博麗神社の境内……
今は春の空気に包まれ、桃色の花弁が散るその中に、霊夢は手に竹箒を携え、目を閉じ佇んでいた。
そこに現れる影……やや遠めに着地したのは、いつものように訪れた魔理沙。
魔理沙が手を上げ、声をかけようとした次の瞬間……
魔理沙は、足元に開いたスキマへと落ちていた。
「いきなり何すんだ!」
言うまでもなく、それが紫によるものと即座に把握した魔理沙は、移動した先で文句の言葉を投げかける。
「しっ! ……声が大きい」
言って、紫は魔理沙の口を手で覆う。
今の声量であれば、霊夢の元へも届いていそうなものだが、気付いた様子は無い。
「……わざわざそうまでして、なんだってんだ?」
魔理沙は呆れたような表情で、紫へとそう言った。
対して紫は、木陰から霊夢の方を覗くようにしながら、言葉を返す。
「あの光景を見て、なんとも思わない?」
「あーん?」
言われてみれば、ただ境内に霊夢がいる、程度に思って降りてきた魔理沙。
紫に倣って木陰から顔を出し、霊夢の方を覗く。
「……成程、なんか珍しい事してんな」
「そう、そこで問題よ」
「問題?」
魔理沙のおうむ返しでの疑問に、紫は深々と頷く。
「霊夢が何を考えているのか、当ててみて?」
「あー、そんな事考えてたのか」
投げかけられた問い、魔理沙は腕組をし、宙を見やって考える。
「宗教戦争も片付いた事だし、そろそろ宴会したい」
「貴女の見解はそれね。 撤回するなら、まだ受け付けるわよ?」
面倒くささが先立ち、軽く答えてしまった魔理沙だが、そう言われると、不安もよぎるというもの。
「あー、いや、待て。 お前はどうなんだ?」
「私? そうねぇ……」
紫は顎に指を当て、魔理沙のように宙を見やって、考えるようなしぐさをした。
「鬱憤が溜まってきてるし、どこかに叩きのめしていい妖怪はいないかしら」
「……それはそれで、ありそうだな」
あんまりな回答と、その反応。
しかし両名共に、何かを共感したような表情で見詰め合う。
「そうね……面白い機会だし、他の人にも聞いてみましょ?」
「お、そいつはいい」
そして、紫がスキマを用いて強制的に、他の面子を呼び出した。
まず呼び出されたのは幽々子。
「どうしたの?」
不満を言うでもなく、混乱するでもなく、スキマに落とされた際の魔理沙のように、すぐさま紫にされた事と把握したらしく、幽々子はまず用件を訊ねた。
「あれを見て」
言われて、指し示された先を幽々子は見やる。
数秒程の後、紫へと向き直り、そして魔理沙の方を見た。
「……」
黙して目を閉じ、考える素振りを見せる。
すぐに目を開くと、人差し指を立てて言った。
「今日の夕飯のメインディッシュは魚にしようかしら」
「って、あれ見ろって言われただけで、なんで状況把握してんだ、お前は」
即座に趣旨を理解したらしい幽々子へ、魔理沙が突っ込みを入れると、紫・幽々子は得意げに笑い……しかし、何も答えなかった。
次いで呼び出されたのは、霖之助。
「……? 一体何の用で……」
紫は黙って霊夢の方を指差した。
霖之助が木陰から霊夢を覗くと共に……
「物思いにふける博麗の巫女、その珍しい姿は、何を思っているのか……皆で想像しているというわけ」
「……それは……良い趣味をしているなぁ」
呆れたように霖之助は言う。
「わ、私は紫に誘われて、やらされてるだけだ!」
魔理沙が、妙に強い声音でそう言った。
「まぁ、このスキマ妖怪に誘われてはね……」
霖之助自身、だからといってやらない、という返答はしないらしく、顎に手を当て、俯き気味に考え……
「箒の調子が悪いから、どこから拝借しようか考えている」
という回答を選択した。
「さて、後は誰を……」
紫は更にスキマを開こうとしたが……
「ちょっと待て、もう今ここに四人もいんだぞ? 他に誰か呼んだら、隠れにくいだろ?」
魔理沙がそう言いつつ、紫の肩に手をかけて止めた。
「あらそう? じゃ、レミリアは今回のけものね、可愛そうに」
誰を、などと言いつつも、次の相手は既に浮かんでいたようだ。
「答えを聞き出したら、解散なんだろう? 誰がどうやって、という目処は立てているのか?」
霖之助が問うと、紫は頷く。
「ええ、今揃っている顔ぶれで、それを聞くに適しているのは一人しかいないわ」
紫は魔理沙を指差す。
「というわけで、行って頂戴」
「なんでわた……」
文句を言いかけた魔理沙だが、口をつぐんで、他の顔ぶれを見渡した。
「ああ、そうだな、この面子なら、確かにそうだ」
わしゃわしゃと乱暴に頭を掻いて、魔理沙は木陰から出て行った。
「おーい、霊夢ー」
「ん……?」
時間にして数分程か、箒を手に佇んでいた霊夢だが、声がかかった事で、魔理沙の方へと向き直る。
「なんか考えてたみたいだが、どうしたんだ?」
「ああ……」
……魔理沙は、背後に隠れた面々が、固唾を呑む音が聞こえるような錯覚を覚えた。
「別に、特になんか考えてたわけじゃないわよ。 ちょっと、暖かくて静かだから、ゆっくりしてただけ」
春先の戯れは、勝者無しに終わった。
今は春の空気に包まれ、桃色の花弁が散るその中に、霊夢は手に竹箒を携え、目を閉じ佇んでいた。
そこに現れる影……やや遠めに着地したのは、いつものように訪れた魔理沙。
魔理沙が手を上げ、声をかけようとした次の瞬間……
魔理沙は、足元に開いたスキマへと落ちていた。
「いきなり何すんだ!」
言うまでもなく、それが紫によるものと即座に把握した魔理沙は、移動した先で文句の言葉を投げかける。
「しっ! ……声が大きい」
言って、紫は魔理沙の口を手で覆う。
今の声量であれば、霊夢の元へも届いていそうなものだが、気付いた様子は無い。
「……わざわざそうまでして、なんだってんだ?」
魔理沙は呆れたような表情で、紫へとそう言った。
対して紫は、木陰から霊夢の方を覗くようにしながら、言葉を返す。
「あの光景を見て、なんとも思わない?」
「あーん?」
言われてみれば、ただ境内に霊夢がいる、程度に思って降りてきた魔理沙。
紫に倣って木陰から顔を出し、霊夢の方を覗く。
「……成程、なんか珍しい事してんな」
「そう、そこで問題よ」
「問題?」
魔理沙のおうむ返しでの疑問に、紫は深々と頷く。
「霊夢が何を考えているのか、当ててみて?」
「あー、そんな事考えてたのか」
投げかけられた問い、魔理沙は腕組をし、宙を見やって考える。
「宗教戦争も片付いた事だし、そろそろ宴会したい」
「貴女の見解はそれね。 撤回するなら、まだ受け付けるわよ?」
面倒くささが先立ち、軽く答えてしまった魔理沙だが、そう言われると、不安もよぎるというもの。
「あー、いや、待て。 お前はどうなんだ?」
「私? そうねぇ……」
紫は顎に指を当て、魔理沙のように宙を見やって、考えるようなしぐさをした。
「鬱憤が溜まってきてるし、どこかに叩きのめしていい妖怪はいないかしら」
「……それはそれで、ありそうだな」
あんまりな回答と、その反応。
しかし両名共に、何かを共感したような表情で見詰め合う。
「そうね……面白い機会だし、他の人にも聞いてみましょ?」
「お、そいつはいい」
そして、紫がスキマを用いて強制的に、他の面子を呼び出した。
まず呼び出されたのは幽々子。
「どうしたの?」
不満を言うでもなく、混乱するでもなく、スキマに落とされた際の魔理沙のように、すぐさま紫にされた事と把握したらしく、幽々子はまず用件を訊ねた。
「あれを見て」
言われて、指し示された先を幽々子は見やる。
数秒程の後、紫へと向き直り、そして魔理沙の方を見た。
「……」
黙して目を閉じ、考える素振りを見せる。
すぐに目を開くと、人差し指を立てて言った。
「今日の夕飯のメインディッシュは魚にしようかしら」
「って、あれ見ろって言われただけで、なんで状況把握してんだ、お前は」
即座に趣旨を理解したらしい幽々子へ、魔理沙が突っ込みを入れると、紫・幽々子は得意げに笑い……しかし、何も答えなかった。
次いで呼び出されたのは、霖之助。
「……? 一体何の用で……」
紫は黙って霊夢の方を指差した。
霖之助が木陰から霊夢を覗くと共に……
「物思いにふける博麗の巫女、その珍しい姿は、何を思っているのか……皆で想像しているというわけ」
「……それは……良い趣味をしているなぁ」
呆れたように霖之助は言う。
「わ、私は紫に誘われて、やらされてるだけだ!」
魔理沙が、妙に強い声音でそう言った。
「まぁ、このスキマ妖怪に誘われてはね……」
霖之助自身、だからといってやらない、という返答はしないらしく、顎に手を当て、俯き気味に考え……
「箒の調子が悪いから、どこから拝借しようか考えている」
という回答を選択した。
「さて、後は誰を……」
紫は更にスキマを開こうとしたが……
「ちょっと待て、もう今ここに四人もいんだぞ? 他に誰か呼んだら、隠れにくいだろ?」
魔理沙がそう言いつつ、紫の肩に手をかけて止めた。
「あらそう? じゃ、レミリアは今回のけものね、可愛そうに」
誰を、などと言いつつも、次の相手は既に浮かんでいたようだ。
「答えを聞き出したら、解散なんだろう? 誰がどうやって、という目処は立てているのか?」
霖之助が問うと、紫は頷く。
「ええ、今揃っている顔ぶれで、それを聞くに適しているのは一人しかいないわ」
紫は魔理沙を指差す。
「というわけで、行って頂戴」
「なんでわた……」
文句を言いかけた魔理沙だが、口をつぐんで、他の顔ぶれを見渡した。
「ああ、そうだな、この面子なら、確かにそうだ」
わしゃわしゃと乱暴に頭を掻いて、魔理沙は木陰から出て行った。
「おーい、霊夢ー」
「ん……?」
時間にして数分程か、箒を手に佇んでいた霊夢だが、声がかかった事で、魔理沙の方へと向き直る。
「なんか考えてたみたいだが、どうしたんだ?」
「ああ……」
……魔理沙は、背後に隠れた面々が、固唾を呑む音が聞こえるような錯覚を覚えた。
「別に、特になんか考えてたわけじゃないわよ。 ちょっと、暖かくて静かだから、ゆっくりしてただけ」
春先の戯れは、勝者無しに終わった。
いろんな人の意見も見てみたかったですね
のんびりとしてて良いですね。
あー今日はイイ天気だなー。
というか霊夢がどういう人か何が空を飛ぶしばられない人間か今わかった気がします
人がきっと悩んでいたり考えているんだろうと思っている時に考えていないということかも知れません
要は考えないということです