皆様こんにちは。
幻想郷本を愛する会、会長です。
......嘘です。名乗るほどでもない妖怪です。
しかしながら、本は無限の可能性を持っていると信じる心は、幻想郷一番と自負しております。
例えば今私が持っているこの一冊の本。
ちょっとした挿絵と共に、漢字が羅列しております。
これは中国語と言うそうです。
そして、これは中華料理という料理の本だと知った私はぴんときました。
そう、湖畔にそびえるお屋敷、紅魔館の門番の紅美鈴さん。
彼女が中華小娘と呼ばれていたはずです。
きっと彼女なら読み解く事ができるでしょう。
という事で秘密のアジトから目的地に到着した私ですが、一つ問題が。
美鈴さんは昼寝の最中でした。
どうしたものかと思案していると、音もなく私の隣に女性が現れて、にっこり笑いかけてきます。
こちらが反応できずにいる間に、その女性は美鈴さんにチョップをかまし、また瞬時に消えてしまいました。
きっと彼女が噂の、十六夜咲夜さんと言うメイド長なのでしょう。初めて見ました。
「いてて......えっと、何の用?」
美鈴さんは頭を押さえ、私に聞いてきます。
なので私は早速例の本を取り出し、美鈴さんに見せました。
「へぇ、幻想郷にもこんな本があるんだね」
美鈴さんが興味を持ってくれたようなので、私は計画を実行に移しました。
前もって挟んでおいた、芙蓉蟹、という料理のページを開きます。
読み方は分かりません。
「あー、*****か。美味しそうだよね」
残念ながらよく聞き取れませんでしたが、まあ問題無いでしょう。
ともかく、緊張の一瞬がやってきました。
これを作って欲しい旨を伝えます。
「構わないけど、食材が集まるかな」
あっさり了解してもらえましたが、美鈴さんが言うには、この料理には蟹が必要なんだとか。
まあ蟹の字が入ってますもんね。
問題は蟹の種類で、沢蟹を使うと味の保証は出来ないそうです。
しかし幻想郷に海はありません。
「ま、もし手に入ったらまたおいで。作ってあげる」
美鈴さんは、たまには料理するのも良いからねと、約束してくれました。
なんて優しいんでしょうか。
ですが折角約束しても、蟹が手に入らなければ意味がありません。
思案を重ねたものの結局解決案が出ることはなく、その日は寝てしまいました。
人事を尽くしていないからか、寝ている間に果報はなく、問題は未だ高くそびえたっています。
しかし、私一人で解決しようとするのも限界があります。
そこで、今日は助っ人を頼ろうかと思います。
「海に住む蟹?」
訪ねたのは人里、寺子屋の先生こと、上白沢慧音さん。
彼女は、あの白澤を宿していると聞きました。
白澤と言えば森羅万象に通ずると言いますし、何かいい案を授けてくれそうです。
「知っているとは思うが、幻想郷には海が無い。従って、海に住む蟹も手に入らないだろうな。手が無いわけではないが」
手が一つでもあるならと教えを乞うと、慧音先生は気乗りしない様子ではあるものの教えてくれました。
「一つは香霖堂という、外の世界の物を扱った店で探す事。もう一つは、八雲紫に頼む事だ。......私としてはおすすめできないが」
確かに、香霖堂と言うお店は聞いたことがあります。
外の世界の品なんて嘘っぱちだと、信じていませんでしたけどね。
そして八雲紫、この名前は大抵の人が知っているのではないでしょうか。
外の世界に行くことの可能な、恐らく唯一の妖怪。
まあそんな事はどうでもいいんです。
とりあえず慧音先生から香霖堂の場所を教えてもらって、見に行くことにしました。
飛ぶこと数分、だいぶ人里から離れた森の際に、香霖堂はありました。
近寄り難い雰囲気がありますが、意を決して入る事にします。
「いらっしゃい」
きっとこの男性が、店主の森近霖之助さんでしょう。
慧音先生の説明通り、本を読んでいました。
早速私は外の世界の蟹について尋ねました。
「蟹?あぁ、ちょうど良くあるよ」
そういって奥から出てきたのは、国産蟹、と書かれた箱でした。
「ほら、これだ。なんのつもりか知らないが、数分前に八雲紫が売りつけてきた」
ここで八雲紫の名前が出てくるとは。
しかしそれなら、中身はきっと外の世界の蟹に違いないですね。
「で、お買い上げかい?」
霖之助さんは余り期待していない様子で尋ねてきました。
それもそのはず、お金なんて持っていませんから。
しかし!
本は無限の可能性を持っていると信じる私には、今手元にあるこの本がきっと解決してくれると確信出来るのです。
もちろん私の下から去っていくことは悲しいですが、仕方ありません。
霖之助さんも本好きのようですし、きっと大事にしてもらえるでしょう。
と、いう事で私は物々交換を申し出ました。
「そりゃあ、これに見合う物なら構わないが」
最初は乗り気でない様子の霖之助さんでしたが、私が出したものを見るやいなや即決してくれました。
余り商売人には向いてない方ですね。
本好きとしては共感できますが。
何はともあれ、予想よりずっと早く目標が達成できたのは喜ばしい事です。
香霖堂への認識を改めつつ、美鈴さんの所へ持って行きました。
「よく手にいれたねぇ」
美鈴さんもびっくりしていました。
そして美鈴さんが言うには、咲夜さんが他の材料を用意してくれるとか。
今度は私がびっくりです。
「ただし、お嬢様の分も一緒に作る事が条件だって。でもまあ、これだけあれば十分だね」
美鈴さんはもう、腕まくりをしていました。
その後、またもや突然現れた咲夜さんの先導で、紅魔館の台所へ。
台所には大量の食材と、二人の女性が。
「勝手に入らないで下さいと、何度言えば分かって頂けるんです?」
「あら、ごめんなさい」
咲夜さんが呆れた様子で言うと、二人のうち、傘を持った方の女性が答えました。
「蟹は役立ったかしら」
室内で傘なんてと思っていると、突然その女性が私に話しかけてきました。
まさか、と思い、確かめると。
「ええ、私が八雲紫。私達もご一緒して良いかしら?」
蟹の提供者を断る訳がありません。
私の答えに、紫さんはにっこり笑って頷いてくれました。
「それじゃあ藍、お手伝いしなさい」
「はい。美鈴さん、よろしくお願いします」
もう一人の、たくさんの尻尾を持つ女性が答え、調理台に立ちました。
主に美鈴さん、そして藍さんと咲夜さんが調理をしている間に、私は紫さんに尋ねてみました。
即ち、どうして蟹を用意してくれたのか。
「用意だなんて、貴女はちゃんと対価を支払ったじゃない。ただの偶然よ」
偶然で片付けるには出来すぎている気がしますが、紫さんは微笑むばかり。
何となくこれ以上追求するのは無理だと思い、納得する事にしました。
一刻程の後に紅魔館の主、レミリア・スカーレットが姿を見せました。
出来上がった料理を見て咲夜さんと少し話すと、私の方へやってきます。
「今日はお招きありがとう。これはお返しよ。受け取りなさい」
どう答えるべきか分からず固まっていると、一つの包みを渡されました。
中身は何かの焼き菓子のようで、甘い香り。
ともかくお礼を、と思って頭を下げると、実に優雅に礼を返されてしまいました。
「さあ、皆さん席に着いて下さい」
咲夜さんに促され席に着くと、目の前には美味しそうに湯気をたてる料理が。
「それじゃあ貴女、音頭とりなさい」
レミリアさんに言われ、どうしたものかと思って皆さんを見回しました。
美鈴さん、咲夜さん、紫さん、藍さん、そしてレミリアさん、皆さんにお世話になっています。
ああそうだ、慧音先生と霖之助さんもですね。
後で持って行こうと思いながら、私は口を開きました。
「この食事に至った縁に感謝して。......いただきます!」
幻想郷本を愛する会、会長です。
......嘘です。名乗るほどでもない妖怪です。
しかしながら、本は無限の可能性を持っていると信じる心は、幻想郷一番と自負しております。
例えば今私が持っているこの一冊の本。
ちょっとした挿絵と共に、漢字が羅列しております。
これは中国語と言うそうです。
そして、これは中華料理という料理の本だと知った私はぴんときました。
そう、湖畔にそびえるお屋敷、紅魔館の門番の紅美鈴さん。
彼女が中華小娘と呼ばれていたはずです。
きっと彼女なら読み解く事ができるでしょう。
という事で秘密のアジトから目的地に到着した私ですが、一つ問題が。
美鈴さんは昼寝の最中でした。
どうしたものかと思案していると、音もなく私の隣に女性が現れて、にっこり笑いかけてきます。
こちらが反応できずにいる間に、その女性は美鈴さんにチョップをかまし、また瞬時に消えてしまいました。
きっと彼女が噂の、十六夜咲夜さんと言うメイド長なのでしょう。初めて見ました。
「いてて......えっと、何の用?」
美鈴さんは頭を押さえ、私に聞いてきます。
なので私は早速例の本を取り出し、美鈴さんに見せました。
「へぇ、幻想郷にもこんな本があるんだね」
美鈴さんが興味を持ってくれたようなので、私は計画を実行に移しました。
前もって挟んでおいた、芙蓉蟹、という料理のページを開きます。
読み方は分かりません。
「あー、*****か。美味しそうだよね」
残念ながらよく聞き取れませんでしたが、まあ問題無いでしょう。
ともかく、緊張の一瞬がやってきました。
これを作って欲しい旨を伝えます。
「構わないけど、食材が集まるかな」
あっさり了解してもらえましたが、美鈴さんが言うには、この料理には蟹が必要なんだとか。
まあ蟹の字が入ってますもんね。
問題は蟹の種類で、沢蟹を使うと味の保証は出来ないそうです。
しかし幻想郷に海はありません。
「ま、もし手に入ったらまたおいで。作ってあげる」
美鈴さんは、たまには料理するのも良いからねと、約束してくれました。
なんて優しいんでしょうか。
ですが折角約束しても、蟹が手に入らなければ意味がありません。
思案を重ねたものの結局解決案が出ることはなく、その日は寝てしまいました。
人事を尽くしていないからか、寝ている間に果報はなく、問題は未だ高くそびえたっています。
しかし、私一人で解決しようとするのも限界があります。
そこで、今日は助っ人を頼ろうかと思います。
「海に住む蟹?」
訪ねたのは人里、寺子屋の先生こと、上白沢慧音さん。
彼女は、あの白澤を宿していると聞きました。
白澤と言えば森羅万象に通ずると言いますし、何かいい案を授けてくれそうです。
「知っているとは思うが、幻想郷には海が無い。従って、海に住む蟹も手に入らないだろうな。手が無いわけではないが」
手が一つでもあるならと教えを乞うと、慧音先生は気乗りしない様子ではあるものの教えてくれました。
「一つは香霖堂という、外の世界の物を扱った店で探す事。もう一つは、八雲紫に頼む事だ。......私としてはおすすめできないが」
確かに、香霖堂と言うお店は聞いたことがあります。
外の世界の品なんて嘘っぱちだと、信じていませんでしたけどね。
そして八雲紫、この名前は大抵の人が知っているのではないでしょうか。
外の世界に行くことの可能な、恐らく唯一の妖怪。
まあそんな事はどうでもいいんです。
とりあえず慧音先生から香霖堂の場所を教えてもらって、見に行くことにしました。
飛ぶこと数分、だいぶ人里から離れた森の際に、香霖堂はありました。
近寄り難い雰囲気がありますが、意を決して入る事にします。
「いらっしゃい」
きっとこの男性が、店主の森近霖之助さんでしょう。
慧音先生の説明通り、本を読んでいました。
早速私は外の世界の蟹について尋ねました。
「蟹?あぁ、ちょうど良くあるよ」
そういって奥から出てきたのは、国産蟹、と書かれた箱でした。
「ほら、これだ。なんのつもりか知らないが、数分前に八雲紫が売りつけてきた」
ここで八雲紫の名前が出てくるとは。
しかしそれなら、中身はきっと外の世界の蟹に違いないですね。
「で、お買い上げかい?」
霖之助さんは余り期待していない様子で尋ねてきました。
それもそのはず、お金なんて持っていませんから。
しかし!
本は無限の可能性を持っていると信じる私には、今手元にあるこの本がきっと解決してくれると確信出来るのです。
もちろん私の下から去っていくことは悲しいですが、仕方ありません。
霖之助さんも本好きのようですし、きっと大事にしてもらえるでしょう。
と、いう事で私は物々交換を申し出ました。
「そりゃあ、これに見合う物なら構わないが」
最初は乗り気でない様子の霖之助さんでしたが、私が出したものを見るやいなや即決してくれました。
余り商売人には向いてない方ですね。
本好きとしては共感できますが。
何はともあれ、予想よりずっと早く目標が達成できたのは喜ばしい事です。
香霖堂への認識を改めつつ、美鈴さんの所へ持って行きました。
「よく手にいれたねぇ」
美鈴さんもびっくりしていました。
そして美鈴さんが言うには、咲夜さんが他の材料を用意してくれるとか。
今度は私がびっくりです。
「ただし、お嬢様の分も一緒に作る事が条件だって。でもまあ、これだけあれば十分だね」
美鈴さんはもう、腕まくりをしていました。
その後、またもや突然現れた咲夜さんの先導で、紅魔館の台所へ。
台所には大量の食材と、二人の女性が。
「勝手に入らないで下さいと、何度言えば分かって頂けるんです?」
「あら、ごめんなさい」
咲夜さんが呆れた様子で言うと、二人のうち、傘を持った方の女性が答えました。
「蟹は役立ったかしら」
室内で傘なんてと思っていると、突然その女性が私に話しかけてきました。
まさか、と思い、確かめると。
「ええ、私が八雲紫。私達もご一緒して良いかしら?」
蟹の提供者を断る訳がありません。
私の答えに、紫さんはにっこり笑って頷いてくれました。
「それじゃあ藍、お手伝いしなさい」
「はい。美鈴さん、よろしくお願いします」
もう一人の、たくさんの尻尾を持つ女性が答え、調理台に立ちました。
主に美鈴さん、そして藍さんと咲夜さんが調理をしている間に、私は紫さんに尋ねてみました。
即ち、どうして蟹を用意してくれたのか。
「用意だなんて、貴女はちゃんと対価を支払ったじゃない。ただの偶然よ」
偶然で片付けるには出来すぎている気がしますが、紫さんは微笑むばかり。
何となくこれ以上追求するのは無理だと思い、納得する事にしました。
一刻程の後に紅魔館の主、レミリア・スカーレットが姿を見せました。
出来上がった料理を見て咲夜さんと少し話すと、私の方へやってきます。
「今日はお招きありがとう。これはお返しよ。受け取りなさい」
どう答えるべきか分からず固まっていると、一つの包みを渡されました。
中身は何かの焼き菓子のようで、甘い香り。
ともかくお礼を、と思って頭を下げると、実に優雅に礼を返されてしまいました。
「さあ、皆さん席に着いて下さい」
咲夜さんに促され席に着くと、目の前には美味しそうに湯気をたてる料理が。
「それじゃあ貴女、音頭とりなさい」
レミリアさんに言われ、どうしたものかと思って皆さんを見回しました。
美鈴さん、咲夜さん、紫さん、藍さん、そしてレミリアさん、皆さんにお世話になっています。
ああそうだ、慧音先生と霖之助さんもですね。
後で持って行こうと思いながら、私は口を開きました。
「この食事に至った縁に感謝して。......いただきます!」
紫はきっとたまたまカニが食いたかったんだろうなぁ
ほとんど一瞬しか出番無いけどレミリアが貴族っぽくてよかった
咲夜さん、チョップじゃなくて頭にナイフ突き刺すくらいするとおもってたww
まああの話の前と考えればアリか。