博麗神社を取り囲む木々の葉は既に色染めを終え、赤や黄色など色とりどりの紅葉が見受けられる。宙に漂う葉々は太陽の光を遮断し、境内の石畳に影色の模様を象っている。そんな秋一色の世界を尻目に、巫女は仲睦まじい者達と鍋を開いていた。すっかり季節は食欲の秋である。
「秋の旬の食材といえば?」
「私が持ってきた茸に決まってるだろ。ほらほら、幻想境なら松茸、椎茸、滑子にクサウラベニタケだって一年中採れるんだぜ?」
「一年中採れるなら茸は除外ですね。そこで私早苗は野菜を推します!この季節はかぼちゃやさつまいも、ブロッコリーなんかがお勧めです。ささ、鍋にぶっ込みましょう」
「あらあらうふふ、秋の味覚といえば果物よね。甘美でフルーティな食材こそ、主食の味を引き出すものよ?ほらほら、キウイと梨も投入~」
「あのさぁ、私は普通の鍋会を開いたはずなんだけど、どうして闇鍋もとい秋鍋になってるのかしら?」
などと云ってはいるものの、霊夢は客人達の暴虐的な暴挙を止めるような真似はしなかった。彼女達の勝手気ままな行動を内心楽しんでいるらしく、傍観を決め込んでいる。
”人生に多少の刺激は必要だものね”
狭い箱庭で愉快に生きていくにはそれなりのスリルが必要不可欠なのだ。博霊神社に集う少女達であるならば理解し得ない者はいない。
そう、ほんのちょっとのスパイス。
「なんか足んねぇよなぁ?私の箒でもぶち込むか?それとも、紫の式の式の猫でもいいか?」
雀の涙ほどの度胸。
「面白い冗談ね、猫で出汁でも取る魂胆なのかしら?それならば天狗の一羽でも呼んどくんだったわね。でもね、こんな鍋には藍の好物の油揚げで十分よ。そら」
後腐れ無い無謀さ。
「あっ、また勝手に入れちゃって。・・・・・・・・・・・・なら私も、奇跡、ミラクルフルーツ!」
時には後悔も付き纏うものだが。
「スペルカードじゃねぇか!紙いれんな紙!あぁー、もうふやけちゃって鍋の出汁と化してるぜ・・・・・・てい、八卦炉!スパイスもちっとは必要だろ?」
不可解でもあり予測不可能な行動に一喜一憂するのが彼女達の常でもあった。後悔を後悔しない度量を彼女達は兼ね備えているのだ。
「・・・・・・でも、良い感じに煮込んできたんじゃない?もはや秋鍋だか何鍋だか解らない不可解な色してるけど、なかなかスパイスが効いてそうで食べ頃じゃない?」
「・・・・・・あのな、先に一言申しておくとだな、私は鍋を食いに来たわけであって、罰ゲームをするために遊びに来たわけじゃないんだぜ?」
「私達が持ち込んだ食材で彩った鍋ですし、ここはやっぱり、家主の腕の見せ所ですね。さあさあ、毒味じゃなかった、味見とやら、期待してますよ」
「霊夢は強い子だものね、やれるわよね。万が一、これが美味しかったら私達も食すか否か検討してあげるから安心してね」
だが、時には後悔先に立たずという事態もあり・・・・・・。
「あら、貴女達それ本気で云ってるの?・・・・・・いいわ、受けて立とうじゃないの。私が無事に完食したら次は貴女達の番だからね。そらそら、たっぷりとよそって・・・・・・勿論、つゆだく大盛りでね。・・・・・・いくわよ」
一触即発の状況に気圧されしながらも喜んで逆境を享受する強さなのか、彼女はさんさんと器に鍋汁と阿鼻叫喚の食材群を盛ると、一気に口の中に流し込んだ。
「あっ・・・・・・。貴女達、救急車もしくは霊柩車の準備をしておいたほうが宜しいかもしれないわね」
「嗚呼、私のスペルカードが霊夢さんの胃袋の中に・・・・・・ヨヨヨ」
霊夢は胃袋に流し込んだ濁流と異物を必死に許容しようとしたが、彼女のありとあらゆる器官は全力で警報を鳴らし拒んだ。
「ん?顔色は悪いが素面じゃないか。食えなくはないなら、こんなものでも私はいただくぞ。乞食臭いとか云うなよな。ただ勿体ない精神が発動しただけなんだからな。・・・・・・そーれ、一口」
「・・・・・・ちょっと待って、今私の中のウィルスバスターを必死に押さえ込んでるから。私の中のダムが決壊しそうだから。あぁ、世の中ってスリルに満ちあふれててホント、退屈しないわね・・・・・・オロロロロロロ!」
「ヴォエェェェェェ!」
「きゃあぁぁぁぁ!霊夢さんと魔理沙さんが二人とも口から灰色の噴水をまき散らしてマーライオンみたいなことになってる!って、紫さん!?紫さん何処に行っちゃったんですか!?」
ちょっぴり、悪ノリの匙加減を誤ることもしばしば。幻想少女は今日も鬱屈でない人生を謳歌している。刻一刻と枯れゆく紅葉は少女の宴を尻目に今も今もと命を散らして往く。彼女らの永久に枯れない紅葉のようなものなのだ。
そんな中、八雲紫は鳥居に跨がり、季節の変わり目の微細な空気を感じ取っていた。事が収拾するにはもちっと時間がかかりそうである。
「琴の音の絶えぬ琴坂初紅葉、ね」
今もなお散りゆく紅葉は、儚げにも冬への移ろいをひしひしと暗示していた。
「秋の旬の食材といえば?」
「私が持ってきた茸に決まってるだろ。ほらほら、幻想境なら松茸、椎茸、滑子にクサウラベニタケだって一年中採れるんだぜ?」
「一年中採れるなら茸は除外ですね。そこで私早苗は野菜を推します!この季節はかぼちゃやさつまいも、ブロッコリーなんかがお勧めです。ささ、鍋にぶっ込みましょう」
「あらあらうふふ、秋の味覚といえば果物よね。甘美でフルーティな食材こそ、主食の味を引き出すものよ?ほらほら、キウイと梨も投入~」
「あのさぁ、私は普通の鍋会を開いたはずなんだけど、どうして闇鍋もとい秋鍋になってるのかしら?」
などと云ってはいるものの、霊夢は客人達の暴虐的な暴挙を止めるような真似はしなかった。彼女達の勝手気ままな行動を内心楽しんでいるらしく、傍観を決め込んでいる。
”人生に多少の刺激は必要だものね”
狭い箱庭で愉快に生きていくにはそれなりのスリルが必要不可欠なのだ。博霊神社に集う少女達であるならば理解し得ない者はいない。
そう、ほんのちょっとのスパイス。
「なんか足んねぇよなぁ?私の箒でもぶち込むか?それとも、紫の式の式の猫でもいいか?」
雀の涙ほどの度胸。
「面白い冗談ね、猫で出汁でも取る魂胆なのかしら?それならば天狗の一羽でも呼んどくんだったわね。でもね、こんな鍋には藍の好物の油揚げで十分よ。そら」
後腐れ無い無謀さ。
「あっ、また勝手に入れちゃって。・・・・・・・・・・・・なら私も、奇跡、ミラクルフルーツ!」
時には後悔も付き纏うものだが。
「スペルカードじゃねぇか!紙いれんな紙!あぁー、もうふやけちゃって鍋の出汁と化してるぜ・・・・・・てい、八卦炉!スパイスもちっとは必要だろ?」
不可解でもあり予測不可能な行動に一喜一憂するのが彼女達の常でもあった。後悔を後悔しない度量を彼女達は兼ね備えているのだ。
「・・・・・・でも、良い感じに煮込んできたんじゃない?もはや秋鍋だか何鍋だか解らない不可解な色してるけど、なかなかスパイスが効いてそうで食べ頃じゃない?」
「・・・・・・あのな、先に一言申しておくとだな、私は鍋を食いに来たわけであって、罰ゲームをするために遊びに来たわけじゃないんだぜ?」
「私達が持ち込んだ食材で彩った鍋ですし、ここはやっぱり、家主の腕の見せ所ですね。さあさあ、毒味じゃなかった、味見とやら、期待してますよ」
「霊夢は強い子だものね、やれるわよね。万が一、これが美味しかったら私達も食すか否か検討してあげるから安心してね」
だが、時には後悔先に立たずという事態もあり・・・・・・。
「あら、貴女達それ本気で云ってるの?・・・・・・いいわ、受けて立とうじゃないの。私が無事に完食したら次は貴女達の番だからね。そらそら、たっぷりとよそって・・・・・・勿論、つゆだく大盛りでね。・・・・・・いくわよ」
一触即発の状況に気圧されしながらも喜んで逆境を享受する強さなのか、彼女はさんさんと器に鍋汁と阿鼻叫喚の食材群を盛ると、一気に口の中に流し込んだ。
「あっ・・・・・・。貴女達、救急車もしくは霊柩車の準備をしておいたほうが宜しいかもしれないわね」
「嗚呼、私のスペルカードが霊夢さんの胃袋の中に・・・・・・ヨヨヨ」
霊夢は胃袋に流し込んだ濁流と異物を必死に許容しようとしたが、彼女のありとあらゆる器官は全力で警報を鳴らし拒んだ。
「ん?顔色は悪いが素面じゃないか。食えなくはないなら、こんなものでも私はいただくぞ。乞食臭いとか云うなよな。ただ勿体ない精神が発動しただけなんだからな。・・・・・・そーれ、一口」
「・・・・・・ちょっと待って、今私の中のウィルスバスターを必死に押さえ込んでるから。私の中のダムが決壊しそうだから。あぁ、世の中ってスリルに満ちあふれててホント、退屈しないわね・・・・・・オロロロロロロ!」
「ヴォエェェェェェ!」
「きゃあぁぁぁぁ!霊夢さんと魔理沙さんが二人とも口から灰色の噴水をまき散らしてマーライオンみたいなことになってる!って、紫さん!?紫さん何処に行っちゃったんですか!?」
ちょっぴり、悪ノリの匙加減を誤ることもしばしば。幻想少女は今日も鬱屈でない人生を謳歌している。刻一刻と枯れゆく紅葉は少女の宴を尻目に今も今もと命を散らして往く。彼女らの永久に枯れない紅葉のようなものなのだ。
そんな中、八雲紫は鳥居に跨がり、季節の変わり目の微細な空気を感じ取っていた。事が収拾するにはもちっと時間がかかりそうである。
「琴の音の絶えぬ琴坂初紅葉、ね」
今もなお散りゆく紅葉は、儚げにも冬への移ろいをひしひしと暗示していた。