アリスは理想的な女性だと思う。
この考えは、私だけでなく幻想郷中に住む女性全ての共通認識であると私は考えている。
アリスの長所を挙げたらキリがない。
まず、アリスを思い浮かべる時に一番最初に出てくるのが、あの金髪だ。
さらさらでシルクのような手触り、異性が気になるのは当たり前。同性ですら嫉妬するどころか溜息をついてしまう。
この前、「アリスにどんな手入れをしているの?」と尋ねたら、アリスはにこりと笑って「別に何もしてないわ」と答えた。
この答え方すら模範解答であり、アリスが理想的な女性だと主張する私の意見に大方賛同してもらえる事だろう。
でも、模範解答であろうとも、この答えに私は納得できない。
アリス=人形遣いというのが世間の認識だが、私は密かに美を研究している魔法使いではないかと疑っている。
他にも気配りができる。料理がうまい。手先が器用。人付き合いがいい。子供に好かれる。
……私と違い過ぎて、本当に涙が出てくる。
でも。
でも!
そのアリスが私の恋人なのである。
信じられないだろうけど、本当の話だ。
その日、私はアリスの家を訪れていた。
特に用事なんてない。アリスと――いや、恋人と話をするのに理由なんているだろうか。
世の大半のカップルはない、と断言するだろうし、私もそう思う。
好きな人に会うのに理由なんていらないのだ。好きな人とは一緒にいられるだけで幸せなのだ。
かく言う私も、アリスにはまだ出会えてないのに、これからアリスに出会えると考えるだけで心がほんわかと温かい気持ちになるのを感じていた。
「アリス~」
今日はどんな話をしようかな?
今日はどんなお茶菓子で持て成してくれるのかな?
今日のアリスはどんな格好をしているのかな?
――そんな想いを抱きながら、アリスを尋ねる。
「おや、メディじゃないか。お前がこんな場所に来るのは珍しいな」
でも、迎えてくれたのはアリスじゃなく魔理沙だった。
「……えっと、あ、アリス……は?」
つい口ごもってしまう。
表情もきっと晴れやかなものからどんよりしたものへと変わってしまった事だろう。
「アリスなら――」
「あら、メディ。いらっしゃい」
魔理沙が言うよりも先にアリスが家から出てきて私を迎えてくれた。
太陽のような笑顔とでもいうのだろうか。
木洩れ日が安らかにアリスの顔に当たり、その時の私には本当にアリスの笑顔が輝いているように見えた。
おもわず顔がにやけるのを急いで直す。
「アリス、今日は空いてるかな?」
聞くと、アリスの表情が少しだけ曇った。
アリスの顔はいつも見ているから、この表情の意味を私はすぐに悟ってしまった。
便利だけど、この時ばかりは少し恨めしく思った。
私がもし、アリスの表情の意味を分からずにねだっていれば、アリスの意見が変わるかもしれないから。
「あ、ううん。お暇じゃなかったら別にいいんだよ。
私は明日だって明後日だって暇だから。その時にアリスとおしゃべりできたらいいなぁって思っただけだから」
「……ごめんなさいね」
「アリスが謝る必要ないよ。 突然訪問した私が悪いなんだから」
「本当にごめんなさいね。
今日は魔理沙と魔法の研究をする約束をしてて、手が離せないのよ」
「だから、アリスが謝る必要ないんだってば」
本当に申し訳なさそうに謝るアリスは見ていてつらい。
アリスにはいつだって笑っていてほしいから。
だから、私は自分の気持ちを押し殺していい子になるのだ。
「うん、それじゃあまたね」
アリスに精いっぱいの手を振って――アリスとの別れを精いっぱい未練がましく思いながら、私はアリスの元を離れた。
――悪い子になれればいいのにな。
なんて、思ってしまう私は悪い子ではなく、もちろんいい子でもなく。
ダメな子なのかもしれない。
次の訪問時も、その次の訪問時もアリスは予定がいっぱいで私とのお茶会が開催される事はなかった。
私がアポなしで行くのが悪い――それは正しい。
アリスが多忙なのが悪い――人望があるんだから仕方ない。
結局、私がアリスと会えないのは仕方のない事で、誰が悪いというわけでもないのだろう。
だから、悔しいし、この悔しさを誰にぶつけたらいいのか分からなくなるから、よけいに悲しい。
寂しいし、泣きたいと思う。
アリスと出会った時は嬉しくて、アリスと恋人になれた時はもう天にも舞い上がりそうな気持ちで、あの時はこれからどんな幸せな気分になるんだろうっていっぱい妄想していたのに。
現実にはアリスに会えなくて、それが苦しくて。
幸せなんて全く見えなくて、それが悲しくて。
いい事なんて一つもありはしない。
過去の自分を否定するなんてやりたくない事だけど、アリスと恋人になるという選択肢は本当に正しかったのだろうかって考えてしまう。
アリスと友達同士でいた方が、こんな苦しみもこんな悲しみもなかったんじゃないのだろうか。
もう、いっそアリスに会わない方が楽になるんじゃないだろうか。
……でも、これは私の妄想。
アリスに会えなくなるなんて考えただけでも恐ろしい。
アリスとお茶会できてはいないとはいえ、アリスと出会えているから――二言、三言会話できているから私はまだ幸せでいられるのだ。
また、明日もアリスに会いに行こう。
ううん、明日だけじゃなくて明後日も明々後日もその次だってアリスに会いに行こう。
恋人は一緒にいられるだけで幸せなんだ。
時間なんて関係ないんだ。
その次の日、アリスの家に行こうとドアを開けたところでポストに手紙が入っているのに気がついた。
その手紙からラベンダーの香りがしただけで、私にはこの手紙の主がアリスだって分かってしまった。アリス検定なら私は負けない自信がある。
「うわああぁぁっ!!!」
なんで私は叫んだんだろう。自分でも分からない。
でも、とにかく私は急いで家に戻って、急いで手紙を開けた。
『愛しのメディスン=メランコリー様へ。
本日の正午、二人っきりのティーパーティーを開催しませんか?
貴女への贈り物も用意してます。
ご訪問お待ちしています。
貴女を大好きなアリス=マーガトロイドより』
この手紙を読んで、まず『愛しのメディスン=メランコリー様へ』で悶えた。
次に『貴女を大好きなアリス=マーガトロイドより』で気絶しそうになった。
アリスはどれだけ私を悶えさせたら気が済むのだろう。
「ふわああぁっ!!」ってもう一回謎の叫び声をあげた後で、私はようやく本文へと入る事ができた。
「ティーパーティー!? 二人きり!? 贈り物!!??
……あぁ、神様って本当にいるんだなぁ」
そうとなれば準備だ。
アリスに会いに行く私じゃなくて、アリスと『二人っきり』のティーパーティーをする私に着替えないといけない。
この前アリスに褒めてもらった服を探し出して、今度アリスに見てもらおうと買ったおにゅーのリボンをつけて。
髪がはねていたのをもう一度整えて、鏡の前で笑顔を練習して。
万全の態勢で私はアリスの家へ向かうのだった。
「ごめん、アリス。遅れちゃった」
「ううん、大丈夫よ、メディ。時間ぴったりだわ」
今日のアリスも綺麗だった。
精いっぱいおめかしした私が子供っぽくて、なんだか申し訳なく思ってしまう程だ。
「あら、どうしたの?」
「アリスが綺麗すぎて、私と全然違うなぁって思っちゃったの」
「ねぇ、知ってるかしら?」
アリスはまるで秘密の話をするかのように人差し指を立てて自分の鼻先につけた。
そんな仕草すら絵画にしたいくらいに完璧で、改めてアリスは髪の先から爪の先まで完全超人だと思った。
「女の子っていうのはね、恋人に綺麗とか可愛いと言ってほしくて頑張って努力するのよ。
またその気持ちがね、女の子をより一層綺麗にしてくれるのよ」
「へぇ~、アリスって物知りなんだね~。
……っていうか、私! 恋人って私!?
私に見てもらいたいからアリスは綺麗になったの!!??」
「だから、メディも可愛いでしょ?」
ほっぺたに軽く触れるキス。
私は今アリスに見せられないくらい赤面しているのだろう。
でも、私は今硬直しているから、その赤面をアリスに隠せていないのだろう。
恥ずかしさが恥ずかしさを呼んで、私はどうしようもなくなる。
私はアリスをどこまで好きになるのだろう?
「そうそう、忘れてたわ。
手紙にも書いてあったでしょ。これがメディへの贈り物よ」
アリスから手渡されたのは小さな箱。
でも、贈り物って何なのか私には見当がつかなかった。
私の誕生日は違うし、クリスマスはもう過ぎたはずだ。その他に記念日なんてあったっけ?
「ハッピーバレンタイン」
アリスがにこりと笑う。
ハートの形をしたピンク色のチョコ。
アリスは料理上手だから凝ろうとしたらすごいチョコレートが作れるだろうに、私の目の前に広がったのはシンプルなハート型。
でも、このシンプルさがアリスの素直な気持ちを表しているようで、私には嬉しかった。
「魔理沙に手伝ってもらったり、人里に買い物に行ったり大変だったんだからね」
「……え、それって最近忙しかったのって、私のチョコを作るため?」
「それ以上は言わないの。
女の子は秘密を持ってるから可愛いんだから」
結局、私の勘違いだったみたいだ。
アリスはずっと私を好きでいてくれて、私が迷ったり悲しんだり苦しんだりする必要なんてなかったのだ。
……でも、と私は思う。
ここまでアリスにペースを握られては私のプライドが傷つくというものだ。
だから、お礼をしなければならないだろう。
「でも、アリス。
私がチョコ嫌いなのって知らなかったっけ?」
「え……? あ、そうだったわね。
だからいつもティーパーティーの時はチョコを出さないようにしてたのに。
メディ、ごめんなさい。そのチョコは私がいただくわ」
「でもね、アリス」
笑顔。
アリスに負けないくらいのとびっきりの笑顔。
そんな笑顔を今の私は作れただろうか?
「恋人がいる時のチョコって特別な気持ちに浸れて私は好きです」 END
この考えは、私だけでなく幻想郷中に住む女性全ての共通認識であると私は考えている。
アリスの長所を挙げたらキリがない。
まず、アリスを思い浮かべる時に一番最初に出てくるのが、あの金髪だ。
さらさらでシルクのような手触り、異性が気になるのは当たり前。同性ですら嫉妬するどころか溜息をついてしまう。
この前、「アリスにどんな手入れをしているの?」と尋ねたら、アリスはにこりと笑って「別に何もしてないわ」と答えた。
この答え方すら模範解答であり、アリスが理想的な女性だと主張する私の意見に大方賛同してもらえる事だろう。
でも、模範解答であろうとも、この答えに私は納得できない。
アリス=人形遣いというのが世間の認識だが、私は密かに美を研究している魔法使いではないかと疑っている。
他にも気配りができる。料理がうまい。手先が器用。人付き合いがいい。子供に好かれる。
……私と違い過ぎて、本当に涙が出てくる。
でも。
でも!
そのアリスが私の恋人なのである。
信じられないだろうけど、本当の話だ。
その日、私はアリスの家を訪れていた。
特に用事なんてない。アリスと――いや、恋人と話をするのに理由なんているだろうか。
世の大半のカップルはない、と断言するだろうし、私もそう思う。
好きな人に会うのに理由なんていらないのだ。好きな人とは一緒にいられるだけで幸せなのだ。
かく言う私も、アリスにはまだ出会えてないのに、これからアリスに出会えると考えるだけで心がほんわかと温かい気持ちになるのを感じていた。
「アリス~」
今日はどんな話をしようかな?
今日はどんなお茶菓子で持て成してくれるのかな?
今日のアリスはどんな格好をしているのかな?
――そんな想いを抱きながら、アリスを尋ねる。
「おや、メディじゃないか。お前がこんな場所に来るのは珍しいな」
でも、迎えてくれたのはアリスじゃなく魔理沙だった。
「……えっと、あ、アリス……は?」
つい口ごもってしまう。
表情もきっと晴れやかなものからどんよりしたものへと変わってしまった事だろう。
「アリスなら――」
「あら、メディ。いらっしゃい」
魔理沙が言うよりも先にアリスが家から出てきて私を迎えてくれた。
太陽のような笑顔とでもいうのだろうか。
木洩れ日が安らかにアリスの顔に当たり、その時の私には本当にアリスの笑顔が輝いているように見えた。
おもわず顔がにやけるのを急いで直す。
「アリス、今日は空いてるかな?」
聞くと、アリスの表情が少しだけ曇った。
アリスの顔はいつも見ているから、この表情の意味を私はすぐに悟ってしまった。
便利だけど、この時ばかりは少し恨めしく思った。
私がもし、アリスの表情の意味を分からずにねだっていれば、アリスの意見が変わるかもしれないから。
「あ、ううん。お暇じゃなかったら別にいいんだよ。
私は明日だって明後日だって暇だから。その時にアリスとおしゃべりできたらいいなぁって思っただけだから」
「……ごめんなさいね」
「アリスが謝る必要ないよ。 突然訪問した私が悪いなんだから」
「本当にごめんなさいね。
今日は魔理沙と魔法の研究をする約束をしてて、手が離せないのよ」
「だから、アリスが謝る必要ないんだってば」
本当に申し訳なさそうに謝るアリスは見ていてつらい。
アリスにはいつだって笑っていてほしいから。
だから、私は自分の気持ちを押し殺していい子になるのだ。
「うん、それじゃあまたね」
アリスに精いっぱいの手を振って――アリスとの別れを精いっぱい未練がましく思いながら、私はアリスの元を離れた。
――悪い子になれればいいのにな。
なんて、思ってしまう私は悪い子ではなく、もちろんいい子でもなく。
ダメな子なのかもしれない。
次の訪問時も、その次の訪問時もアリスは予定がいっぱいで私とのお茶会が開催される事はなかった。
私がアポなしで行くのが悪い――それは正しい。
アリスが多忙なのが悪い――人望があるんだから仕方ない。
結局、私がアリスと会えないのは仕方のない事で、誰が悪いというわけでもないのだろう。
だから、悔しいし、この悔しさを誰にぶつけたらいいのか分からなくなるから、よけいに悲しい。
寂しいし、泣きたいと思う。
アリスと出会った時は嬉しくて、アリスと恋人になれた時はもう天にも舞い上がりそうな気持ちで、あの時はこれからどんな幸せな気分になるんだろうっていっぱい妄想していたのに。
現実にはアリスに会えなくて、それが苦しくて。
幸せなんて全く見えなくて、それが悲しくて。
いい事なんて一つもありはしない。
過去の自分を否定するなんてやりたくない事だけど、アリスと恋人になるという選択肢は本当に正しかったのだろうかって考えてしまう。
アリスと友達同士でいた方が、こんな苦しみもこんな悲しみもなかったんじゃないのだろうか。
もう、いっそアリスに会わない方が楽になるんじゃないだろうか。
……でも、これは私の妄想。
アリスに会えなくなるなんて考えただけでも恐ろしい。
アリスとお茶会できてはいないとはいえ、アリスと出会えているから――二言、三言会話できているから私はまだ幸せでいられるのだ。
また、明日もアリスに会いに行こう。
ううん、明日だけじゃなくて明後日も明々後日もその次だってアリスに会いに行こう。
恋人は一緒にいられるだけで幸せなんだ。
時間なんて関係ないんだ。
その次の日、アリスの家に行こうとドアを開けたところでポストに手紙が入っているのに気がついた。
その手紙からラベンダーの香りがしただけで、私にはこの手紙の主がアリスだって分かってしまった。アリス検定なら私は負けない自信がある。
「うわああぁぁっ!!!」
なんで私は叫んだんだろう。自分でも分からない。
でも、とにかく私は急いで家に戻って、急いで手紙を開けた。
『愛しのメディスン=メランコリー様へ。
本日の正午、二人っきりのティーパーティーを開催しませんか?
貴女への贈り物も用意してます。
ご訪問お待ちしています。
貴女を大好きなアリス=マーガトロイドより』
この手紙を読んで、まず『愛しのメディスン=メランコリー様へ』で悶えた。
次に『貴女を大好きなアリス=マーガトロイドより』で気絶しそうになった。
アリスはどれだけ私を悶えさせたら気が済むのだろう。
「ふわああぁっ!!」ってもう一回謎の叫び声をあげた後で、私はようやく本文へと入る事ができた。
「ティーパーティー!? 二人きり!? 贈り物!!??
……あぁ、神様って本当にいるんだなぁ」
そうとなれば準備だ。
アリスに会いに行く私じゃなくて、アリスと『二人っきり』のティーパーティーをする私に着替えないといけない。
この前アリスに褒めてもらった服を探し出して、今度アリスに見てもらおうと買ったおにゅーのリボンをつけて。
髪がはねていたのをもう一度整えて、鏡の前で笑顔を練習して。
万全の態勢で私はアリスの家へ向かうのだった。
「ごめん、アリス。遅れちゃった」
「ううん、大丈夫よ、メディ。時間ぴったりだわ」
今日のアリスも綺麗だった。
精いっぱいおめかしした私が子供っぽくて、なんだか申し訳なく思ってしまう程だ。
「あら、どうしたの?」
「アリスが綺麗すぎて、私と全然違うなぁって思っちゃったの」
「ねぇ、知ってるかしら?」
アリスはまるで秘密の話をするかのように人差し指を立てて自分の鼻先につけた。
そんな仕草すら絵画にしたいくらいに完璧で、改めてアリスは髪の先から爪の先まで完全超人だと思った。
「女の子っていうのはね、恋人に綺麗とか可愛いと言ってほしくて頑張って努力するのよ。
またその気持ちがね、女の子をより一層綺麗にしてくれるのよ」
「へぇ~、アリスって物知りなんだね~。
……っていうか、私! 恋人って私!?
私に見てもらいたいからアリスは綺麗になったの!!??」
「だから、メディも可愛いでしょ?」
ほっぺたに軽く触れるキス。
私は今アリスに見せられないくらい赤面しているのだろう。
でも、私は今硬直しているから、その赤面をアリスに隠せていないのだろう。
恥ずかしさが恥ずかしさを呼んで、私はどうしようもなくなる。
私はアリスをどこまで好きになるのだろう?
「そうそう、忘れてたわ。
手紙にも書いてあったでしょ。これがメディへの贈り物よ」
アリスから手渡されたのは小さな箱。
でも、贈り物って何なのか私には見当がつかなかった。
私の誕生日は違うし、クリスマスはもう過ぎたはずだ。その他に記念日なんてあったっけ?
「ハッピーバレンタイン」
アリスがにこりと笑う。
ハートの形をしたピンク色のチョコ。
アリスは料理上手だから凝ろうとしたらすごいチョコレートが作れるだろうに、私の目の前に広がったのはシンプルなハート型。
でも、このシンプルさがアリスの素直な気持ちを表しているようで、私には嬉しかった。
「魔理沙に手伝ってもらったり、人里に買い物に行ったり大変だったんだからね」
「……え、それって最近忙しかったのって、私のチョコを作るため?」
「それ以上は言わないの。
女の子は秘密を持ってるから可愛いんだから」
結局、私の勘違いだったみたいだ。
アリスはずっと私を好きでいてくれて、私が迷ったり悲しんだり苦しんだりする必要なんてなかったのだ。
……でも、と私は思う。
ここまでアリスにペースを握られては私のプライドが傷つくというものだ。
だから、お礼をしなければならないだろう。
「でも、アリス。
私がチョコ嫌いなのって知らなかったっけ?」
「え……? あ、そうだったわね。
だからいつもティーパーティーの時はチョコを出さないようにしてたのに。
メディ、ごめんなさい。そのチョコは私がいただくわ」
「でもね、アリス」
笑顔。
アリスに負けないくらいのとびっきりの笑顔。
そんな笑顔を今の私は作れただろうか?
「恋人がいる時のチョコって特別な気持ちに浸れて私は好きです」 END
いやはい、おもしろかったです。ご馳走様。