Coolier - 新生・東方創想話

雪女と嫌悪

2013/09/07 22:55:58
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 低く積もり続けたままだった雪があっと言う間に溶けて木々は緑に染まり、ようやく暦上の季節らしくなった。
 私は博麗霊夢と戦ったらしいとある妖怪を暇つぶしで捜していた。しかしその妖怪の主な活動時期は冬だった。数時間前に霧雨魔理沙と話したけど、それについての情報はもう知らないらしい。
「!」
 本当に、ただの偶然だった。上空から見えたその白い帽子は、霊夢に言われたそれと何となく似ていた。
 私の視界に入るそれは辺りを見回し、洞窟に入っていった。
 地に足を着けると、その洞窟の入り口すぐの場所には、あと数週間で初夏を迎えるにも関わらず少しだけ雪が溶け残っていた。
 闇を司る私が洞窟の暗闇を恐れるはずもなく、入り口に一歩足を踏み入れる。すぐに洞窟の最奥と彼女の姿が目に入った。
「あなたは……誰かしら?」
 妖怪――レティ・ホワイトロックは、図々しく足を踏み入れた私に敵意を向けるでもなく、ただ不思議そうな表情をしていた。
「私はルーミア。闇を操る程度の妖怪よ」
「そう、妖怪なのね。で、こんな場所になんの用かしら」
「別に。ただの暇つぶし。何となくあなたを捜してただけ。春になったからもういないと思ってたけど」
「私が冬の妖怪であることは知っているのね。生憎だけど、私は夏でも存在はしているわ」
 言葉を終えたレティは突如私に手の平を向け、弾幕を放つ。しかしそれは、不意打ちと言うにはあまりにも遅く、敵意のない表情の彼女が放った弾幕に触れると、指が少しだけ跳ね返される程度の衝撃を放ちあっさりと消えた。
「力はとても劣ってしまうけどね。だから好き勝手できない春から秋は、せいぜい日向を避けて生きているわ」
「不便ね」
「別に。その分冬を楽しめばいいだけよ。春や夏を楽しめないのなら、その内に冬をどうやって楽しめばいいか考えることができるわ」
 言われて思ったけど、私も似たようなものかもしれない。私は、昼の光を浴びてしまうと気分が悪くなってしまう。でも、よく考えればそれが不便だと思ったことはない。単純に昼の良さを知らないだけかもしれないけど、私は夜を存分に楽しんでいる。その気になれば、私は幻想郷の中で最も夜を楽しむ事ができる。昼も夜にできるから、二十四時間夜を楽しめる。こんな事は妖怪の賢者にだって……多分できない、うん。
「不自由を感じるなら、新しい自由を見つければいいのよ」
「でも、いくら冬の事を考えれるからといって、あなたはそんな洞穴にいて不自由を感じないの?」
「だから冬に好き勝手暴れるのよ。それこそ、博麗の巫女が来るくらいにね。今年は何か起きたのか、とても長い冬だったけど」
 なるほど。私は量だけど、この妖怪は密度で自由を感じているのね。
「じゃあ、氷精についてはどう思っているのかしら。季節関係なく年中走り回っている氷精の知り合いがいるんだけど、その子を羨ましいとは思わない?」
「あんなのと一緒にしないでほしいわ」
 私の言葉が気に食わなかったのか、レティは不機嫌そうに言葉を返した。というより、氷精であるチルノの事を知っているらしい。
「あんな、その場の衝動に任せて好き勝手動き回っているようなバカと一緒にしないでちょうだい。あなたも妖怪なんだから、その程度の違いは分かるでしょう?」
 そこは御尤もね。私は好き勝手に生き、人間を襲っているけど、いわゆる幻想郷のルール等には従っているつもりでいる。自分の立場を弁え、それこそ妖怪の賢者や霊夢の目につかないように生きてきている。
 妖精のように、やたら無闇に首を突っ込むことはしていない。
 前に好き勝手した吸血鬼も、なんだかんだでルールを守って暮らしている。
「自分勝手に振る舞うのとルールを破るというのは同列ではないわ。つまり私達と妖精は別物。ただ同じ空間に存在しているだけ。冷気と寒気が、似ているようで完全に同じではないようにね」
 レティは言い捨てて、暑そうに手を扇いでいる。能力なのか私にとっては初冬程度に涼しすぎるけど、それでも彼女にとっては暑いらしい。……本当に、夏になっても消滅しないのかしら?
「だいたい、同じ寒冷系の能力だからって仲が良いと思っている人が多いのよ。以外とそういう組み合わせが嫌い合うことは多いはずよ。同族嫌悪、とでも言うのかしら。でもあなたと吸血鬼は、取り立てて仲が良いわけでもないのね」

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