春の陽気うららかな博麗神社は、花びらを纏って桜色に包まれていた。
そんな春めいた神社に少女たちの声が響く。
「おい、待ってくれよ。私は借りただけだろう?なんで泥棒扱いされるのか判らんな」
「いい?私はあんたと同じくらいの寿命なの。あんたより先に私が死んだらどうするのよ。それは窃盗よ窃盗」
口喧嘩にしてはいささかのんびりとした口調であった。
「別にいいだろ?どうせ使い道のわからない小筒なんだ。私が有効活用してやるんだよ」
「それは神社にお供えされてたのよ?お酒と一緒に置いてあるくらいだもの、何かしら使い道はあるわ」
そういってマンガンなどと意味不明な呪詛が書かれた筒を魔理沙から取り返した。
もうそろそろ桜の見頃も終わりが近づいてきている。
不意に、魔理沙が話を切り出す。
「そうだ、お酒で思い出したんだが、花見をしようと思ってな」
「随分唐突ね。花見はいいけど、誰も片づけてくれないじゃない」
霊夢が呆れ気味に言う。
「そうだ。それも含めて今回は別の場所でやってみるのもどうかと思ってな
その筒の用途とかも判るかもしれないし、片づけも奴に任せるとして、香霖の所で花見もいいだろ?」
「魔理沙が片づけをすればいいと思うけどね」
そう宴会の話をしていると、風と共に天狗がやってきた。
「楽しそうね。私も参加していいかしら?」
「お、いつぞやの捏造記者」
魔理沙がそういうと文はあからさまに嫌な顔をした。
「今は記者として来てるわけじゃないし、捏造はしてない」
「って天狗と酒呑んだら酔いつぶれて死にそうね」
横から霊夢が口をはさむと、文は猫のように笑って言った。
「別に呑み過ぎはしないわよ、虎じゃあるまいし」
「お前も大概暇なんだな」
「まあね。新聞のネタも余ってるくらいだし」
いかにも余裕綽々だ。
「なら、もっと有意義な記事を書いてもらいたいもんだがな」
じゃあまた夜に、と文が音速で駆けていった。
「あいつだけじゃつまらんな。もっと他の奴も呼んでくるぜ」
どうせ天狗もたくさん来るだろうがな、と付け加えた。
「で?結局霖之助さんのところで花見をするんでしょう?場所くらい確保しないと」
「あーそれか。それなら心配はない。私が“許可をもらった”からな」
にしし、と魔理沙が笑ったのを霊夢は半ば呆れた風に見ていた。
___香霖堂
桜色の風と、桜色の匂いと、桜色の風景。
こんなに読書に適した日も無いというほどの快晴。
香霖堂の店主、森近霖之助は、快晴だというのにうす暗い店内で非売品になる予定の本を読んでいた。
……そろそろ裏の桜も終わるのだろうか。
以前のように、恐ろしいほどの咲きっぷり、と言うわけではないが、素晴らしい咲き方だ。
だが桜と言うものは八分咲きだろうが五分咲きだろうが、
人妖を惹きつける不思議な魔力を持っている。
それだからこそ、桜が桜たる所以なのかもしれない。
そんな審美的な考えに耽っていると、扉が悲鳴を上げた。
蝶番から吐き出されたネジは力無げに横たわっている。
「あー、魔理沙。そのうち弁償してもらうよ?」
「別に構わないだろ?壊れたら新しい扉に変えられるんだしな」
どうやら魔理沙は罪の意識と言うものが欠落しているらしい。
「で、何の用だい?これ以上ツケ払いは勘弁してもらいたいけどね」
「ああそうかい。今回はそのツケの代わりにこの閑古鳥が鳴いている店の裏で花見をしてやるんだ」
……魔理沙にはツケの意味が解っているのだろうか。
「……まあいいけど、店まで宴会にしないでくれ」
___そうこうするうちに夜が降りてきた。
鬼の能力か酒の匂いかは定かではないが、相当な数の人妖が集まった。
霊夢のもとには何故人が集まるのか。
今春最後の花見に何故香霖堂なのか。
それについて彼女達は何の疑問も持っていないし、疑問に思うことも無いだろう。
そんな疑問は、酒の席ではくだらない話として棄てられるのが当然だからだ。
____
酒気にあてられてか、いつになく気分と顔がこうちょうしている霊夢が騒いでいる。
「いやぁ~、これがこの春最後だなんて勿体無いわね~。毎日宴会でもいい感じがするわ」
まだまだ夜も早いのに、人数のせいでやたらと賑やかだ。
「おいおい、そんなことしたら天狗以外死ぬぜ」
そう言いながらも、まんざらでもない様子の魔理沙である。
いよいよ宴会は盛り上がる。
そんな宴会の喧騒とはよそに、独特の静かな空間があった。
それは幽し気配の所為か、人外めいた人間メイドの所為か。
「ねぇ、妖夢」
ふと一昨日の出来事を思い出したように十六夜咲夜が空に呟いた。
「なんでしょう?」
「貴女、従者である事に疲れないの?」
意表を突かれた質問に魂魄妖夢は沈思してしまう。
やっと言葉の整理が終わったらしく、ゆっくりと口を開いた。
「まあ、体力的には疲労していても、多分今までの中ではそれが当たり前だったから心中で、疲れた、と思うようなことは無いと思うけど……って聞いて何がしたいの?」
「うふふ、なんとなくよ」
「そういう貴女はどうなの」
「私も大体同じよ」
「なんだ……ちょっと期待外れ」
もう少し珍妙な回答を求めていたのに。
「あら、私が変わり者とでも?」
咲夜を変わり者としないで、誰が一体変わり者に分類されるだろうか。
「十分変わり者よ。十分」
そういうと、会話が無くなってまた独特の沈黙が二人を包む。
中央では霊夢と天狗がなにやら芸のようなものをしている。
周りの者たちはそれが可笑しくて馬鹿笑いしているようだ。
しばしの静寂の後、今度は妖夢がそのしじまを破った。
「貴女はあの中に入らないの?」
主人があの中に居るのに、従者が入らなくてよいのだろうか。
「ええ。お嬢様は『世話とかは気にしなくていいから自分が楽しめ』と仰いましたから」
「そんなものなのかなぁ……」
妖夢の主人は少し、いや非常に自由奔放で困る。
「そんなものよ。例えばね、妖夢」
「?」
咲夜が不敵な笑みを浮かべて話す。
「例えば酒の席に呼ばれたとする。そこで酒の席で白けて隅でお酒を飲んでいる人がいたとするわ。それを見つけた貴女はどう思うかしら?」
「喩え話?」
「何度も同じことは言わないわ」
突飛に喩え話をされても波長が違うと理解が追い付かない。
兎に角、自分なりの解釈をして答えるだけ答えろと幽々子様は仰っていたが……
「ま、まぁ、肩透かしを食らうというか、なんとなく嫌ですね」
自分なりの解釈はしたが、それでも理解が追い付かない。波長の違いとは恐ろしい。
「そこでその人に聞きました。そうすると彼は言いました。『こうしているのが愉しいのだから仕方ないだろう』と」
この状況を例えているのだろうか。
思考をめぐらしているうちに咲夜がまた話し始める。
「そうしたら、貴女はどう思うの?」
「そうしたら……って……」
ついに解釈すらも追いつかなくなり、私は考えるのをやめた。
整理すらできない。しかし、それが日常になっているとなんら不思議に思わなくなってくる。
「ま、そういうことかしら。人には人なりの愉しみ方があるのだから」
勝手に咲夜が話を〆る。
「え?どういうこと?」
理解ができなければ質問する。当たり前のことだ。
だが、その質問は咲夜の不敵な笑みと理解できない回答によってかき消されてしまった。
「当たり前っていうのはその人の精神からくるものなの。勿論精神は人それぞれで構成しているものが違うから考え方、行動、発言、立ち振る舞い、そういったものにその人の精神が反映されるの。だから、相手の精神を知覚したうえで精神のやり取りをするのが大切ってわけよ」
その後は愉しい沈黙と他愛のない会話で時間が過ぎていった。
月も漸く下り始め、闇で染められた空に儚い花弁が舞っていた。
宴も酣、どんちゃん騒ぎは段々とおさまっている。
「そろそろ宴会も終わりそうね」
懐かしい友人との別れを惜しんでいるみたいな声で咲夜がそう言う。
「ええ」
「楽しかったでしょう?」
まるで彼女が主催者のような言い方で少し可笑しかった。
「まぁ、ちょっと変わってるけどね」
「でも、私は好きよ。こういう時間も悪くは無いわ」
咲夜の言う通りだ。どんちゃん騒ぎをしなくても宴会は案外楽しい。
私は今まで咲夜と腰を据えてゆっくりと話したことが無いだけに、新鮮でもあった。
「特に、貴女といるとね、妖夢」
咲夜本人は何の気なしに言ったであろうその言葉は、妖夢を衝撃で固まらせる程度の効果があった。
暫くして我に返った妖夢は少々どもりながら咲夜に聞き返した。
「い、今なんて……?」
そう聞き返すと、咲夜はふっと顔を緩めた。
「うふふ。何度も同じことは言わないわ」
「そ、それはどういう……」
さっきの衝撃がまだ抜けきらないようだ。
「あら、そろそろ引き上げていくみたい」
「え、えぇ…」
そうやって二人が立ち上がると、桜の花弁が風に撃たれて舞った。
「咲夜ー?帰るわよー」
「かしこまりました」
ある者は帰りの支度などを始め、ある者は片づけを始め、ある者はそれを横から囃していた。
咲夜はそんな者たちとは異質な雰囲気を漂わせていた。
それは多分私自身の感情からくるものなのだろう、と妖夢は感じていた。
ふと目が合う。
その時、咲夜がこちらにウインクをくれたような気がした。
桜に変わって海棠が咲こうとしている。
淡くはんなりと香る空。
宴会の終わりにしては少し優美な空間が二人の間に流れていた。
そんな春めいた神社に少女たちの声が響く。
「おい、待ってくれよ。私は借りただけだろう?なんで泥棒扱いされるのか判らんな」
「いい?私はあんたと同じくらいの寿命なの。あんたより先に私が死んだらどうするのよ。それは窃盗よ窃盗」
口喧嘩にしてはいささかのんびりとした口調であった。
「別にいいだろ?どうせ使い道のわからない小筒なんだ。私が有効活用してやるんだよ」
「それは神社にお供えされてたのよ?お酒と一緒に置いてあるくらいだもの、何かしら使い道はあるわ」
そういってマンガンなどと意味不明な呪詛が書かれた筒を魔理沙から取り返した。
もうそろそろ桜の見頃も終わりが近づいてきている。
不意に、魔理沙が話を切り出す。
「そうだ、お酒で思い出したんだが、花見をしようと思ってな」
「随分唐突ね。花見はいいけど、誰も片づけてくれないじゃない」
霊夢が呆れ気味に言う。
「そうだ。それも含めて今回は別の場所でやってみるのもどうかと思ってな
その筒の用途とかも判るかもしれないし、片づけも奴に任せるとして、香霖の所で花見もいいだろ?」
「魔理沙が片づけをすればいいと思うけどね」
そう宴会の話をしていると、風と共に天狗がやってきた。
「楽しそうね。私も参加していいかしら?」
「お、いつぞやの捏造記者」
魔理沙がそういうと文はあからさまに嫌な顔をした。
「今は記者として来てるわけじゃないし、捏造はしてない」
「って天狗と酒呑んだら酔いつぶれて死にそうね」
横から霊夢が口をはさむと、文は猫のように笑って言った。
「別に呑み過ぎはしないわよ、虎じゃあるまいし」
「お前も大概暇なんだな」
「まあね。新聞のネタも余ってるくらいだし」
いかにも余裕綽々だ。
「なら、もっと有意義な記事を書いてもらいたいもんだがな」
じゃあまた夜に、と文が音速で駆けていった。
「あいつだけじゃつまらんな。もっと他の奴も呼んでくるぜ」
どうせ天狗もたくさん来るだろうがな、と付け加えた。
「で?結局霖之助さんのところで花見をするんでしょう?場所くらい確保しないと」
「あーそれか。それなら心配はない。私が“許可をもらった”からな」
にしし、と魔理沙が笑ったのを霊夢は半ば呆れた風に見ていた。
___香霖堂
桜色の風と、桜色の匂いと、桜色の風景。
こんなに読書に適した日も無いというほどの快晴。
香霖堂の店主、森近霖之助は、快晴だというのにうす暗い店内で非売品になる予定の本を読んでいた。
……そろそろ裏の桜も終わるのだろうか。
以前のように、恐ろしいほどの咲きっぷり、と言うわけではないが、素晴らしい咲き方だ。
だが桜と言うものは八分咲きだろうが五分咲きだろうが、
人妖を惹きつける不思議な魔力を持っている。
それだからこそ、桜が桜たる所以なのかもしれない。
そんな審美的な考えに耽っていると、扉が悲鳴を上げた。
蝶番から吐き出されたネジは力無げに横たわっている。
「あー、魔理沙。そのうち弁償してもらうよ?」
「別に構わないだろ?壊れたら新しい扉に変えられるんだしな」
どうやら魔理沙は罪の意識と言うものが欠落しているらしい。
「で、何の用だい?これ以上ツケ払いは勘弁してもらいたいけどね」
「ああそうかい。今回はそのツケの代わりにこの閑古鳥が鳴いている店の裏で花見をしてやるんだ」
……魔理沙にはツケの意味が解っているのだろうか。
「……まあいいけど、店まで宴会にしないでくれ」
___そうこうするうちに夜が降りてきた。
鬼の能力か酒の匂いかは定かではないが、相当な数の人妖が集まった。
霊夢のもとには何故人が集まるのか。
今春最後の花見に何故香霖堂なのか。
それについて彼女達は何の疑問も持っていないし、疑問に思うことも無いだろう。
そんな疑問は、酒の席ではくだらない話として棄てられるのが当然だからだ。
____
酒気にあてられてか、いつになく気分と顔がこうちょうしている霊夢が騒いでいる。
「いやぁ~、これがこの春最後だなんて勿体無いわね~。毎日宴会でもいい感じがするわ」
まだまだ夜も早いのに、人数のせいでやたらと賑やかだ。
「おいおい、そんなことしたら天狗以外死ぬぜ」
そう言いながらも、まんざらでもない様子の魔理沙である。
いよいよ宴会は盛り上がる。
そんな宴会の喧騒とはよそに、独特の静かな空間があった。
それは幽し気配の所為か、人外めいた人間メイドの所為か。
「ねぇ、妖夢」
ふと一昨日の出来事を思い出したように十六夜咲夜が空に呟いた。
「なんでしょう?」
「貴女、従者である事に疲れないの?」
意表を突かれた質問に魂魄妖夢は沈思してしまう。
やっと言葉の整理が終わったらしく、ゆっくりと口を開いた。
「まあ、体力的には疲労していても、多分今までの中ではそれが当たり前だったから心中で、疲れた、と思うようなことは無いと思うけど……って聞いて何がしたいの?」
「うふふ、なんとなくよ」
「そういう貴女はどうなの」
「私も大体同じよ」
「なんだ……ちょっと期待外れ」
もう少し珍妙な回答を求めていたのに。
「あら、私が変わり者とでも?」
咲夜を変わり者としないで、誰が一体変わり者に分類されるだろうか。
「十分変わり者よ。十分」
そういうと、会話が無くなってまた独特の沈黙が二人を包む。
中央では霊夢と天狗がなにやら芸のようなものをしている。
周りの者たちはそれが可笑しくて馬鹿笑いしているようだ。
しばしの静寂の後、今度は妖夢がそのしじまを破った。
「貴女はあの中に入らないの?」
主人があの中に居るのに、従者が入らなくてよいのだろうか。
「ええ。お嬢様は『世話とかは気にしなくていいから自分が楽しめ』と仰いましたから」
「そんなものなのかなぁ……」
妖夢の主人は少し、いや非常に自由奔放で困る。
「そんなものよ。例えばね、妖夢」
「?」
咲夜が不敵な笑みを浮かべて話す。
「例えば酒の席に呼ばれたとする。そこで酒の席で白けて隅でお酒を飲んでいる人がいたとするわ。それを見つけた貴女はどう思うかしら?」
「喩え話?」
「何度も同じことは言わないわ」
突飛に喩え話をされても波長が違うと理解が追い付かない。
兎に角、自分なりの解釈をして答えるだけ答えろと幽々子様は仰っていたが……
「ま、まぁ、肩透かしを食らうというか、なんとなく嫌ですね」
自分なりの解釈はしたが、それでも理解が追い付かない。波長の違いとは恐ろしい。
「そこでその人に聞きました。そうすると彼は言いました。『こうしているのが愉しいのだから仕方ないだろう』と」
この状況を例えているのだろうか。
思考をめぐらしているうちに咲夜がまた話し始める。
「そうしたら、貴女はどう思うの?」
「そうしたら……って……」
ついに解釈すらも追いつかなくなり、私は考えるのをやめた。
整理すらできない。しかし、それが日常になっているとなんら不思議に思わなくなってくる。
「ま、そういうことかしら。人には人なりの愉しみ方があるのだから」
勝手に咲夜が話を〆る。
「え?どういうこと?」
理解ができなければ質問する。当たり前のことだ。
だが、その質問は咲夜の不敵な笑みと理解できない回答によってかき消されてしまった。
「当たり前っていうのはその人の精神からくるものなの。勿論精神は人それぞれで構成しているものが違うから考え方、行動、発言、立ち振る舞い、そういったものにその人の精神が反映されるの。だから、相手の精神を知覚したうえで精神のやり取りをするのが大切ってわけよ」
その後は愉しい沈黙と他愛のない会話で時間が過ぎていった。
月も漸く下り始め、闇で染められた空に儚い花弁が舞っていた。
宴も酣、どんちゃん騒ぎは段々とおさまっている。
「そろそろ宴会も終わりそうね」
懐かしい友人との別れを惜しんでいるみたいな声で咲夜がそう言う。
「ええ」
「楽しかったでしょう?」
まるで彼女が主催者のような言い方で少し可笑しかった。
「まぁ、ちょっと変わってるけどね」
「でも、私は好きよ。こういう時間も悪くは無いわ」
咲夜の言う通りだ。どんちゃん騒ぎをしなくても宴会は案外楽しい。
私は今まで咲夜と腰を据えてゆっくりと話したことが無いだけに、新鮮でもあった。
「特に、貴女といるとね、妖夢」
咲夜本人は何の気なしに言ったであろうその言葉は、妖夢を衝撃で固まらせる程度の効果があった。
暫くして我に返った妖夢は少々どもりながら咲夜に聞き返した。
「い、今なんて……?」
そう聞き返すと、咲夜はふっと顔を緩めた。
「うふふ。何度も同じことは言わないわ」
「そ、それはどういう……」
さっきの衝撃がまだ抜けきらないようだ。
「あら、そろそろ引き上げていくみたい」
「え、えぇ…」
そうやって二人が立ち上がると、桜の花弁が風に撃たれて舞った。
「咲夜ー?帰るわよー」
「かしこまりました」
ある者は帰りの支度などを始め、ある者は片づけを始め、ある者はそれを横から囃していた。
咲夜はそんな者たちとは異質な雰囲気を漂わせていた。
それは多分私自身の感情からくるものなのだろう、と妖夢は感じていた。
ふと目が合う。
その時、咲夜がこちらにウインクをくれたような気がした。
桜に変わって海棠が咲こうとしている。
淡くはんなりと香る空。
宴会の終わりにしては少し優美な空間が二人の間に流れていた。
>自分が楽しめ の解釈で、咲夜さんの嗜好とそれを理解しているおぜうの計らいという信頼関係は理解できるので、ここで留めておいた方がよろしかったかと。
ちょっと淡々としすぎかなーという印象。
文章がどれも同じくらいの長さなので、余計にそう思えてしまいますね。