Coolier - 新生・東方創想話

霊夢が元気だと、私は嬉しい。

2014/02/27 16:33:45
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「霊夢いるかー?」

 霊夢は縁側にいなかった。きっと中にいるのだろう。

「勝手に上がるぜー」

 縁側で靴を脱いで障子を開けると、居間の真ん中に布団があった。
 やれやれ。まだ寝てるのか。もうお昼前だぜ。

「霊夢ー。起きろー。お前もついに冬眠に目覚めたかー?」

 すると霊夢はこちらに寝返りを打って眠そうな声で言った。

「何それ。目覚めたのか寝てるのかわかんない」

「なんにせよ目覚めたじゃないか」

「ずっと起きてたわ。昨日の晩から」

「ふうん? 紫が聞いたらさぞかし驚くだろうな」

「あんな奴のこと、どうでもいい」

 霊夢は落ち込んだ様子で投げやりに言った。
 布団のそばに胡坐をかいて座る。枕元には霊夢の巫女服が置いてある。布団の中の霊夢は寝巻のままだ。髪も結んでない。
 クマがひどい。ほんとに寝てないのか。

 霊夢は顔を横にしたまま私の膝辺りをぼんやりと見つめる。

「何しにきたの」

「何をしようか考えてたらいつの間にか神社に着いちゃったんだ」

「へえ。魔理沙は元気ね」

「毎日酒を飲んでるからな」

 私だって……と言いかけて霊夢は寝返りを打つ。寝巻を着た霊夢の背中は小さくてどこか頼りない。

「なんだ霊夢、風邪引いたのか? 薬持ってこようか」

「いらない。何もいらない」

「ほんとに?」

「…………」

 返事をしない。何かほしいものがあるのだろう。

「お酒飲むか? つまみも持ってくるぜ。温まったら眠れるだろう」

「いらない」

「……お節介なら帰るけど」

「……」

 返事がない。帰ってほしくないのだろう。
 
「しばらくここにいていいか」

「……うん」

「わかった」

 帽子を取って巫女服の隣に置く。
 三つ編みをいじったり霊夢の後頭部を見つめたりする。居間には静かで冷たい時間が流れる。
 霊夢の髪の毛は細くてつやがあって、すごく綺麗だ。

「霊夢。髪触ってもいいか」
「好きにしなさい」

 霊夢の髪を手に取ってみる。つやつやの髪は私の指の間からするすると抜けていく。

「髪、綺麗だな」

「ありがとう」

「霊夢、こっち向いて」

「はあ、なによ」

 渋々といった様子でこちらに寝返りを打つ霊夢。

「どうしたら元気出してくれるんだ。霊夢が元気じゃないと、なんだか不安になるんだ」

「そう……」

「私、何か悪いことしたか?」

「してない。魔理沙のせいじゃない」

「ほんとに?」

「ほんとよ」

 そう言うと霊夢は布団を頭までかぶって顔を隠してしまう。
 一体どうすればいい。
 どうして霊夢はこんなに切なげで儚いんだ。
 まるで今にも幽霊のようにフッと消えてしまいそうじゃないか。

「霊夢。布団、入ってもいいか」

「……」

「霊夢……」

「好きに、しなさい」

 私は布団に入る。白い寝巻を着た霊夢の身体を見る。ちゃんとそこにある。
 足も腰も胸も、手も肩も首も、頭も目も口も、ちゃんとある。

 私は布団の中で霊夢の身体を抱きしめた。霊夢の体温を全身で受け止める。

「霊夢はあったかいな」

「魔理沙は……冷たいわね」

「冷たくてごめん。頑張って温かくなるから、もうちょっと待ってくれ」

「うん。待ってる」

 布団の温度と霊夢の体温で私の身体はポカポカと温まっていく。

「霊夢」

「なあに、魔理沙」

「なんでもない。呼んだだけ」

「なにそれ。変なの。まるで恋人たちのセリフみたい」

「恋人みたいだな、私たち」

「ばか、そんなわけないでしょ」

「霊夢が言ったのに」

「魔理沙が言わせたの」

「ずるいな」

「うん。私ってずるい」

 霊夢は腕を私の背中に回し、足も絡めてきた。
 肩越しに、霊夢の声が聞こえる。

「魔理沙」

「なんだ、霊夢」

「最後に神社に来た日を覚えてる?」

「いいや。でも随分前のような気がする」

「13日前。ずっと来てくれなかったわね」

「大雪で雪落としをしたり、研究で家にこもったりしてたんだ」

「ほんとに?」

「ほんとだぜ」

「誰かに会った?」

「会ってない。人に会ったのは13日ぶりで、霊夢が初めてだ」

「信じていい?」

「ああ、私は嘘をついたことがない」

「ばか」

「ああ、私はばかかもしれない」

「でも許してあげる。魔理沙はあったかいから」

「ありがとう」



「霊夢」


「なあに、魔理沙」







「元気になったか?」







「うん」






 霊夢が元気だと、私は嬉しい。


十三作目です。

雨の日のなんだか暗い気分で書きました。
コメントや評価をお待ちしております。
駿河傑
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コメント



0.1400簡易評価
3.90名前が無い程度の能力削除
久しぶりにほっこりするお話でした
4.90名前が無い程度の能力削除
短いけどほんわかした
6.80名前が無い程度の能力削除
やきもち焼きの少女たち。寂しがり屋な少女たち。
7.90名前が無い程度の能力削除
頑張って温かくなるからの一文で色々想像した俺は穢れたオトナ
ヤンデレ臭漂う霊夢はご馳走です
8.100名前が無い程度の能力削除
布団の中で互いの思いを確かめ合う。素敵ですねぇ
10.100非現実世界に棲む者削除
短いのにじんわりと来た。
鈴奈庵のレイマリがぴったりあてはまると個人的に思います。
やっぱりレイマリは最高だ。
12.70絶望を司る程度の能力削除
レイマリですね、だがそれが良い。霊夢さん、ちゃんと寝てください。
15.70奇声を発する程度の能力削除
良かったです
19.100名前が無い程度の能力削除
良い感じでした。
23.80名前が無い程度の能力削除
魔理沙に会えないだけで一晩眠れないとかマジでヤンデ霊夢
26.90名前が無い程度の能力削除
ヤンデレっぽい霊夢も素敵だ
でもできれば睡眠はきちんと取ってください霊夢さん
28.100名前が無い程度の能力削除
いいな、不貞腐れた霊夢もかわいい
31.100名前が無い程度の能力削除
霊夢と魔理沙の仲が良いと、私は嬉しいです