのを感じた。
人間かーーそれとも妖怪か、今では並の妖怪などは相手にもならないほどの力を持っていた霊夢だがーーこの時の私はやっと空を不恰好ながらも飛べるようになったくらいで、今のようなスペルカードルールはなく、「空を飛ぶ程度の能力」すらまともにつかえてなく、妖怪に立ち向かう手段など存在していなかったのだーー実際は、スペルカードルールがない、当時でも、妖怪が人をとって食うようなことはなかったのだが、幼い霊夢は始めて直面した恐怖にただ怯えるほかなかった。
だがーー神社までの階段を登ってきたのは、妖怪でも、人里の大人でも、ましてや参拝者でもなくーー霊夢と同じ年代の金髪の少女だった。
私はもちろん安堵した、と同時に相手の容姿をじろじろと眺めてしまっていた。

☆☆☆

無我夢中だった、魔法使いになりたくてーーだけど道具屋の娘である私が魔法使いになるなんて許してくれるはずがない。
頭ではわかっているつもりだった。
でも、心の中では、必死に頼めばきっとーーなんて、甘い考えがあったのかもしれない。
「わ・・・私、魔法使いになりたいんだ!だから店は継がない!」
心からの願いだった、これなら父もきっと許してくれるーーそう思った。
だがーー
「ふざけるな!」
一喝、父の声に思わず私は体を震わせていた、何よりーー自分の本気の訴えが父に伝わらなかったのがくやしくてーー
私は泣いていた
「道具屋を継がない?ふざけるなよ、魔理沙!お前は黙って勉強して、道具屋を継げば、いいんだよ!」
「で・・・でも!私・・・魔法使いになりたいんだよ・・・」
後半の声は掠れて父に届いていなかったかもしれない。
でも、それでも私は魔法使いになりたかった、あの大空を自由に飛び回る、そんな魔法使いに憧れていた。
「・・・出て行け」
「え?」
「出て行けと言っているんだ!」
私は始めて魔法使いになることに疑問を抱いた、もしここで素直に謝っていたらどうなっただろうーー今でもたまに考える、もしかしたら私は最初から道具屋をやる方が向いていたのかもしれない、父の様に店を繁盛させて、里の男と結婚して、幸せに一生を終えていたのかもしれない、いや、そうなっている確率はかなり高いだろう。
でもーーそれでも私はーー魔法使いになる道を選んだ。
父の言葉を聞くと、止まることなく家を出て、むしゃくしゃした気持ちのままーー気づくと私はあいつにあっていた。
始めた会ったあいつの印象は一言で言うとーー最悪、この二文字に違いなかった、私が目を合わせた瞬間は何かに怯えている様子だったが、すぐに今度はこちらを睨むような目線で見つめてきていたーー今ならあれがあいつのデフォルトの顔だとはわかるのだがーー始めてあいつにあってとにかくむしゃくしゃしていた私はーーあいつに喧嘩腰で喋りかけていた。
「おい!なに睨んでんだよお前!」
「は?なに言ってんのよ」
あいつからしたら私は完全に夜中に絡んでくる酔っ払いのおっさんの様に見えただろうーー実際なにも悪いことはしてないのだから。
しかしーー目に涙を浮かべながら怒鳴る私はあいつの目から見ても可哀想だと思ったのだろう、あいつは優しげな笑みを浮かべるとーー
「お茶くらい出すわよ、ほら、上がってきなさい」
私に言った

☆☆☆

なんなんだこいつは、突然人の神社にやってきたと思ったら急に喚き散らし始めた、こいつは酔っ払いのおっさんか。
と、私はあることに気づいたーー彼女は泣いていたのである、それに気づくとなんだか無性に同情心とでも表現出来そうな気持ちが心に生まれーー
「お茶くらい出すわよ、ほら、上がってきなさい」
口が動いていた

☆☆☆

コトン、湯呑みが私の隣に置かれた。
「なんだよ、私が泣いてるからって急に優しくするなよな」
「はぁ・・・最初から私は優しいわよ」
どこがだ、始めは睨みつけてきた癖にーーどうせ、可哀想だと思ってるんだ。
「あんたがなにを悩んでるのかわかんないけどさぁ・・・」
どうせ八つ当たりするなって言うんだろ
「何か悩みがあるんだったら」
私に相談しろってか、誰がお前に
「いつでもお茶飲みに来なさいよ」
私は、その言葉に
「ふ、あはは、はははは!」
「なにが可笑しいのよ」
「いや、何か悩みとか全部吹き飛んじゃってさ」
「はぁ・・・」
私はその言葉に
救われた

☆☆☆

あいつは、さっきまでとは打って変わって爽やかな笑顔でお茶を一気に飲み干した。
「いい飲みっぷりねー」
「お、そうか、ありがとな」
まるで酒でも飲んだかの様に湯呑みを思いっきり地面にバーン!と叩きつけて湯呑みを地面においた。
「なぁ、お前」
「ん?」
突然このバカが話しかけてきた
「お前・・・もしかしてここにずっと一人で住んでるのか?」
だからどうしたってのよ
「なぁ・・・それならさ」
ここに住むとか言い出すつもり?勘弁してよ、大体、私は一人でも生きていけるんだからいいじゃない
「私が毎日、お茶飲みに来てやるよ!」
そんな、勝手な言い分に
私は救われた
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コメント



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2.60非現実世界に棲む者削除
レイマリとしては良いと思う。
ただ一人称なのか三人称なのかわからない部分がある。
幼い頃の霊夢の最初の回想が一人称ぽいのに霊夢の名前が出てきたので三人称かと思ってしまう。
間違っていたらすみません。別に批判する気はありませんから。
6.無評価shin削除
>>非現実世界に棲む者
感想ありがとうございます!!
あっ・・・確かに「私」が「霊夢」になっちゃってますね。
完全に私のミスです
申し訳ないですm(__)m
8.50奇声を発する程度の能力削除
良かったです
10.80名前が無い程度の能力削除
×『幼い霊夢は始めて直面した恐怖に』
○『幼い霊夢は初めて直面した恐怖に』
ではありませんか?


作品自体はとても面白かったです。