「ふぅ、お昼のお茶は最高ね……」
河の近くにある自宅で私、鍵山雛はお昼の紅茶を楽しんでいた。
コーヒーや緑茶の時もあるけど、今日の気分は紅茶。
美味しいクッキーも添えて……うーん、最高の気分ね。
自然と「ダバダー♪」なんて口ずさみたく……って、あれはコーヒーの歌だったわね。
ま、関係ないか。違いのわかる女ってほどでもないし。
とまぁ、そんな風にティータイムを楽しんでいると……
「ん、誰かしら?」
玄関からドンドンという扉を叩く音。
来客かしら? それとも郵便物?
「はーい、今行きまーす」
カップをテーブルに置いて、玄関へと足早に向かう。
ドアのノブをつかみ、がちゃりと回して開けると……
「えへへ、こんにちは、雛!」
「あれ、メディ? どうしたの一体?」
そこにはえへへ、と笑うメディスンの姿が。
くりくりとした可愛らしい目に、綺麗な金色の髪。そして無邪気そうな笑顔。
同じ人形(というか、もともと人形だった存在?)仲間でもあり、妹のような存在だ。
「んー、まぁ、色々あってねー」
「ま、とりあえず入ってよ。ちょうど紅茶と美味しいクッキーがあるから」
「クッキー!? わーい、食べる食べる!」
喜ぶ姿はまさに無邪気な子供そのもの。
こういうところがメディの可愛いところなのよねぇ。
「で、今日はどうしたの? 遊びに来たのかしら?」
椅子に座り、メディの分の紅茶をカップに注いで手渡す。
「ん、ありがと。いやー、それもあるんだけど、ちょっとね……」
メディはカップを受け取ると、紅茶をこくりと一口含んだ。
それからテーブルの真ん中にある大皿からクッキーを数枚掴んで口に投げ込む。
「あいふがね、いほはひふひへわはひと……」
「とりあえずそれ飲み込んでから話しなさい」
「ん、ひゃーい」
口が一杯の状態で話されると全く意味わからないわね……
ということで、彼女が口の中を片付けるまで待つ。
「ふぅ、で、何だったっけ。あ、そうそう。アリスと幽香ったらひどいのよ!」
「二人と喧嘩でもしたの?」
む、ちょっと深刻そうな気がする。一体何が……?
「二人とも『今日は手が離せないから一緒に遊べない』ですって!
上海も蓬莱も、ゴリアテもだよ!?」
「え、ちょ、そんな理由で?」
メディの言葉に苦笑してしまう。
「うん。だから雛なら私と遊んでくれるかなーって思ってさー」
「あ、あはは……」
気持ちはわからなくも無いけどさ。
ま、メディらしいといえばメディらしいかな……?
「まぁ、遊ぶといっても一緒にいてくれるだけでもいいのよ。ただ構ってくれないとさ……」
あはは、と照れ隠しのように笑うメディ。
この子はこう見えて寂しがりやだからなぁ。
「うんうん……私でいいなら今日一日付き合ってあげるわよ?」
「ほ、ほんと!? えへへ、やったぁ!」
う、やっぱりこの子可愛すぎる。
こういう無邪気な笑顔に惹かれちゃうのよねぇ。
「あ、ところで……おかわりちょーだいっ!」
「おかわり? もう無いわよ♪」
クッキーが乗っていたはずの大皿を指差して、笑顔でおかわりを要求するメディ。
私はその笑顔と同じくらいの笑顔でおかわりを拒否するのだった。
というか、いつの間に全部食べちゃってたのやら……
「はい、また私の勝ちね」
「む、むー、なんで勝てないのよ……」
「暇だからトランプでもする?」
私のそんな一言がきっかけで、私たちはティータイム後のトランプに興じていた。
ちなみに今やっていたのはババ抜き。
ほぼ運のゲームのはずなのに、メディは一回も私に勝てていない。
実はそれにはとある理由がある。
「メディったら、自分で気がつかない?」
「え、何に?」
「……あなた、顔に答えが出てるわよ?」
「えっ……」
メディの表情を見れば、勝つのなんて容易いこと。
だって、ババをこっちが取りそうになれば笑顔になるし、それ以外を取ろうとすれば残念そうな顔になるんだもん。
「こういうのはね、ポーカーフェイスを保つことが大事なのよ? あなたは表情に出すぎ」
「う、うぐ……」
「……ま、そういうところも可愛いんだけど!」
話しながらメディの後ろに回りこみ、そのままぎゅっと抱きしめる。
「う、うー……」
やっぱりメディは可愛いわ……こう、母性本能がくすぐられる感じで……
「表情豊かな子は好きよ? ま、勝負事には向いてなさそうだけど」
「そ、それ、褒められてるのかそうでないのか複雑なんだけど……」
「褒めながら否定してるかも?」
「どっちかにしてよ!?」
そんなことを叫ぶメディもとっても可愛い。
幽香とアリスがメロメロになるのも分かるわー。
「冗談よ。褒めてる褒めてる」
「う、うーん、まぁ別にいいけどさ……」
このまま頭撫でちゃえ。
なでなでなで……
「ん、撫でられるの気持ちいい……」
「そうなの? それじゃ、もっと撫でてあげる」
あらあら、気持ちよさそうにしてる。
あの二人からしょっちゅう撫でられてたせいかしら?
「ふぁー……やっぱり撫でられるの好きー」
「うふふ……」
こうしてメディを撫でるだけの簡単なお仕事をして午後の時間は過ぎ去っていくのでした。
「うーん、撫でられてたら眠くなってきちゃったよ……」
「ん、寝る?」
メディの顔を見ると、目がとろんとしていて、すぐにでも寝てしまいそうだ。
「うん、寝る……暖かくて、気持ちが良くて……んー……」
目を閉じ、完全に睡眠モードに入る。
「ふふ、おやすみ」
そんな彼女の頭を撫でながら、読みかけの本を掴むのだった。
この状況じゃ、席を離れることなんて出来ないしね。
ま、この本が読み終わる頃にはメディも起きてるでしょ。
「ふぅ、読み終わった。なかなか面白かったわね」
ようやく本を読み終わり、部屋の外を見てみると、すでに日が落ちている。
んー、本に夢中になってて全く気がつかなかったわ。
と、その時。
「うーん……ふぁあああ……」
「あ、起きた?」
メディが大きなあくびをしながら目を覚ました。
「えへへ、おはよう雛……」
「ふふっ、おはよう。寝顔、可愛かったわよ」
「も、もー、恥ずかしいよ……」
少し照れるメディ。もちろんとっても可愛い!
……と、そんなことよりも。
「さてと、メディも起きたことだし……一緒にお風呂入らない?」
メディにそんなことを聞いてみる。
一緒に入るのは久しぶりだし、今日は二人でゆっくりとつかりたい気分なのよねー。
「あ、いいよー! 昨日は入り損ねちゃったし、雛と入るのは久しぶりだしね」
「よーし、それじゃお風呂に行こっか!」
「うん!」
メディを抱きかかえて、お風呂へと向かう。
まだお風呂は沸かしてないけれど……体を洗っている間にお湯入れれば大丈夫よね。
「メディ、先に服脱いでて。私はお湯出してくるから」
「うん、わかったー」
メディを脱衣所で降ろして、先に湯船にお湯を入れることにする。
浴室に入り、湯船に蛇口を向けて栓を捻ると、熱いお湯がどばあっと噴き出した。
「あちち……これくらいかしら?」
すかさず水の栓を捻り、水温を調節する。
……んー、ちょっと熱いかな? じゃ、これくらいなら。
「ん、よし、ちょうどいいかも」
よし、丁度いいくらいの水温になったわ。
これならメディも熱がることはないはずね。
「私も服脱がなきゃね、っと。その前に服を準備しないと」
私の着替えはもちろん、メディの分の着替えも準備しないと。
メディの服はこの前洗って返し損なっていたのがちょうどあったし、それでいいか。
「ごめん、着替えを取ってくるから先に体洗っててもらえる?」
「ん、わかった!」
すでに裸になっているメディに先に入るように促してから、着替えを取りに行く。
えーっと、確かあそこのタンスの中に……
「あったあった。これと、これと……よしっ」
二人分のパジャマと下着を引っ張り出し、再度浴室へと向かう私。
脱衣所に着替えを置いて、と。
「今から行くからねー!」
メディに向けてそう叫びながら、服を脱いでいく。
この服、お気に入りだけれども脱ぐのが少し面倒なのよね。
ま、そこは我慢我慢。
下着まで脱いで……よし、完了。
「入るわよー」
そう声をかけて、浴室内へと足を踏み入れる。
すると、そこには泡まみれのメディが。
「あ、おかえりー!」
「どこまで洗った?」
見た感じは頭だけ、かしら?
「今頭を洗い終わったところー。あとは体だけだよ」
ん、予想が当たった。
ということは、背中を洗ってあげればいいわね。
「それじゃ、私が背中洗ってあげる」
「うん、ありがと! 一人じゃ背中は洗いにくいもんね!」
あまり泡に包まれていない背中に石鹸で泡立ったタオルを当て、ごしごしと拭いていく。
メディの背中は小さいから、すぐに終わっちゃうわね。
それにしてもつるつるすべすべで綺麗な肌……羨ましいわねぇ。
「メディのお肌はつるつるすべすべねぇ」
「えへへ、そうかな?」
褒められて嬉しそうな声を漏らすメディ。
「さ、こっちは終わったわよ」
「ありがとね。こっちも終わったよ」
名残惜しいけど、背中からタオルを離して終わったことを告げる。
すると、メディはそのままシャワーを手にとって、体についた泡を流しにかかる。
白くて餅の様な肌をお湯がさあっと流れ落ちてゆく。
うんうん、素敵な光景ね。
「ふぅ、さっぱり! 次は雛の番だよ!」
「え、洗ってくれるの?」
「うふふ、たまにはねー?」
シャンプーを手に取り、メディは可愛らしい笑みを浮かべる。
それじゃ、お言葉に甘えて……
「じゃあ、頼むね?」
「任せておいてよ!」
そんな声が聞こえたと思うと、頭にヒヤッとした感覚とメディの手の感触が。
こうして他人に頭洗われるのって珍しい体験かも。
「お客様、かゆい所は無いですかー?」
「ええ、無いわよー。店員さんはシャンプーが上手いのねぇ」
床屋の店員になりきるメディに対して、私もお客さんのように答える。
「えへへ、恐れ入りますーっ!」
んーっ、最高の気分。たまにはこういう風にされるのも悪くは無いわね。
しばらくわしゃわしゃされた後、後ろから声が聞こえてくる。
「お客様、それでは流しますねー?」
「お願いしますー」
答えた直後、暖かいお湯が頭にかけられた。
そして、ごしごしわしゃわしゃと洗い流すメディの手。
「さ、終わったよ!」
「次はそのまま背中をお願いしてもいい?」
「もちろんっ!」
背中を洗うようにお願いしてから、私も前の方を洗い始める。
近くに置いてあったタオルを濡らし、石鹸をこすり付けるとみるみるうちに手が泡に包まれていく。
十分に泡立ったところで、まずは腕にタオルを当てて擦り始めた。
「雛こそすべすべお肌じゃないー」
「あら、ありがと。流石にメディには敵わないけどね」
「またまたご謙遜をー」
「うふふ、謙遜なんてしてないわよ」
前を洗いながら、メディとそんな会話をする。
「んしょんしょ……終わったよ!」
「あら、早いわね?」
「だって頑張ったもの!」
後ろにいるから顔は見えないけど、メディがエヘンと胸を張っている姿が想像できるわ。
さて、こちらももうそろそろ終わりそうね。
「メディ、そろそろ終わるからシャワー貸してもらえる?」
「わかったー。はい、どうぞ」
「ありがと」
後ろからシャワーを受け取り、首の辺りから体全体にまんべんなくお湯をかけていく。
すると、泡で白く濁ったお湯が体を流れ落ちていく。ふぅーっ、いい気持ちー……
「あー、さっぱりしたわ……さて、お湯もいい感じに溜まっているし、入りましょうか」
「うん、入るー!」
シャワーを止めて、転んだりしないように気をつけて浴槽の中へ入っていく。
「さ、メディもおいで」
「はーい!」
浴槽の中に入ってからメディを手招きした。
ざぶん、と元気よく浴槽に入るメディ。
「んーっ、あったかーい!」
「そろそろお湯を止めてもいいかもね」
メディが浸かりきったのを確認してから、お湯を止める。
うん、ちょうどいい湯量ね。
「さ、膝の上においで」
「わかった!」
決して広いとは言えない浴槽で温まるためにも、メディを抱きかかえるような格好で入ることにする。
ま、それもあるんだけど、やっぱりぎゅーってしたいしね?
「ふふ、ぎゅーっ!」
「きゃ、もう、雛ったらー……」
若干照れながらも喜ぶメディ。
「う、雛の胸が当たってるよ……」
「あ、あら、そう?」
そこまで当てようって意識はないんだけれど……
「やっぱり雛の胸は大きいよねぇ」
「よ、よく言われるわね……」
苦笑しながらもそう返す。
実際色々な人からも大きいって言われてるし、否定はしない。
でももっと大きい人も結構いたりするんだけどね。
「やっぱりー。服着てても目立つくらいに大きいもんねー」
「そ、そう言われると恥ずかしいかも……」
これも何回か言われたことのあるセリフ。
「私も時間が経てば大きくなるかなぁ?」
「んー、今でもそれなりにあるとは思うけど?」
メディの胸は私から見ると、決して大きくはないけど、無くはない程度の大きさ。
冗談抜きにして、もっと成長すれば化けるかもしれないなんて思っていたり。
「そ、そうかな? ありがとっ!」
私の言葉に喜ぶメディ。
ゆくゆくは私以上のナイスバディに変身したりして……
いずれにせよ、メディの成長はとても楽しみだわ。
……この子の大きくなった姿かぁ。
どういうことになるかはまだわからないけど、とっても魅力的になっているのは間違いないわね。
そんなことをぼんやり考えながら、私は湯船の中でメディを抱きしめるのでした。
「あー、気持ちよかった!」
「ほらほら、まだ濡れてるわよ?」
「あ、ごめーん」
お風呂から上がり、濡れたメディの体を丁寧に拭いてゆく。
濡れたままだと風邪引いちゃうし、しっかりと……
「よし、拭けたわよ」
「えへっ、ありがと、雛!」
「さ、冷えちゃわないうちに着替えてね?」
「わかってるよー」
メディの体を拭き終わったあとは、自分の体を拭いていく。
私も風邪を引いちゃわないように丁寧に……もちろん、髪も出来る限り綺麗に拭きあげる。
「着替え終わったら先に行ってていいわよ」
「はーい!」
あらかた服を着終わったメディに下着を身に着けながら声をかける。
メディの頭からは、ほかほかと湯気が立ち上っていた。
「んしょ、っと」
下着を着けて、パジャマを着て……よし、私も終わりっと。
はぁ、いい湯だったわねぇ。メディも堪能できたし……うふふ。
でもまだ寝る時が待ってるのよね!
うふ、うふふ、寝る時もメディを抱っこして……!
あ、でもその前に夜ご飯食べないと。
「メディ、夜ご飯は何がいいー?」
脱衣所から外に出ながら聞いてみる。
「んー、なんでもいいよー?」
なんでもいい、かぁ。逆に困るなぁ……
うーん、なんにしようか。
と、考え始めたときだ。
「ん、お客様? はーい、今行きますー!」
玄関の扉がドンドンと叩かれた。
まだ夜は遅くないとはいえ、お客様なんて誰かしら?
小走りで玄関に向かい、扉を開ける。
「あ、夜遅くにごめんね」
「こんばんは、雛。丁度お風呂から上がったところかしら?」
「あれ、アリスに幽香!? どうしたの、こんな時間に……」
ひんやりとした外に立っていたのは、アリスと幽香。
「私たちもいますよー!」
それと後ろにはアリスの娘のような存在である上海、蓬莱、ゴリアテの三人が。
「すまないけど、メディが来てないかしら?」
「メディに忙しいから遊べないって返したら雛の家に行くって言ってたもんだから……」
「で、私は幽香の家に行くって聞いたから、幽香の家に行ったらいなかったんで一緒にここに来たって訳」
ああ、なるほど。二人ともメディを探しに来たのね。
「ええ、メディならうちに来てるわよ。さ、中に入って」
「ごめんなさいね。それじゃ、お邪魔します」
「お邪魔するわね」
「お邪魔しまーすっ!」
五人は口々に挨拶しながら、家の中に入ってくる。
そして、メディの姿を見つけると抱きしめに向かうのでした。
「あ、いたいた! 探したわよ!」
「わわっ、幽香にアリス! それに上海ちゃんたちまで!」
「ごめんね? 用事が終わったからアリスたちと一緒に探しにきたわよ!」
うーん、やっぱりメディは愛されてるなぁ。
ま、私も五人のことは大好きだけれどもね。
「あ、あとこれはお裾分けね。魔理沙とかから大量に貰っちゃったから」
「わっ、ありがとう!」
アリスから手渡されたのは数本のお酒。
と、ここで私はこれを見て閃いたのでした。
「ねえ、せっかくこれだけお酒があるんだったら、今日はプチ飲み会でもしない?
もちろん、終わった後はお泊り会で!」
「え、迷惑じゃない?」
「全然! むしろ大歓迎よ!」
アリスの問いに対して、にこりと答えを返す。
「んー、じゃ、私はお言葉に甘えようかしらね。上海たちはどうする?」
「私たちもお泊りしたいですっ!」
「ご主人様がいいのならっ!」
「私もマスターがいいって言うなら……」
幽香の言葉に上海、蓬莱、ゴリアテも同意した。
この光景を見て、アリスももちろん……
「それじゃ、私も……」
「うふっ、決まりね? じゃ、幽香とアリスにご飯の支度を手伝ってもらってもいいかしら?
みんな夕食はまだでしょ?」
「ええ、もちろん!私でよければ!」
「何も食べてないものね。喜んで協力させてもらうわ。
上海たちはメディと一緒に食器を運んだりするのを手伝ってもらえるかしら?」
「はい、わかりましたっ!」
「私も頑張るよー!」
静かだった家の中が一気に騒がしくなった。
でも、こういうのは嫌いじゃないわよ。いえ、むしろ大好き!
こうして、皆で夕食兼飲み会の準備をすることになったのでした。
そして、夜遅くまで仲良しグループによる楽しい食事と飲みが繰り広げられたのであります……
しかし翌日の朝。
「飲みすぎた……」
「久々にこの面子で飲みやったからって調子に乗りすぎたわ……」
「うーん、もう一泊させて……上海、蓬莱、ゴリアテ、水持ってきて……」
私、幽香、アリスの三人は二日酔いでダウンするハメに……
そして、残った元人形の四人はというと……
「わ、わかりました! 蓬莱、ゴリアテ! お水っ!」
「は、はーい! 今持ってきますからねっ!」
「私は二日酔いのお薬探してきます! メディも手伝って!」
「わかったよ! お薬は確かこっちに……」
昨日の飲み会の途中に「明日は皆と遊ぶんだ!」と意気込んでいた彼女たちの期待は裏切られ、
一日中酔っ払い三人の世話をさせられることになりましたとさ。
河の近くにある自宅で私、鍵山雛はお昼の紅茶を楽しんでいた。
コーヒーや緑茶の時もあるけど、今日の気分は紅茶。
美味しいクッキーも添えて……うーん、最高の気分ね。
自然と「ダバダー♪」なんて口ずさみたく……って、あれはコーヒーの歌だったわね。
ま、関係ないか。違いのわかる女ってほどでもないし。
とまぁ、そんな風にティータイムを楽しんでいると……
「ん、誰かしら?」
玄関からドンドンという扉を叩く音。
来客かしら? それとも郵便物?
「はーい、今行きまーす」
カップをテーブルに置いて、玄関へと足早に向かう。
ドアのノブをつかみ、がちゃりと回して開けると……
「えへへ、こんにちは、雛!」
「あれ、メディ? どうしたの一体?」
そこにはえへへ、と笑うメディスンの姿が。
くりくりとした可愛らしい目に、綺麗な金色の髪。そして無邪気そうな笑顔。
同じ人形(というか、もともと人形だった存在?)仲間でもあり、妹のような存在だ。
「んー、まぁ、色々あってねー」
「ま、とりあえず入ってよ。ちょうど紅茶と美味しいクッキーがあるから」
「クッキー!? わーい、食べる食べる!」
喜ぶ姿はまさに無邪気な子供そのもの。
こういうところがメディの可愛いところなのよねぇ。
「で、今日はどうしたの? 遊びに来たのかしら?」
椅子に座り、メディの分の紅茶をカップに注いで手渡す。
「ん、ありがと。いやー、それもあるんだけど、ちょっとね……」
メディはカップを受け取ると、紅茶をこくりと一口含んだ。
それからテーブルの真ん中にある大皿からクッキーを数枚掴んで口に投げ込む。
「あいふがね、いほはひふひへわはひと……」
「とりあえずそれ飲み込んでから話しなさい」
「ん、ひゃーい」
口が一杯の状態で話されると全く意味わからないわね……
ということで、彼女が口の中を片付けるまで待つ。
「ふぅ、で、何だったっけ。あ、そうそう。アリスと幽香ったらひどいのよ!」
「二人と喧嘩でもしたの?」
む、ちょっと深刻そうな気がする。一体何が……?
「二人とも『今日は手が離せないから一緒に遊べない』ですって!
上海も蓬莱も、ゴリアテもだよ!?」
「え、ちょ、そんな理由で?」
メディの言葉に苦笑してしまう。
「うん。だから雛なら私と遊んでくれるかなーって思ってさー」
「あ、あはは……」
気持ちはわからなくも無いけどさ。
ま、メディらしいといえばメディらしいかな……?
「まぁ、遊ぶといっても一緒にいてくれるだけでもいいのよ。ただ構ってくれないとさ……」
あはは、と照れ隠しのように笑うメディ。
この子はこう見えて寂しがりやだからなぁ。
「うんうん……私でいいなら今日一日付き合ってあげるわよ?」
「ほ、ほんと!? えへへ、やったぁ!」
う、やっぱりこの子可愛すぎる。
こういう無邪気な笑顔に惹かれちゃうのよねぇ。
「あ、ところで……おかわりちょーだいっ!」
「おかわり? もう無いわよ♪」
クッキーが乗っていたはずの大皿を指差して、笑顔でおかわりを要求するメディ。
私はその笑顔と同じくらいの笑顔でおかわりを拒否するのだった。
というか、いつの間に全部食べちゃってたのやら……
「はい、また私の勝ちね」
「む、むー、なんで勝てないのよ……」
「暇だからトランプでもする?」
私のそんな一言がきっかけで、私たちはティータイム後のトランプに興じていた。
ちなみに今やっていたのはババ抜き。
ほぼ運のゲームのはずなのに、メディは一回も私に勝てていない。
実はそれにはとある理由がある。
「メディったら、自分で気がつかない?」
「え、何に?」
「……あなた、顔に答えが出てるわよ?」
「えっ……」
メディの表情を見れば、勝つのなんて容易いこと。
だって、ババをこっちが取りそうになれば笑顔になるし、それ以外を取ろうとすれば残念そうな顔になるんだもん。
「こういうのはね、ポーカーフェイスを保つことが大事なのよ? あなたは表情に出すぎ」
「う、うぐ……」
「……ま、そういうところも可愛いんだけど!」
話しながらメディの後ろに回りこみ、そのままぎゅっと抱きしめる。
「う、うー……」
やっぱりメディは可愛いわ……こう、母性本能がくすぐられる感じで……
「表情豊かな子は好きよ? ま、勝負事には向いてなさそうだけど」
「そ、それ、褒められてるのかそうでないのか複雑なんだけど……」
「褒めながら否定してるかも?」
「どっちかにしてよ!?」
そんなことを叫ぶメディもとっても可愛い。
幽香とアリスがメロメロになるのも分かるわー。
「冗談よ。褒めてる褒めてる」
「う、うーん、まぁ別にいいけどさ……」
このまま頭撫でちゃえ。
なでなでなで……
「ん、撫でられるの気持ちいい……」
「そうなの? それじゃ、もっと撫でてあげる」
あらあら、気持ちよさそうにしてる。
あの二人からしょっちゅう撫でられてたせいかしら?
「ふぁー……やっぱり撫でられるの好きー」
「うふふ……」
こうしてメディを撫でるだけの簡単なお仕事をして午後の時間は過ぎ去っていくのでした。
「うーん、撫でられてたら眠くなってきちゃったよ……」
「ん、寝る?」
メディの顔を見ると、目がとろんとしていて、すぐにでも寝てしまいそうだ。
「うん、寝る……暖かくて、気持ちが良くて……んー……」
目を閉じ、完全に睡眠モードに入る。
「ふふ、おやすみ」
そんな彼女の頭を撫でながら、読みかけの本を掴むのだった。
この状況じゃ、席を離れることなんて出来ないしね。
ま、この本が読み終わる頃にはメディも起きてるでしょ。
「ふぅ、読み終わった。なかなか面白かったわね」
ようやく本を読み終わり、部屋の外を見てみると、すでに日が落ちている。
んー、本に夢中になってて全く気がつかなかったわ。
と、その時。
「うーん……ふぁあああ……」
「あ、起きた?」
メディが大きなあくびをしながら目を覚ました。
「えへへ、おはよう雛……」
「ふふっ、おはよう。寝顔、可愛かったわよ」
「も、もー、恥ずかしいよ……」
少し照れるメディ。もちろんとっても可愛い!
……と、そんなことよりも。
「さてと、メディも起きたことだし……一緒にお風呂入らない?」
メディにそんなことを聞いてみる。
一緒に入るのは久しぶりだし、今日は二人でゆっくりとつかりたい気分なのよねー。
「あ、いいよー! 昨日は入り損ねちゃったし、雛と入るのは久しぶりだしね」
「よーし、それじゃお風呂に行こっか!」
「うん!」
メディを抱きかかえて、お風呂へと向かう。
まだお風呂は沸かしてないけれど……体を洗っている間にお湯入れれば大丈夫よね。
「メディ、先に服脱いでて。私はお湯出してくるから」
「うん、わかったー」
メディを脱衣所で降ろして、先に湯船にお湯を入れることにする。
浴室に入り、湯船に蛇口を向けて栓を捻ると、熱いお湯がどばあっと噴き出した。
「あちち……これくらいかしら?」
すかさず水の栓を捻り、水温を調節する。
……んー、ちょっと熱いかな? じゃ、これくらいなら。
「ん、よし、ちょうどいいかも」
よし、丁度いいくらいの水温になったわ。
これならメディも熱がることはないはずね。
「私も服脱がなきゃね、っと。その前に服を準備しないと」
私の着替えはもちろん、メディの分の着替えも準備しないと。
メディの服はこの前洗って返し損なっていたのがちょうどあったし、それでいいか。
「ごめん、着替えを取ってくるから先に体洗っててもらえる?」
「ん、わかった!」
すでに裸になっているメディに先に入るように促してから、着替えを取りに行く。
えーっと、確かあそこのタンスの中に……
「あったあった。これと、これと……よしっ」
二人分のパジャマと下着を引っ張り出し、再度浴室へと向かう私。
脱衣所に着替えを置いて、と。
「今から行くからねー!」
メディに向けてそう叫びながら、服を脱いでいく。
この服、お気に入りだけれども脱ぐのが少し面倒なのよね。
ま、そこは我慢我慢。
下着まで脱いで……よし、完了。
「入るわよー」
そう声をかけて、浴室内へと足を踏み入れる。
すると、そこには泡まみれのメディが。
「あ、おかえりー!」
「どこまで洗った?」
見た感じは頭だけ、かしら?
「今頭を洗い終わったところー。あとは体だけだよ」
ん、予想が当たった。
ということは、背中を洗ってあげればいいわね。
「それじゃ、私が背中洗ってあげる」
「うん、ありがと! 一人じゃ背中は洗いにくいもんね!」
あまり泡に包まれていない背中に石鹸で泡立ったタオルを当て、ごしごしと拭いていく。
メディの背中は小さいから、すぐに終わっちゃうわね。
それにしてもつるつるすべすべで綺麗な肌……羨ましいわねぇ。
「メディのお肌はつるつるすべすべねぇ」
「えへへ、そうかな?」
褒められて嬉しそうな声を漏らすメディ。
「さ、こっちは終わったわよ」
「ありがとね。こっちも終わったよ」
名残惜しいけど、背中からタオルを離して終わったことを告げる。
すると、メディはそのままシャワーを手にとって、体についた泡を流しにかかる。
白くて餅の様な肌をお湯がさあっと流れ落ちてゆく。
うんうん、素敵な光景ね。
「ふぅ、さっぱり! 次は雛の番だよ!」
「え、洗ってくれるの?」
「うふふ、たまにはねー?」
シャンプーを手に取り、メディは可愛らしい笑みを浮かべる。
それじゃ、お言葉に甘えて……
「じゃあ、頼むね?」
「任せておいてよ!」
そんな声が聞こえたと思うと、頭にヒヤッとした感覚とメディの手の感触が。
こうして他人に頭洗われるのって珍しい体験かも。
「お客様、かゆい所は無いですかー?」
「ええ、無いわよー。店員さんはシャンプーが上手いのねぇ」
床屋の店員になりきるメディに対して、私もお客さんのように答える。
「えへへ、恐れ入りますーっ!」
んーっ、最高の気分。たまにはこういう風にされるのも悪くは無いわね。
しばらくわしゃわしゃされた後、後ろから声が聞こえてくる。
「お客様、それでは流しますねー?」
「お願いしますー」
答えた直後、暖かいお湯が頭にかけられた。
そして、ごしごしわしゃわしゃと洗い流すメディの手。
「さ、終わったよ!」
「次はそのまま背中をお願いしてもいい?」
「もちろんっ!」
背中を洗うようにお願いしてから、私も前の方を洗い始める。
近くに置いてあったタオルを濡らし、石鹸をこすり付けるとみるみるうちに手が泡に包まれていく。
十分に泡立ったところで、まずは腕にタオルを当てて擦り始めた。
「雛こそすべすべお肌じゃないー」
「あら、ありがと。流石にメディには敵わないけどね」
「またまたご謙遜をー」
「うふふ、謙遜なんてしてないわよ」
前を洗いながら、メディとそんな会話をする。
「んしょんしょ……終わったよ!」
「あら、早いわね?」
「だって頑張ったもの!」
後ろにいるから顔は見えないけど、メディがエヘンと胸を張っている姿が想像できるわ。
さて、こちらももうそろそろ終わりそうね。
「メディ、そろそろ終わるからシャワー貸してもらえる?」
「わかったー。はい、どうぞ」
「ありがと」
後ろからシャワーを受け取り、首の辺りから体全体にまんべんなくお湯をかけていく。
すると、泡で白く濁ったお湯が体を流れ落ちていく。ふぅーっ、いい気持ちー……
「あー、さっぱりしたわ……さて、お湯もいい感じに溜まっているし、入りましょうか」
「うん、入るー!」
シャワーを止めて、転んだりしないように気をつけて浴槽の中へ入っていく。
「さ、メディもおいで」
「はーい!」
浴槽の中に入ってからメディを手招きした。
ざぶん、と元気よく浴槽に入るメディ。
「んーっ、あったかーい!」
「そろそろお湯を止めてもいいかもね」
メディが浸かりきったのを確認してから、お湯を止める。
うん、ちょうどいい湯量ね。
「さ、膝の上においで」
「わかった!」
決して広いとは言えない浴槽で温まるためにも、メディを抱きかかえるような格好で入ることにする。
ま、それもあるんだけど、やっぱりぎゅーってしたいしね?
「ふふ、ぎゅーっ!」
「きゃ、もう、雛ったらー……」
若干照れながらも喜ぶメディ。
「う、雛の胸が当たってるよ……」
「あ、あら、そう?」
そこまで当てようって意識はないんだけれど……
「やっぱり雛の胸は大きいよねぇ」
「よ、よく言われるわね……」
苦笑しながらもそう返す。
実際色々な人からも大きいって言われてるし、否定はしない。
でももっと大きい人も結構いたりするんだけどね。
「やっぱりー。服着てても目立つくらいに大きいもんねー」
「そ、そう言われると恥ずかしいかも……」
これも何回か言われたことのあるセリフ。
「私も時間が経てば大きくなるかなぁ?」
「んー、今でもそれなりにあるとは思うけど?」
メディの胸は私から見ると、決して大きくはないけど、無くはない程度の大きさ。
冗談抜きにして、もっと成長すれば化けるかもしれないなんて思っていたり。
「そ、そうかな? ありがとっ!」
私の言葉に喜ぶメディ。
ゆくゆくは私以上のナイスバディに変身したりして……
いずれにせよ、メディの成長はとても楽しみだわ。
……この子の大きくなった姿かぁ。
どういうことになるかはまだわからないけど、とっても魅力的になっているのは間違いないわね。
そんなことをぼんやり考えながら、私は湯船の中でメディを抱きしめるのでした。
「あー、気持ちよかった!」
「ほらほら、まだ濡れてるわよ?」
「あ、ごめーん」
お風呂から上がり、濡れたメディの体を丁寧に拭いてゆく。
濡れたままだと風邪引いちゃうし、しっかりと……
「よし、拭けたわよ」
「えへっ、ありがと、雛!」
「さ、冷えちゃわないうちに着替えてね?」
「わかってるよー」
メディの体を拭き終わったあとは、自分の体を拭いていく。
私も風邪を引いちゃわないように丁寧に……もちろん、髪も出来る限り綺麗に拭きあげる。
「着替え終わったら先に行ってていいわよ」
「はーい!」
あらかた服を着終わったメディに下着を身に着けながら声をかける。
メディの頭からは、ほかほかと湯気が立ち上っていた。
「んしょ、っと」
下着を着けて、パジャマを着て……よし、私も終わりっと。
はぁ、いい湯だったわねぇ。メディも堪能できたし……うふふ。
でもまだ寝る時が待ってるのよね!
うふ、うふふ、寝る時もメディを抱っこして……!
あ、でもその前に夜ご飯食べないと。
「メディ、夜ご飯は何がいいー?」
脱衣所から外に出ながら聞いてみる。
「んー、なんでもいいよー?」
なんでもいい、かぁ。逆に困るなぁ……
うーん、なんにしようか。
と、考え始めたときだ。
「ん、お客様? はーい、今行きますー!」
玄関の扉がドンドンと叩かれた。
まだ夜は遅くないとはいえ、お客様なんて誰かしら?
小走りで玄関に向かい、扉を開ける。
「あ、夜遅くにごめんね」
「こんばんは、雛。丁度お風呂から上がったところかしら?」
「あれ、アリスに幽香!? どうしたの、こんな時間に……」
ひんやりとした外に立っていたのは、アリスと幽香。
「私たちもいますよー!」
それと後ろにはアリスの娘のような存在である上海、蓬莱、ゴリアテの三人が。
「すまないけど、メディが来てないかしら?」
「メディに忙しいから遊べないって返したら雛の家に行くって言ってたもんだから……」
「で、私は幽香の家に行くって聞いたから、幽香の家に行ったらいなかったんで一緒にここに来たって訳」
ああ、なるほど。二人ともメディを探しに来たのね。
「ええ、メディならうちに来てるわよ。さ、中に入って」
「ごめんなさいね。それじゃ、お邪魔します」
「お邪魔するわね」
「お邪魔しまーすっ!」
五人は口々に挨拶しながら、家の中に入ってくる。
そして、メディの姿を見つけると抱きしめに向かうのでした。
「あ、いたいた! 探したわよ!」
「わわっ、幽香にアリス! それに上海ちゃんたちまで!」
「ごめんね? 用事が終わったからアリスたちと一緒に探しにきたわよ!」
うーん、やっぱりメディは愛されてるなぁ。
ま、私も五人のことは大好きだけれどもね。
「あ、あとこれはお裾分けね。魔理沙とかから大量に貰っちゃったから」
「わっ、ありがとう!」
アリスから手渡されたのは数本のお酒。
と、ここで私はこれを見て閃いたのでした。
「ねえ、せっかくこれだけお酒があるんだったら、今日はプチ飲み会でもしない?
もちろん、終わった後はお泊り会で!」
「え、迷惑じゃない?」
「全然! むしろ大歓迎よ!」
アリスの問いに対して、にこりと答えを返す。
「んー、じゃ、私はお言葉に甘えようかしらね。上海たちはどうする?」
「私たちもお泊りしたいですっ!」
「ご主人様がいいのならっ!」
「私もマスターがいいって言うなら……」
幽香の言葉に上海、蓬莱、ゴリアテも同意した。
この光景を見て、アリスももちろん……
「それじゃ、私も……」
「うふっ、決まりね? じゃ、幽香とアリスにご飯の支度を手伝ってもらってもいいかしら?
みんな夕食はまだでしょ?」
「ええ、もちろん!私でよければ!」
「何も食べてないものね。喜んで協力させてもらうわ。
上海たちはメディと一緒に食器を運んだりするのを手伝ってもらえるかしら?」
「はい、わかりましたっ!」
「私も頑張るよー!」
静かだった家の中が一気に騒がしくなった。
でも、こういうのは嫌いじゃないわよ。いえ、むしろ大好き!
こうして、皆で夕食兼飲み会の準備をすることになったのでした。
そして、夜遅くまで仲良しグループによる楽しい食事と飲みが繰り広げられたのであります……
しかし翌日の朝。
「飲みすぎた……」
「久々にこの面子で飲みやったからって調子に乗りすぎたわ……」
「うーん、もう一泊させて……上海、蓬莱、ゴリアテ、水持ってきて……」
私、幽香、アリスの三人は二日酔いでダウンするハメに……
そして、残った元人形の四人はというと……
「わ、わかりました! 蓬莱、ゴリアテ! お水っ!」
「は、はーい! 今持ってきますからねっ!」
「私は二日酔いのお薬探してきます! メディも手伝って!」
「わかったよ! お薬は確かこっちに……」
昨日の飲み会の途中に「明日は皆と遊ぶんだ!」と意気込んでいた彼女たちの期待は裏切られ、
一日中酔っ払い三人の世話をさせられることになりましたとさ。
それにしても自然な文章って難しいものです。
なんとも微笑ましい1ページでした。