「すっかり強くなっちゃいましたね、雪」
「なーに、直に止むだろ、この明るさだ」
「うーん、どうでしょうかね」
「まあ、弾幕勝負はお預けだな。同勝同敗で次回へ持ち越しだ」
「ですね。魔理沙さんには、毎回修行に付き合ってもらってありがたいです」
「こっちの修行にもなってんだ。早苗が気にするこたないさ」
「でも、次のデートのときは弾幕勝負でお茶を濁さないでくださいよ?」
「え、あ、うん。……考えとく」
「ふふっ、期待してます」
「それにしても魔理沙さんのマスタースパークって、すごいですね」
「おぅ、そりゃ私の十八番だからな」
「一度でも目にするととても印象に残ります。いつ撃ってくるかと警戒しながらの戦いになりますし、その意味でも有効なスペルかと」
「ははっ、印象づけられるよな、私を見たらマスパと思えってぐらいに」
「はい」
「魔理沙様あってのマスタースパーク、マスタースパークあっての魔理沙様ってなもんだ。誰にも真似できない」
「あれ? 真似できないって、確か、誰かの魔法が元になってるって聞きましたけど」
「それはそれ」
「相当の力を注ぎ込んでいるんですよね。放っている間は自分でも身動きが取れないほどの高火力ですし」
「ああ、全力さ。気は抜けない。それまでの仕込みの弾幕はともかく、マスタースパーク発動時は『発射』、それだけが頭にあるな。他の思考は一切ない。当たるか、かわされるか、それすらも考えない。ただ真っ直ぐ放つことだけを思う」
「そのスペルに冠されているのは……」
「知ってるだろ?」
「──『恋符』」
「くしゅっ」
「おっと、大丈夫か、早苗」
「ちょっと汗が冷えてきたみたいです」
「こっち寄れよ。帽子も被せてやる」
「はい。……ふふ」
「何だよ、その笑い」
「帽子、魔理沙さんの匂いがします」
「は、恥ずかしいこと言うな! このやろっ、返せっ」
「あーごめんなさいごめんなさい、冗談です。……温かいです。帽子も、魔理沙さんも」
「……ちぇっ、そんな腋丸出しのカッコしてるから寒いんだよ」
「でも、外の世界の女性たちは、冬場でもミニスカートで頑張ってますよ?」
「南極行く訓練でもしてんのかよ」
「そういえばマフラー持ってきたんだった。えぇと、ポシェットは……」
「重装備ですね」
「外の女子と違って、私は寒さを感じられる一般美少女なんだよ。よし、あった。これ、一緒に巻こう。ほら」
「ありがとうございます。……ぁ」
「……?」
「…………」
「何で、目ぇつぶってる?」
「あっ。え、と」
「?」
「いえ、顔が、その、近くで、それに目も合ったものですから、」
「うん」
「キスしてくれるかと思っちゃいました」
「なっ」
「勘違いでしたね。でも、せっかくだからしちゃいましょうか」
「お、おい、だから恥ずかしいことは言うなと──」
「私とキスするの、イヤですか?」
「そ、そんなことないぜ。何度もしてるじゃないか」
「ホントに?」
「二言はないぜ」
「よかった」
「あっ…」
「…………」
「…………」
「──えへへ、魔理沙さんの唇、もらっちゃいました」
「不意打ちはずるい、と思う、ぜ」
「なんか暑くなっちゃいましたね。キスが熱烈過ぎましたか」
「ふん!」
「魔理沙さぁん、機嫌直してこっち向いてくださいよぉ」
「知らない!」
「ねぇ」
「……」
「それとも、やっぱり私のこと、そんなに好きじゃないんでしょうか」
「何言ってんだ、ちゃんと好きだぜっ」
「私もです。はい、捕まえた」
「うぁあ、またやられたァ」
「うふふ」
「もう好きにしろ! 煮るなり焼くなり!」
「生のままで十分です。そのままの魔理沙さんが好きなので」
「生言いやがって」
「こうやって正面から抱き合っていると、本当に幸せな気持ちになります。いえ、魔理沙さんのことを思うだけでも幸せになれるんです、私」
「……ああ、私もさ」
「でも、最近は少し不安なことがあって──」
「え?」
「魔理沙さんのマスタースパーク、『恋符』ってついてるじゃないですか。すごいパワーで、直線的で。魔理沙さんはどういうつもりで撃っているんですか?」
「何が言いたいんだかよくわからんが、何も考えてないって言ったろ。あれを撃つときは、私の中のあれやこれや全部まとめて一つにして、それを思いっきり正面に解き放つって気持ちしかない」
「魔理沙さんの恋心もそうなんですよね」
「?」
「自分の全てを懸けて、ただひたすら真っ直ぐ、前へ。……でも、その進む先で、私は魔理沙さんに応えられるかって不安になって」
「! 早苗は私が重荷か」
「まさか! 私は魔理沙さんが好きです。それに間違いはありません。けれど、けれどです、普通の恋愛って行先は結婚とか出産とか育児とか、そういうものじゃないですか。でも、女の私が相手だとそれは叶わないことになります。どんなに願っても」
「それは……」
「それでもいいのかって、恋に一途な魔理沙さんの相手に私はふさわしいのかって……私、私は……」
「そんなこと言うな!」
「っ!」
「私が好きなのはお前だけだ! 私の恋心の向かう先は一つしかない! 霧雨魔理沙の全部は東風谷早苗に放つ、そう決めたんだ!」
「魔、…」
「他には何も考えられないっつったろ。お前の他に誰を想えってんだ」
「…、理沙さん……!」
「だから何も心配するな。早苗は私の『好き』に十分応えてくれてる。いつだって私をあったかい気持ちにしてくれるんだぜ」
「ありがとう……ございます……グスッ」
「ほら、泣くなって、よしよし」
「だって、ちょっと心細かったんですよぉ。私なんかでいいのかって」
「早苗でなくちゃダメなんだ」
「うぅ~」
「ほら、また泣く。いいんだぜ、早苗だって私にしてほしいことがあったら言って。やれることなら何だって応えてやるから」
「ほんとですか!」
「な、何だ、その食いつき」
「いえ、女同士、結婚も出産もできませんけど──でも、その間のことなら可能ではないかと!」
「は? …………って、おい、お前、それはっ?!」
「よかった! 魔理沙さん、いつまで経ってもキスから進んでくれなくてヤキモキしてたんです。私の気持ちに応えてくれるんですよね、あんなことからこんなこと、そんなことまで!」
「どんなことまでだ?! い、いや、こういうのはだな、段階を踏んで、その、」
「ダメ、なんですか?」
「うう、そんな目で見つめてくるなんてズルイ……また、私、ハメられたのか? ……ええぃ、わかった!」
「きゃっ?!」
「来い、早苗! 私の家までカッ飛ぶぞ!」
「えええっ?! まさか、するの、今すぐ?! っていうか、まだ雪降ってますよ!」
「勢いで振り払う! 家、少々散らかっているが気にするな、ベッドの上は大丈夫だ!」
「きゅ、急展開すぎます。こういうのは段階を、」
「嫌とは言わせないぜ! ずっと、どこまでもだ! 私たちは互いに応え合うんだ、恋心に全てをこめて!」
「魔理沙さん……!」
「さあ、行こう! 愛してるぜ、早苗!」
「──はい!」
fin.
「なーに、直に止むだろ、この明るさだ」
「うーん、どうでしょうかね」
「まあ、弾幕勝負はお預けだな。同勝同敗で次回へ持ち越しだ」
「ですね。魔理沙さんには、毎回修行に付き合ってもらってありがたいです」
「こっちの修行にもなってんだ。早苗が気にするこたないさ」
「でも、次のデートのときは弾幕勝負でお茶を濁さないでくださいよ?」
「え、あ、うん。……考えとく」
「ふふっ、期待してます」
「それにしても魔理沙さんのマスタースパークって、すごいですね」
「おぅ、そりゃ私の十八番だからな」
「一度でも目にするととても印象に残ります。いつ撃ってくるかと警戒しながらの戦いになりますし、その意味でも有効なスペルかと」
「ははっ、印象づけられるよな、私を見たらマスパと思えってぐらいに」
「はい」
「魔理沙様あってのマスタースパーク、マスタースパークあっての魔理沙様ってなもんだ。誰にも真似できない」
「あれ? 真似できないって、確か、誰かの魔法が元になってるって聞きましたけど」
「それはそれ」
「相当の力を注ぎ込んでいるんですよね。放っている間は自分でも身動きが取れないほどの高火力ですし」
「ああ、全力さ。気は抜けない。それまでの仕込みの弾幕はともかく、マスタースパーク発動時は『発射』、それだけが頭にあるな。他の思考は一切ない。当たるか、かわされるか、それすらも考えない。ただ真っ直ぐ放つことだけを思う」
「そのスペルに冠されているのは……」
「知ってるだろ?」
「──『恋符』」
「くしゅっ」
「おっと、大丈夫か、早苗」
「ちょっと汗が冷えてきたみたいです」
「こっち寄れよ。帽子も被せてやる」
「はい。……ふふ」
「何だよ、その笑い」
「帽子、魔理沙さんの匂いがします」
「は、恥ずかしいこと言うな! このやろっ、返せっ」
「あーごめんなさいごめんなさい、冗談です。……温かいです。帽子も、魔理沙さんも」
「……ちぇっ、そんな腋丸出しのカッコしてるから寒いんだよ」
「でも、外の世界の女性たちは、冬場でもミニスカートで頑張ってますよ?」
「南極行く訓練でもしてんのかよ」
「そういえばマフラー持ってきたんだった。えぇと、ポシェットは……」
「重装備ですね」
「外の女子と違って、私は寒さを感じられる一般美少女なんだよ。よし、あった。これ、一緒に巻こう。ほら」
「ありがとうございます。……ぁ」
「……?」
「…………」
「何で、目ぇつぶってる?」
「あっ。え、と」
「?」
「いえ、顔が、その、近くで、それに目も合ったものですから、」
「うん」
「キスしてくれるかと思っちゃいました」
「なっ」
「勘違いでしたね。でも、せっかくだからしちゃいましょうか」
「お、おい、だから恥ずかしいことは言うなと──」
「私とキスするの、イヤですか?」
「そ、そんなことないぜ。何度もしてるじゃないか」
「ホントに?」
「二言はないぜ」
「よかった」
「あっ…」
「…………」
「…………」
「──えへへ、魔理沙さんの唇、もらっちゃいました」
「不意打ちはずるい、と思う、ぜ」
「なんか暑くなっちゃいましたね。キスが熱烈過ぎましたか」
「ふん!」
「魔理沙さぁん、機嫌直してこっち向いてくださいよぉ」
「知らない!」
「ねぇ」
「……」
「それとも、やっぱり私のこと、そんなに好きじゃないんでしょうか」
「何言ってんだ、ちゃんと好きだぜっ」
「私もです。はい、捕まえた」
「うぁあ、またやられたァ」
「うふふ」
「もう好きにしろ! 煮るなり焼くなり!」
「生のままで十分です。そのままの魔理沙さんが好きなので」
「生言いやがって」
「こうやって正面から抱き合っていると、本当に幸せな気持ちになります。いえ、魔理沙さんのことを思うだけでも幸せになれるんです、私」
「……ああ、私もさ」
「でも、最近は少し不安なことがあって──」
「え?」
「魔理沙さんのマスタースパーク、『恋符』ってついてるじゃないですか。すごいパワーで、直線的で。魔理沙さんはどういうつもりで撃っているんですか?」
「何が言いたいんだかよくわからんが、何も考えてないって言ったろ。あれを撃つときは、私の中のあれやこれや全部まとめて一つにして、それを思いっきり正面に解き放つって気持ちしかない」
「魔理沙さんの恋心もそうなんですよね」
「?」
「自分の全てを懸けて、ただひたすら真っ直ぐ、前へ。……でも、その進む先で、私は魔理沙さんに応えられるかって不安になって」
「! 早苗は私が重荷か」
「まさか! 私は魔理沙さんが好きです。それに間違いはありません。けれど、けれどです、普通の恋愛って行先は結婚とか出産とか育児とか、そういうものじゃないですか。でも、女の私が相手だとそれは叶わないことになります。どんなに願っても」
「それは……」
「それでもいいのかって、恋に一途な魔理沙さんの相手に私はふさわしいのかって……私、私は……」
「そんなこと言うな!」
「っ!」
「私が好きなのはお前だけだ! 私の恋心の向かう先は一つしかない! 霧雨魔理沙の全部は東風谷早苗に放つ、そう決めたんだ!」
「魔、…」
「他には何も考えられないっつったろ。お前の他に誰を想えってんだ」
「…、理沙さん……!」
「だから何も心配するな。早苗は私の『好き』に十分応えてくれてる。いつだって私をあったかい気持ちにしてくれるんだぜ」
「ありがとう……ございます……グスッ」
「ほら、泣くなって、よしよし」
「だって、ちょっと心細かったんですよぉ。私なんかでいいのかって」
「早苗でなくちゃダメなんだ」
「うぅ~」
「ほら、また泣く。いいんだぜ、早苗だって私にしてほしいことがあったら言って。やれることなら何だって応えてやるから」
「ほんとですか!」
「な、何だ、その食いつき」
「いえ、女同士、結婚も出産もできませんけど──でも、その間のことなら可能ではないかと!」
「は? …………って、おい、お前、それはっ?!」
「よかった! 魔理沙さん、いつまで経ってもキスから進んでくれなくてヤキモキしてたんです。私の気持ちに応えてくれるんですよね、あんなことからこんなこと、そんなことまで!」
「どんなことまでだ?! い、いや、こういうのはだな、段階を踏んで、その、」
「ダメ、なんですか?」
「うう、そんな目で見つめてくるなんてズルイ……また、私、ハメられたのか? ……ええぃ、わかった!」
「きゃっ?!」
「来い、早苗! 私の家までカッ飛ぶぞ!」
「えええっ?! まさか、するの、今すぐ?! っていうか、まだ雪降ってますよ!」
「勢いで振り払う! 家、少々散らかっているが気にするな、ベッドの上は大丈夫だ!」
「きゅ、急展開すぎます。こういうのは段階を、」
「嫌とは言わせないぜ! ずっと、どこまでもだ! 私たちは互いに応え合うんだ、恋心に全てをこめて!」
「魔理沙さん……!」
「さあ、行こう! 愛してるぜ、早苗!」
「──はい!」
fin.
魔理沙が可愛いと思いました。
サクマリとかも見てみたいです!
もはや地の文すらベタ甘には蛇足…!