「霊夢いるかー?」
霊夢は縁側にいなかった。きっと中にいるのだろう。
「勝手に上がるぜー」
縁側で靴を脱いで障子を開けると、居間の真ん中に布団があった。
やれやれ。まだ寝てるのか。もうお昼前だぜ。
「霊夢ー。起きろー。お前もついに冬眠に目覚めたかー?」
すると霊夢はこちらに寝返りを打って眠そうな声で言った。
「何それ。目覚めたのか寝てるのかわかんない」
「なんにせよ目覚めたじゃないか」
「ずっと起きてたわ。昨日の晩から」
「ふうん? 紫が聞いたらさぞかし驚くだろうな」
「あんな奴のこと、どうでもいい」
霊夢は落ち込んだ様子で投げやりに言った。
布団のそばに胡坐をかいて座る。枕元には霊夢の巫女服が置いてある。布団の中の霊夢は寝巻のままだ。髪も結んでない。
クマがひどい。ほんとに寝てないのか。
霊夢は顔を横にしたまま私の膝辺りをぼんやりと見つめる。
「何しにきたの」
「何をしようか考えてたらいつの間にか神社に着いちゃったんだ」
「へえ。魔理沙は元気ね」
「毎日酒を飲んでるからな」
私だって……と言いかけて霊夢は寝返りを打つ。寝巻を着た霊夢の背中は小さくてどこか頼りない。
「なんだ霊夢、風邪引いたのか? 薬持ってこようか」
「いらない。何もいらない」
「ほんとに?」
「…………」
返事をしない。何かほしいものがあるのだろう。
「お酒飲むか? つまみも持ってくるぜ。温まったら眠れるだろう」
「いらない」
「……お節介なら帰るけど」
「……」
返事がない。帰ってほしくないのだろう。
「しばらくここにいていいか」
「……うん」
「わかった」
帽子を取って巫女服の隣に置く。
三つ編みをいじったり霊夢の後頭部を見つめたりする。居間には静かで冷たい時間が流れる。
霊夢の髪の毛は細くてつやがあって、すごく綺麗だ。
「霊夢。髪触ってもいいか」
「好きにしなさい」
霊夢の髪を手に取ってみる。つやつやの髪は私の指の間からするすると抜けていく。
「髪、綺麗だな」
「ありがとう」
「霊夢、こっち向いて」
「はあ、なによ」
渋々といった様子でこちらに寝返りを打つ霊夢。
「どうしたら元気出してくれるんだ。霊夢が元気じゃないと、なんだか不安になるんだ」
「そう……」
「私、何か悪いことしたか?」
「してない。魔理沙のせいじゃない」
「ほんとに?」
「ほんとよ」
そう言うと霊夢は布団を頭までかぶって顔を隠してしまう。
一体どうすればいい。
どうして霊夢はこんなに切なげで儚いんだ。
まるで今にも幽霊のようにフッと消えてしまいそうじゃないか。
「霊夢。布団、入ってもいいか」
「……」
「霊夢……」
「好きに、しなさい」
私は布団に入る。白い寝巻を着た霊夢の身体を見る。ちゃんとそこにある。
足も腰も胸も、手も肩も首も、頭も目も口も、ちゃんとある。
私は布団の中で霊夢の身体を抱きしめた。霊夢の体温を全身で受け止める。
「霊夢はあったかいな」
「魔理沙は……冷たいわね」
「冷たくてごめん。頑張って温かくなるから、もうちょっと待ってくれ」
「うん。待ってる」
布団の温度と霊夢の体温で私の身体はポカポカと温まっていく。
「霊夢」
「なあに、魔理沙」
「なんでもない。呼んだだけ」
「なにそれ。変なの。まるで恋人たちのセリフみたい」
「恋人みたいだな、私たち」
「ばか、そんなわけないでしょ」
「霊夢が言ったのに」
「魔理沙が言わせたの」
「ずるいな」
「うん。私ってずるい」
霊夢は腕を私の背中に回し、足も絡めてきた。
肩越しに、霊夢の声が聞こえる。
「魔理沙」
「なんだ、霊夢」
「最後に神社に来た日を覚えてる?」
「いいや。でも随分前のような気がする」
「13日前。ずっと来てくれなかったわね」
「大雪で雪落としをしたり、研究で家にこもったりしてたんだ」
「ほんとに?」
「ほんとだぜ」
「誰かに会った?」
「会ってない。人に会ったのは13日ぶりで、霊夢が初めてだ」
「信じていい?」
「ああ、私は嘘をついたことがない」
「ばか」
「ああ、私はばかかもしれない」
「でも許してあげる。魔理沙はあったかいから」
「ありがとう」
「霊夢」
「なあに、魔理沙」
「元気になったか?」
「うん」
霊夢が元気だと、私は嬉しい。
霊夢は縁側にいなかった。きっと中にいるのだろう。
「勝手に上がるぜー」
縁側で靴を脱いで障子を開けると、居間の真ん中に布団があった。
やれやれ。まだ寝てるのか。もうお昼前だぜ。
「霊夢ー。起きろー。お前もついに冬眠に目覚めたかー?」
すると霊夢はこちらに寝返りを打って眠そうな声で言った。
「何それ。目覚めたのか寝てるのかわかんない」
「なんにせよ目覚めたじゃないか」
「ずっと起きてたわ。昨日の晩から」
「ふうん? 紫が聞いたらさぞかし驚くだろうな」
「あんな奴のこと、どうでもいい」
霊夢は落ち込んだ様子で投げやりに言った。
布団のそばに胡坐をかいて座る。枕元には霊夢の巫女服が置いてある。布団の中の霊夢は寝巻のままだ。髪も結んでない。
クマがひどい。ほんとに寝てないのか。
霊夢は顔を横にしたまま私の膝辺りをぼんやりと見つめる。
「何しにきたの」
「何をしようか考えてたらいつの間にか神社に着いちゃったんだ」
「へえ。魔理沙は元気ね」
「毎日酒を飲んでるからな」
私だって……と言いかけて霊夢は寝返りを打つ。寝巻を着た霊夢の背中は小さくてどこか頼りない。
「なんだ霊夢、風邪引いたのか? 薬持ってこようか」
「いらない。何もいらない」
「ほんとに?」
「…………」
返事をしない。何かほしいものがあるのだろう。
「お酒飲むか? つまみも持ってくるぜ。温まったら眠れるだろう」
「いらない」
「……お節介なら帰るけど」
「……」
返事がない。帰ってほしくないのだろう。
「しばらくここにいていいか」
「……うん」
「わかった」
帽子を取って巫女服の隣に置く。
三つ編みをいじったり霊夢の後頭部を見つめたりする。居間には静かで冷たい時間が流れる。
霊夢の髪の毛は細くてつやがあって、すごく綺麗だ。
「霊夢。髪触ってもいいか」
「好きにしなさい」
霊夢の髪を手に取ってみる。つやつやの髪は私の指の間からするすると抜けていく。
「髪、綺麗だな」
「ありがとう」
「霊夢、こっち向いて」
「はあ、なによ」
渋々といった様子でこちらに寝返りを打つ霊夢。
「どうしたら元気出してくれるんだ。霊夢が元気じゃないと、なんだか不安になるんだ」
「そう……」
「私、何か悪いことしたか?」
「してない。魔理沙のせいじゃない」
「ほんとに?」
「ほんとよ」
そう言うと霊夢は布団を頭までかぶって顔を隠してしまう。
一体どうすればいい。
どうして霊夢はこんなに切なげで儚いんだ。
まるで今にも幽霊のようにフッと消えてしまいそうじゃないか。
「霊夢。布団、入ってもいいか」
「……」
「霊夢……」
「好きに、しなさい」
私は布団に入る。白い寝巻を着た霊夢の身体を見る。ちゃんとそこにある。
足も腰も胸も、手も肩も首も、頭も目も口も、ちゃんとある。
私は布団の中で霊夢の身体を抱きしめた。霊夢の体温を全身で受け止める。
「霊夢はあったかいな」
「魔理沙は……冷たいわね」
「冷たくてごめん。頑張って温かくなるから、もうちょっと待ってくれ」
「うん。待ってる」
布団の温度と霊夢の体温で私の身体はポカポカと温まっていく。
「霊夢」
「なあに、魔理沙」
「なんでもない。呼んだだけ」
「なにそれ。変なの。まるで恋人たちのセリフみたい」
「恋人みたいだな、私たち」
「ばか、そんなわけないでしょ」
「霊夢が言ったのに」
「魔理沙が言わせたの」
「ずるいな」
「うん。私ってずるい」
霊夢は腕を私の背中に回し、足も絡めてきた。
肩越しに、霊夢の声が聞こえる。
「魔理沙」
「なんだ、霊夢」
「最後に神社に来た日を覚えてる?」
「いいや。でも随分前のような気がする」
「13日前。ずっと来てくれなかったわね」
「大雪で雪落としをしたり、研究で家にこもったりしてたんだ」
「ほんとに?」
「ほんとだぜ」
「誰かに会った?」
「会ってない。人に会ったのは13日ぶりで、霊夢が初めてだ」
「信じていい?」
「ああ、私は嘘をついたことがない」
「ばか」
「ああ、私はばかかもしれない」
「でも許してあげる。魔理沙はあったかいから」
「ありがとう」
「霊夢」
「なあに、魔理沙」
「元気になったか?」
「うん」
霊夢が元気だと、私は嬉しい。
ヤンデレ臭漂う霊夢はご馳走です
鈴奈庵のレイマリがぴったりあてはまると個人的に思います。
やっぱりレイマリは最高だ。
でもできれば睡眠はきちんと取ってください霊夢さん