今、店に美女がいる。
絶世とまではいかないにせよ、高ランクに位置するのは間違いない。
端正な顔立ち、豊満なバスト、引き締まったウェスト、スラリと伸びた美脚。
世の中の男子垂涎の美女だ。
そしてその美女が僕に微笑んでいるのだから気分が高揚して然るべきはずである。
が、僕には冷や汗しか出てこない。
彼女は風見幽香、幻想郷の御意見番だ。
彼女の笑顔に見つめられながら1時間はたったはずだ。
時計は5分と言っているが、壊れているに決まってる。
向こうは何も言ってこない。僕は居づらいことこの上ない。そして僕も語らない。これは一種の心理戦、いや風見幽香の手口というべきか。笑顔でじっと見つめながら相手の神経を衰弱させる、で相手が音を上げたところで無茶な要求をするのだ。
被害者がいうんだから間違いない。
が、今日は僕は音を上げない。何せ僕には魔理沙がいる。相手は四季のフラワーマスター。少々荷が重いかもしれない。それでも魔理沙なら…魔理沙ならきっと何とかしてくれる。
幽香 「魔理沙ちゃんならあと8時間は来ないわよ。」
霖之助「・・・・・・。」
終わった。1時間見つめられて最初の一言目がこれである。今の僕は真っ白に燃え尽きた。あと8時間耐えることは不可能だ。もうゲームオーバーしていいよね。
霖之助「今日はどのようなご用件で。」
幽香 「大丈夫よ、今回は比較的安全な方よ。」
それってつまり危険じゃないか。
霖之助「ラフレシアの件なら、もうお断りです。店にまで被害が出ましたので」
幽香 「流石にアレは私も後悔してるわ」
霖之助「ケシは絶対取引しません。麻薬だなんて聞いてませんよ。」
幽香 「だって、アレだけは幻想入りしそうにないんだもん。」
霖之助「というより、もうボーダー商事に直接取引して頂けませんか。中間業者がない方が安く取引できますし。」
幽香 「だってスキマ妖怪は私を警戒してるし。中間がいたところで安いから問題ないし。」
こっちは大損だがな。
しかし僕も商売人。赤字と死は直結する。
幽香 「それに今回は危険じゃないわ。あなたにも利益があるわよ。」
霖之助「・・・伺いましょう。」
話に乗ったふりをする。
所詮弱者は強者に甚振られるのだ。
幽香 「カカオって知ってるかしら」
霖之助「幻想郷に麻薬はありませんよ」
幽香 「なんで麻薬って決めつけるの」
この女は記憶力に問題アリのようだ。
幽香 「カカオっていうのはチョコレートの原料なのよ」
霖之助「チョコレートですって?」
チョコレートを知らない読者のために解説しよう。チョコレートというのは甘味の一種で、幻想郷では製造不可能。たまに忘れ去られたお菓子(要するに絶版)が幻想入りするくらいだ。当然貴重品であり、更に幻想郷にはヴァレンタインデーという、女子が意中の相手にチョコを渡すイベントがある。
タダですら男女比が偏っている幻想郷。貴重なチョコレート。荒事慣れした女たち。2月は大量のけが人が出る。けが人は永遠亭に運びたいところだが、彼女たちも参戦者なので治療もままならない。そして風見幽香は今チョコレートの原材料を欲する。
霖之助「読めましたよ。チョコに麻薬を混ぜて一気に勢力拡大を・・・」
幽香 「いい加減、私と犯罪を直結させるのやめて下さる?」
何か気を障ることを言ったのだろうか。
とにかく相手の機嫌を頗る損ねてしまったようだ。
幽香 「カカオというのは熱帯、ん~、外の世界の高温多湿の環境でしか育たない植物なのよ。けど私なら機材さえあれば育てられる。十分に利益を出す自信があるわ。」
霖之助「つまり、多少値が張っても購入できるというわけですね。」
なるほど。商売を始めるのか。まぁリターンが大きからこちらにも儲けさせてくれるという・・・
幽香 「何言ってるの?私は払わないわ。払うのはあなた。」
霖之助「は、話が見えませんが。」
幽香 「あなたに私のスポンサーになれと言ってるの。あなたが出資した設備で私が育てて分け前をあげるわ。いいでしょ。」
・・・冗談じゃないぞ、この女。魔理沙よりタチが悪い。
霖之助「そう申されましても設備費用は・・・」
幽香 「ビニールハウスに土地代、開墾用の重機も欲しいわね。ざっとこれくらいかしら」
・・・・・ゼロが何個ついてるんだ。
霖之助「香霖堂ではそうしたものは引き受けかねまして・・・」
幽香 「話を聞いてなかった?私はスポンサーに『なれ』と言ってるの。意見は聞いてないわ。」
メガネを取る。本気モードだ。僕にも意地がある。
霖之助「幻想郷でのカカオ育成可能性に疑問を感じます。スポンサーは引き受け兼ね、ぐわっ!?」
脛に激痛が走る。
幽香 「私も手荒なことしたくないんだけど。」
もう片方に激痛。
霖之助「こんなことして許さ・・・がぁ!!」
幽香 「もう一度聞くわ。」
ゆっくりと悪魔が近づく。とびっきりの笑顔だ。で、僕は立てそうにない。
幽香 「私もスポンサーにこんなことはしたくないんだけど。」
僕の膝の上に腰を下ろす。無論、彼女の体重が膝を通して脛に行く。
霖之助「がぁぁぁ・・あぁぁぁ・・・」
彼女は自身の脇腹を僕の正面に向ける形で座った。横座りというやつだ。
霖之助「ぁぁぁ、何度聞かれたところで・・・」
幽香 「ところで脊髄反射って知ってるかしら」
霖之助「へ?」
幽香 「人間って膝のあたりにツボがあって。ここをつつくと自動的に足が動かされるのよね、こんなふうに!」
ビクッ!!
霖之助「ぐぁぁぁぁ!!」
彼女がツボをついたらしい。で、僕の足は脛の負傷を無視して全力で空中を蹴り上げた。
霖之助「がっがっがぁぁぁ・・・」
もう既に僕は涙より涎の方が多い状態だ。この女、ここまで非常識とは知らなかった。僕は何とか掴みかかろうとするが、両手は既に抑えられえいる。彼女は右手で僕を拘束し、左手でツボをついてくる。
幽香 「でどうなのかしら?」
霖之助「・・・くそくらえ。」
幽香 「強情な男は嫌われるわよ。」
彼女が笑顔で顔を近づけてくる。これは・・・
チャンスだ。
僕は背筋腹筋を総動員し、思いっきり頭突きする。
幽香 「きゃっ!?」
ここだけ見た目相応の可愛らしい声を上げる。が、光景は生易しいものではない。何せ大の男が美女に頭突きして鼻血が噴出しているのだ。折れてはいないと思うが、折れていたところでざまぁみろだ。僕は這いつくばりながら武器、即ちガラクタを手にする。徹底抗戦だ。
幽香 「あなた、よくも、よくも。」
相手は涙目、いや泣いている。ガチ泣きだ。Sでも痛みには弱いらしい。
霖之助「この店は僕の命だ。商売人は店を潰されて死ぬくらいなら戦って死ぬ!」
幽香 「・・・・・・」
霖之助「いざ尋常に!」
幽香 「分かったわ!この件はあきらめるから!」
霖之助「いや、購入はしてもらう!!」
幽香 「!!!?」
・・・矛盾を承知で敢えて言うが、僕は興奮状態の中、完全に冷静な状態であった。
脛への攻撃含め、実際僕は大した攻撃を受けていない。
先ほどは絶叫したが、相手の雰囲気に飲まれ必要以上に痛みを感じただけだ。そもそも僕に怪我させるつもりがない、それ故に怪我する度胸がないのだ。
で、僕の攻撃だ。正に窮鼠猫を噛む。幻想郷の御意見番もこれは想定外の事態だったらしい。その結果、幻想郷最強の一角が何の取りえもない一介の半妖に懇願している。
つまり彼女は混乱している。で、相手の混乱を見逃すほど僕は甘くない。
霖之助「カカオ生産自体に利益はある。が、僕にリスクだけ負わせるのは気に入らない。そちらも相応のリスクを負ってもらう。いいか!?」
幽香 「え?えぇ。」
霖之助「ではビニールハウス一式!これは後に君の私有財産になるはずだ。これは全額払ってもらう。」
幽香 「え、えぇ。」
霖之助「重機!いきなり大規模な農業を始める必要はないだろう。これは不要だ。次!」
・
・・
・・・
僕の提示する内容に彼女はえぇを繰り返すだけだ。
しかし僕は口を動かしながら手も動かす。手の先はスカーレット印の契約書だ。紅魔館がやっているサービスで列記とした悪魔の契約書。この契約書の内容は紅魔館が中間に入る。中間手数料はデカいが、それでも彼女が冷静になれば確実に契約反故になる。
・
・・
・・・
かくして、彼女は設備全般を購入し、僕は肥料・燃料・カカオ種子などを負担することになった。後者のはもし、彼女がカカオ栽培を飽きて止めたところで注文を停止するだけで済む。彼女購入の設備も彼女の経済を見極めての額だ。契約書にサインさせて、幽香はとうとう帰宅する。途中で冷静さを取り戻したようだが、契約に異は挟まなかった。
霖之助「・・・ふぅ。」
疲れた。本当に疲れた。
しかし不思議な充足感に満たされる。何せあの風見幽香にいっぱい食わせたのだ。
今日は久々にコーラでも飲もうかな・・・。
魔理沙「ただいま、コーリン。ん、どうした。」
霖之助「・・・。」
僕はこの役立たずに一発お見舞いしつつ夕食にした。
失敗した。
まさかこうなるとは。
結論からいうと、彼女のカカオ栽培は成功、いや大成功だ。
幻想郷でカカオは飛ぶように売れる。アリスがカカオ加工しているのも原因の一つ。
更にココアという新しい飲み物が大流行した。
が、僕の利益は燃料購入の中間利益のみだ。
よくよく考えれば一度カカオ栽培に成功したら種子を買う必要はない。肥料に至っては彼女はプロだ。適した肥料を見つければ勝手に作る。継続的に使うのはビニールハウスを温めるための燃料費くらいだ。
今年のヴァレンタインもチョコであふれかえっている。冷静になればあのまま彼女のスポンサーになって利益の1割ももらえば人里の商店にも負けなかったかもしれない。
すれ違った少女がココアを飲んでいる。何で利益の取り分を契約書に書かなかったんだ。冷静なつもりで全然冷静じゃなかった。
聞くところによると地底にも分店ができるらしい。香霖堂は1店舗しかないのに。
事態がどう転んでも利益が出るようにする。商売人はかくあるべきだ。
が、あるべき、という論と僕がそうであるかは別の話であった。
絶世とまではいかないにせよ、高ランクに位置するのは間違いない。
端正な顔立ち、豊満なバスト、引き締まったウェスト、スラリと伸びた美脚。
世の中の男子垂涎の美女だ。
そしてその美女が僕に微笑んでいるのだから気分が高揚して然るべきはずである。
が、僕には冷や汗しか出てこない。
彼女は風見幽香、幻想郷の御意見番だ。
彼女の笑顔に見つめられながら1時間はたったはずだ。
時計は5分と言っているが、壊れているに決まってる。
向こうは何も言ってこない。僕は居づらいことこの上ない。そして僕も語らない。これは一種の心理戦、いや風見幽香の手口というべきか。笑顔でじっと見つめながら相手の神経を衰弱させる、で相手が音を上げたところで無茶な要求をするのだ。
被害者がいうんだから間違いない。
が、今日は僕は音を上げない。何せ僕には魔理沙がいる。相手は四季のフラワーマスター。少々荷が重いかもしれない。それでも魔理沙なら…魔理沙ならきっと何とかしてくれる。
幽香 「魔理沙ちゃんならあと8時間は来ないわよ。」
霖之助「・・・・・・。」
終わった。1時間見つめられて最初の一言目がこれである。今の僕は真っ白に燃え尽きた。あと8時間耐えることは不可能だ。もうゲームオーバーしていいよね。
霖之助「今日はどのようなご用件で。」
幽香 「大丈夫よ、今回は比較的安全な方よ。」
それってつまり危険じゃないか。
霖之助「ラフレシアの件なら、もうお断りです。店にまで被害が出ましたので」
幽香 「流石にアレは私も後悔してるわ」
霖之助「ケシは絶対取引しません。麻薬だなんて聞いてませんよ。」
幽香 「だって、アレだけは幻想入りしそうにないんだもん。」
霖之助「というより、もうボーダー商事に直接取引して頂けませんか。中間業者がない方が安く取引できますし。」
幽香 「だってスキマ妖怪は私を警戒してるし。中間がいたところで安いから問題ないし。」
こっちは大損だがな。
しかし僕も商売人。赤字と死は直結する。
幽香 「それに今回は危険じゃないわ。あなたにも利益があるわよ。」
霖之助「・・・伺いましょう。」
話に乗ったふりをする。
所詮弱者は強者に甚振られるのだ。
幽香 「カカオって知ってるかしら」
霖之助「幻想郷に麻薬はありませんよ」
幽香 「なんで麻薬って決めつけるの」
この女は記憶力に問題アリのようだ。
幽香 「カカオっていうのはチョコレートの原料なのよ」
霖之助「チョコレートですって?」
チョコレートを知らない読者のために解説しよう。チョコレートというのは甘味の一種で、幻想郷では製造不可能。たまに忘れ去られたお菓子(要するに絶版)が幻想入りするくらいだ。当然貴重品であり、更に幻想郷にはヴァレンタインデーという、女子が意中の相手にチョコを渡すイベントがある。
タダですら男女比が偏っている幻想郷。貴重なチョコレート。荒事慣れした女たち。2月は大量のけが人が出る。けが人は永遠亭に運びたいところだが、彼女たちも参戦者なので治療もままならない。そして風見幽香は今チョコレートの原材料を欲する。
霖之助「読めましたよ。チョコに麻薬を混ぜて一気に勢力拡大を・・・」
幽香 「いい加減、私と犯罪を直結させるのやめて下さる?」
何か気を障ることを言ったのだろうか。
とにかく相手の機嫌を頗る損ねてしまったようだ。
幽香 「カカオというのは熱帯、ん~、外の世界の高温多湿の環境でしか育たない植物なのよ。けど私なら機材さえあれば育てられる。十分に利益を出す自信があるわ。」
霖之助「つまり、多少値が張っても購入できるというわけですね。」
なるほど。商売を始めるのか。まぁリターンが大きからこちらにも儲けさせてくれるという・・・
幽香 「何言ってるの?私は払わないわ。払うのはあなた。」
霖之助「は、話が見えませんが。」
幽香 「あなたに私のスポンサーになれと言ってるの。あなたが出資した設備で私が育てて分け前をあげるわ。いいでしょ。」
・・・冗談じゃないぞ、この女。魔理沙よりタチが悪い。
霖之助「そう申されましても設備費用は・・・」
幽香 「ビニールハウスに土地代、開墾用の重機も欲しいわね。ざっとこれくらいかしら」
・・・・・ゼロが何個ついてるんだ。
霖之助「香霖堂ではそうしたものは引き受けかねまして・・・」
幽香 「話を聞いてなかった?私はスポンサーに『なれ』と言ってるの。意見は聞いてないわ。」
メガネを取る。本気モードだ。僕にも意地がある。
霖之助「幻想郷でのカカオ育成可能性に疑問を感じます。スポンサーは引き受け兼ね、ぐわっ!?」
脛に激痛が走る。
幽香 「私も手荒なことしたくないんだけど。」
もう片方に激痛。
霖之助「こんなことして許さ・・・がぁ!!」
幽香 「もう一度聞くわ。」
ゆっくりと悪魔が近づく。とびっきりの笑顔だ。で、僕は立てそうにない。
幽香 「私もスポンサーにこんなことはしたくないんだけど。」
僕の膝の上に腰を下ろす。無論、彼女の体重が膝を通して脛に行く。
霖之助「がぁぁぁ・・あぁぁぁ・・・」
彼女は自身の脇腹を僕の正面に向ける形で座った。横座りというやつだ。
霖之助「ぁぁぁ、何度聞かれたところで・・・」
幽香 「ところで脊髄反射って知ってるかしら」
霖之助「へ?」
幽香 「人間って膝のあたりにツボがあって。ここをつつくと自動的に足が動かされるのよね、こんなふうに!」
ビクッ!!
霖之助「ぐぁぁぁぁ!!」
彼女がツボをついたらしい。で、僕の足は脛の負傷を無視して全力で空中を蹴り上げた。
霖之助「がっがっがぁぁぁ・・・」
もう既に僕は涙より涎の方が多い状態だ。この女、ここまで非常識とは知らなかった。僕は何とか掴みかかろうとするが、両手は既に抑えられえいる。彼女は右手で僕を拘束し、左手でツボをついてくる。
幽香 「でどうなのかしら?」
霖之助「・・・くそくらえ。」
幽香 「強情な男は嫌われるわよ。」
彼女が笑顔で顔を近づけてくる。これは・・・
チャンスだ。
僕は背筋腹筋を総動員し、思いっきり頭突きする。
幽香 「きゃっ!?」
ここだけ見た目相応の可愛らしい声を上げる。が、光景は生易しいものではない。何せ大の男が美女に頭突きして鼻血が噴出しているのだ。折れてはいないと思うが、折れていたところでざまぁみろだ。僕は這いつくばりながら武器、即ちガラクタを手にする。徹底抗戦だ。
幽香 「あなた、よくも、よくも。」
相手は涙目、いや泣いている。ガチ泣きだ。Sでも痛みには弱いらしい。
霖之助「この店は僕の命だ。商売人は店を潰されて死ぬくらいなら戦って死ぬ!」
幽香 「・・・・・・」
霖之助「いざ尋常に!」
幽香 「分かったわ!この件はあきらめるから!」
霖之助「いや、購入はしてもらう!!」
幽香 「!!!?」
・・・矛盾を承知で敢えて言うが、僕は興奮状態の中、完全に冷静な状態であった。
脛への攻撃含め、実際僕は大した攻撃を受けていない。
先ほどは絶叫したが、相手の雰囲気に飲まれ必要以上に痛みを感じただけだ。そもそも僕に怪我させるつもりがない、それ故に怪我する度胸がないのだ。
で、僕の攻撃だ。正に窮鼠猫を噛む。幻想郷の御意見番もこれは想定外の事態だったらしい。その結果、幻想郷最強の一角が何の取りえもない一介の半妖に懇願している。
つまり彼女は混乱している。で、相手の混乱を見逃すほど僕は甘くない。
霖之助「カカオ生産自体に利益はある。が、僕にリスクだけ負わせるのは気に入らない。そちらも相応のリスクを負ってもらう。いいか!?」
幽香 「え?えぇ。」
霖之助「ではビニールハウス一式!これは後に君の私有財産になるはずだ。これは全額払ってもらう。」
幽香 「え、えぇ。」
霖之助「重機!いきなり大規模な農業を始める必要はないだろう。これは不要だ。次!」
・
・・
・・・
僕の提示する内容に彼女はえぇを繰り返すだけだ。
しかし僕は口を動かしながら手も動かす。手の先はスカーレット印の契約書だ。紅魔館がやっているサービスで列記とした悪魔の契約書。この契約書の内容は紅魔館が中間に入る。中間手数料はデカいが、それでも彼女が冷静になれば確実に契約反故になる。
・
・・
・・・
かくして、彼女は設備全般を購入し、僕は肥料・燃料・カカオ種子などを負担することになった。後者のはもし、彼女がカカオ栽培を飽きて止めたところで注文を停止するだけで済む。彼女購入の設備も彼女の経済を見極めての額だ。契約書にサインさせて、幽香はとうとう帰宅する。途中で冷静さを取り戻したようだが、契約に異は挟まなかった。
霖之助「・・・ふぅ。」
疲れた。本当に疲れた。
しかし不思議な充足感に満たされる。何せあの風見幽香にいっぱい食わせたのだ。
今日は久々にコーラでも飲もうかな・・・。
魔理沙「ただいま、コーリン。ん、どうした。」
霖之助「・・・。」
僕はこの役立たずに一発お見舞いしつつ夕食にした。
失敗した。
まさかこうなるとは。
結論からいうと、彼女のカカオ栽培は成功、いや大成功だ。
幻想郷でカカオは飛ぶように売れる。アリスがカカオ加工しているのも原因の一つ。
更にココアという新しい飲み物が大流行した。
が、僕の利益は燃料購入の中間利益のみだ。
よくよく考えれば一度カカオ栽培に成功したら種子を買う必要はない。肥料に至っては彼女はプロだ。適した肥料を見つければ勝手に作る。継続的に使うのはビニールハウスを温めるための燃料費くらいだ。
今年のヴァレンタインもチョコであふれかえっている。冷静になればあのまま彼女のスポンサーになって利益の1割ももらえば人里の商店にも負けなかったかもしれない。
すれ違った少女がココアを飲んでいる。何で利益の取り分を契約書に書かなかったんだ。冷静なつもりで全然冷静じゃなかった。
聞くところによると地底にも分店ができるらしい。香霖堂は1店舗しかないのに。
事態がどう転んでも利益が出るようにする。商売人はかくあるべきだ。
が、あるべき、という論と僕がそうであるかは別の話であった。
連帯保証人のみならず、出資者になるときは無限責任か有限責任かだけでもチェックして、できたら契約書作成時に弁護士を挟みたいところです。
それから、「未公開株をあなただけに」とか、投資の話はとかく金を取り返せるかどうかの流動性をしっかり確認しないと詐欺られます。
幽香が商売上手で良かったですが、これで貸した出資金が戻ってこないとなったらもう…。怖い話です。
とりあえずこーりんは私がデストロイしときますね。私の好きなキャラになにしてくれる……。
楽しみに待ってます♪
幽香りんはどこまで計算していたのか...
あと、私も幽香りんに密着されたいです