コンコン、と高いノックの音がして、憂鬱な気持ちが倍になった。時が来たのだと、認めてしまったからだ。
いっそこのまま無視してやろうか、とも思うがそれでは紅魔館の主としての名が廃る。渋々、どうぞ、と声を発して扉の向こうにいるであろう二人を招き入れた。
「失礼します。お嬢様、お客様がお見えになりました」
「通せ」
恭しく頭を下げて現れた十六夜咲夜にやつあたり気味に言葉を返す。咲夜は表情を変えずに客人を通した。
客人の口が、またあとで、と動いたのが見える。咲夜はやはり表情を変えずに無言で、しかりごく小さく頷いた。
「咲夜。お前は部屋に戻って、少し休んでいろ」
「はい。畏まりました」
いきなり休憩を告げられた咲夜は、怪訝な顔をまるで見せずに、ただ頷いた。勿論、その心の中は疑念で支配されているのだろう。
通常、自室に客を招き入れた時は咲夜も室内に残す。万が一、念のためという奴だ。しかし今回の来客に対してはその万が一がない。だからこそ、咲夜もあっさりと自分の命令を聞き入れたのだ。
咲夜が退室し、通された客人は自分の前までトコトコとやってくると、今しがた咲夜がそうしたように頭を下げ、
「九代目阿礼乙女、稗田阿求。紅魔館の主、レミリア・スカーレット嬢に、ご挨拶に伺いました」
と、言った。
これは"儀礼"だ。言いたいことが山ほどあるのを、なんとか抑える。
「聞こうか」
「はい。私、稗田阿求は来月より転生の儀へと入ります。『幻想郷縁起』に関わる取材の許可、並びに、その協力に深く感謝申し上げます」
たった四文字の言葉を苦しげに絞り出した自分とは対照的に、阿求はまるで詩を諳んじるかのようにスラスラと用件を述べた。
"九代目阿礼乙女"と名乗った時から、いや、もっと言えば今日の運命が見えた時から、彼女がそうするのは分かっていた。けれど今の私は彼女に、ご苦労だった、と平静を装って労うのが精一杯だった。
"稗田阿求"と、"レミリア・スカーレット"の話であれば、もっと言えることがあっただろう。
けれど彼女は"阿礼乙女"と、"紅魔館の主"としての会話を望んだ。だから、自分に言えることは、もうない。
阿求との別離が惜しいわけではない。
阿求との別離を惜しむ、あいつが心配なんだ。
そう思うことは、阿求への軽蔑に当たるだろうか。いや、中途半端な同情こそが、阿求に対する冒涜に違いない。
「疲れただろう、阿求。紅茶でも飲んで、充分休んでいくがいい。うちのメイドを貸そう」
そう言うと阿求は柔らかい笑みを浮かべ、ありがとうございます、と返す。すぐに妖精メイドに咲夜を呼びに行かせた。
「…………本当は、会ってくれないんじゃないかと思ってました」
"儀式"はもう終わっている。"阿求"は少し砕けた感じで話しかけてきた。
「会いたくはなかったさ。お前との時間を終わらせてしまうのは、余りにも惜しい」
「お褒めに預かり、光栄です」
阿求が初めて紅魔館にやってきた時のことを思い出す。
人間が妖怪に襲われないための書物を制作している。
そう言って阿求は協力を仰ぎに一人でやってきた。道中、妖怪に襲われたらどうするつもりだったのだろうと思うが、どうやらそこまでは思い至らなかったらしい。
それから紅魔館に来るときには咲夜をつかせた。他に人がいなかったからとも言えるし、咲夜が適任だと思ったからとも言える。
そしてそれは――私が導き出した答えなのだから当然だが――正解だった。あの二人は文字通り、"運命に惹かれ合うように"、仲良くなっていった。
咲夜は明るくなった。元々暗いわけでもなかったが、よく笑うようになったと言えばいいだろうか。
何よりも完全で瀟洒であることを良しとする人間だったので、度が過ぎることはなかったが、人里へよく行くようになった。
私たち紅魔館の人間はそれを微笑ましく思っていた。あの咲夜が、自分を従えるもの以外に対しては無愛想で無関心だったあの咲夜が、と誰もが思った。
客を招くと咲夜は笑顔を浮かべた。それはただ完璧な笑顔で、それ以外は何もなかった。
レミリア・スカーレットの従者である以上完璧であらねばならないと、強く言い聞かせたのは自分だが、その笑顔を見る度にチクリを胸を刺すものもあった。
だからこそ私は咲夜の変化を一番喜んでいた。そして、その変化をもたらした稗田阿求という人間を非常に好ましく思っていた。
"転生"。その言葉が表すのは、稗田阿求の、"死"だ。
それが彼女の運命であることなど、最初から、分かっていた。
呼ばれた咲夜が部屋に戻ってきたので、阿求へ言ったのと同じようなことを繰り返して告げた。
阿求と一言二言交わした咲夜が、失礼します、と言って静かに扉を閉めた。
頭が上がった時にちらっと見えた顔は、笑っていた。私が、私たちが好きな笑顔がそこにあった。
次に自分の前に現れたとき、咲夜は泣いているだろうか、歯を食いしばって涙を堪えるだろうか。仕事に集中して、忘れようとするだろうか。呆然としているだけというのもありそうだ。
それとも、完璧な笑顔を貼り付けて、私たちの前をやり過ごすのだろうか。
心が痛んだ。どうしようもなくなって、不貞寝をしようと決めた。
瞼の裏に咲夜の笑顔が浮かんだ。その笑顔は、どっちなんだろう。
「来月より、転生の儀へと入ります」
そう言われてもティーカップを落とさずに済んだのは、もしかしたらどこかでそれを予期していたからかもしれない。
レミリア嬢に言伝がある、と言っていた。私にはそれが何かわからないと思っていたが、少し考えれば他にないと気付ける。やはり無意識のうちにそれを拒んでいたんだろうか。
「そう。寂しくなるわね」
阿求と出会うまで、誰かとの別離というものに深く考えたことはなかった。それは自分の死によってもたらされるもののはずだったからだ。
紅魔館に人間は自分しかいない。紅魔館がやや隔離された存在というのもあって、交友関係も広いわけではない。
異変を通して紅白の巫女や白黒の魔法使いと出会ったが、彼女らよりも自分が先に逝くというのは、私の中では半ば確定事項だった。私だけ能力を常に使っていて消耗が激しいことは、誰の目にも明らかだ。
誰かの死に触れることなどなかったはずの自分。それを覆したのが、阿求だった。
初めて出会ったあの日、道すがら話を色々聞いてきた阿求。幼い外見とは裏腹に、しっかりとした考えと信念を持っていた。
ちょっと抜けたところがあるのが、愛らしいと思った。そんな阿求を見て笑うと、私といる時はそうしていてください、と言われた。あなたは私のメイドではないのですから、とも。
"阿礼乙女"と呼ばれる存在について調べた。そしてそれが例外なく短命であることを知って自分は…………自分は、どうしたのだったか。
いつか今日のような日が来るのは分かっていたはず。なのにショックを受けているのは、やはりそこから目を背けていたということになるのだろうか。
いや、考えるのはやめておこう。目の前には阿求がいる。彼女に残された時間は、あと僅かなのだから。
「じゃあ、これが最後の晩餐ね。ゆっくり、愉しみましょう」
私はうまく笑えているだろうか?
阿求と自分の前に一つずつティーカップを置いて、紅茶を注ぐ。二人の間にはクッキーを皿に乗せて置いた。
まだ熱い紅茶の入ったティーカップを、阿求は両手で大事そうに持って紅茶を一口飲んで、
「美味しい……」
と、言う。
ああ、それは初めて阿求がここへ来た時のようだった。あの時も同じように出された紅茶を、同じように飲んでいた。
「秘密の隠し味が入っていますの」
あの時と同じように返した。阿求はくすくすと笑いながら――あの時は実に興味深そうにしていた――尋ねる。
「それは、何ですか?」
「秘密ですから、内緒ですわ」
今思えば、なんと滑稽なやり取りだろう。茶番、と言っても差し支えなかった。
「今思えば滑稽極まりないですね」
「貴方そういう雰囲気壊すことやめなさいよ」
少し空気の読めない面があることは、後から知った。それを咎めると、阿求は少し拗ねたようにした。
「だって、暗い雰囲気になるの嫌ですし。咲夜さんにも、無理してほしくないです」
時が止まったような気がした。いや、むしろ止めていたのかもしれない。なんとか心を鎮めて、努めて冷静に返す。
「そんなに暗い顔してた?」
「してませんよ? でも、だから無理しているんだろうなって思いました」
「…………やられたわ」
小賢しいところがあるのも、知っていたはずなのに。したり顔で笑う阿求を見ると、悔しい。
わざとらしく、大きく溜息をついた。それは、完全で瀟洒なメイドらしくはなかったかもしれないが。
「でも仕方ないでしょう? 貴方との最後を、暗い顔で終わらせたくないもの。だから、少しぐらいの無理には目を瞑って」
開き直った。自分がここまで素直になれる相手というのは、阿求以外にはいないかもしれない。異変で顔を合わすような面々とも言いたいことを言っているが、あれは素直とは少し違う気がする。
「そういうことなら、仕方ないですね」
頬が少し赤いのは、紅茶の熱が移ったからだろうか。そうでなければいい、と思う。
そこからは二人で思い出話をした。
ナイフ投げを見せて欲しいと言われたので妖精メイドの頭の上に林檎を乗せたら、珍しく手元が狂って額に当たり大慌てした。
人里に呼ばれたので、急いで駆けつけたら紅茶を淹れて欲しい、と言われたので拍子抜けした。報酬にと貰った緑茶が美味しくて紅魔館でもブームになった。
求聞史紀の見本が完成したので見て欲しい、と言われた。阿求が作った私の物語に腹を抱えて笑った。顔を真赤にした阿求が、意地でもこのまま載せますから、と言って、本当に載った。
春、博麗神社の花見へ連れて行った。妖怪が沢山いて、阿求は目を輝かせていた。お嬢様に、お前もついていけ、と言ってもらえて二人で色んなところを回った。
夏、あまりの暑さに、人里に帰る途中、阿求が倒れた。湖畔で涼んでいたチルノの首根っこを掴んで、冷まさせた。
秋、読書の秋です、と息巻いて紅魔館にやってきた阿求は数週間大図書館に引きこもった。仕事の合間を縫って様子を見に行くと、読んでいたのは外から流れてきた漫画だった。
冬、雪合戦をした。一発でも当たれば私の勝ちです、と言うので時を止めてでも全弾回避した。少し大人気なかったかと、今では思う。
春、春告精を捕まえたいと阿求が言った。可哀想だからやめておきなさい、と窘めたが、阿求も中々譲らず喧嘩になった。
夏、蛍を見に行きたいと阿求が言った。私も見たかったので、リグル・ナイトバグを捕まえて、蛍を呼び寄せた。
秋、冬、春、夏、秋、冬、…………。
「…………咲夜さん。私、そろそろ帰らなくてはいけません」
その時が、来た。
「そう。泊まっていかないのね?」
「はい。今日は、ちょっと。まだ明日行くところもありますので」
「じゃ、送ってくわ」
ティーカップ等を片して、お嬢様にひと声かけ、門の前で寝ていた紅美鈴の頭にナイフを刺し、紅魔館を出た。
通い慣れた道、聞き慣れた足音、見慣れた花の髪飾り。
その全てが、今、終わろうとしている。
景色が無情にも流れていく。時が止まればいいのに、と他人事のように考えていた。実際には、止めても意味がないのだが。
人里の門をくぐる。悪戯心が湧いて、阿求を呼び止めた。
こちらへ向いた阿求の前髪をかき上げ、その額に口付けを落とした。
阿求はそれをただ呆然として受け入れていたが、我に返ると目に涙を溜め、顔を真っ赤にして怒った。
「何やってんですかー!! こんな人の見てる所で!!」
「あら、人がいないところなら良かったのかしら?」
「んなっ!? そうじゃなくて、どうしてわざわざ人目のあるところを選んでやったのかと聞いてるんです!!」
「貴方のそういうところが見たかったから」
「鬼!! 悪魔!! メイド!!」
見たことのない顔が、あった。
私が見たことない阿求が、もっとあったに違いない。
それをもう見ることができないというのは痛恨の極みだ。
それが無性に口惜しくなって、まだ顔の赤い阿求を強く抱きしめた。ジタバタと暴れていたが、暴れられないように一層力を込めると、阿求は力を抜いた。
「阿求」
「咲夜さん。…………痛いですよ」
「一つだけ、約束して」
「何ですか?」
「私のこと、絶対忘れないと言って。何度転生しても、十六夜咲夜のことを覚えていて」
阿求は少し困ったような顔をしていたが、毅然とした口調で、
「できません」
と、言った。
「私が受け継げる記憶は幻想郷縁起に関わる一部の記憶。咲夜さんのことが受け継がれる可能性は勿論ありますが、絶対じゃない。だから、約束できません」
「それでも誓いなさい」
「無茶言わないでくださいよ……。貴方との約束を蔑ろにしたくない。だから、守れる保証がない約束は致しません」
そう言われては、仕方ない。ようやく解放された阿求は、着物の乱れを直しながら、でも、と発し、
「稗田阿求は、咲夜さんのことを絶対忘れません。それで手を打ってもらえませんか」
といって、笑う。それも、見たことのない笑顔だった。
やりきったという表情をしている。これでいい、と満足しているのがわかる。
でも、私はまだ納得できていない。
「…………ねえ」
それは、今まで積み重ねてきた全てを否定するものだったかもしれない。幼子が駄々をこねるのと同じだというのも分かっている。それでも、言わずにいられないことが、あった。
「貴方、もっと長生きしてみる気はないの」
阿求の顔が微かに歪んだ――気がした。
「貴方がこれからやることが、転生のために必要だってことはわかってる。でも、今の幻想郷に転生してまで幻想郷縁起を書く必要はないかもしれないって、貴方も言っていたでしょう?」
酷い言い訳だ。分かってる。
自分らしくないことも分かっている。でも、今日の自分はもうこれ以上ないほどらしくないところを見せてきた。ならば、もっと欲張ってもいいんじゃないか。
「お嬢様の力なら貴方にかかった運命を捻じ曲げることだって――」
「咲夜さん」
ピシャリ、と。阿求が私の言葉を遮った。
「ごめんなさい」
「なんで咲夜さんが謝るんですか。私はそう言ってくれて嬉しかったですよ?」
阿求は優しく微笑んでくれている。私は血が出そうなほど強く、唇を噛み締めた。そうしなければ、また余計な言葉を放ってしまいそうだったから。
「大丈夫ですよ。今の私には、知っている妖怪がたくさんいますから。転生しても、私は独りじゃない。だからもう、転生は怖くないんです」
違う。そうじゃない。貴方が心配だったんじゃない。私が貴方に生きて欲しかった。ただそれだけだ。これは私のエゴなのだ。
「咲夜さんは」
阿求が声のトーンを落とした。いや、落ちたのだろうか。稗田の家が見えてきた。
「咲夜さんは、人間ですか」
「…………そうよ」
「じゃあ、これで、お別れなのですね」
「そうよ」
「転生して、紅魔館へ行って、美鈴さんに通してもらって、レミリアさんと会って、パチュリーさんに資料を見せてもらって、小悪魔さんに届かない本を取ってもらって、フランさんと話をして」
でも、と阿求が言葉を切った。私たちの間を風が吹き抜けていって、それが何かを意味しているようだった。何を意味しているかは、分からなかったが。
「そこに咲夜さんは、いないのですね」
「そうよ」
「あの紅茶ももう、飲むことはできないのですね」
「そう」
私は内からこみ上げてくるものを、必死に押し返した。もしそれが溢れてしまっても、私を責める人はきっと誰もいないだろう。それでも、溢れてしまわないように。
その姿は、充分泣きそうに見えたらしかった。
「咲夜さん。私のために泣いてくれてもいいんですよ」
「泣かないわ。次に泣くのは貴方が死んだ時って、決めているもの」
それが理由だと知れたら、その人たちは笑うだろうか。
阿求は最初きょとんとしていたが、くすくすと笑い出して、
「咲夜さんらしいですね」
と、言った。そうだろうか? 私にはわからない。
「貴方だって泣いてもいいのよ。私の胸でよければ貸してあげるから」
「貸すほどありましたっけ?」
「よし、頭の上に林檎を乗せてそこの木の前に立ちなさい」
「冗談ですって。…………そうですね、咲夜さんが泣いてくれるなら、私も泣きましょう」
「じゃあ一生泣かないでいなさい」
「ひどいなあ」
あまりにも無意味な意地の張り合い。きっと私たちは底なしの意地っ張りで、だからこそ意気投合できたのかもしれないと、今更思った。
私がお嬢様の眷属になっていれば。転生後の阿礼乙女と、また会えたのだろう。
阿求が転生することをやめてしまえば。もう少し長く、共にいられたのだろう。
けれど私たちはいずれも選択しなかった。私が十六夜咲夜であるために。彼女が稗田阿求であるために。
そんなことはない、と誰かが言うかもしれない。
お前は何になっても咲夜だ、とお嬢様は仰ってくれると思う。
それでもこれは私にとって、私たちにとって、唯一無二の真実なのだ。
そしてそれは、これから私が絶対守り抜かねばならないものだ。
主のために、阿求のために、そして何より、自分のために。
稗田の門を、阿求が跨いだ。門を挟んで、相対する。
「咲夜さん、それでは」
「ええ。阿求、さよなら」
「はい。さよなら」
阿求が深く、深く頭を下げた。私はそれを長く見てられなくて、すぐに踵を返した。
そういえば。阿求が泣いた姿は見たことがない。今日のようにからかわれて涙を溜めることは、よくあったが。
――――これ以上、あの子が私が見たことのない姿をしないように。
落ちてゆく夕陽に、希った。
「お嬢様、食事の準備が整いました」
ノックの音と咲夜の声で目が覚めた。覚醒しきっていないまま、寝床を出て扉を開ける。
「あれ、お嬢様、寝ていらしたのですか?」
「んー…………ん? ああ、ちょっとね」
「ご飯、もう少し後にしたほうがよろしいですか?」
「いや、大丈夫。ちょっと先に行ってて」
咲夜は訝しみながらも、私の言う通り先に食堂へと向かった。その足取りはいつも通りに、いや、いつもより軽く、しかし、力強く見える。
ねえ、咲夜。私が操れなかった運命が、二つだけあるの。
一つは、貴方が私の眷属にならないこと。
もう一つは、貴方が今日阿求の涙を見てしまうこと。
だから帰ってきた貴方のことを案じていたのに。
咲夜、貴方は一体どんな手品を使ったのかしら。
――まさか、あんな満足そうな顔をしているなんて
いっそこのまま無視してやろうか、とも思うがそれでは紅魔館の主としての名が廃る。渋々、どうぞ、と声を発して扉の向こうにいるであろう二人を招き入れた。
「失礼します。お嬢様、お客様がお見えになりました」
「通せ」
恭しく頭を下げて現れた十六夜咲夜にやつあたり気味に言葉を返す。咲夜は表情を変えずに客人を通した。
客人の口が、またあとで、と動いたのが見える。咲夜はやはり表情を変えずに無言で、しかりごく小さく頷いた。
「咲夜。お前は部屋に戻って、少し休んでいろ」
「はい。畏まりました」
いきなり休憩を告げられた咲夜は、怪訝な顔をまるで見せずに、ただ頷いた。勿論、その心の中は疑念で支配されているのだろう。
通常、自室に客を招き入れた時は咲夜も室内に残す。万が一、念のためという奴だ。しかし今回の来客に対してはその万が一がない。だからこそ、咲夜もあっさりと自分の命令を聞き入れたのだ。
咲夜が退室し、通された客人は自分の前までトコトコとやってくると、今しがた咲夜がそうしたように頭を下げ、
「九代目阿礼乙女、稗田阿求。紅魔館の主、レミリア・スカーレット嬢に、ご挨拶に伺いました」
と、言った。
これは"儀礼"だ。言いたいことが山ほどあるのを、なんとか抑える。
「聞こうか」
「はい。私、稗田阿求は来月より転生の儀へと入ります。『幻想郷縁起』に関わる取材の許可、並びに、その協力に深く感謝申し上げます」
たった四文字の言葉を苦しげに絞り出した自分とは対照的に、阿求はまるで詩を諳んじるかのようにスラスラと用件を述べた。
"九代目阿礼乙女"と名乗った時から、いや、もっと言えば今日の運命が見えた時から、彼女がそうするのは分かっていた。けれど今の私は彼女に、ご苦労だった、と平静を装って労うのが精一杯だった。
"稗田阿求"と、"レミリア・スカーレット"の話であれば、もっと言えることがあっただろう。
けれど彼女は"阿礼乙女"と、"紅魔館の主"としての会話を望んだ。だから、自分に言えることは、もうない。
阿求との別離が惜しいわけではない。
阿求との別離を惜しむ、あいつが心配なんだ。
そう思うことは、阿求への軽蔑に当たるだろうか。いや、中途半端な同情こそが、阿求に対する冒涜に違いない。
「疲れただろう、阿求。紅茶でも飲んで、充分休んでいくがいい。うちのメイドを貸そう」
そう言うと阿求は柔らかい笑みを浮かべ、ありがとうございます、と返す。すぐに妖精メイドに咲夜を呼びに行かせた。
「…………本当は、会ってくれないんじゃないかと思ってました」
"儀式"はもう終わっている。"阿求"は少し砕けた感じで話しかけてきた。
「会いたくはなかったさ。お前との時間を終わらせてしまうのは、余りにも惜しい」
「お褒めに預かり、光栄です」
阿求が初めて紅魔館にやってきた時のことを思い出す。
人間が妖怪に襲われないための書物を制作している。
そう言って阿求は協力を仰ぎに一人でやってきた。道中、妖怪に襲われたらどうするつもりだったのだろうと思うが、どうやらそこまでは思い至らなかったらしい。
それから紅魔館に来るときには咲夜をつかせた。他に人がいなかったからとも言えるし、咲夜が適任だと思ったからとも言える。
そしてそれは――私が導き出した答えなのだから当然だが――正解だった。あの二人は文字通り、"運命に惹かれ合うように"、仲良くなっていった。
咲夜は明るくなった。元々暗いわけでもなかったが、よく笑うようになったと言えばいいだろうか。
何よりも完全で瀟洒であることを良しとする人間だったので、度が過ぎることはなかったが、人里へよく行くようになった。
私たち紅魔館の人間はそれを微笑ましく思っていた。あの咲夜が、自分を従えるもの以外に対しては無愛想で無関心だったあの咲夜が、と誰もが思った。
客を招くと咲夜は笑顔を浮かべた。それはただ完璧な笑顔で、それ以外は何もなかった。
レミリア・スカーレットの従者である以上完璧であらねばならないと、強く言い聞かせたのは自分だが、その笑顔を見る度にチクリを胸を刺すものもあった。
だからこそ私は咲夜の変化を一番喜んでいた。そして、その変化をもたらした稗田阿求という人間を非常に好ましく思っていた。
"転生"。その言葉が表すのは、稗田阿求の、"死"だ。
それが彼女の運命であることなど、最初から、分かっていた。
呼ばれた咲夜が部屋に戻ってきたので、阿求へ言ったのと同じようなことを繰り返して告げた。
阿求と一言二言交わした咲夜が、失礼します、と言って静かに扉を閉めた。
頭が上がった時にちらっと見えた顔は、笑っていた。私が、私たちが好きな笑顔がそこにあった。
次に自分の前に現れたとき、咲夜は泣いているだろうか、歯を食いしばって涙を堪えるだろうか。仕事に集中して、忘れようとするだろうか。呆然としているだけというのもありそうだ。
それとも、完璧な笑顔を貼り付けて、私たちの前をやり過ごすのだろうか。
心が痛んだ。どうしようもなくなって、不貞寝をしようと決めた。
瞼の裏に咲夜の笑顔が浮かんだ。その笑顔は、どっちなんだろう。
「来月より、転生の儀へと入ります」
そう言われてもティーカップを落とさずに済んだのは、もしかしたらどこかでそれを予期していたからかもしれない。
レミリア嬢に言伝がある、と言っていた。私にはそれが何かわからないと思っていたが、少し考えれば他にないと気付ける。やはり無意識のうちにそれを拒んでいたんだろうか。
「そう。寂しくなるわね」
阿求と出会うまで、誰かとの別離というものに深く考えたことはなかった。それは自分の死によってもたらされるもののはずだったからだ。
紅魔館に人間は自分しかいない。紅魔館がやや隔離された存在というのもあって、交友関係も広いわけではない。
異変を通して紅白の巫女や白黒の魔法使いと出会ったが、彼女らよりも自分が先に逝くというのは、私の中では半ば確定事項だった。私だけ能力を常に使っていて消耗が激しいことは、誰の目にも明らかだ。
誰かの死に触れることなどなかったはずの自分。それを覆したのが、阿求だった。
初めて出会ったあの日、道すがら話を色々聞いてきた阿求。幼い外見とは裏腹に、しっかりとした考えと信念を持っていた。
ちょっと抜けたところがあるのが、愛らしいと思った。そんな阿求を見て笑うと、私といる時はそうしていてください、と言われた。あなたは私のメイドではないのですから、とも。
"阿礼乙女"と呼ばれる存在について調べた。そしてそれが例外なく短命であることを知って自分は…………自分は、どうしたのだったか。
いつか今日のような日が来るのは分かっていたはず。なのにショックを受けているのは、やはりそこから目を背けていたということになるのだろうか。
いや、考えるのはやめておこう。目の前には阿求がいる。彼女に残された時間は、あと僅かなのだから。
「じゃあ、これが最後の晩餐ね。ゆっくり、愉しみましょう」
私はうまく笑えているだろうか?
阿求と自分の前に一つずつティーカップを置いて、紅茶を注ぐ。二人の間にはクッキーを皿に乗せて置いた。
まだ熱い紅茶の入ったティーカップを、阿求は両手で大事そうに持って紅茶を一口飲んで、
「美味しい……」
と、言う。
ああ、それは初めて阿求がここへ来た時のようだった。あの時も同じように出された紅茶を、同じように飲んでいた。
「秘密の隠し味が入っていますの」
あの時と同じように返した。阿求はくすくすと笑いながら――あの時は実に興味深そうにしていた――尋ねる。
「それは、何ですか?」
「秘密ですから、内緒ですわ」
今思えば、なんと滑稽なやり取りだろう。茶番、と言っても差し支えなかった。
「今思えば滑稽極まりないですね」
「貴方そういう雰囲気壊すことやめなさいよ」
少し空気の読めない面があることは、後から知った。それを咎めると、阿求は少し拗ねたようにした。
「だって、暗い雰囲気になるの嫌ですし。咲夜さんにも、無理してほしくないです」
時が止まったような気がした。いや、むしろ止めていたのかもしれない。なんとか心を鎮めて、努めて冷静に返す。
「そんなに暗い顔してた?」
「してませんよ? でも、だから無理しているんだろうなって思いました」
「…………やられたわ」
小賢しいところがあるのも、知っていたはずなのに。したり顔で笑う阿求を見ると、悔しい。
わざとらしく、大きく溜息をついた。それは、完全で瀟洒なメイドらしくはなかったかもしれないが。
「でも仕方ないでしょう? 貴方との最後を、暗い顔で終わらせたくないもの。だから、少しぐらいの無理には目を瞑って」
開き直った。自分がここまで素直になれる相手というのは、阿求以外にはいないかもしれない。異変で顔を合わすような面々とも言いたいことを言っているが、あれは素直とは少し違う気がする。
「そういうことなら、仕方ないですね」
頬が少し赤いのは、紅茶の熱が移ったからだろうか。そうでなければいい、と思う。
そこからは二人で思い出話をした。
ナイフ投げを見せて欲しいと言われたので妖精メイドの頭の上に林檎を乗せたら、珍しく手元が狂って額に当たり大慌てした。
人里に呼ばれたので、急いで駆けつけたら紅茶を淹れて欲しい、と言われたので拍子抜けした。報酬にと貰った緑茶が美味しくて紅魔館でもブームになった。
求聞史紀の見本が完成したので見て欲しい、と言われた。阿求が作った私の物語に腹を抱えて笑った。顔を真赤にした阿求が、意地でもこのまま載せますから、と言って、本当に載った。
春、博麗神社の花見へ連れて行った。妖怪が沢山いて、阿求は目を輝かせていた。お嬢様に、お前もついていけ、と言ってもらえて二人で色んなところを回った。
夏、あまりの暑さに、人里に帰る途中、阿求が倒れた。湖畔で涼んでいたチルノの首根っこを掴んで、冷まさせた。
秋、読書の秋です、と息巻いて紅魔館にやってきた阿求は数週間大図書館に引きこもった。仕事の合間を縫って様子を見に行くと、読んでいたのは外から流れてきた漫画だった。
冬、雪合戦をした。一発でも当たれば私の勝ちです、と言うので時を止めてでも全弾回避した。少し大人気なかったかと、今では思う。
春、春告精を捕まえたいと阿求が言った。可哀想だからやめておきなさい、と窘めたが、阿求も中々譲らず喧嘩になった。
夏、蛍を見に行きたいと阿求が言った。私も見たかったので、リグル・ナイトバグを捕まえて、蛍を呼び寄せた。
秋、冬、春、夏、秋、冬、…………。
「…………咲夜さん。私、そろそろ帰らなくてはいけません」
その時が、来た。
「そう。泊まっていかないのね?」
「はい。今日は、ちょっと。まだ明日行くところもありますので」
「じゃ、送ってくわ」
ティーカップ等を片して、お嬢様にひと声かけ、門の前で寝ていた紅美鈴の頭にナイフを刺し、紅魔館を出た。
通い慣れた道、聞き慣れた足音、見慣れた花の髪飾り。
その全てが、今、終わろうとしている。
景色が無情にも流れていく。時が止まればいいのに、と他人事のように考えていた。実際には、止めても意味がないのだが。
人里の門をくぐる。悪戯心が湧いて、阿求を呼び止めた。
こちらへ向いた阿求の前髪をかき上げ、その額に口付けを落とした。
阿求はそれをただ呆然として受け入れていたが、我に返ると目に涙を溜め、顔を真っ赤にして怒った。
「何やってんですかー!! こんな人の見てる所で!!」
「あら、人がいないところなら良かったのかしら?」
「んなっ!? そうじゃなくて、どうしてわざわざ人目のあるところを選んでやったのかと聞いてるんです!!」
「貴方のそういうところが見たかったから」
「鬼!! 悪魔!! メイド!!」
見たことのない顔が、あった。
私が見たことない阿求が、もっとあったに違いない。
それをもう見ることができないというのは痛恨の極みだ。
それが無性に口惜しくなって、まだ顔の赤い阿求を強く抱きしめた。ジタバタと暴れていたが、暴れられないように一層力を込めると、阿求は力を抜いた。
「阿求」
「咲夜さん。…………痛いですよ」
「一つだけ、約束して」
「何ですか?」
「私のこと、絶対忘れないと言って。何度転生しても、十六夜咲夜のことを覚えていて」
阿求は少し困ったような顔をしていたが、毅然とした口調で、
「できません」
と、言った。
「私が受け継げる記憶は幻想郷縁起に関わる一部の記憶。咲夜さんのことが受け継がれる可能性は勿論ありますが、絶対じゃない。だから、約束できません」
「それでも誓いなさい」
「無茶言わないでくださいよ……。貴方との約束を蔑ろにしたくない。だから、守れる保証がない約束は致しません」
そう言われては、仕方ない。ようやく解放された阿求は、着物の乱れを直しながら、でも、と発し、
「稗田阿求は、咲夜さんのことを絶対忘れません。それで手を打ってもらえませんか」
といって、笑う。それも、見たことのない笑顔だった。
やりきったという表情をしている。これでいい、と満足しているのがわかる。
でも、私はまだ納得できていない。
「…………ねえ」
それは、今まで積み重ねてきた全てを否定するものだったかもしれない。幼子が駄々をこねるのと同じだというのも分かっている。それでも、言わずにいられないことが、あった。
「貴方、もっと長生きしてみる気はないの」
阿求の顔が微かに歪んだ――気がした。
「貴方がこれからやることが、転生のために必要だってことはわかってる。でも、今の幻想郷に転生してまで幻想郷縁起を書く必要はないかもしれないって、貴方も言っていたでしょう?」
酷い言い訳だ。分かってる。
自分らしくないことも分かっている。でも、今日の自分はもうこれ以上ないほどらしくないところを見せてきた。ならば、もっと欲張ってもいいんじゃないか。
「お嬢様の力なら貴方にかかった運命を捻じ曲げることだって――」
「咲夜さん」
ピシャリ、と。阿求が私の言葉を遮った。
「ごめんなさい」
「なんで咲夜さんが謝るんですか。私はそう言ってくれて嬉しかったですよ?」
阿求は優しく微笑んでくれている。私は血が出そうなほど強く、唇を噛み締めた。そうしなければ、また余計な言葉を放ってしまいそうだったから。
「大丈夫ですよ。今の私には、知っている妖怪がたくさんいますから。転生しても、私は独りじゃない。だからもう、転生は怖くないんです」
違う。そうじゃない。貴方が心配だったんじゃない。私が貴方に生きて欲しかった。ただそれだけだ。これは私のエゴなのだ。
「咲夜さんは」
阿求が声のトーンを落とした。いや、落ちたのだろうか。稗田の家が見えてきた。
「咲夜さんは、人間ですか」
「…………そうよ」
「じゃあ、これで、お別れなのですね」
「そうよ」
「転生して、紅魔館へ行って、美鈴さんに通してもらって、レミリアさんと会って、パチュリーさんに資料を見せてもらって、小悪魔さんに届かない本を取ってもらって、フランさんと話をして」
でも、と阿求が言葉を切った。私たちの間を風が吹き抜けていって、それが何かを意味しているようだった。何を意味しているかは、分からなかったが。
「そこに咲夜さんは、いないのですね」
「そうよ」
「あの紅茶ももう、飲むことはできないのですね」
「そう」
私は内からこみ上げてくるものを、必死に押し返した。もしそれが溢れてしまっても、私を責める人はきっと誰もいないだろう。それでも、溢れてしまわないように。
その姿は、充分泣きそうに見えたらしかった。
「咲夜さん。私のために泣いてくれてもいいんですよ」
「泣かないわ。次に泣くのは貴方が死んだ時って、決めているもの」
それが理由だと知れたら、その人たちは笑うだろうか。
阿求は最初きょとんとしていたが、くすくすと笑い出して、
「咲夜さんらしいですね」
と、言った。そうだろうか? 私にはわからない。
「貴方だって泣いてもいいのよ。私の胸でよければ貸してあげるから」
「貸すほどありましたっけ?」
「よし、頭の上に林檎を乗せてそこの木の前に立ちなさい」
「冗談ですって。…………そうですね、咲夜さんが泣いてくれるなら、私も泣きましょう」
「じゃあ一生泣かないでいなさい」
「ひどいなあ」
あまりにも無意味な意地の張り合い。きっと私たちは底なしの意地っ張りで、だからこそ意気投合できたのかもしれないと、今更思った。
私がお嬢様の眷属になっていれば。転生後の阿礼乙女と、また会えたのだろう。
阿求が転生することをやめてしまえば。もう少し長く、共にいられたのだろう。
けれど私たちはいずれも選択しなかった。私が十六夜咲夜であるために。彼女が稗田阿求であるために。
そんなことはない、と誰かが言うかもしれない。
お前は何になっても咲夜だ、とお嬢様は仰ってくれると思う。
それでもこれは私にとって、私たちにとって、唯一無二の真実なのだ。
そしてそれは、これから私が絶対守り抜かねばならないものだ。
主のために、阿求のために、そして何より、自分のために。
稗田の門を、阿求が跨いだ。門を挟んで、相対する。
「咲夜さん、それでは」
「ええ。阿求、さよなら」
「はい。さよなら」
阿求が深く、深く頭を下げた。私はそれを長く見てられなくて、すぐに踵を返した。
そういえば。阿求が泣いた姿は見たことがない。今日のようにからかわれて涙を溜めることは、よくあったが。
――――これ以上、あの子が私が見たことのない姿をしないように。
落ちてゆく夕陽に、希った。
「お嬢様、食事の準備が整いました」
ノックの音と咲夜の声で目が覚めた。覚醒しきっていないまま、寝床を出て扉を開ける。
「あれ、お嬢様、寝ていらしたのですか?」
「んー…………ん? ああ、ちょっとね」
「ご飯、もう少し後にしたほうがよろしいですか?」
「いや、大丈夫。ちょっと先に行ってて」
咲夜は訝しみながらも、私の言う通り先に食堂へと向かった。その足取りはいつも通りに、いや、いつもより軽く、しかし、力強く見える。
ねえ、咲夜。私が操れなかった運命が、二つだけあるの。
一つは、貴方が私の眷属にならないこと。
もう一つは、貴方が今日阿求の涙を見てしまうこと。
だから帰ってきた貴方のことを案じていたのに。
咲夜、貴方は一体どんな手品を使ったのかしら。
――まさか、あんな満足そうな顔をしているなんて
手ごろなサイズですし、面白かったです。
お嬢様の操れなかった運命と、咲夜さんの笑顔というギャップが、読後感をあたたかなものにしてくれました。
雰囲気も良く素晴らしかったです
本来去る側である咲夜さんにとって、
去られる相手なり、そして帰ってくるのにそれを迎えられない阿求
この組み合わせを思いついた作者さんは素晴らしいと思います
咲夜と阿求の会話が物悲しくも暖かい、そんな気持ちにしてくれます。