Coolier - 新生・東方創想話

異常愛者達 または我我は如何にして虚構に目を向け幻想郷を愛する様になったか

2013/07/06 23:37:36
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無職、博麗霊夢さん(20)
鎮まれ我が嫉妬、と少女が言った
の続き。
上記シリーズの完結編となります。


 子供の頃、私は霊夢に憧れていた。
 いつも霊夢は私よりも先を歩いていた。助けられた事も一度や二度じゃない。私がどうしようもない困難を前にして困り果てている時に、霊夢は颯爽と現れ、私の手を引いて一緒に困難を乗り越えてくれた。私にはそんな霊夢がヒーローの様に思えた。私が魔法使いを目指したのだって、少しでも霊夢に並びたかったからで、その為に散々努力しても追いつけなかったから、私の憧れは益々強くなった。
 あの頃の私はとにかく霊夢と並ぶ一心で生きていたと言っても過言では無い。英雄に並び立てる様に、そう考えて毎日生きていた。
 決してそれは嫉妬ではなかった。あくまで憧れ。自分の理想が霊夢だった。
 それは成長した今でも変わらない。
 確かに最近の霊夢は昔の様なきれが無くなり、情けない姿になっているけれど、きっと内にある才能の炎はまだ消えていなくて、何かあればそれは燃え盛り、昔の様な英雄になってくれると信じている。

 霊夢が教室の中に入ると、教室の中は授業中だった。子供達と向かい合っていた早苗が霊夢を見る。
「あ、霊夢。あなたにはどうしても欲しい服があります。その色は何色?」
「え?」
 突然の質問に戸惑っていると、早苗が言った。
「直感で良いから。何色?」
 子供達が期待の眼差しを向けてくる。
 霊夢は戸惑いながらも答えた。
「赤?」
 途端に子供達がはしゃぎだした。
「うわー、やらしー」
「霊夢先生のえっちー!」
 子供達が俄に色めき立ったので霊夢は訳が分からず辺りを眺め回す。
「は? え?」
 それを眺めながら、早苗がおかしそうに答えた。
「心理テスト。赤を選んだあなたのエッチ度は八十パーセント。普段からエッチな事を考えていませんか? あなたの欲望が透けて、男の人は引いてしまっているかも」
「かも! 霊夢先生のえっち!」
 早苗の解説に合わせて、子供達も叫ぶ。
 霊夢は恥ずかしくなって、早苗に歩み寄るなり思いっきり拳骨を振り下ろした。子供達が快哉をあげる。
「痛! 何するんですか! 子供達が見ている前で!」
「あんたこそ! 子供達に何を教えているのよ!」
「私はただ子供達に世の中の真実を」
「大嘘ぶっくらこいてんじゃねぇ! 誰が普段からエッチな事を考えてるって?」
 霊夢が再び早苗の頭を叩く。早苗は頭を抑えながら唸る。
「でも実際このテストだとそういう結果が」
「だからその間違ったテストを子供達に教えるなって言ってんの!」
 その時、教室の扉が開いた。
「おい、いつまで残ってるんだよ。もう授業の時間は過ぎてるんだから、早く帰れよ。ご迷惑だろ」
 入ってきた魔理沙に、教室の空気は一瞬固まったが、霊夢と早苗は顔を見合わせると、不敵な笑みを浮かべて魔理沙に尋ねた。
「ねえ、魔理沙。あなたにはどうしても欲しい服があります。それは何色?」
「え?」
「直感で良いから」
「んー、黒か青。落ち着いた色が良い」
 魔理沙が答えたので、霊夢は嬉しそうに早苗を見る。てっきりすぐにエッチ度が分かるのだろうと霊夢は思っていたのだが、早苗は眉根を寄せて悩む様子であった。
「どうしたの?」
「黒は百パーセント。青は零パーセント」
「え?」
「どうして? 全く反対の結果が」
「おい、お前等何の話してるんだよ」
「心理テスト。エッチ度を計る。でも魔理沙の答えが全く正反対の回答で」
「どうして? 魔理沙の性欲は人間の物差しじゃ測れないの?」
「お前等子供達の居る前で何の話してんの?」
「もしかして魔理沙って女好き? だから変な答えになったのかも」
「ああ、男に対しては零だけど、女に対しては百みたいな?」
「危ない! 女の子のみんなは、魔理沙先生から逃げる為に早く帰りましょう!」
「阿呆か!」
 魔理沙が続け様に二人を叩く。子供達がその光景を見て嬉しそうに騒いでいる。

「結局エッチっていう汚名を晴らせなかった」
 霊夢の家に戻った霊夢と魔理沙はお茶を飲みながら落ち込んでいる。
「ふざけんなよ。私なんてレズ疑惑に宇宙人疑惑だぜ? 何? 死ねば良いの?」
「当の元凶は、だから二人共結婚できないんですねって笑いながら帰っちゃったし」
「あいつだって結婚してない癖に」
 憤る二人の耳に、遠くから誰かの駈ける足音が聞こえた。
「お客さん?」
 二人が耳を澄ませていると、それは段々と近づいてきて、二人の居る部屋の前までやってきたところで、障子が勢い良く開いて、早苗が飛び込んできた。
「助けて! 私結婚したくない!」
「は?」
 早苗は霊夢に抱きついて、事の次第を語り出した。

 早苗が家に帰ると何か神社の中が慌ただしい。沢山のお手伝いさん達が常に無い忙しなさでそこら中を行きつ戻りつしている。そうして早苗が傍を通る度に、お手伝いさん達は何か形容し難い緩んだ表情で、おめでとうございますと言って去っていく。
 一体何があったのだろうと不思議な気持ちで早苗が居間へ入ると、そこには神奈子と諏訪子が居て、やはり緩んだ表情をしていた。
「お帰り、早苗」
「只今戻りました。神社の中が慌ただしいですけど、何かあったんですか?」
「ああ、そろそろかなと思ってね」
「そろそろ?」
 神奈子が嬉しそうに頷いた。
「そろそろ早苗も結婚する頃かなって」
 早苗は面食らって言葉が出ない。
 諏訪子が呆れた様に溜息を吐く。
「むしろ遅かったけどね」
「まあ、でも最近の子って結婚するの遅いって言うし。二十歳なら十分早い方だよ」
「時代も変わったねぇ」
 その瞬間、早苗が円卓を叩いた。
「ちょっと待ってください! 結婚て何ですか?」
「何って」
「結婚だよ」
「だから、何だか私が誰かと結婚するみたいな話をしてませんでした?」
「そうだよ。そろそろかなって」
「重荷になりそうだから、遅らせてたけど、あんまり遅くてもね」
「そうそう。行き遅れみたいな不名誉な称号がついちゃうし」
「あの、私の事、考えてもらっていたのはありがたいんですけど、私はそのちゃんと相手を見極めてお付き合いしたいというか」
 早苗がそう言うと、神奈子と諏訪子は一瞬きょとんとして固まったがすぐに笑い出した。
「違う違う。そういう事じゃないよ」
 否定してくれたので、早苗は安心して息を吐いた。
「何だ。冗談は止めて下さいよ」
「冗談じゃないって。ただ早苗が勘違いしてるだけ」
 二人が笑う。
 何故か早苗の頭の中に警鐘の様な頭痛が鳴り響いた。視界が揺れる。
「勘違い?」
「そう。何処の馬の骨とも分からない奴と結婚なんかさせるもんか」
 頭痛が大きくなっていく。目眩が強くなっていく。
「え? あの」
「早苗が結婚するのは私達とだよ。巫女なんだから、神様と結婚するんだ」
 一瞬世界がひっくり返った様な気がして、喉が詰まって息が出来なくなった。無理矢理息を吸い込むと、幾種もの花の香りが肺に溜まる。常とは違う空気。結婚を祝う為に集められた花束の香り。それが神社の周りを取り巻いている。
「私とお二人が?」
 お茶を飲もうと湯呑みに手を伸ばしたが、手が震えて上手くつかめない。手が湿っている。体中から汗が流れている。体が干からびていく様な錯覚があった。
「そうだよ」
 まるで当然の様に神奈子が肯定した。責められている様な気がして、早苗の体が強張る。
「うちの、うちの宗派ってそういうのありましたっけ?」
「あれ? 知らなかったの? そりゃあるよ。巫女は何の為に居ると思ってたんだ?」
 早苗は何も言い返せなくなって俯く。
「馬鹿だな、神奈子は」
 呆れた声音の諏訪子に、早苗が希望を持って顔をあげた。諏訪子は優しげな微笑みを浮かべていた。
 諏訪子様は分かってくれている。私が嫌だって思っている事に気が付いて、結婚を取りやめてくれる。
 どうしてかそう勘違いした早苗は諏訪子の次の言葉で再び絶望のどん詰まりへ行き当たった。
「知らなかったなんて冗談で言っているに決まってるじゃないか。だからこそ、今まで早苗は他の男と結婚しないで待っていてくれたんだろ?」
「ああ、そっか。気付かなかった」
「本当に馬鹿だな、神奈子は」
 笑いあう二人を見つめながら、早苗は唾を飲み込んだ。
 二人共、何も分かっていない。早苗の心境を解する気配が微塵も無い。
「諏訪子様、神奈子様」
「何?」
「あの、私は」
 二人と結婚したくないと言おうとしてその口が止まる。それを言えば、二人は怒り失望するだろう。巫女の責務を全うする気が無いと知れば、二人の心は離れ、巫女を止めさせられ、二度と会ってくれなくなるかもしれない。
 それは嫌だった。
 でもだからと言って、結婚だってしたくない。
 神奈子と諏訪子は不思議そうな顔で早苗を見つめていたが、早苗が何も喋らない様子なので、再び話を戻した。
「それで式の日取りなんだけど、出来るだけ早くやっちゃいたいんだよね」
「丁度明日は吉日だし」
「妖怪の山総出でやりたいよね」
「そうすると人間が呼べそうにないのが問題なんだけど。早苗はやっぱり人間も招待したい? でも今日の明日じゃそれは中中」
「いえ、あの」
 このままではなし崩しになる。
 それに気がついた早苗は思わず言った。
「あの、結婚式はちょっと」
「え?」
 途端に二人が不安そうな顔になった。
 口を挟んだだけでそんな表情になったのであれば、もしも結婚はしたくないと言えば、二人がどんな反応を見せるかだろうか。
 それを想像した早苗は、寂しさと恐ろしさで胸が締め付けられて苦しくなった。
「あの、結婚式は」
「もしかして早苗は本当に結婚の話、知らなかったとか?」
「もしかして私達の事嫌い?」
 肯定すれば、結婚はしなくて済む。けれどきっと二度と二人と顔を合わせられなくなる。
 どちらを選ぶ事も出来ず、早苗は必死で別の道を探って、妙案を思いついた。
「私! 私、ウェディングドレスを着て教会で結婚式を上げるのが夢だったんです。それじゃないと嫌です」
 これならば普段から放言しているわがままに比べれば可愛いもので、二人を傷付ける理由では無く、その上で神道式の土着信仰に染まった二人との結婚を否定出来る。
 と思ったのだが、あっさりと肯定された。
「ああ、何だそんな事か。それなら河童に教会を作らせるよ、明日までに」
「ウェディングドレスも香霖堂に言って作らせるよ、明日までに」
 そうして二人が笑う。
「楽しみだね、明日の結婚式」
 どん底に嵌まった早苗はどうしようも無くなって、目に涙を浮かべながら笑顔になって頷いた。
「はい!」

「って言う事なんですよ! 助けてください!」
 早苗に泣きつかれて、魔理沙と霊夢は顔を見合わせた。
「無理じゃない?」
「なあ」
 早苗の泣き声が大きくなる。
「何でですか! 私がこうして頼んでいるんですよ! 助けて下さいよ!」
 霊夢が溜息を吐く。
「だって、それ神との契約でしょ。それを承認しちゃった以上、その呪いはほとんど絶対の拘束力があるわよ」
「神道にキリスト教のちゃんぽんって、普通なら競合しあって弱まりそうだけど。多少弱まったところで、神様と面と向かって交わした契約を打ち破れるかって言っても」
「そこを何とか!」
「何とかって言われても」
「うーん」
 二人が悩んでいると、早苗は苛立った様子で立ち上がった。
「もう良いです! どうせ他人事なんですね! 二人には頼みません!」
 そう言って駆け去って行った。
「あーあ、行っちゃった。大分追い詰められてたわね」
「可哀想だけど。ちょっとなぁ」
「どうにかするって言っても。あの二人相手に殴りこみをかけるのもねぇ」
 ふと魔理沙はその霊夢の物言いが気になった。昔の霊夢だったら本当に殴りこんでいた気がする。そうでなくともこんな簡単に諦めなかった筈だ。でも諦めが早くなったのは自分も一緒で、それは現実が見える大人になったという事。仕方の無い事。実際に殴りこみを掛けたって勝てないのだし。
 魔理沙は溜息を吐いてお茶を啜り、ふと呟いた。
「あー、そうか。そういう意味じゃ絵になるし、普遍的でルール化されてるって言えなくも無いのか」
「何が?」
「早苗を助けられるかもしれない唯一の道」

 教会の鐘が鳴っている。
 辺り一帯に響きわたっている。
 祝福の拍手が打ち鳴らされる。
 皆の快哉に包まれて、ウェディングドレスを着た早苗は神の御下へ歩いている。
 俯く早苗の顔は暗く陰っているが、それはベールに隠されて誰にも見る事が出来ない。早苗は一人ぼっちで、晴れやかな教会の中を暗い顔して歩いている。幸せを祝福されながら。
 モーニング・コートを着た神奈子と諏訪子が笑顔で早苗を出迎える。ウェディング姿に涙を流しながら、早苗の手を取って三人が横並びになる。
 集った妖怪達は覚えたての不恰好な、けれど心の籠もった賛美歌を歌い、牧師に扮した天狗が聖書とメモに目を落としながら、辿々しく祝福の言葉を語る。
 やがて誓約の言葉がやって来る。
「あなたの神に対して、堅く節操を守り、愛を育む事を誓いますか?」
 愛の誓いを求められた早苗は息を吐いた。静まり返った教会の中で、その息の音はやけに大きく響いた。両隣に立つ神奈子と諏訪子が愛の誓いを待っている。目の前に立つ牧師も、背後に控える沢山の祝客達も。もう全ての逃げ道は雁字搦めに封じられていて、残された道は諦めしかない。
 早苗はもう一度諦めの溜息を吐くと、ゆっくり顔を上げ、愛の誓約を行おうとした。
「ちょっと待った!」
 その時、教会の入り口から怒鳴り声が聞こえた。
 教会中の目がその怒鳴り声に向かう。
 そこには箒を持った魔理沙が立っていた。
 魔理沙は集まった視線に笑みを向けて、再び叫ぶ。
「早苗!」
 そう言って早苗に向けて手を伸ばす。
 早苗はその意図に気が付いて、引きとめようと掴んできた神奈子と諏訪子を振り払って、魔理沙の下へ駆けた。
「魔理沙!」
 魔理沙も早苗の下へ駆けて二人は教会の真ん中で手を取り合い、そうして出口へ目を向けた。扉の開いた出口の向こうは陽光で白く染まっている。逸早く事態を察した十数人の妖怪達がそこまでの道程を塞いでいる。
 魔理沙はそれを睨むと、しっかりと早苗を抱き寄せて、箒を掴んだ。
「他受けに来たぜ」
「うん」
 魔理沙は箒を浮かび上がらせて、二人は箒の上に跨る。道を塞ぐ妖怪達の数が次第に増えていく。魔理沙はそれを睨んだまま楽しそうに笑う。
「しっかり掴まってろよ!」
「うん!」
 箒が急発進して、妖怪達の頭上ぎりぎりを、捕らえようとする手を避けながら掻い潜る。妖怪達を抜けた先の真っ白な出口を通り抜けて、光に溢れた外へ飛び出した魔理沙達は、背後から追ってくる妖怪達を振り切る為に、更に速度を上げる。
 やがて妖怪の山を下りきって、追手の気配も失せたところで、魔理沙は箒を止めて人心地ついた。
 妖怪の山からは喧騒が聞こえてくるが、随分と遠くからだ。
「さて、ここまで来れば一旦は大丈夫だろ」
「ありがとう。助かった」
「まだ決着はついちゃいないよ」
「え?」
「結婚式の呪いは破ったと思うけど、結局なんの解決にもなってないだろ。もしも結婚式が嫌だってだけなら、最初から断ってれば良いんだから」
「うん」
 結婚をしたくない、神奈子と諏訪子との関係を断ち切りたくない。その二つが早苗の願いだったはずだ。今のままでは結婚をしないで済んだだけでしかない。
 落ち込んでいる早苗の額を、魔理沙は中指で打った。
「痛」
「思い悩む様な事じゃないだろ。はっきり言えば良いんだよ。神様と形式的に結婚するんじゃなくて、想い人と普通に結婚したいって」
「でも、それじゃあ二人に嫌われて」
「そんな事で嫌われる程、お前等の絆は脆いものだったのか?」
 早苗が言葉に詰まる。
 妖怪の山からは喧騒が聞こえてくる。
「あれ? どうしたの、二人共」
 見ると霊夢が立っていた。
「あれ? 霊夢。一緒に居なかったっけ?」
「居なかったわよ。何? また何か勘違いして私の事置いて行っちゃったの?」
「ごめん」
「まあ、良いけど。で? 何があったの?」
「いや、早苗が結婚するのを止めて」
 魔理沙の言葉が止まった。霊夢の姿が消えた為だ。
「あれ? 霊夢?」
「何?」
 背後を振り返ると霊夢が立っていた。
「どうしたの、二人共、こんなところで」
「あれ? 霊夢、今こっちに居なかったか?」
 そう言って、さっきまで霊夢の居た場所を指さすと、霊夢は不思議そうな表情になった。
「何言ってんの?」
「いや」
「あれ? 二人共どうしたの?」
 また別の場所から霊夢の声が聞こえて、魔理沙と早苗が振り返ると、霊夢が二人立っていた。まるで双子の様に同じ顔で同じ背格好、その上服装まで一緒の二人が微笑んで軽く手を振った。
 魔理沙が一瞬前の霊夢が居た場所を見ると、霊夢の姿が消えている。慌てて目を戻して、二人の霊夢を交互に指さした。
「霊夢、お前双子の姉妹でも居たのか?」
「え?」
 二人の霊夢は驚いた表情でお互い見つめ合い、そうしてあっと小さく声を上げたかと思うと、二人共煙の様に消え失せた。
「どうなってるんだ?」
「霊夢が沢山現れて……異変?」
「私が何だって?」
 また声が聞こえてきて、見ると霊夢が立っていた。辺りを見回すと、そこら中に霊夢が現れては消えている。
 早苗が呆然として魔理沙に問いかける。
「魔理沙、これは、どういう事?」
「とにかくお前は神奈子と諏訪子の二人と仲直りしておけよ。そっちだって重要だろ」
「でも霊夢が」
「それはこっちで何とかする」
 そう言うと、魔理沙は箒に飛び乗った。
「何処へ?」
「本物の霊夢を迎えに行く。じゃあな」
 そう言うと、魔理沙は早苗と沢山の霊夢を尻目に、宙を飛んで博麗神社へと向かった。道中、下界を見ると、そこらかしこに霊夢が現れて居た。中には妖怪を退治しようとしている霊夢も居て、悲鳴の飛び交う混乱を巻き起こしている。
「無茶苦茶だな、あんな手当たり次第。あんなの霊夢の偽物ですらないぜ」
 だが、と魔理沙は考える。
 恐らく多くの者にとって霊夢というのは妖怪を退治し異変を解決する博麗神社の巫女という認識でしかない。偽物にすら劣る偽者達でも、人によっては本物と錯誤してしまうかもしれない。そうだとすると、霊夢の立場は非常にまずいものになる。
 急がなくてはならないと箒を飛ばして博麗神社に行ってみると、既に遅かった。どうやら今回の異変は顕在化してから久しいらしく、博麗神社には正月でもこれ程は集まらない位の人が集まっていた。皆は口々に怒号を飛ばしていて、その先の境内には博麗霊夢が困惑した様子で人々を宥めようとしている。だが、お前がやったんだろうだとか、異変なら早く解決しろだとか、壊した物を弁償しろだとか、怪我をしたから謝れだとかの叱責に対して、霊夢は何も言い返せず、ただただ冷静になる様にと諭す事しか出来ていない。その弱気が、群衆の燃料になって、益々人々を加熱している。
 その様子を見て、魔理沙は苛々とした。ずっと昔から、人々が妖怪に襲われた時や異変が起こった時にそれを解決してきたのは霊夢だというのに、たった一回、しかも失敗した訳でもなく、まだ解決出来ていないというだけでどうしてここまで責められなくてはならないのか。中には霊夢に物を投げつけている者も居て、こいつらを魔法で一掃したらどんなに気持ち良いだろうと思った。
 そんな群衆の頭の上を越えて、霊夢の下まで辿り着く。霊夢は押し寄せる群衆を宥めようとしていた。
「ですから、一先ず調査をしてから」
「それじゃあ、遅すぎるって言ってんだよ! こんなに大変な事になってるのに、まだ何も分かっていないのかよ!」
「すぐに調べますので」
「良いからまず謝れよ! すかしてないでよぉ!」
 霊夢がたじろぐと、群衆が一歩詰める。いずれは直接暴行にでも及びそうな程白熱している。
「霊夢!」
 魔理沙が霊夢の頭上から手を伸ばした。霊夢が驚いて上を見上げる。
「え? 魔理沙! 何? もしかしてあんたにまで何か」
「掴まれ!」
「え?」
 霊夢は迷う様に詰め寄ろうとする群衆を見つめたが、すぐに決意した様子で魔理沙の手を掴んだ。その瞬間急上昇して、魔理沙と霊夢はその場を脱する。
「助かったわ」
「何の解決にもなってないけどな」
 下からは降りてこいという怨嗟の叫びがやってきている。それを見つめて霊夢は悲しそうに呟いた。
「私、何しちゃったんだろう」
「何にもしてないさ」
 魔理沙達は箒に乗って空を飛び、その場を離れる。
「とにかく何処かに隠れよう。ほとぼりが冷めるまで」
 そうして宛もなく飛んでいると、突然前方に隙間が開いて、紫が顔をのぞかせ、手招いた。

「とりあえずこの部屋を使って良いから。魔理沙はこっち」
 部屋の中に通された霊夢がお礼を言うと、紫はどういたしましてと言って、魔理沙を引き連れ、少し離れた部屋へと案内した。
 魔理沙が部屋の中に入ると、紫も一緒に入ってきて、障子を閉めた。
「それで、今回の異変だけど、あなたは原因が分かっているの?」
「いや。まだ何も」
「そうよね」
「紫は何か知ってるのか?」
「ええ。だってこれは妖怪の発生原理と同じだもの」
 紫がそう言って、畳に膝を突いた。何やら神妙な雰囲気に魔理沙も腰を下ろす。
「結論から言うと、霊夢が沢山現れた原因はあなたよ、魔理沙」
「私? でも何にも」
「あなたの中の霊夢に対する理想と、現実の差異が埋まらずに、あなたは理想の霊夢を生み出したの」
「私が理想の霊夢を生み出した? 何だよ、それ! 私にそんな能力は」
「あなたは昔っから霊夢に憧れてたわよね。小さい頃からずっと。あなたが物心つきはじめた頃から、いっつも何をするにしても霊夢の方が優秀で、あなたは十になる前から霊夢に勝つ事を諦めて、霊夢に憧れる事で自分を保とうとした」
「何で……知ってるんだ? あの頃は面識無かっただろ」
「あなたの中には強固な理想の霊夢像が出来た。ところが夢がおかしくなる。段々と自分に自信を失い、実力を発揮しきれずに、終いには凡人以下の存在に堕落した。それなのにあなたの理想は理想のままで、その落差がどんどんと顕著になっていった。あなたの理想はあまりにも硬すぎて、未だに現実を認める事が出来ずに、その差異が埋まっていない」
「だから何なんだよ! 何が言いたいんだ? それで霊夢が何人も現れるのか? それに! それに霊夢は、あいつは今だって誰よりも優れて」
「不幸な事に、あなたと霊夢は二人共才覚があった。あなたは魔法使い、つまり自己の精神を変革させる事によって物質世界に干渉する才能があった。その魔法は本来なら霊夢を変質させていた筈だけれど、霊夢は博麗の巫女として何者にも左右されずに中立を保ち続ける才能があった。だからあなたの魔法は霊夢を変質させる事が出来ずに居た。結局どうする事も出来ないあなたの魔力は、あなた自身に霊夢という存在を誤認させる事で理想と現実の溝を埋めていた。例えば、あなたが解決した紅魔館や神霊廟の異変、紅魔館の奴等が解決した永遠亭の異変、そういった霊夢が解決したのではない異変まで、あなたは霊夢が解決したと信じているし、あなたの魔法によって多少ではあるけれども事実が捻じ曲がり、霊夢が解決した事になっている。この程度ならまだ良かった」
「おい、待て」
「ところがあなたの力は更に強く、そうして理想との差は更に大きくなり、認識の食い違いは他の者達にまで飛び火していく。結果として、幻想郷中の者がそこに居ない霊夢の夢を見始め、その夢は現実の霊夢を蔑ろにする程のものになった」
「おい! 待てよ! 待ってくれ! それじゃあ」
「ねえ、魔理沙、妖怪がどうやって生まれるかは知っているわよね。巷間に流布した認識が実存を凌駕した時、妖怪は生まれる。それと同じ事が起こっているのよ。人々の誤認した霊夢は、やがて物理現象を引き起こす様になり、やがて実際の血肉を得る。今はまだそこまで至っていないけれど何れあの湧き出た霊夢達は全てが本物になる。勿論あなたの理想の霊夢もね。流石は幻想郷の誇る魔法使い見習い、魔法円も無しに召喚をして見せたと」
 その瞬間魔理沙が立ち上がって、紫の胸倉を掴みあげた。
「黙れ!」
「良いけど何も変わらないわよ」
 魔理沙は泣きそうな顔で歯を食いしばりながら紫を睨みつけたが、やがて胸倉を掴んだ手を緩めて項垂れた。
「どうすれば良い?」
「あなたの理想と現実の溝を埋めれば良い」
「どうすれば良い! 何だよ現実と理想の溝って! そんな物無い! 霊夢は霊夢だ!」
「その認識がまず間違っているの。そもそもあなたは本当にそう信じているの? 本当に今の霊夢に違和感を覚えた事は無い?」
 魔理沙は一瞬言葉に詰まった。
「何にせよ、あなたの理想とする霊夢と現実の霊夢にはずれがある。その誤認を抱いている限り、この異変は解決しない。ただだからと言って、その認識を止めろと言っても無理な話」
 紫の言葉に魔理沙は涙を流しながら叫ぶ。
「じゃあ! どうすれば良いんだよ! 霊夢を一切見なければ良いのか」
「いいえ、それじゃあ足りないわ。そもそもあなたの中にある霊夢が悪いんだもの」
「じゃあ、私の中から霊夢を消せば良いのかよ!」
 魔理沙はそう叫んで、そうしてはっと気がついた様に顔を上げた。
「話が早いわね」
「私に霊夢を忘れろって言うのか?」
「強制はしないわ? 結局この解決方法はあなたの問題だもの。他の者には他の解決方法がある。例えばあなたや霊夢を殺すとか」
 魔理沙はしばらく呆然と紫を見つめていたが、やがて一度項垂れてから憔悴しきった微笑みを浮かべた。
「お前なら消せるのか。私の、霊夢に関する記憶を」
「無理よ。霊夢を覚えているのか定からぬ状態には出来るけど、本質的に記憶を消す事は出来ない。どちらかと言えば、それはお医者さんの管轄でしょうね」
「そうか」
 魔理沙は立ち上がって、紫の傍を通り、襖を開けた。
「何処へ行くの?」
「少し時間をくれ。霊夢と話してくる。別れを惜しむ時間位、良いだろ?」
「ええ、ご自由に。今更一時間や二時間遅れたところで何も変わらないもの」

 霊夢はどうすれば良いのか分からずに部屋の中で座っていた。自分が沢山現れて人々に迷惑を掛けたという。確かに自分に責任があるのかもしれない。けれどどうすれば解決するのか分からない。昔はそこら辺の奴等を片っ端からぶん殴ってれば解決したのに。今は、もう、どうやって異変を解決すれば良いのかも忘れてしまった。
 襖が開き魔理沙が入ってきた。
「霊夢」
「魔理沙!」
 魔理沙の憔悴しきった様子に霊夢は慌てて立ち上がる。
「どうしたの? 大丈夫?」
「ああ、大丈夫。それより異変を解決する方法見つかったんだ」
「え? 本当! どうやって?」
 霊夢が顔を輝かせると、魔理沙は反対に顔を曇らせ悲しげな顔をした。
「なあ、霊夢」
「何?」
 魔理沙は何か言おうと口を開いたが、それは言葉にならず、代わりに嗚咽が漏れてきた。魔理沙が泣きだしたので、霊夢は慌ててその肩に手を載せ心配そうに顔を覗き込んだ。
「どうしたの? 何処か悪いの?」
「いや、ちょっと思い出話でもしようと思ったけど、駄目だな。決意が揺らぎそうだ」
 涙声で魔理沙が不吉な事を言うので、霊夢は不安になった。
「どうしたの?」
「霊夢、何も知らずに全てが終わったら、霊夢が罪悪感を覚えそうだから、言っておくぜ」
「何?」
「今回の異変だけど、私の所為だったみたいだ」
「え? じゃあ、魔理沙を殴れば解決するの?」
 魔理沙が涙を流しながら苦笑する。
「いや、それには及ばないぜ。私は自分でけりをつける。私の霊夢に関する記憶消せばきっと解決するはずだから」
 霊夢は魔理沙の言った言葉を噛み締めてから、慌てて魔理沙がすがり付いた。
「ちょっと待って! 何言ってるの? 何で私の事を忘れないといけないの?」
「そうしないと異変が解決しないんだ」
「やだやだ! また置いてくの? もう放さないって言ったのに!」
「悪い。でも異変が」
「異変なんてどうでも良い! 止めてよ! そんな、私魔理沙が居なくなったら、そしたら私一人ぼっちになっちゃうじゃない!」
「ごめん。でも大丈夫。今はもう孤独じゃないだろ? 学校の先生になったんだし、最近は早苗や妖夢やみんなと会う機会だって多くなって」
「嫌! 魔理沙は特別なの! 大事な大事な幼馴染なの! 魔理沙が居なくなったら! そうしたら! 私!」
「ごめん」
 そう言うと、魔理沙は霊夢を突き放して、廊下へと駈け出した。
「あ、待って!」
 霊夢は後を追おうとして、裾を踏んづけて転んだ。何とか立ち上がって、屋敷の中を走り回って魔理沙を探していると、部屋の中に座り込んだ紫を見つけた。
「あ、紫! 魔理沙を見なかった?」
「魔理沙なら永遠亭に送ったわよ。記憶を消す薬をもらいに」
「じゃあ、私も永遠亭に送って!」
「魔理沙を止めるつもり? なら止めておきなさい。そうしないと異変が解決しないんだから」
「良いから永遠亭に送って! 魔理沙を失いたくない!」
「別に死ぬ訳じゃない。あなたに関する記憶を無くすだけ。思い出はまた一から作れば良いじゃない。ねえ、霊夢。あなたも博麗の巫女なら分かるでしょ? 異変は何を置いてでも解決しなくちゃいけないの。幻想郷が滅茶苦茶になるのよ」
「魔理沙を失う位なら異変なんか解決しなくたって良い! 幻想郷だって滅茶苦茶になれば良い!」
 紫の目が苛立ちに細まった。
「博麗の巫女の言葉とは思えないわね」
「黙れ! 親友犠牲にしなくちゃ保てない世界なんて要らない! それならみんな滅べば良い! さあ! 永遠亭に連れて行って!」
 紫は思案気に顎をさすっていたが、やがて隙間を開いた。
「良いわよ。行きなさい」
「ありがとう!」
 霊夢が隙間に飛び込んでその姿を消すと、紫は隙間を閉めて微笑み謳った。
「さあ、霊夢、魔理沙のヒーローさん、しっかりと魔理沙を助けて理想を演じてみせなさい」

 霊夢が結界を抜けるとそこは永琳の診察室だった。永琳は机に向かって書き物をしていて、霊夢がやって来た事に気がついてペンを止めると、振り返った。
「何? 今度は霊夢? あなたは、本物?」
 気怠げな永琳の言葉を無視して、霊夢は言った。
「魔理沙は何処? 来てるんでしょ?」
「ええ、今さっきね。あなたに関する記憶だけを消してくれって必死でお願いされたわ。喧嘩でもしたの? どうせ下らない理由でしょ? だったら仲直りしなさい」
「まさか魔理沙の記憶を消しちゃったの?」
「まさか。個人に関する記憶だけ消すなんて、医療の範疇じゃないわ。だから断ったの」
 霊夢は胸に手を当てて息を吐いた。まだ魔理沙の記憶は消えていないらしい。
「それじゃあ、魔理沙は何処に?」
「さあ? 帰ったんじゃない? それより、あなたが大量増殖して困っているんだけど何とかならないの? 殺虫剤撒き散らせば失せるかしら?」
「ありがとう! ちょっとその辺りを探してくる!」
 永琳の言葉を完全に無視して、霊夢は飛び出した。すると廊下の先に鈴仙が見えた。
「鈴仙! 魔理沙知らない?」
「魔理沙、なら、その部屋に居ない?」
 そう言って、鈴仙が診察室を指さした。
「居ない。さっき帰っちゃったって」
「そうなの? つい今、魔理沙が薬を師匠のところに持ってくって言ってたけど」
 何か嫌な予感がした。永琳の話と食い違っている気がする。
「薬って何の?」
「記憶を無くす薬」
 その瞬間、診察室のドアがぶち破られて、永琳が飛び出してきた。
「ちょっと、優曇華! 今の話本当?」
「え? はい。魔理沙が師匠に持って来る様に頼まれたからって聞いて、渡したんですけど」
「ちょっと永琳、さっきあんた記憶を消す薬は無いって言ってなかった?」
「馬鹿者!」
 永琳の凄まじい怒鳴り声に鈴仙と霊夢が身をすくませる。
「その薬はね、もしもの時の為に私と姫様用に作った、飲んだ者の思い出を一から十まで全部消す薬なの! そんな物、普通の人間が飲んだら、人としての生が望めなくなるわよ!」
「でも、だって魔理沙が!」
「戯けるな! ああ、もう! とにかく魔理沙を探すわよ! 何処へ行ったの?」
「それは師匠の部屋にって」
「イナバを総動員して魔理沙を探して! 見つけたら何が何でも薬を奪取!」
「はい!」
 鈴仙が慌てて駆けて行った。
 それを見送った永琳は隣に立つ霊夢に言った。
「私達も探すわよ。何処か心当たりは無い?」
「心当たりって言っても。記憶が全部無くなっちゃうのよね? なら知り合いへ挨拶回りか。もしくは魔理沙の家?」
「とりあえず心当たりのある場所は全部探しに行くわよ!」
 そうして二人は駈け出した。

 一方その頃、魔理沙は座り込んで、カプセルに入った記憶を消す薬をぼんやりと見つめていた。飲めば今までの記憶が全部消えてしまう。そう考えると中中踏ん切りがつかず、未だに飲めずに居た。魔理沙はカプセルから視線を外して空を見上げる。日が暮れ始めている。遠くには落ちかけた夕日がある。あの夕日が沈んだら飲もうと心に決めて、魔理沙はまたぼんやりとカプセルを眺めだした。何か心の中に希望が灯っているのに気がついたが、それが何かは分からなかった。

 日が完全に暮れる頃になってもまだ、霊夢達は魔理沙を見つけ出せずに居た。心当たりのある場所は全部回ってみたが、何処にも居ない。魔理沙の行方を聞こうにも、霊夢が大量発生している所為で混乱が起こり、誰も魔理沙や他の事なんか気にしていなかった。何とか協力者を集めつつ、捜索範囲を広げているが、一向に魔理沙を見つけたという報告は上がらない。
 もう日はほとんど暮れて、辺りは真っ暗になっている。すると鈴仙が泣き言を言った。
「師匠。もう夜になっちゃいますよ。こんなに暗くちゃ魔理沙一人を見つけるなんてそれこそ」
「馬鹿言うな! 良い? 夜になろうがなんだろうが見つけるまで探すわよ!」
「でももう薬飲んじゃったんじゃ」
「飲んでたらもっと見つけなくちゃ駄目でしょ! 思い出が無くなって何もわからなくなってるんだから! それに、魔理沙が記憶をなくせば、霊夢が沢山現れているこの異変は治まるんでしょ?」
「ええ、そう言ってたわ」
「だったら偽者の霊夢達がまだあちこちに居る以上、魔理沙は飲んでいない! きっと悩んでいるのよ! 良い? 絶対に見つかるまで探すわよ!」

 一方その頃、魔理沙は完全に日が落ちて夜になった妖怪の山の森の中で、ようやく薬を飲む決心を付けた。心の中にはまだ何か希望の光らしきものが灯っていたが、それが何かはわからないし、ほんの小さな光であまりにも儚く、実ってもどうする事も出来そうになかった。
 魔理沙は大きく息を吐いて、一つ息を止めると、ぐっと目を瞑って、カプセルを口の中に放り込み、飲み下した。

 魔理沙が薬を飲み下した丁度その時、真っ暗な中で永琳が言った。
「後は外周と山や森だけ。一旦全員を集めて! 山狩りは人数が必要だから、一つ一つ虱潰しに行くわよ」
 その時、霊夢が妖怪の山を指さして言った。
「何となくあの山に居そうな気がする」
「本当?」
「何となく」
「何となくでも良いわ。何の手掛かりも無いんだから、この際直感が大事よ。鈴仙!」
「は、はい!」
 連絡を取っていた鈴仙が慌てて寄ってきた。
「全員、妖怪の山の入口に集合させて!」
「はい!」
 鈴仙がまた連絡を取り出した。
「さあ、霊夢。私達も行きましょう」
 そう言って永琳が霊夢の居た場所を見ると霊夢の姿が消えていた。
「あら? 霊夢?」
「何? どうしたの? こんな夜中に忙しなく」
 背後から声が聞こえて、振り返った永琳は、呆然として呟いた。
「さっきまでのは偽者だったの? じゃあ本物は何処に?」

 魔理沙が薬を飲み下した時、何処からともなく藪をかき分ける音が聞こえ、魔理沙が音のする方に顔を向けると、藪を掻き分け必死で向かってくる霊夢が見えた。
「霊夢」
 きっと幻覚だろうと思った。まさかこんなタイミング良く助けに来てくれる訳がない。もしもそうであれば、本当に理想通りのヒーローの様な存在だ。きっと最後の最後に神様が哀れんで贈り物をくれたんだ。幻であっても、もうじき記憶の消える自分には十分だ。
 神様からの贈り物は拳を振りかぶり雄叫びを上げる。
「うおおお! 吐き出せぇ!」
 霊夢の拳が魔理沙の腹に入り、魔理沙は乙女が出しては行けない様な断末魔を上げて地面に倒れ、胃液ごと今日口の中に入れた物を吐き出した。
 霊夢は慌てて、光を灯して地面にかざし、魔理沙の吐瀉物を観察する。その中に見慣れないカプセルを見つけて、息を吐いた。
「間に合ったみたいね。無事で良かった」
 地面に倒れた魔理沙はお腹を抑えながら蹲り、地獄の底から響く様な声を出した。
「この、姿の、何処が、無事だって?」
「記憶が全部無くなっちゃう事に比べたら安いものじゃない?」
 魔理沙が苦しげに身を起こす。
「随分とお前との記憶には価値があるみたいだな?」
「私との記憶だけじゃない。魔理沙が生まれてから今までの記憶。それは何よりも大切な物でしょ?」
「消そうとしたのは、霊夢の記憶だけだよ。他の記憶は消えない」
「もしかしてその薬の効力を知らなかった? 記憶が全部消えるってよ?」
「え? そうなのか?」
「そうなんです」
「そうか。でもどっちにしても、親友を失う事に比べたらずっと良い」
 そう言って、魔理沙がカプセルを拾おうとして手を伸ばし、霊夢に叩かれた。
「止めなさい!」
「でもこれを飲まないと、記憶を消さないと、この異変は終わらないんだ。霊夢が皆に責められる。それにいずれ沢山の霊夢が全部本物と同じ意味を持って」
「だから?」
「だから止めなくちゃいけないだろ!」
「だったら別の方法を探せば良いでしょ! 私が探してきてあげるわよ!」
「どうやって? 今回は私の記憶が原因なんだ! いくら霊夢だってどうする事も」
「どうして魔理沙の記憶がこの異変を引き起こしてるか分からないけど、記憶が原因なら例えばあの地下の天パに頼むとか。後は永琳にはちゃんと頼んだの? 記憶を消すんじゃなくて、ちゃんと原因を伝えてその原因を取り除ける薬を頼むとか。他にも幻想郷には変なのが一杯居るんだから、色々試してみれば良いじゃない。そういうのちゃんと考えた?」
「いや、全然。ごめん」
「ちなみに原因は何なの? 何で魔理沙の記憶が関係してるの?」
 魔理沙は言い淀む。
 中中本人を前にすると言い辛い理由だ。軽蔑されるかもしれない。だが言わないでこれ以上悲しませる位なら、軽蔑された方がマシだと思った。
「私が考えている理想の霊夢と、本当の霊夢がかけ離れてるから。そのかけ離れた溝が埋まらなくて」
「理想の私を生み出しちゃったって事?」
「そう」
「なら簡単じゃない!」
「え?」
「私があんたの理想と同じかそれ以上になったら良いんでしょ?」
「いや、まあ、そうだけど」
「とりあえずあそこでふんぞり返ってる姉妹をぶん殴ればあんただって納得するんじゃない?」
 そう言って、霊夢が月を指さした。魔理沙も月を見上げ、そうして慌てて首を振る。
「いやいやいや、無理だろ」
「無理じゃないわよ。楽勝楽勝」
 そう言って、霊夢が晴れやかに笑った。
 その霊夢の笑顔が、かつ自分を助けてくれた時の笑顔と重なって、魔理沙は懐かしい気持ちに胸が熱くなった。
「そうだな。いつも助けてくれたんだ。霊夢は。今回みたいに助けてくれて、私がどうしようも無いって泣いてる時は、楽勝だって笑い飛ばしてくれて」
 魔理沙は笑顔のまま、目を覆って後ろに倒れ込んだ。
「変わってないんだな。やっぱり」
「私が?」
「そう。いつだってやっぱり霊夢は霊夢なんだ」
「当たり前でしょ? 何言ってんの?」
「きっと私はその当たり前の事を忘れてたんだ」
 魔理沙は目を袖で擦ると、立ち上がった。
「そうだな。別の方法を考えよう。無理だなんて言ってないで」
「そうそう。とりあえずあの月の姉妹をぶっ飛ばして」
「だからそれはいくら何でも」
「無理じゃないわよ。楽勝楽勝」
「何処が」
「親友が苦しんでいる事を黙って見ている事なんかより、よっぽど楽勝でしょ」
 そう言って霊夢がまた笑った。
 その笑顔はやっぱり昔の頃の霊夢のままで。魔理沙は叶わないなぁと思いつつも、嬉しくなって霊夢に抱きついた。
「何?」
「いや、なんでもない」
「あ、そ」
 魔理沙は霊夢に引きずられる様にして歩きながら言った。
「霊夢、鍋しようぜ、鍋」
「桜は咲いてないみたいだけど?」
「紫ん家で良いよ。とにかく今日は鍋が食べたい。昔みたいに闇鍋しようぜ」
「良いけど。また昔みたいにお腹壊すのは嫌だからね」
「永琳に頼んで薬もらっておけば良いじゃん」
「壊す前提? 後、重いんだけど、好い加減離れてくれない?」
「やだ、お腹痛いから」
「おーもーい!」
 そうやって二人は山の中を歩き、しばらくして魔理沙の箒に乗って空を飛んで下山した。麓には永琳達が集っていて、魔理沙を見るなり記憶が飛んでいないかしつこく確認を繰り返してきた。
 話に拠ると、霊夢の偽者はみんな消えたそうで、異変は解決したらしい。だから魔理沙の記憶が無くなったんじゃないかと心配していたのだとか。
 とりあえず事件が解決した事を伝え、騒がせた事を謝罪すると、それで解散になった。
 まだ多くの者は霊夢の事を許しては居ないだろうと永琳が帰り際残念そうに言っていたのを、謝っときゃ良いんでしょと霊夢が笑い飛ばしたので、驚き半分嬉しさ半分の表情で永琳は去って行った。
 魔理沙と霊夢は紫の家に戻り、事の次第を報告した。紫はそれを聞くと嬉しそうにして民心の慰撫は任せてと言った。何か企んでいそうだったけれど、面倒事を引き受けてくれるならそれに越した事はない。
 ついでに今日は鍋が良いと頼んでみると、藍に言いなさいと承諾してくれた。更に闇鍋が良いと言うと、分かった分かったと紫は笑った。
 魔理沙と霊夢が夕飯を楽しみにしながら部屋を出る。
 二人の姿が消えた瞬間、紫はにんまりとした昏い笑顔を浮かべた。
「これで解決したと思っているんだから可愛いものよね」
 事態は全く解決していない。一時的な収束を見せただけだ。これからも魔理沙の理想と現実がずれればそれは即ち幻想郷に異変を起こす。霊夢が魔理沙の理想にずっと耐え続けられるとは思えないし、魔理沙の理想が霊夢だけにとどまっているとも思えない。そうして一度理想が現実を越え、認識が現実を凌駕すれば、後は一瞬だ。
「いずれは価値観の崩壊が来る。噂と現実の区別が消えた私達妖怪にとっての住みよい世界がやって来る。私の育てたあの二人が、いずれそれを作り出す」
「ふーん、結局あんたが黒幕な訳?」
 紫が驚いて隣を見ると、霊夢が澄ました顔で座っていた。紫の驚いている顔を見て霊夢はにやりと笑う。
「偽者よ、私。きっとね。もしかして収束したと思ってた? 少なくとも暫くは霊夢の偽者は出ないって思ってた? だとしたら可愛いものよね」
 遠くからは霊夢と魔理沙と藍が何か言い合いをしている楽しげが声が聞こえてくる。
 それに比べて、霊夢と紫の居る部屋は酷く重苦しい沈黙が流れている。
「さて、私は博麗の巫女としてあなたを処理するけれど、何か言い残す事はある?」
「どうしてあなたがここに? 一体誰の理想が」
「さあ? 私には分からないけれど、でもさっきのあんたの発言を聞いた人からすれば、あんたを倒したいって願って、その願望が具現化してもおかしくないんじゃない? あなたは理想と現実の溝がとか小難しい事を言ってたけど、願望が形になっただけの様な気がするのよね、今回の事件。ほらヒーローってそういう物でしょ? 私は自分がヒーローだと思うのよ。妖怪をぶっ倒す。異変を解決する。分かりやすい主人公。ちょっとやりすぎるのが玉に瑕。今回は私が一杯現れて、やりすぎるところが目についたみたいだけど」
「ぐだぐだと。そんな事を聞いてるんじゃない! 私が聞いてるのは、願望だろうと何だろうとあなたが誰によって生み出されたのかって事よ」
「さあ? だから私には分からないってさっき言わなかった? それに一杯居るんじゃない? 少なくとも百人以上。だってさっきのあんたの発言ほんとに最悪で、あれを聞いたら誰だって」
「あの独り言を一体誰が」
「随分とヒントを出した気がするけれど、もう一つ言い重ねるなら、幻想郷の時間は不可逆なんかじゃないって事かしら。まあ、気づかないまま死ぬものそれはそれで乙なんじゃない?」
 霊夢はくつくつと笑って、紫を見つめた。
「それじゃあ、遺言はもう十分かしら?」

 その時障子が開いた。
 紫は部屋の中を見回して、不思議そうに首をかしげる。
「あれ? 何だか話し声が聞こえたのに。藍? 居るんじゃないの?」
 遠くから、魔理沙と霊夢と藍の楽しげな言い合いが聞こえてくる。
 それを聞いた紫が嬉しそうに笑った。
「何だ。霊夢と魔理沙も帰ってきたんじゃない。異変を解決したならまず私に報告しなさいっての」
 紫は独り言ちながら、襖を閉めて、台所へと向かった。
 誰も居なくなった部屋は森閑と静まって障子から漏れる月明かりに照らされた闇が薄っすらと漂っている。

 私は巨大な教会の一席に座って、早苗と神奈子と諏訪子の愛の誓いとリング交換に拍手を浴びせた。早苗は嬉しそうに笑って、アイドル気取りで皆に手を振っている。
 結局早苗の勘違いという事で、話は落ち着いたらしい。あくまで神との結婚は形式上のもので、勿論制約はあるけれども、他の異性との結婚を禁ずる訳ではないとか。確かに今しがた語っていた牧師の言葉を聞く限り、他との婚姻をはっきりと禁ずる言葉は出てこない。それはそれでどうなのかと疑問に思わなくはないけれど、早苗達が幸せにしているならそれで良いだろうと思った。吉日を逃したとかで一ヶ月先延ばしになった結婚式だけれど、準備に時間が出来たおかげでより大々的に、より派手に、早苗としては嬉しい限りの様だ。
 どうでも良いけど、右隣に座っている妖夢がそのもう一つ先に座っている幽々子にこの結婚式のブーケを受け取る様に懇願しているのが気になる。よっぽど幽々子に結婚してもらいたい様だ。まあ、そりゃあ、幽々子が結婚するまでは結婚しないと宣言してしまった以上、さっさと幽々子に結婚してもらいたいだろうけど。とはいえ、正直なところブーケを受け取るのは困難だろうと思っている。競争の激しい中で当の幽々子は面倒そうな生返事。その上、幻想郷最速な種族の方方が沢山列席しているこの結婚式でブーケを受け取るのは、ライバルを皆殺しにする位の気概が無くちゃ無理だろう。妖夢もそれが分かっているのか、結婚式中であるにもかかわらず楼観剣の手入れを怠っていないのが少し怖い。
 左隣に座っている霊夢は最近随分と性格が明るくなって、というか攻撃的になって、鍛錬と称して、紅魔館を襲ったり、命蓮寺に睨まれて戦ったり、輝夜と妹紅の戦いに首を突っ込んだり、何故かライバル心を抱いてきたこころと戦ったり、私と夕飯を掛けて戦ったりと、と八面六臂の喧嘩売りっぷりを発揮している。どうやら少しずつ昔の勘を取り戻してきた様で、私も最近は少し押され始めた。良く言えば外向的になって、戦うといってもじゃれる程度なのでむしろ歓迎され、霊夢の交友関係はどんどんと広がっている。学校に顔を出す機会が減りだして、生徒達からは文句が出ているけれど、少なくとも霊夢にとっては良い事だろうと思った。
「何?」
 私の視線に気がついて、霊夢が口を尖らせた。
「いや、何でも」
「そう言えば、早苗がハネムーンで月に行くって言ってたじゃない?」
「ああ、物凄く得意気な顔して言ってたな。その上、笑わなかったら、笑い所の説明までしてきやがったな」
「まあ、それは良いんだけど、それに合わせて私達も月に行かない?」
「何で?」
「何でって忘れたの? あの綿月姉妹を倒さないと」
「ああ、まだ言うんだそれ」
「当たり前でしょ?」
「良いけど。新婚旅行についていくのは流石に悪いだろ」
「そうかなぁ」
「そうだよ」
 全員が起立し始めた。私も立ち上がって賛美歌を歌い、それが終わると花嫁達がヴァージンロードを歩いて行く。そうして式が終わると、皆が外へと移動しだした。妖夢が楼観剣を鞘に収めてぶつぶつ呟いているのが妙に怖い。
 外に出ると、写真撮影が行われた。参加者全員を撮ろうとするので入りきらないらしく、何度も並び直して写真を取った。
 そうして遂にブーケトスの時間となり、周囲が俄に色めき立ち、男性陣は周囲へ退避し始めた。だが何か違和感がある。想像していたブーケトスと何だかイメージが違っていた。具体的には、皆が手に手に武器を取り、物凄い凶相で辺りを睨み回している。まるで今から殺し合いでもする様な雰囲気だった。
「魔理沙、最初は私達手を組みましょう?」
「え?」
「最後の二人になるまでは手を組もうって言ってるの」
「え? ごめん。ちょっと聞きたいんだけど、これから行われるのはブーケトスだよな?」
「そうよ。皆で戦い合って、最後に残った一人がブーケという名の次に結婚できるジンクスを受け取れる、あのブーケトスよ」
「え? そんなんだったっけ?」
「あ、始まるわ」
 カウントダウンが始まり、全員の殺気が一気に盛り上がっていく。最後まで残る様に必死で戦えば逆に婚期を逃しそうだなぁと思いながら辺りを見回してみると、皆皆凄まじい形相で辺りを威嚇し、妖夢は形容出来ない程の殺る気のある表情をしているわ、紫やら永琳やらの年齢層の高い者達が参加しているわ、何故かウェディングドレス姿の早苗が参加しているわで、とにかく酷い有様だった。
「なあ、霊夢。私辞退して良いかな」
「さあ行くわよ、魔理沙! 最初が肝心だからね!」
 霊夢に袖を引っ張られ、仕方なく魔理沙もミニ八卦炉を構える。
 カウントがゼロになり、そこから後世の幻想郷に語り伝えられる女達の戦いが始まった。
あなたの見ている霊夢は本物ですか?
烏口泣鳴
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コメント



0.310簡易評価
1.無評価名前が無い程度の能力削除
紫を異変の黒幕と見た霊夢のくだりが中途半端に終わってますが?どう結論づけるのかまとめられなかったのですか?

そもそも早苗の結婚話も最後に関連付けて出てくるみたいですが、全くいらんでしょ?必要性が全く感じられませんよ。

評価以前の作品ですわ。
2.30名前が無い程度の能力削除
あ、ありのままに今起こったことを話すぜ!
早苗の結婚騒動かと思っていたらいつの間にか霊夢分裂異変になっていた。
な、何を言っているのかわからねーと思うが(略
5.40名前が無い程度の能力削除
実は霊夢だけでなく紫も増えてた、ということか?
6.90名前が無い程度の能力削除
綿月姉妹の始末にこだわる好戦的な霊夢も腹黒い野心のない紫も誰かの理想ってことですかね?
それどころか守矢の二柱も早苗にとって、普通の結婚を邪魔しない理想の二柱に入れ替わってるとか?
ホラータグ必要かもしれませんねw
7.100名前が無い程度の能力削除
ああ、成る程 貴方のシリーズのキャラが時々グロテスクな言動をするのは皆色んな願望をせよって分身してたからなんですね
あとは何故、分身が本人に見えないかと分身にあがなえ無いかですね

いや、始めは理不尽ナンセンスだと思っていましたが
こういう理不尽ホラーナンセンス的なものを、解決するような話は中々面白くて好きです
次回も楽しみにしています
8.無評価名前が無い程度の能力削除
結局ハッピーエンドなのかなんなのかわからんが……。兎に角理想と現実の溝なんて何処にでもあるからいつ誰が増えてもおかしくないってことじゃネーノ?
10.50名前が無い程度の能力削除
もしかして最後の紫と霊夢は読者の理想が生み出した理想の“妖怪の賢者”と“博麗の巫女”だったということか……?

今回の話、早苗の結婚話は結婚話でひとつ、霊夢分裂異変は霊夢分裂異変でひとつの話に纏めた方がスッキリして良かったかもしれないと思いました
二つの話を無理矢理溶接したような感じがしてやや不自然だったです
13.70名前が無い程度の能力削除
着目点、転がし方も興味深い
悪くはない、ただもう少し洗練されればもっといい
全てが分かる必要はないというのは面白い
もう少し楽しい不明になれば、よりいっそう楽しいかと
14.603削除
今までの気だるい感じの結婚出来ない霊夢さんの話はどこに行ってしまったのですか?
それを抜きにしても内容があまりに超展開でついていくのがやっとでした。
15.50絶望を司る程度の能力削除
狂ってる。そう、なにもかもが。
16.70名前が無い程度の能力削除
つまり…あとがきこそが至言であるということか…
21.100名前が無い程度の能力削除
私たちが思い描いた数だけ、キャラクターが存在する。
二次創作が盛んな、東方ならではのお話だと感じました。
存在にノイズがかかっているようで、とても面白かったです。
22.20名前が無い程度の能力削除
ここまで駆け足だと流石に訳判りません。
どうやら作者さんは書き方にムラが有り過ぎる。
丁寧さを感じる作品も有るだけに残念。数をこなす事自体は良い事ですけど。