注意
二次設定がある可能性があります。
それでもいいと言う方だけ下にスクロールして下さい。
心地良い、涼しい夜風が頬をくすぐる。
湖の上を飛んでいるのだから尚更だ。
先程まで魔理沙は、紅魔館の図書館で本を読んでいた所、つい寝てしまい、司書の小悪魔に起こされた時には結構遅い時間になっていた。
さすがに長居しすぎたので、少し眠そうなパチュリーに別れを告げ、今に至る。
ふぅ、と息を吐く。
夜空を見上げると、綺麗な月が、優しく光っていた。
こんな夜は苦手だ。
別に怖いわけじゃない。
不気味とも感じられない。
ただ、思い出してしまうのだ。
私に魔法を教えてくれたあの人を。
親から勘当された私を実の娘同然に可愛がり、愛してくれたあの人を。
「魅魔様…」
ああ、ダメだ、呟くな。
そうしたら、またあの寂しさを思い出してしまう。
私は左右に頭を振ると、湧き上がってくる寂しさから逃れるように家に向かって速度を上げた。
「…ただいま」
ドアの鍵を開け、中に入る。
返事は無い、それは当たり前だ。
私が師と呼んだ人はもういないのだから。
ある日を境に、私を愛してくれた人は忽然と姿を消した。
何処を探しても、知り合いを虱潰しに訊ねても、わからなかった。
確か、その日は一日中泣いていたっけ。
涙が枯れる程泣いたっけな。
今となってはもう大丈夫だけど、慣れない一人ぼっちの夜はとても怖かったな・・・。
そんな事を思い出しながら、私はしばらく玄関に立ち尽くしていたが、やがてゆっくりした動きで履いていたブーツを脱いだ。
被っていた帽子を取り、ベッドの傍のテーブルに置く。
窓から差し込む月明かりが帽子を照らしだし、少し白みがかっている様に見えた。
ため息をつく。
夕食を食べる気にもなれない。
今日はシャワーを浴びてすぐ寝てしまおう。
私はゆっくりとした足取りで浴室へと向かった。
シャワーを浴びれば少しは気分が晴れると思ったが、一向に晴れない。
むしろさっきよりも寂しさが増している気がする。
ベッドに潜り込み、布団に包まっていても、全く眠れる気がしない。
ああ、ダメだダメだ、全然大丈夫では無いではないか。
いつの間にか、胸の中は寂しさでいっぱいになっていた。油断すれば、その金の瞳から溢れ出てしまう程に。
たまらず魔理沙はベッドから抜け出し、おぼつかない足取りでクローゼットに向かい、扉を開け、その中から青い生地に月の刺繍がしてある三角帽子を取り出した。
それは彼女の師、魅魔が、いつも被っていた帽子だった。
魅魔はこの帽子を一つ残し、姿を消したのだ。
魔理沙は、帽子を自身の顔に近づけ、思いっきり息を吸い込んだ。
帽子に染み付いた彼女の師の匂いが、肺を満たしていく。
すると魔理沙は、段々安らかな気持ちに包まれていった。
寂しさで押しつぶされそうになった時、魔理沙はいつもこの方法で寂しさを紛らわしていたのだ。
やがて、魔理沙は安らかな気持ちになったと同時に、眠気を感じた。
持っていた帽子を月明かりに照らされ、白みがかっている自身の帽子の隣に置く。
ベッドに潜り込み眼を閉じる。
あの日から今日に至るまで、何度も何度もこれを繰り返してきた。
一体、いつになったら慣れるのだろうか。
いっそのこと、忘れてしまえば楽になれるのかもしれない。
だが私は、それをすることは決して無いだろう。
いつか、いつか戻ってくる
何の前触れも無く、ひょっこり帰ってくる
そして悪戯っぽい笑みを私に向け、私もまた、同じように笑う
そんな希望を持って、この月夜を過ごそう
そして、あなたが帰ってきた時に満面の笑みで迎えられるように
この月夜の間だけ、ひとり、泣こう
やがて彼女は泣き疲れ、先程から感じていた眠気が強まっていくのを感じた。
次起きる時、私はいつもの霧雨魔理沙だ。
この幻想郷を飛び回る、普通の魔法使いだ。
さぁ、早めに寝てしまおう。
一刻も早く、いつもの私に戻れるように。
意識が完全に薄れる前に彼女は呟いた。
「おやすみなさい、魅魔様…」
「ふふ、なんだい、ちょっと見ないうちに随分強くなったじゃないか。」
いつの間に現れたのか、青い魔道士のローブを着た足の無い霊が、ベッドで寝ている魔理沙を覗き込みながら呟いた。
「さて、起きた時にどんな反応を見せてくれるのか、見ものだね。」
その霊はそんな事を言いながらニヤニヤと笑うと、ベッドで眠る愛弟子が起きるまで、ずっとその寝顔を見守り続けていた。
二次設定がある可能性があります。
それでもいいと言う方だけ下にスクロールして下さい。
心地良い、涼しい夜風が頬をくすぐる。
湖の上を飛んでいるのだから尚更だ。
先程まで魔理沙は、紅魔館の図書館で本を読んでいた所、つい寝てしまい、司書の小悪魔に起こされた時には結構遅い時間になっていた。
さすがに長居しすぎたので、少し眠そうなパチュリーに別れを告げ、今に至る。
ふぅ、と息を吐く。
夜空を見上げると、綺麗な月が、優しく光っていた。
こんな夜は苦手だ。
別に怖いわけじゃない。
不気味とも感じられない。
ただ、思い出してしまうのだ。
私に魔法を教えてくれたあの人を。
親から勘当された私を実の娘同然に可愛がり、愛してくれたあの人を。
「魅魔様…」
ああ、ダメだ、呟くな。
そうしたら、またあの寂しさを思い出してしまう。
私は左右に頭を振ると、湧き上がってくる寂しさから逃れるように家に向かって速度を上げた。
「…ただいま」
ドアの鍵を開け、中に入る。
返事は無い、それは当たり前だ。
私が師と呼んだ人はもういないのだから。
ある日を境に、私を愛してくれた人は忽然と姿を消した。
何処を探しても、知り合いを虱潰しに訊ねても、わからなかった。
確か、その日は一日中泣いていたっけ。
涙が枯れる程泣いたっけな。
今となってはもう大丈夫だけど、慣れない一人ぼっちの夜はとても怖かったな・・・。
そんな事を思い出しながら、私はしばらく玄関に立ち尽くしていたが、やがてゆっくりした動きで履いていたブーツを脱いだ。
被っていた帽子を取り、ベッドの傍のテーブルに置く。
窓から差し込む月明かりが帽子を照らしだし、少し白みがかっている様に見えた。
ため息をつく。
夕食を食べる気にもなれない。
今日はシャワーを浴びてすぐ寝てしまおう。
私はゆっくりとした足取りで浴室へと向かった。
シャワーを浴びれば少しは気分が晴れると思ったが、一向に晴れない。
むしろさっきよりも寂しさが増している気がする。
ベッドに潜り込み、布団に包まっていても、全く眠れる気がしない。
ああ、ダメだダメだ、全然大丈夫では無いではないか。
いつの間にか、胸の中は寂しさでいっぱいになっていた。油断すれば、その金の瞳から溢れ出てしまう程に。
たまらず魔理沙はベッドから抜け出し、おぼつかない足取りでクローゼットに向かい、扉を開け、その中から青い生地に月の刺繍がしてある三角帽子を取り出した。
それは彼女の師、魅魔が、いつも被っていた帽子だった。
魅魔はこの帽子を一つ残し、姿を消したのだ。
魔理沙は、帽子を自身の顔に近づけ、思いっきり息を吸い込んだ。
帽子に染み付いた彼女の師の匂いが、肺を満たしていく。
すると魔理沙は、段々安らかな気持ちに包まれていった。
寂しさで押しつぶされそうになった時、魔理沙はいつもこの方法で寂しさを紛らわしていたのだ。
やがて、魔理沙は安らかな気持ちになったと同時に、眠気を感じた。
持っていた帽子を月明かりに照らされ、白みがかっている自身の帽子の隣に置く。
ベッドに潜り込み眼を閉じる。
あの日から今日に至るまで、何度も何度もこれを繰り返してきた。
一体、いつになったら慣れるのだろうか。
いっそのこと、忘れてしまえば楽になれるのかもしれない。
だが私は、それをすることは決して無いだろう。
いつか、いつか戻ってくる
何の前触れも無く、ひょっこり帰ってくる
そして悪戯っぽい笑みを私に向け、私もまた、同じように笑う
そんな希望を持って、この月夜を過ごそう
そして、あなたが帰ってきた時に満面の笑みで迎えられるように
この月夜の間だけ、ひとり、泣こう
やがて彼女は泣き疲れ、先程から感じていた眠気が強まっていくのを感じた。
次起きる時、私はいつもの霧雨魔理沙だ。
この幻想郷を飛び回る、普通の魔法使いだ。
さぁ、早めに寝てしまおう。
一刻も早く、いつもの私に戻れるように。
意識が完全に薄れる前に彼女は呟いた。
「おやすみなさい、魅魔様…」
「ふふ、なんだい、ちょっと見ないうちに随分強くなったじゃないか。」
いつの間に現れたのか、青い魔道士のローブを着た足の無い霊が、ベッドで寝ている魔理沙を覗き込みながら呟いた。
「さて、起きた時にどんな反応を見せてくれるのか、見ものだね。」
その霊はそんな事を言いながらニヤニヤと笑うと、ベッドで眠る愛弟子が起きるまで、ずっとその寝顔を見守り続けていた。
いつか魅魔様、ゲームに再登場しないかなあ...なんて思ってます。
もうちょっと長くしてもよかったんじゃあないかと思いましたが、とても良い話でした。
これからも頑張ってください。
しい月夜の描写に、勝手にオルゴール調のリーインカーネーションが脳内再生されました。
なんか久しぶりに魅魔様モノを見た気がする
もう少しボリュームとひねりがあれば良かったかな