某日、博麗神社の縁側にて。
紅白の巫女が、気怠そうな声で唐突に漏らしました。
「私ね、最近悩んでいることがあるのよ」
隣に腰掛けていた白黒の魔法使いは、つい先程紅白の巫女と行った腕試しのせいで、ちょっぴり焦げてしまったトレードマークのとんがり帽子を気にしながら、話を促しました。
「ふぅん、そりゃ珍しいな。そんで、いったい何を悩んでいるんだ?」
紅白の巫女は、青い空を見上げながら、打ち明けました。
「私があんたを好きなのかどうか、悩んでいるの」
――しばしの沈黙が、二人の間に訪れました。
「……」
白黒の魔法使いは、無言のまま、とんがり帽子を脱いで傍らに置くと、地面を見詰めて、ゆっくりと息を吐き出しました。
金色の髪の間から覗く耳は、真っ赤でした。
「……霊夢」
名前を呼ばれた紅白の巫女は、相変わらず空を見上げたまま、返事をしました。
「なあに、魔理沙」
白黒の魔法使いは、絞り出すような声で、語り始めます。
「私は、おまえのことがわからない。昔からずっと。今もそうだ」
白黒の魔法使いは、潤んだ瞳で、自分よりわずかに背の高い紅白の巫女を見詰めました。
見えたのは横顔で、視線は交わりません。
細く形の良い顎は、上向きのままです。
「普通、悩みの対象に、相談なんてしないだろう。少なくとも、普通の魔法使いである私には、そんなこと出来ないぜ」
「へえ、そんなもんなの」
「ああ、そんなもんだ」
「……」
数拍の沈黙の後。
紅白の巫女は、また口を開きました。
「私も、あんたのことが全部わかるわけじゃないけど」
「そりゃ、当たり前だ。簡単に全部理解できるほど、人間ってやつは簡単じゃないからな」
「ええ、その通りね。でも、わかりやすい部分もあったりするじゃない?」
「……たとえば?」
紅白の巫女は、変わらない口調で言い放ちました。
「あんたが、私を好きだってこととか」
白黒の魔法使いは、真紅の魔法使いに改名しなければならないほど、全身真っ赤に染め上げながら、息を詰まらせました。
そんな様子に構いもせずに、紅白の巫女は言葉を続けます。
「昔からずっと。今も。そうでしょ?」
語尾に疑問符を付けながらも、確信している様子でした。
「……~っ」
白黒の魔法使いは、両手で顔を覆って、しばらく無言で悶えていました。
その後、また、細く長く息を吐き出して、話し出します。
声は、とても小さくて、掠れていました。
「そうだぜ」
「……」
「私は、昔からずっと。今も」
――そして。
白黒の魔法使いは、ゆっくりと立ち上がると、紅白の巫女の正面に立ち、青空へと向けられていた視界を遮りました。
昔からずっと、紅白の巫女は、高い空を見上げていました。
目を離してしまえば、いつか空へと吸い込まれて、消えてしまいそうだなんて、思ってしまうくらいに。
でも、そんなこと、白黒の魔法使いが許すはずがありません。
「なあ、私を見ろよ」
だって、どうしようもないほどに。
「おまえのことが、好きなんだ」
――……白黒の魔法使いが、そう告げた次の瞬間。
紅白の巫女は、白黒の魔法使いの腕を掴んで、引き寄せていました。
「……っ!」
視界に、お互い以外が入る余地もない、至近距離。
触れた、やわらかい唇の感触。
「……」
――しばらく経ってから。
お互いの額をくっつけた状態で、白黒の魔法使いが、紅白の巫女に問いかけました。
「……な、んで、いきなり」
躊躇いがちに発せられたその問いに、紅白の巫女は数瞬考えてから答えました。
「なんか、すっごく、したかったから」
その返答に、白黒の魔法使いは目を丸くした後。
「……よかったな。悩みの答えが、見つかったみたいだぜ」
真っ赤な顔で、眉をさげて、気が抜けたように笑いながら、言いました。
「昔は、わからないけれど。今。おまえは絶対に、私のことが好きだ」
紅白、白黒、青空のち、恋色。
博麗神社の縁側に、真っ赤な顔が二つ並んだ、某日のお話でした。
紅白の巫女が、気怠そうな声で唐突に漏らしました。
「私ね、最近悩んでいることがあるのよ」
隣に腰掛けていた白黒の魔法使いは、つい先程紅白の巫女と行った腕試しのせいで、ちょっぴり焦げてしまったトレードマークのとんがり帽子を気にしながら、話を促しました。
「ふぅん、そりゃ珍しいな。そんで、いったい何を悩んでいるんだ?」
紅白の巫女は、青い空を見上げながら、打ち明けました。
「私があんたを好きなのかどうか、悩んでいるの」
――しばしの沈黙が、二人の間に訪れました。
「……」
白黒の魔法使いは、無言のまま、とんがり帽子を脱いで傍らに置くと、地面を見詰めて、ゆっくりと息を吐き出しました。
金色の髪の間から覗く耳は、真っ赤でした。
「……霊夢」
名前を呼ばれた紅白の巫女は、相変わらず空を見上げたまま、返事をしました。
「なあに、魔理沙」
白黒の魔法使いは、絞り出すような声で、語り始めます。
「私は、おまえのことがわからない。昔からずっと。今もそうだ」
白黒の魔法使いは、潤んだ瞳で、自分よりわずかに背の高い紅白の巫女を見詰めました。
見えたのは横顔で、視線は交わりません。
細く形の良い顎は、上向きのままです。
「普通、悩みの対象に、相談なんてしないだろう。少なくとも、普通の魔法使いである私には、そんなこと出来ないぜ」
「へえ、そんなもんなの」
「ああ、そんなもんだ」
「……」
数拍の沈黙の後。
紅白の巫女は、また口を開きました。
「私も、あんたのことが全部わかるわけじゃないけど」
「そりゃ、当たり前だ。簡単に全部理解できるほど、人間ってやつは簡単じゃないからな」
「ええ、その通りね。でも、わかりやすい部分もあったりするじゃない?」
「……たとえば?」
紅白の巫女は、変わらない口調で言い放ちました。
「あんたが、私を好きだってこととか」
白黒の魔法使いは、真紅の魔法使いに改名しなければならないほど、全身真っ赤に染め上げながら、息を詰まらせました。
そんな様子に構いもせずに、紅白の巫女は言葉を続けます。
「昔からずっと。今も。そうでしょ?」
語尾に疑問符を付けながらも、確信している様子でした。
「……~っ」
白黒の魔法使いは、両手で顔を覆って、しばらく無言で悶えていました。
その後、また、細く長く息を吐き出して、話し出します。
声は、とても小さくて、掠れていました。
「そうだぜ」
「……」
「私は、昔からずっと。今も」
――そして。
白黒の魔法使いは、ゆっくりと立ち上がると、紅白の巫女の正面に立ち、青空へと向けられていた視界を遮りました。
昔からずっと、紅白の巫女は、高い空を見上げていました。
目を離してしまえば、いつか空へと吸い込まれて、消えてしまいそうだなんて、思ってしまうくらいに。
でも、そんなこと、白黒の魔法使いが許すはずがありません。
「なあ、私を見ろよ」
だって、どうしようもないほどに。
「おまえのことが、好きなんだ」
――……白黒の魔法使いが、そう告げた次の瞬間。
紅白の巫女は、白黒の魔法使いの腕を掴んで、引き寄せていました。
「……っ!」
視界に、お互い以外が入る余地もない、至近距離。
触れた、やわらかい唇の感触。
「……」
――しばらく経ってから。
お互いの額をくっつけた状態で、白黒の魔法使いが、紅白の巫女に問いかけました。
「……な、んで、いきなり」
躊躇いがちに発せられたその問いに、紅白の巫女は数瞬考えてから答えました。
「なんか、すっごく、したかったから」
その返答に、白黒の魔法使いは目を丸くした後。
「……よかったな。悩みの答えが、見つかったみたいだぜ」
真っ赤な顔で、眉をさげて、気が抜けたように笑いながら、言いました。
「昔は、わからないけれど。今。おまえは絶対に、私のことが好きだ」
紅白、白黒、青空のち、恋色。
博麗神社の縁側に、真っ赤な顔が二つ並んだ、某日のお話でした。
ところで、これの続きはどこに(殴
恋符なんて作るくらい恋に恋してそうな魔理沙は受け、逆に一度気付いたらがんがん行きそうな霊夢が攻めに違いありません!!
ストレートやがな
まっすぐいって吹っ飛ばされたがな