「ねえ霊夢?」
「……なによ紫、いきなりスキマから現れて。
びっくりするじゃない。」
ここは幻想郷。
忘れ去られたモノたちが集まる、夢の楽園。
そんな幻のような世界は大きな結界で包まれており、外界からは認識できないようになっている。
その結界を維持する仕事をしているのが、私、八雲紫と目の前の彼女、博麗霊夢である。
今日私が博麗神社に訪れたのは、その大結界について、霊夢に訊きたいことがあったからだ。
「霊夢……、あなた、結界に何かしてない?
この頃結界の芯の部分が不安定なのよ。」
「………さあ。
私は何も知らないわ。
原因は他の何かじゃない?」
「でもねぇ、あなたも知っての通り、博麗大結界の芯の部分って簡単には干渉できない部分なのよ?
それこそ、私か霊夢くらいしか。」
「じゃあ、紫が原因なんじゃないの?」
「………。」
霊夢が原因だったにせよ、他の何かだったにせよ、このままだと結界に大きなヒビが入ってしまうことに間違いはない。
そうなってしまえば、この幻想郷は文字通り「おしまい」になってしまう。
「霊夢、私と一緒に結界の中心部に来てくれない?
あなたが一緒なら、或いは何かわかるかもしれないわ。」
「めんどくさいけど……、行かなきゃヤバいわよね、それは。」
霊夢が気だるそうにゆっくりと立ち上がる。
「さっさと行きましょ?
私今日、ウチで宴会開くって皆に言っちゃったのよね。」
「あらあら、じゃあ急がないといけませんわね。
あ、霊夢、いつものアレ、用意しといてね?」
「紫はまだ招待してないんだけど……。
ま、いいわ。
どうせ宴会始めたら来るだろうと思ってたし。」
「楽しみだわ~、霊夢の作った梅干し。
何度食べても、あれだけは飽きないのよねぇ。」
スキマを操る大妖怪は、楽しそうに言いながら空間に「スキマ」を開ける………。
一一一一一一一一
「おーい、霊夢ー!
宴会用に酒持ってきたぞー……、って、あれ?」
霊夢は今は神社にいないのか?
そう思いながら、霧雨魔理沙は辺りをキョロキョロと見回す。
すると、空から誰かが降りてくるのが見えた。
「あやっ?
確実に一番乗りだと思ってたんですが、魔理沙さんがお先にいましたかー。」
「おう文。
また新聞の記事集めか?」
「そりゃもちろん!
面白い記事を書くためなら、たとえ火の中水の中……、あ、これ今日の新聞です。」
「ん、どれどれ……。
おっ、「大妖怪の式、病に倒れる!」「原因は大結界?」……。
これ本当か?」
「ええ本当ですとも。
確かな筋の情報ですよ。」
大結界にそんなことが起きてたなんて。
だが、霊夢がそれで悩んでる様子はあまりなかったように感じたのだが……。
もしかすると、霊夢が今いないのはこの結界の件のせいなのかもしれない。
それにしても、驚いたのは天狗の新聞だ。
いつもはだいたいどうでもいいことで埋め尽くされている天狗の新聞だが、今回は結界の記事で半分が埋まっている。
文も、自分でも出来に満足しているのだろうか、私が驚いているのを見てなんだか嬉しそうにしている。
「なるほどなぁ。
でも、霊夢んとこの宴会で何を記事にするつもりだ?
また、「博麗神社で大宴会!」「酔って潰れる博麗の巫女!」とか書くのか?」
「それはネタがとれなかったときの最終手段ですよ。
今日は何かが起きそうな気がするんです。
烏天狗の勘ですよ。」
「でも、お前が書いた宴会の記事、そういう見出ししか見たことないぜ……。」
それはつまり、博麗神社の宴会に来ていいネタを見つけたことがないと言っていることになってしまうわけだが……。
「……あら、もう二人も来てたのね。」
「相変わらず気が早いわね。」
魔理沙が振り替えると、ちょうどスキマから霊夢と紫が出てきたところだった。
「おう霊夢、結界大丈夫なのか?
文の新聞に載ってたぜ。」
「へー、天狗もたまにはまともな記事書くのね。」
「ちょっとちょっと!!
お二人とも揃ってなんですか!
それだとまるで私の書いてる新聞がまともじゃないみたいじゃないですか!」
そんなことを話していると、向こうから幾つかの声が聞こえてきた。
「霊夢、来てあげたわよ。
ちゃんと私の口に合うものを用意してあるんでしょうね?」
「アハハッ、霊夢ー!!」
「ちょっ、お待ちください妹様!」
「紅魔館の連中も来たみたいだぜ。」
「仕方ないわねー……。
ちょっと早いけど始めるか。」
「いよっ、待ってましたー!」
一一一一一一一一
人間や妖怪、妖精、いろんな者が集まるそれは、まさに大宴会という光景だった。
そんな中霊夢は、神社の縁側で紫と二人でちびちびと酒を飲んでいた。
「結局、結界が不安定になってた理由はわからなかったわね。」
「まあ、別にいいんじゃない?
魔方陣もどこも乱れてなかったし、きっと一時的なものよ。」
「だといいのだけれど。」
「なぁに?
二人だけで、こんなところで何を話しているの?」
「あら幽々子、来てたのね。」
いきなり幽霊のように背後に現れた彼女は、亡霊の集まる館「白玉楼」の主、西行寺幽々子だ。
ちなみに私は彼女も宴会に呼んだ覚えはないんだが、まあ、そんなのはいつものことだ。
「………ふーん、大結界がねぇ。」
「それで色々大変なのよ。
蘭は倒れちゃうし、今は私が食事を作らなきゃいけないときもあるのよ?
あ、霊夢、お酒いる?」
「あー、いいわ。
いらない。
それより幽々子の方はどうなの?
亡霊が増えすぎてたり、減りすぎてたり、要するに、何か変化はない?」
「うーん、うちに思い当たることはないわねぇ。
まあ、もしかしたらってこともあるし、帰ったら調べてみるわ。」
「ありがと、幽々子。」
「おーい、霊夢ぅ!!
こっち来いよぉ!!」
「はいはい、今行くわー。」
と言って、霊夢は外に出ていく。
「まったく、この世界のことを気にしてるんだかしてないんだか……。」
「あの子はあの子なりに心配してるわよ。
ああいう性格だから、顔に出さないだけ。」
「霊夢がああいうのだから、私たちも安心するんだけどね。」
「さて、私もそろそろ帰るとするわ。
梅干しももらったし。」
紫が立ち上がろうとすると、
「待って紫。」
と言って幽々子がそれを引き留める。
「……なに、幽々子?」
「霊夢のことだけど………。」
「霊夢?
霊夢がどうかして?」
「あの子、もう死ぬわよ。」
「………え?」
瞬間、瞬きするほどの一瞬だが、私には永遠にさえ感じられた。
霊夢が、死ぬ?
普通なら、そう、他の誰かが発した言葉なら、こんなに動揺はしなかっただろう。
だが、その言葉を発したのは「死を操ることができる」西行寺幽々子だ。
「……どういう、ことなの?」
「言葉の通りよ。
今の博麗霊夢には、死線が見える。
しかも、かなりはっきりと。」
「今の……?」
「ええ。
もっと前から見えてれば、真っ先に紫に伝えていたわ。」
「そんな………。」
あの霊夢が、死ぬ……!?
大結界が不安定になっていたのも、そのせいなのだろうか。
何故、何故私に何も言ってくれなかったの霊夢!?
そして、何故私はそれに気づけなかったの!?
「紫、落ち着いて。
気持ちはわかるけど、早まっちゃだめよ。
霊夢だって、自分の死には気づいてるはず。
何か、理由があって黙ってるのよ。」
「……ッ!!
………どうすれば、いいの?」
「……あなたも、わかってるんでしょう?」
「………。」
簡単だ。
「今」の博麗の巫女が死ぬとなれば、「新たな」博麗の巫女を連れてくればよい。
だけど………!!
「紫、あなたが今の代の博麗霊夢に特別な拘りを持っているのは知ってるわ。
でも、これはやらなきゃならないことよ。」
「わかってる、わかってるわ………。」
でも、どうしろっていうの?
なんで、そんな大事なことを隠していたの?
私はいったい、どうすればいいの?
「……なによ紫、いきなりスキマから現れて。
びっくりするじゃない。」
ここは幻想郷。
忘れ去られたモノたちが集まる、夢の楽園。
そんな幻のような世界は大きな結界で包まれており、外界からは認識できないようになっている。
その結界を維持する仕事をしているのが、私、八雲紫と目の前の彼女、博麗霊夢である。
今日私が博麗神社に訪れたのは、その大結界について、霊夢に訊きたいことがあったからだ。
「霊夢……、あなた、結界に何かしてない?
この頃結界の芯の部分が不安定なのよ。」
「………さあ。
私は何も知らないわ。
原因は他の何かじゃない?」
「でもねぇ、あなたも知っての通り、博麗大結界の芯の部分って簡単には干渉できない部分なのよ?
それこそ、私か霊夢くらいしか。」
「じゃあ、紫が原因なんじゃないの?」
「………。」
霊夢が原因だったにせよ、他の何かだったにせよ、このままだと結界に大きなヒビが入ってしまうことに間違いはない。
そうなってしまえば、この幻想郷は文字通り「おしまい」になってしまう。
「霊夢、私と一緒に結界の中心部に来てくれない?
あなたが一緒なら、或いは何かわかるかもしれないわ。」
「めんどくさいけど……、行かなきゃヤバいわよね、それは。」
霊夢が気だるそうにゆっくりと立ち上がる。
「さっさと行きましょ?
私今日、ウチで宴会開くって皆に言っちゃったのよね。」
「あらあら、じゃあ急がないといけませんわね。
あ、霊夢、いつものアレ、用意しといてね?」
「紫はまだ招待してないんだけど……。
ま、いいわ。
どうせ宴会始めたら来るだろうと思ってたし。」
「楽しみだわ~、霊夢の作った梅干し。
何度食べても、あれだけは飽きないのよねぇ。」
スキマを操る大妖怪は、楽しそうに言いながら空間に「スキマ」を開ける………。
一一一一一一一一
「おーい、霊夢ー!
宴会用に酒持ってきたぞー……、って、あれ?」
霊夢は今は神社にいないのか?
そう思いながら、霧雨魔理沙は辺りをキョロキョロと見回す。
すると、空から誰かが降りてくるのが見えた。
「あやっ?
確実に一番乗りだと思ってたんですが、魔理沙さんがお先にいましたかー。」
「おう文。
また新聞の記事集めか?」
「そりゃもちろん!
面白い記事を書くためなら、たとえ火の中水の中……、あ、これ今日の新聞です。」
「ん、どれどれ……。
おっ、「大妖怪の式、病に倒れる!」「原因は大結界?」……。
これ本当か?」
「ええ本当ですとも。
確かな筋の情報ですよ。」
大結界にそんなことが起きてたなんて。
だが、霊夢がそれで悩んでる様子はあまりなかったように感じたのだが……。
もしかすると、霊夢が今いないのはこの結界の件のせいなのかもしれない。
それにしても、驚いたのは天狗の新聞だ。
いつもはだいたいどうでもいいことで埋め尽くされている天狗の新聞だが、今回は結界の記事で半分が埋まっている。
文も、自分でも出来に満足しているのだろうか、私が驚いているのを見てなんだか嬉しそうにしている。
「なるほどなぁ。
でも、霊夢んとこの宴会で何を記事にするつもりだ?
また、「博麗神社で大宴会!」「酔って潰れる博麗の巫女!」とか書くのか?」
「それはネタがとれなかったときの最終手段ですよ。
今日は何かが起きそうな気がするんです。
烏天狗の勘ですよ。」
「でも、お前が書いた宴会の記事、そういう見出ししか見たことないぜ……。」
それはつまり、博麗神社の宴会に来ていいネタを見つけたことがないと言っていることになってしまうわけだが……。
「……あら、もう二人も来てたのね。」
「相変わらず気が早いわね。」
魔理沙が振り替えると、ちょうどスキマから霊夢と紫が出てきたところだった。
「おう霊夢、結界大丈夫なのか?
文の新聞に載ってたぜ。」
「へー、天狗もたまにはまともな記事書くのね。」
「ちょっとちょっと!!
お二人とも揃ってなんですか!
それだとまるで私の書いてる新聞がまともじゃないみたいじゃないですか!」
そんなことを話していると、向こうから幾つかの声が聞こえてきた。
「霊夢、来てあげたわよ。
ちゃんと私の口に合うものを用意してあるんでしょうね?」
「アハハッ、霊夢ー!!」
「ちょっ、お待ちください妹様!」
「紅魔館の連中も来たみたいだぜ。」
「仕方ないわねー……。
ちょっと早いけど始めるか。」
「いよっ、待ってましたー!」
一一一一一一一一
人間や妖怪、妖精、いろんな者が集まるそれは、まさに大宴会という光景だった。
そんな中霊夢は、神社の縁側で紫と二人でちびちびと酒を飲んでいた。
「結局、結界が不安定になってた理由はわからなかったわね。」
「まあ、別にいいんじゃない?
魔方陣もどこも乱れてなかったし、きっと一時的なものよ。」
「だといいのだけれど。」
「なぁに?
二人だけで、こんなところで何を話しているの?」
「あら幽々子、来てたのね。」
いきなり幽霊のように背後に現れた彼女は、亡霊の集まる館「白玉楼」の主、西行寺幽々子だ。
ちなみに私は彼女も宴会に呼んだ覚えはないんだが、まあ、そんなのはいつものことだ。
「………ふーん、大結界がねぇ。」
「それで色々大変なのよ。
蘭は倒れちゃうし、今は私が食事を作らなきゃいけないときもあるのよ?
あ、霊夢、お酒いる?」
「あー、いいわ。
いらない。
それより幽々子の方はどうなの?
亡霊が増えすぎてたり、減りすぎてたり、要するに、何か変化はない?」
「うーん、うちに思い当たることはないわねぇ。
まあ、もしかしたらってこともあるし、帰ったら調べてみるわ。」
「ありがと、幽々子。」
「おーい、霊夢ぅ!!
こっち来いよぉ!!」
「はいはい、今行くわー。」
と言って、霊夢は外に出ていく。
「まったく、この世界のことを気にしてるんだかしてないんだか……。」
「あの子はあの子なりに心配してるわよ。
ああいう性格だから、顔に出さないだけ。」
「霊夢がああいうのだから、私たちも安心するんだけどね。」
「さて、私もそろそろ帰るとするわ。
梅干しももらったし。」
紫が立ち上がろうとすると、
「待って紫。」
と言って幽々子がそれを引き留める。
「……なに、幽々子?」
「霊夢のことだけど………。」
「霊夢?
霊夢がどうかして?」
「あの子、もう死ぬわよ。」
「………え?」
瞬間、瞬きするほどの一瞬だが、私には永遠にさえ感じられた。
霊夢が、死ぬ?
普通なら、そう、他の誰かが発した言葉なら、こんなに動揺はしなかっただろう。
だが、その言葉を発したのは「死を操ることができる」西行寺幽々子だ。
「……どういう、ことなの?」
「言葉の通りよ。
今の博麗霊夢には、死線が見える。
しかも、かなりはっきりと。」
「今の……?」
「ええ。
もっと前から見えてれば、真っ先に紫に伝えていたわ。」
「そんな………。」
あの霊夢が、死ぬ……!?
大結界が不安定になっていたのも、そのせいなのだろうか。
何故、何故私に何も言ってくれなかったの霊夢!?
そして、何故私はそれに気づけなかったの!?
「紫、落ち着いて。
気持ちはわかるけど、早まっちゃだめよ。
霊夢だって、自分の死には気づいてるはず。
何か、理由があって黙ってるのよ。」
「……ッ!!
………どうすれば、いいの?」
「……あなたも、わかってるんでしょう?」
「………。」
簡単だ。
「今」の博麗の巫女が死ぬとなれば、「新たな」博麗の巫女を連れてくればよい。
だけど………!!
「紫、あなたが今の代の博麗霊夢に特別な拘りを持っているのは知ってるわ。
でも、これはやらなきゃならないことよ。」
「わかってる、わかってるわ………。」
でも、どうしろっていうの?
なんで、そんな大事なことを隠していたの?
私はいったい、どうすればいいの?
個人的には好きですね。
けど紫はどっちかというとそれはこの世の理、として「流れ」に干渉しない性格だと思うんですけど。
あくまで妖怪の賢者としての紫のことなんですけど。
非常に続きが気になりますので、是非とも続編を期待します(百合話であることもちょっぴり期待してますけど)。
楽しみにしてます。
あと、紫の式神の名前は「蘭」ではなく「藍」です。
長文失礼いたしました
2.文章やセリフを自然にそれらしく書くのって大変ですよね。
3.それから、他者の評価に晒されることを恐れて予防線を張る行為は見苦しいので、自意識を捨ててプライドを持つと良いでしょう。