コソコソコソ
ボンヤリとした明かりがどこまでも続く本棚を照らし、静寂が張り詰める広大な図書館。そんな中を、誰にも気がつかれないように足音を殺して少女は歩いていた。
金髪をサイドテールに結び、頭には大きな赤いリボンを結んだナイトキャップを被っている。半袖のブラウスに赤いベストとミニスカート、胸元に黄色いタイを結んだ彼女はニヤニヤと楽しそうな笑顔を浮かべていた。
「どこにあるのかな?」
彼女が歩いているのは幻想郷でも一二を争うほど所蔵が多い紅魔館図書館。通称ヴワル図書館。その中でも娯楽に関する文献がならべられている一角であった。
「こっちかな、それともあっち?」
キョロキョロと本棚に並ぶ本のタイトルを確認し、彼女はお目当ての本を探す。しかし、どれだけ目を凝らしても同じような景色ばかり。目当てのものは一向に見つかる気配がなかった。
小悪魔に尋ねておけばよかったかなぁ、と少女はこの図書館で司書をしている彼女の顔を思い浮かべる。彼女ならば探している本など簡単に見つけることができるだろう。
「ん~でもそれはダメね。ギリギリまで秘密にして驚かせるんだから!」
首を横にふった彼女は思い浮かんだ考えを否定した。みんなを、特にお姉さまを驚かせたいと計画している少女にとって、秘密がバレるのは絶対に避けるべきことである。
そう。だから誰にも頼ることは、例え本棚の位置を尋ねることさえも少女はできなかった。しかし……
「全く、どこにあるのよっ!」
ぶぅ、と少女は拗ねた子どものように頬を膨らませる。やはりとでも言うべきか、本の森を道標なしで歩くのは無謀であるようだ。
この本棚の真ん中を弾幕で突き破ってみようかしら、見通しがよくなりそうだしさ。そんな物騒なアイディアが脳裏をよぎるやいなや、彼女は懐からカードを一枚取り出す。
ちょっと大きな音がするけれど大丈夫よね?なんて心の中で自己弁護をすると、彼女は腕を振り上げた。
禁忌、と自慢のスペルカード宣言を口にしようとした瞬間。
「妹様、むやみにスペルカードを宣言するものではありませんよ」
「きゃっ!こ、小悪魔!?」
背後から腕をつかまれ、彼女はかわいらしい悲鳴を上げるとともに宣言を中断した。
そこにいたのは、先ほどまで思い浮かべていた女性。白のブラウスに黒のベストとロングスカートの落ち着いた衣装に、深い赤の長髪が特徴的な図書館の司書がいた。
そんな彼女は、目の前で弾幕を展開して器物破損の実行犯になろうとしていた少女――フランドール・スカーレットの腕を放す。
「もう、駄目じゃないですか。本は大切に扱ってくださいね」
「いやーその、アハハ……。ゴメンね」
めっと人差し指を立ててフランドールに注意をする小悪魔。お姉ちゃん怒ったぞ、とでも言いたげな雰囲気の彼女の前に、フランドールは頬をかいて謝った。
しかし、このままでは危ない。弾幕を展開しようとした理由を尋ねられた時の言い訳が思いつかないフランドールは、すぐにでも逃げ出せるように静かに足を引いた。
わかったのならいいです、と柔らかい笑顔を浮かべて頷く小悪魔。ジリジリとタイミングを見計らうために彼女を見つめていたフランドールは、小悪魔の手にした本に視線が吸い寄せられた。
それはまさにフランドールが探していたものであった。まさかこんな形で見つけることができるなんて。思わず表情を明るくする。
それでは、と注意だけして立ち去ろうとした小悪魔であったが、フランドールの表情の変化に気がついた。いったい何だろうと首を傾げる彼女であるが、向けられるの視線の先に自分の脇に挟んだ本があることに気がつく。
ハハン、と楽しそうな笑いを浮かべる小悪魔。なるほどなるほど、妹様もそのようなことを気になされるのですね。
「もしかして、この本を探されていたのですか?」
「え?あ、いや、その……」
「ふふふ、妹様も準備をされるのですか?バレンタインの」
「う~っ。もう!秘密にしていたのに」
小悪魔が持っていた本、『バレンタインに向けての手作りお菓子レシピ』に目が奪われていたフランドールの秘密をあっさりと指摘する小悪魔と、秘密をばらされて頬を膨らませるフランドール。あのようなわかりやすい表情をされては、さすがに小悪魔だって気がつくものである。
そんな幼い反応に頬を緩める小悪魔は、素直に本を渡そうとして――いいことを思いついた。
「ふふ、大丈夫ですよ。私は乙女の味方です。それよりも妹様、料理の経験はありますか?」
「料理?やったことないけれど、きっと大丈夫だよ。咲夜だってチョチョイとやってるしさ」
自信ありげに胸をそらしてフランドールはそう宣言した。
その根拠はいったいどこから来るのだろうか、と小悪魔は内心冷や汗をかく。咲夜さんはすごすぎて参考にならないんだけれどなぁ、とツッコミを入れたくなるが、そんな様子はおくびにも出さない。
「そうですか。ならば妹様、ちょうどいい方法があります。料理ができなくても、簡単に、相手をビックリさせる取っておきの方法が」
「え?なになに?教えてよ小悪魔」
よしヒットした!小悪魔は内心でガッツポーズを取る。純粋で知識が浅い妹様ならば乗ってくるだろうとおもったが、どうやらそのとおりであったようだ。
その方法はですね、と周りに誰もいないことを確認してフランドールに耳打ちをする小悪魔。ニヤリと楽しそうなその表情は、まさに「小悪魔」とでも表現するべきものであった。
―― ♪ ――
「バレン……タイン?」
「はい、そうです。本日二月十四日はバレンタインと呼ばれる行事が行われる日なのです」
紅魔館の食堂。食事を終えゆっくりと紅茶の香りを楽しんでいたレミリアはいぶかしげな表情を咲夜へと向けた。
「その『バレンタイン』とやらは私に何の関係があるんだ?」
「はい、バレンタインとは想いを寄せる人へと女性がチョコレートを送る日なのです。もっとも、最近はお世話になっている人へと感謝をこめて贈り物をする日とされていますけれど。という訳でですね」
ガサガサ、と背後へと手を回した咲夜はリボンで結ばれた瓶を取り出した。
「どうぞ、お嬢様。バレンタインプレゼントです」
「フフッ、突然何を言い出すのかと思えば。こういうことだったのね」
くすぐったそうに笑うレミリア。どうしてなかなか、面白いことをするのだろうか。
ニコニコと笑う咲夜からプレゼントを受け取ると、レミリアはラベルに書かれている文字へと目を通す。
「チョコレートのワイン?」
「ええ、お嬢様にピッタリかと思いまして」
「なるほどな。今日という日に、私にピッタリだな。ありがとう」
咲夜の心遣いに感謝の言葉を口にするレミリア。咲夜はそれに対し、どういたしましてと嬉しそうな笑顔で答える。
「では私からも、と言いたいところではあるが、残念ながらそんなものは準備していなくてな。なので、こういうのはどうだろうか」
ピンと人差し指を立て、ニヤリと面白いことを思いついた子供のような表情でレミリアは言葉を続ける。
「ワイングラスを『二つ』持ってきてくれないだろうか。もちろんお供してくれるよな、咲夜?」
え?と戸惑いの表情を浮かべる咲夜。メイドたるもの主人と酒を同席するなど……。
そんな無礼になります、と口を開こうとした咲夜であったが、主人の指に唇を塞がれる。
「今ばかりは気にするな。私なりの感謝の気持ちだ」
真剣な眼差しで、しかし少しだけいたずらっぽく笑うレミリア。そんな表情の前に、咲夜が断ることなんてできるだろうか。
少々お待ちください、とゆっくりとお辞儀をして踵を返す咲夜。その表情はとても嬉しそうであった。
……と、ここで終われば幸せなバレンタインであった。しかしそうは問屋がおろさない。
バタンッと景気がよい音と共に食堂のドアが開く。
そこには満面の笑みを浮かべたフランドールがいた。そこまではよくある光景なのだが、ひとつだけ問題があった。
「お姉さまっ!ハッピーバレンタインッ!」
聞きなれた妹の声へとレミリアは顔を向け……予想外の光景に目を大きく開く。
そこにいたのは愛しい妹であるフランドール。それはいい。そこまではいい。しかし。
「フ、フラン?どうしたのその格好?」
「えへへ~、かわいいでしょ?」
「確かにかわいい……ってそうじゃなくて!」
あーもう、と頭を抱えるレミリア。そんな姉の様子に不思議そうに首を傾げるフランドールもまたかわいらしい。
「フ、フラン?どうしてそんな破廉恥な、裸にリボンを巻いただけの格好をしているの!?」
そう、部屋に入ってきたフランドールは今どき漫画でも見かけないような古典的な服装をしていた。
いったい誰が入れ知恵をしたのだろうか。いやそんなのは一人に決まっているのだけれど。
そんな姉の心境など知る由もないフランドールは笑顔で犯人の名前を口にする。
「え?これならお姉さまを驚かせるって小悪魔が……」
「OKわかったわ。とりあえず服を着なさいフラン」
やはりアイツか。ニシシと笑う憎たらしい小悪魔の顔が手に取るように思い浮かぶ。
よくも私の妹にこんな素敵な……ゲフン、破廉恥なことを教えたわね。顔を伏せたレミリアはゆっくりと立ち上がる。ちょっと図書館まで急用ができてしまったようだ。
「あ、待ってお姉さま。もう一つ言わなきゃいけないことがあるの」
「ん、何かしらフラン?」
「えっと……『どうぞ、私を食べてね』」
あの小悪魔め。なんてことを。
ちょっとだけ待ってね、とフランドールへ言い残したレミリアは図書館へと全力で駆け出した。直々に教育をしてあげないといけないようだ。
なにをしてやろうかしら、と小悪魔への教育内容を考えながら、レミリアは少しでも早く用事を終わらせるために図書館へと急いだ。
――フランドールを食べるのが楽しみである。
ボンヤリとした明かりがどこまでも続く本棚を照らし、静寂が張り詰める広大な図書館。そんな中を、誰にも気がつかれないように足音を殺して少女は歩いていた。
金髪をサイドテールに結び、頭には大きな赤いリボンを結んだナイトキャップを被っている。半袖のブラウスに赤いベストとミニスカート、胸元に黄色いタイを結んだ彼女はニヤニヤと楽しそうな笑顔を浮かべていた。
「どこにあるのかな?」
彼女が歩いているのは幻想郷でも一二を争うほど所蔵が多い紅魔館図書館。通称ヴワル図書館。その中でも娯楽に関する文献がならべられている一角であった。
「こっちかな、それともあっち?」
キョロキョロと本棚に並ぶ本のタイトルを確認し、彼女はお目当ての本を探す。しかし、どれだけ目を凝らしても同じような景色ばかり。目当てのものは一向に見つかる気配がなかった。
小悪魔に尋ねておけばよかったかなぁ、と少女はこの図書館で司書をしている彼女の顔を思い浮かべる。彼女ならば探している本など簡単に見つけることができるだろう。
「ん~でもそれはダメね。ギリギリまで秘密にして驚かせるんだから!」
首を横にふった彼女は思い浮かんだ考えを否定した。みんなを、特にお姉さまを驚かせたいと計画している少女にとって、秘密がバレるのは絶対に避けるべきことである。
そう。だから誰にも頼ることは、例え本棚の位置を尋ねることさえも少女はできなかった。しかし……
「全く、どこにあるのよっ!」
ぶぅ、と少女は拗ねた子どものように頬を膨らませる。やはりとでも言うべきか、本の森を道標なしで歩くのは無謀であるようだ。
この本棚の真ん中を弾幕で突き破ってみようかしら、見通しがよくなりそうだしさ。そんな物騒なアイディアが脳裏をよぎるやいなや、彼女は懐からカードを一枚取り出す。
ちょっと大きな音がするけれど大丈夫よね?なんて心の中で自己弁護をすると、彼女は腕を振り上げた。
禁忌、と自慢のスペルカード宣言を口にしようとした瞬間。
「妹様、むやみにスペルカードを宣言するものではありませんよ」
「きゃっ!こ、小悪魔!?」
背後から腕をつかまれ、彼女はかわいらしい悲鳴を上げるとともに宣言を中断した。
そこにいたのは、先ほどまで思い浮かべていた女性。白のブラウスに黒のベストとロングスカートの落ち着いた衣装に、深い赤の長髪が特徴的な図書館の司書がいた。
そんな彼女は、目の前で弾幕を展開して器物破損の実行犯になろうとしていた少女――フランドール・スカーレットの腕を放す。
「もう、駄目じゃないですか。本は大切に扱ってくださいね」
「いやーその、アハハ……。ゴメンね」
めっと人差し指を立ててフランドールに注意をする小悪魔。お姉ちゃん怒ったぞ、とでも言いたげな雰囲気の彼女の前に、フランドールは頬をかいて謝った。
しかし、このままでは危ない。弾幕を展開しようとした理由を尋ねられた時の言い訳が思いつかないフランドールは、すぐにでも逃げ出せるように静かに足を引いた。
わかったのならいいです、と柔らかい笑顔を浮かべて頷く小悪魔。ジリジリとタイミングを見計らうために彼女を見つめていたフランドールは、小悪魔の手にした本に視線が吸い寄せられた。
それはまさにフランドールが探していたものであった。まさかこんな形で見つけることができるなんて。思わず表情を明るくする。
それでは、と注意だけして立ち去ろうとした小悪魔であったが、フランドールの表情の変化に気がついた。いったい何だろうと首を傾げる彼女であるが、向けられるの視線の先に自分の脇に挟んだ本があることに気がつく。
ハハン、と楽しそうな笑いを浮かべる小悪魔。なるほどなるほど、妹様もそのようなことを気になされるのですね。
「もしかして、この本を探されていたのですか?」
「え?あ、いや、その……」
「ふふふ、妹様も準備をされるのですか?バレンタインの」
「う~っ。もう!秘密にしていたのに」
小悪魔が持っていた本、『バレンタインに向けての手作りお菓子レシピ』に目が奪われていたフランドールの秘密をあっさりと指摘する小悪魔と、秘密をばらされて頬を膨らませるフランドール。あのようなわかりやすい表情をされては、さすがに小悪魔だって気がつくものである。
そんな幼い反応に頬を緩める小悪魔は、素直に本を渡そうとして――いいことを思いついた。
「ふふ、大丈夫ですよ。私は乙女の味方です。それよりも妹様、料理の経験はありますか?」
「料理?やったことないけれど、きっと大丈夫だよ。咲夜だってチョチョイとやってるしさ」
自信ありげに胸をそらしてフランドールはそう宣言した。
その根拠はいったいどこから来るのだろうか、と小悪魔は内心冷や汗をかく。咲夜さんはすごすぎて参考にならないんだけれどなぁ、とツッコミを入れたくなるが、そんな様子はおくびにも出さない。
「そうですか。ならば妹様、ちょうどいい方法があります。料理ができなくても、簡単に、相手をビックリさせる取っておきの方法が」
「え?なになに?教えてよ小悪魔」
よしヒットした!小悪魔は内心でガッツポーズを取る。純粋で知識が浅い妹様ならば乗ってくるだろうとおもったが、どうやらそのとおりであったようだ。
その方法はですね、と周りに誰もいないことを確認してフランドールに耳打ちをする小悪魔。ニヤリと楽しそうなその表情は、まさに「小悪魔」とでも表現するべきものであった。
―― ♪ ――
「バレン……タイン?」
「はい、そうです。本日二月十四日はバレンタインと呼ばれる行事が行われる日なのです」
紅魔館の食堂。食事を終えゆっくりと紅茶の香りを楽しんでいたレミリアはいぶかしげな表情を咲夜へと向けた。
「その『バレンタイン』とやらは私に何の関係があるんだ?」
「はい、バレンタインとは想いを寄せる人へと女性がチョコレートを送る日なのです。もっとも、最近はお世話になっている人へと感謝をこめて贈り物をする日とされていますけれど。という訳でですね」
ガサガサ、と背後へと手を回した咲夜はリボンで結ばれた瓶を取り出した。
「どうぞ、お嬢様。バレンタインプレゼントです」
「フフッ、突然何を言い出すのかと思えば。こういうことだったのね」
くすぐったそうに笑うレミリア。どうしてなかなか、面白いことをするのだろうか。
ニコニコと笑う咲夜からプレゼントを受け取ると、レミリアはラベルに書かれている文字へと目を通す。
「チョコレートのワイン?」
「ええ、お嬢様にピッタリかと思いまして」
「なるほどな。今日という日に、私にピッタリだな。ありがとう」
咲夜の心遣いに感謝の言葉を口にするレミリア。咲夜はそれに対し、どういたしましてと嬉しそうな笑顔で答える。
「では私からも、と言いたいところではあるが、残念ながらそんなものは準備していなくてな。なので、こういうのはどうだろうか」
ピンと人差し指を立て、ニヤリと面白いことを思いついた子供のような表情でレミリアは言葉を続ける。
「ワイングラスを『二つ』持ってきてくれないだろうか。もちろんお供してくれるよな、咲夜?」
え?と戸惑いの表情を浮かべる咲夜。メイドたるもの主人と酒を同席するなど……。
そんな無礼になります、と口を開こうとした咲夜であったが、主人の指に唇を塞がれる。
「今ばかりは気にするな。私なりの感謝の気持ちだ」
真剣な眼差しで、しかし少しだけいたずらっぽく笑うレミリア。そんな表情の前に、咲夜が断ることなんてできるだろうか。
少々お待ちください、とゆっくりとお辞儀をして踵を返す咲夜。その表情はとても嬉しそうであった。
……と、ここで終われば幸せなバレンタインであった。しかしそうは問屋がおろさない。
バタンッと景気がよい音と共に食堂のドアが開く。
そこには満面の笑みを浮かべたフランドールがいた。そこまではよくある光景なのだが、ひとつだけ問題があった。
「お姉さまっ!ハッピーバレンタインッ!」
聞きなれた妹の声へとレミリアは顔を向け……予想外の光景に目を大きく開く。
そこにいたのは愛しい妹であるフランドール。それはいい。そこまではいい。しかし。
「フ、フラン?どうしたのその格好?」
「えへへ~、かわいいでしょ?」
「確かにかわいい……ってそうじゃなくて!」
あーもう、と頭を抱えるレミリア。そんな姉の様子に不思議そうに首を傾げるフランドールもまたかわいらしい。
「フ、フラン?どうしてそんな破廉恥な、裸にリボンを巻いただけの格好をしているの!?」
そう、部屋に入ってきたフランドールは今どき漫画でも見かけないような古典的な服装をしていた。
いったい誰が入れ知恵をしたのだろうか。いやそんなのは一人に決まっているのだけれど。
そんな姉の心境など知る由もないフランドールは笑顔で犯人の名前を口にする。
「え?これならお姉さまを驚かせるって小悪魔が……」
「OKわかったわ。とりあえず服を着なさいフラン」
やはりアイツか。ニシシと笑う憎たらしい小悪魔の顔が手に取るように思い浮かぶ。
よくも私の妹にこんな素敵な……ゲフン、破廉恥なことを教えたわね。顔を伏せたレミリアはゆっくりと立ち上がる。ちょっと図書館まで急用ができてしまったようだ。
「あ、待ってお姉さま。もう一つ言わなきゃいけないことがあるの」
「ん、何かしらフラン?」
「えっと……『どうぞ、私を食べてね』」
あの小悪魔め。なんてことを。
ちょっとだけ待ってね、とフランドールへ言い残したレミリアは図書館へと全力で駆け出した。直々に教育をしてあげないといけないようだ。
なにをしてやろうかしら、と小悪魔への教育内容を考えながら、レミリアは少しでも早く用事を終わらせるために図書館へと急いだ。
――フランドールを食べるのが楽しみである。
GJ
ワイングラスを2つと言うお嬢様が素敵でした
それはそうと、ホワイトデーはもちろん3倍返ししてくれんですよね?お嬢様