「霊夢を殺したら、私もちやほやされるのかな」
そんなとんでもないことを魔理沙は呟いた。私みたいな宵闇の妖怪にそんな事を聞かれても困る。キャラ崩壊にも限度ってものがあるわよ。
「どうしたのよ一体」
「いや、私も霊夢と一緒に、異変を解決しただろう。でもどういうわけか、あいつは妖怪に好かれたのに、私はそうならない。それが何か変に思ってな」
「? でも確か、紅の館には魔法使いがいたって霊夢から聞いたわ。その人と仲良くならなかったの?」
「いや、何冊か本を借りたら、突然図書館出入りのブラックリストに載ったんだよ。不思議な事に」
「本当に不思議ね。あえて、詳しくは聞かない事にするけど」
私達の会話が止まっても、月は少しずつ動いている。
「……勝っているからかな」
魔理沙はたった数十秒の沈黙にも耐えられないのか、慌てたように新たな会話を切り出してきた。
「霊夢は勝ち続けているから、人気があるのかな」
「何よそれ」
「私が知る限り、霊夢が戦いに負けた話なんて聞いた事がないんだよ。噂さえ聞かない。そして私は霊夢ほど勝ってはいない」
「あなたも紅い館に乗り込んだんでしょう?」
「私はパチュリーや咲夜の足止め程度しかしてないさ。霊夢はたった一人で、最強の妖怪とまで言われる吸血鬼に勝った。そもそも、私自身霊夢に負けてるんだ。しかも、真剣勝負で」
「…………」
魔理沙にしては珍しい悩みだ。そんな事で悩んでいるなんて。
「というか、一度も勝ったことがない霊夢をどうやって殺すつもりよ」
「…………」
顔を逸らすということは、そこまで考えていなかったのだろうか。
「……後ろから闇討ちするとか」
「館にいるらしい妖怪より、よっぽど妖怪らしい考えね」
それでも、それで霊夢が死ぬとも思えない。いっその事、手伝ってあげようかしら。
しかし、万が一にもその闇討ちが成功してしまっては困る。
私だって、今まであらゆる者達に勝つ実力と、結界を操る力を持つ霊夢を食べてみたいと思わなかったわけではない。
でも、妖怪の私であっても、目先の欲にとらわれずに霊夢と会話する娯楽を続けていきたい想いはある。
目の前にいる魔法使い如きに霊夢を消されるわけにはいかないのよね。どうにかして止めることができないかしら。
「……そういえば魔理沙は、どうして霊夢を倒したいのかしら」
さっきは妖怪に好かれたいとか何とか言っていたけど、こんな人間らしい人間に、そんな考えがあるのか。
「…………」
「? どうして何も言わないの? 霊夢を殺したいと思うくらいなんだから、何かはっきりとした目的があるんでしょう」
「……認めてほしいんだ」
「は?」
「……誰かに、私の努力を認めてほしいんだ」
ああ、これは本当に人間らしい悩みだ。わたしの中で徐々に興味が無くなっていくのを感じる。この人間は本当に、あの霊夢と共に異変を解決したのだろうか。
「霊夢と一緒に異変を解決して、わかるんだよ。同じ人間であるにも関わらず、あいつと私の、強さと才能の差が。スペルカードルールがあってその差が縮まっているようなもの。闇討ちとか言ったけど、返り討ちに遭う可能性が大きいのは自分で解っている」
「誰かって、誰よ」
「え?」
「わざわざ森で暮らすような人間が、人里にいるような普通の人間に認めてもらおうとは、とても思えないわね。もう決まってるんじゃないの? あなたが認めてほしいって思ってる人」
「い……やぁ。実際、特に決まっている奴もいないけどなぁ……」
まったく面倒くさい。自分で決めている事なのに内容が曖昧なんて。
そう考えれば、そういう類の悩みがないから、霊夢は人間っぽくない様に見えるのかもしれないわね。
でもまぁ、これで何とかできそうね。
「じゃあ、霊夢でいいじゃない」
「え?」
「妖怪の私が言うのも何だけど、殺すなんて野暮な事は言わないで、霊夢にあなたを認めてもらえるように色々すればいいじゃない」
「え……あ……。で、でも、私は霊夢には勝った事がないんだよ。さっきも言ったけど、スペルカードルールで少し差が――」
「差が縮まってるんじゃない。なら、あなたが勝つ可能性が少し見えてきたって事でいいんじゃないかしら。というか、スペルカードルールができたのって最近だけど、あなたも、もう戦ったの?」
そんなとんでもないことを魔理沙は呟いた。私みたいな宵闇の妖怪にそんな事を聞かれても困る。キャラ崩壊にも限度ってものがあるわよ。
「どうしたのよ一体」
「いや、私も霊夢と一緒に、異変を解決しただろう。でもどういうわけか、あいつは妖怪に好かれたのに、私はそうならない。それが何か変に思ってな」
「? でも確か、紅の館には魔法使いがいたって霊夢から聞いたわ。その人と仲良くならなかったの?」
「いや、何冊か本を借りたら、突然図書館出入りのブラックリストに載ったんだよ。不思議な事に」
「本当に不思議ね。あえて、詳しくは聞かない事にするけど」
私達の会話が止まっても、月は少しずつ動いている。
「……勝っているからかな」
魔理沙はたった数十秒の沈黙にも耐えられないのか、慌てたように新たな会話を切り出してきた。
「霊夢は勝ち続けているから、人気があるのかな」
「何よそれ」
「私が知る限り、霊夢が戦いに負けた話なんて聞いた事がないんだよ。噂さえ聞かない。そして私は霊夢ほど勝ってはいない」
「あなたも紅い館に乗り込んだんでしょう?」
「私はパチュリーや咲夜の足止め程度しかしてないさ。霊夢はたった一人で、最強の妖怪とまで言われる吸血鬼に勝った。そもそも、私自身霊夢に負けてるんだ。しかも、真剣勝負で」
「…………」
魔理沙にしては珍しい悩みだ。そんな事で悩んでいるなんて。
「というか、一度も勝ったことがない霊夢をどうやって殺すつもりよ」
「…………」
顔を逸らすということは、そこまで考えていなかったのだろうか。
「……後ろから闇討ちするとか」
「館にいるらしい妖怪より、よっぽど妖怪らしい考えね」
それでも、それで霊夢が死ぬとも思えない。いっその事、手伝ってあげようかしら。
しかし、万が一にもその闇討ちが成功してしまっては困る。
私だって、今まであらゆる者達に勝つ実力と、結界を操る力を持つ霊夢を食べてみたいと思わなかったわけではない。
でも、妖怪の私であっても、目先の欲にとらわれずに霊夢と会話する娯楽を続けていきたい想いはある。
目の前にいる魔法使い如きに霊夢を消されるわけにはいかないのよね。どうにかして止めることができないかしら。
「……そういえば魔理沙は、どうして霊夢を倒したいのかしら」
さっきは妖怪に好かれたいとか何とか言っていたけど、こんな人間らしい人間に、そんな考えがあるのか。
「…………」
「? どうして何も言わないの? 霊夢を殺したいと思うくらいなんだから、何かはっきりとした目的があるんでしょう」
「……認めてほしいんだ」
「は?」
「……誰かに、私の努力を認めてほしいんだ」
ああ、これは本当に人間らしい悩みだ。わたしの中で徐々に興味が無くなっていくのを感じる。この人間は本当に、あの霊夢と共に異変を解決したのだろうか。
「霊夢と一緒に異変を解決して、わかるんだよ。同じ人間であるにも関わらず、あいつと私の、強さと才能の差が。スペルカードルールがあってその差が縮まっているようなもの。闇討ちとか言ったけど、返り討ちに遭う可能性が大きいのは自分で解っている」
「誰かって、誰よ」
「え?」
「わざわざ森で暮らすような人間が、人里にいるような普通の人間に認めてもらおうとは、とても思えないわね。もう決まってるんじゃないの? あなたが認めてほしいって思ってる人」
「い……やぁ。実際、特に決まっている奴もいないけどなぁ……」
まったく面倒くさい。自分で決めている事なのに内容が曖昧なんて。
そう考えれば、そういう類の悩みがないから、霊夢は人間っぽくない様に見えるのかもしれないわね。
でもまぁ、これで何とかできそうね。
「じゃあ、霊夢でいいじゃない」
「え?」
「妖怪の私が言うのも何だけど、殺すなんて野暮な事は言わないで、霊夢にあなたを認めてもらえるように色々すればいいじゃない」
「え……あ……。で、でも、私は霊夢には勝った事がないんだよ。さっきも言ったけど、スペルカードルールで少し差が――」
「差が縮まってるんじゃない。なら、あなたが勝つ可能性が少し見えてきたって事でいいんじゃないかしら。というか、スペルカードルールができたのって最近だけど、あなたも、もう戦ったの?」