気が付けば組み伏せてしまっていた。上からのしかかるように体重をかけて、動かないように。
咄嗟のことで頭が追い付いていないのか、どうやら体が固まって動かないらしい。
いい気味だ。普段いいように弄ばれている鬱憤を晴らしてやる。硬直した体を抱き寄せて背中に腕を回してやると、少し身じろいだが思いの他、抵抗はされなかった。首が吹き飛ぶくらいの覚悟はしていたのだが、拍子抜けだ。ああそれにしても、なんて柔らかく、心地よいのだろうか。えも言われぬ快感が全身を駆け巡り、幸福感で満たされる。この世に幸せってのがあるとするなら、きっとこういう類のものだ。抱く力を強めてやれば、腕の中のものは少しみじろいで、それでも大人しく、おずおずとこちらの背中に手を回してきた。その反応が可愛らしくて、たまらなくて、さらに抱く力を強めてやった。少し苦しそうにしていたが、やがて落ち着いた。顔を覗き込んでやると恥ずかしそうにしてこちらをちらとも見ようとしない。恥ずかしいのか、照れているのか、どちらにしても本当に魅力的だ。
普段、飄々とした態度をとって、ちっとも自分の腹を見せようとしないこの烏のあまりに可愛らしい態度に体は火照りっぱなしだった。まるで生娘ではないか、ねえ射命丸様。
ー誘い受けってやつなのだろうか。一年に数度、白狼に訪れる発情期をこの目ざとい烏が知らないわけがないはずだ。だのに、この女ときたら執拗に自分に絡んできた。必要以上に体を近づけて、良い匂いを振りまいて。もしかしたらいつもの距離感だったのかもしれないけれど。
いずれにせよ、少しの変化に過敏に反応してしまうこの時期に、あれだけ色目を使われたら、頭の線が切れてもおかしくはないだろう。いや、色気を感じた自分が参ってしまっているのかもしれない。
腕の中の射命丸様は本当に大人しい。普段からそうしていれば、引く手あまただろうに、勿体ない。
スタイルも良くて、容姿も優れていて、力もあって、羨ましいですよ射命丸様。なのに私ごときに抱きすくめられていて、可愛いですね。下っ端だからって油断していると、狼に食べられてしまうんですよ。
どれぐらい、そうしていただろうか。そろそろ離してくださいと話しかけられたのだが、生憎こんなに心地の良いものを手放すわけがない。無視してやると、少し頭が回ってきたのか、喚きだしたので唇をふさいでやった。柔らかくて、甘い。頭と体が熱い。ずっとこうしていたい。息が続かなくなるまで堪能して放してやると、放心状態の顔が映った。唾液が口の端から垂れているのが扇情的だ。もう一回してやろうか。腕の中の射命丸様は少しするとはっとして、これにはさすがに答えたのか、ビンタをされた。そこから振りほどかれて、私の抱き枕時間は終了を告げられた。そのまま射命丸様は暴風のように飛び上がり、去って行った。本当に速いんだなあの人。
私はといえばぺちって音の、すさまじく軽いビンタをうけて、熱に浮かされた頭が冷やされた。懲戒免職もののことをしでかしたにも関わらず、ケロリとしていた。気にするどころか気分は晴れやかだ。見事に欲求不満が解消された私は、帰っておいしいものでも食べようか、将棋もしたいなと呑気に構えていた。
そう、おそらく大事にはならないのだ。その証拠にほら、首が吹き飛ぶどころか、顔には紅葉すら残ってやしないのだ。抱いていたときや去り際の態度を見ても、暗い未来は想像できなかった。最後のは烏天狗のプライドの最後っ屁のようなものだろう。明日から気まずそうに話しかけてくる射命丸様を想像して、自然と顔が綻ぶのであった。
咄嗟のことで頭が追い付いていないのか、どうやら体が固まって動かないらしい。
いい気味だ。普段いいように弄ばれている鬱憤を晴らしてやる。硬直した体を抱き寄せて背中に腕を回してやると、少し身じろいだが思いの他、抵抗はされなかった。首が吹き飛ぶくらいの覚悟はしていたのだが、拍子抜けだ。ああそれにしても、なんて柔らかく、心地よいのだろうか。えも言われぬ快感が全身を駆け巡り、幸福感で満たされる。この世に幸せってのがあるとするなら、きっとこういう類のものだ。抱く力を強めてやれば、腕の中のものは少しみじろいで、それでも大人しく、おずおずとこちらの背中に手を回してきた。その反応が可愛らしくて、たまらなくて、さらに抱く力を強めてやった。少し苦しそうにしていたが、やがて落ち着いた。顔を覗き込んでやると恥ずかしそうにしてこちらをちらとも見ようとしない。恥ずかしいのか、照れているのか、どちらにしても本当に魅力的だ。
普段、飄々とした態度をとって、ちっとも自分の腹を見せようとしないこの烏のあまりに可愛らしい態度に体は火照りっぱなしだった。まるで生娘ではないか、ねえ射命丸様。
ー誘い受けってやつなのだろうか。一年に数度、白狼に訪れる発情期をこの目ざとい烏が知らないわけがないはずだ。だのに、この女ときたら執拗に自分に絡んできた。必要以上に体を近づけて、良い匂いを振りまいて。もしかしたらいつもの距離感だったのかもしれないけれど。
いずれにせよ、少しの変化に過敏に反応してしまうこの時期に、あれだけ色目を使われたら、頭の線が切れてもおかしくはないだろう。いや、色気を感じた自分が参ってしまっているのかもしれない。
腕の中の射命丸様は本当に大人しい。普段からそうしていれば、引く手あまただろうに、勿体ない。
スタイルも良くて、容姿も優れていて、力もあって、羨ましいですよ射命丸様。なのに私ごときに抱きすくめられていて、可愛いですね。下っ端だからって油断していると、狼に食べられてしまうんですよ。
どれぐらい、そうしていただろうか。そろそろ離してくださいと話しかけられたのだが、生憎こんなに心地の良いものを手放すわけがない。無視してやると、少し頭が回ってきたのか、喚きだしたので唇をふさいでやった。柔らかくて、甘い。頭と体が熱い。ずっとこうしていたい。息が続かなくなるまで堪能して放してやると、放心状態の顔が映った。唾液が口の端から垂れているのが扇情的だ。もう一回してやろうか。腕の中の射命丸様は少しするとはっとして、これにはさすがに答えたのか、ビンタをされた。そこから振りほどかれて、私の抱き枕時間は終了を告げられた。そのまま射命丸様は暴風のように飛び上がり、去って行った。本当に速いんだなあの人。
私はといえばぺちって音の、すさまじく軽いビンタをうけて、熱に浮かされた頭が冷やされた。懲戒免職もののことをしでかしたにも関わらず、ケロリとしていた。気にするどころか気分は晴れやかだ。見事に欲求不満が解消された私は、帰っておいしいものでも食べようか、将棋もしたいなと呑気に構えていた。
そう、おそらく大事にはならないのだ。その証拠にほら、首が吹き飛ぶどころか、顔には紅葉すら残ってやしないのだ。抱いていたときや去り際の態度を見ても、暗い未来は想像できなかった。最後のは烏天狗のプライドの最後っ屁のようなものだろう。明日から気まずそうに話しかけてくる射命丸様を想像して、自然と顔が綻ぶのであった。
文が何もしてこないだろうと確信しているあたり、プレイガールな椛でした。外の世界なら強制わいせつですぜ?
素晴らしい!
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でも、き、気になる!!翌日気になる・・・!!! どうか続きを!!