Coolier - 新生・東方創想話

知っている事、知らない事

2013/01/19 16:23:29
最終更新
サイズ
7.66KB
ページ数
1
閲覧数
1484
評価数
2/7
POINT
330
Rate
8.88

分類タグ

 がやがや、わいわい。今日も私の世界は賑やかだ。
 勿論賑やかなのはよい事だが、賑やかなのは私の周りだけなのだと、そんな事を考えてしまう事がある。
 
 たとえば知らない世界に迷い込んだ時。たとえば解らないものが見つかった時。
 私のまわりが賑やかなのは、私の周りに知らない物が無い時だけだ。何か一つでも知らないものがあると、私の周りは静かになる。
 静かになって、私の知らないを、知っているに変えろと言うのだ。
 そんな周りに圧されながら、私は知らないを知っているに変えるために、静かな世界で勉強を続ける事になる。

 静かな世界で考える事は様々だ。紐であったり、海であったり。そんな私にはどうでもいい事も、皆の為だと周りは言う。
 しかし、その皆の中に私の事は含まれているのだろうか? 私はそれを知らない。
 かくして、私の世界は二色の色から変わらないまま、賑やかだけど静かな世界で、私は今日も頭を燃やす。



 何度目かの静かな世界で、私の心に疑問が生まれた。
 私は何がしたいんだろう?

 その疑問は私の頭で考えてみても、一向に答えが出てこない。この知らないは、いつまでたっても知っているにはならないのだ。
 私はそんな疑問を恐ろしく感じた。知らないを知らないままにしておけば、私の世界はいつまで経っても賑やかにはならないからだ。

 私は考えた。考えて考えて考えて、結局答えが出てくる事は無かった。
 笑えもしない、私は自分でなにがしたいのかも知らないのだ。
 私は私の目的を知らないまま、知らないを知っているに変える作業に戻ることにした。



 最近は私の周りは賑やかだ。それはつまり、私の知らないがみつからないと言う事で。知らないを知らなくなるぐらい、私は知っているという事だ。
 周りはいつも賑やかに、月を目指して体を動かしている。月を目指すのが皆の為になるらしく、私はずっと、月に引っ越す為の知らないを知っているに変えていたらしい。
 どうしてそんなに月に引っ越したいのか、それは知らない。知らないが、それは知らなくていいらしい。私の周りの考えも、私には解らなかった。



 最近、私の周りはまた静かになった。それは私の知らないがあるという事で、私は静かな世界で知らないを知っているに変えていく。
 私が知らないを考えていくと、私の知らないは簡単に知っているに変わってしまう。知らないが知っているに変わってしまえば、私の世界はまた賑やかに変わるのだ。

 昔は賑やかなのが好きだった。しかし今は、静かに知らないを知っているに変えていく方が面白いと思う。
 私はどうしてしまったのだろう? 私の心の知らないは、いつまでたっても知っているには変わらない。



 今の私の世界は賑やか。
 私はそんな賑やかな世界で、知らないを探すようになった。けれど、いつまでたっても知らないは見つからない。今の私は知らないものを知らないのだ。
 私は私の周りよりも、知らない事が少ないらしい。私が静かな世界に帰れる時は、いつまでたってもやってこない。



 私の世界はいまだ賑やかに踊っている。
 今いる世界は月。私の周りは、私の知っている、で生きて行く世界を月に変えたのだ。
 周りの人々は賑やかに踊っている。私はそんな賑やかさを、うるさく思うようになった。
 私の心は知らないを求めているのだ。今まで知らなかった自分の心が、少しだけ、知っているに変わっていくのが解った。



 今の私は、久方ぶりに静かな世界に帰っていた。
 私の知らないを見つけたのだ。私は心の赴くまま、私の知らないを知っているに変える作業に没頭した。



 私の世界は賑やかになった。それは私の知らないが知っているに変わったからだ。
 周りは私に非難の声を掛ける。私が知っているに変えたものは、知らなくてもいいものだったらしい。
 知らなくてもいいもの、私はそんなものを残しておきたくなかった。
 知らないが目の前にあるのだ、知っているに変えなくては、私の心が満たされない。
 私は賑やかな世界で、静かに知らないを知って行った。



 私の静かな研究は、賑やかな世界に飲み込まれてしまった。
 私の周りの人々が、私の研究の邪魔をするのだ。
 私がいなければ何もできないくせに。彼らは私を、決して静かな世界には居させなかった。
 私の周りに人を置き、他人の知らないを知っているに変えろというのだ。
 私は私の知っているを、私の周りの人々に知らせる役目をもった。



 私の世界は相変わらず賑やかだった。
 私の周りには、二人の少女が立ち、教えてほしいと私の知識を頼るのだ。
 私はそんな少女たちの、知らないを知っているに変えていった。

 意外にも私はそんな日々が気に入っていた。
 静かな世界は無くなってしまったが、この賑やかさは嫌いではない。私の心の知らないも、まだまだ沢山あるようだ。



 私の世界がまた静かになった。
 私の周りにいた少女達が、私の前からいなくなってしまったのだ。
 私は一人、また静かな世界に取り残された。
 静かな世界でする事は一つ。私はまた、私の知らないを知っているに変えていくようになった。
 とはいっても私の研究は考えてはいけない事らしい。私が知らないを表に出す事は無くなっていた。



 私の世界が、少しだけ賑やかさを取り戻した。
 私の前に、また一人の少女が現れたのだ。
 私は少女の世話をしながら、静かに研究を続けていく。



 何故だろう? 最近の私の世界は賑やかだった。
 私の周りにいる人は一人で、話しかけてくる声も一人分だ。けれども私の世界には二つの声が響くのだ。
 こんな世界を私は知らない。知らない事を考えながら、私は彼女の世話を続ける。



 私の世界はまだまだ賑やかさを増やしていった。
 私は一体どうしたのだろう? 一人の世話しかしていないのに、私の世界は賑やか過ぎる。静かに研究する事さえできないのだ。
 静かになろうとしてみると、私の世界に彼女の姿が浮かぶ。彼女に教える事が少なくなれば、私の世界も静かになっていくのだろうか?
 私は私の知らない気持ちを、知っている事に変えていかなければならないようだ。



 私の世界が静かになった。
 とは言っても大した事があるわけではない。私の近くにいた彼女が、私に暇をくれたのだ。これを機に、私の知らないを考えてみようと思う。
 私に渡された時間は一か月。私の知らないを考えるには、十分すぎる時間だった。


 
 私の世界がまた賑やかになった。
 しかしそれは、私の愛する賑やかさではなく。私の世界を飲み込んでいく、五月蠅い周りの声だった。

 私の世界が五月蠅く鳴り始めたのは、私の知らないが知っているになり、その知っているでできた薬。蓬莱の薬が原因だった。
 私の研究の成果は、私の周りのたった一人。彼女の世界を変えたのだ。



 私の世界は一向に静けさを取り戻さない。
 今の私の周りには、ただの一人もいやしない。だというのに私の世界には声が響く。

 一体誰の声なのだ。
 私は声の主を知らない、それでも声は、私の世界を五月蠅くかき回す。
 私は恐ろしくなった。私の世界を脅かす、私にしか聞こえない声が。



 いまだに声は鳴りやまない。
 私は五月蠅く鳴りやまない世界で、知らない声のありかを辿った。
 時間はいくらでもあるのだ。永遠に続く、生命を持ったのだから。



 私の世界は一時の静けさを取り戻した。
 しかしそれは、嵐の前の静けさだ。

 私の世界に鳴り響く、知らない声。
 それは私自身の声だった。私の心が、私に対して叫んでいたのだ。
 彼女を追えと、彼女を助けろと。



 私の世界は荒れていた。
 絶えず叫び続ける私の声に、それを制止するような周りの声。
 
 私はどうすればいいのだろう。
 周りの声を無視して叫び続けるのか、私の喉を枯らすのか。
 私はもう解らない。私の在り方が、何をすべきなのかが。



 私の世界に賑やかさが増した。
 私の元に少女達が現れたのだ。

 彼女達は、私の周りの五月蠅い声に言われたらしい。私の叫びを沈めろと。
 しかし、彼女達の声は逆だった。
 私は私が思う事をすべきなのだと、私はいつも正しかったのだと。

 少女達は私の声を聞いてくれた。私の思いを、聞いてくれたのだ。
 その日から私の世界が静かになった。私の周りの五月蠅い声は、私の世界には入ってこなくなった。



 私の世界が賑やかになった。
 それは少しの賑やかさと、沢山の五月蠅い声によるものだ。
 静かな世界は今はもう見つからない。
 
 それでも私は満足している。
 もう一度彼女と共に過ごせる時間に、賑やかな世界に。







 久しぶりにこの手記を残す。

 私の世界は今、密やかな賑やかさから広がる騒がしさに変わっている。
 私は静かな世界でなく、幼いころに夢見た賑やかな世界を手に入れたのだ。
 
 今思えば、私は研究が好きだったのではない。私は皆が好きだったのだ。
 話しかければ笑ってくれて、謎を解き明かせば頭を撫でてくれる。そんな人とのぬくもりが、私はずっと欲しかったのだろう。
 今になって知らないが知っているに変わるとは、まだまだ心というものは解らない。
 だけど、今の私の心は解る。私はそれを知っている、今の私の心の声を。

 今の私は幸せだ。私の声がそう言っている。
「永琳、どうしたの?」
「ああ輝夜。幸せだなぁって、そう思っていただけよ」
がらくた
簡易評価

点数のボタンをクリックしコメントなしで評価します。

コメント



0.190簡易評価
2.80名前が無い程度の能力削除
何というか、とても綺麗なお話でした。
最初の部分だけだけれど、永琳が月に行く前の話って珍しいなぁ…良かったです。
あと誤字が 以外にも→意外にも
5.無評価がらくた置き場削除
感想&誤字指摘、ありがとうございます。
直しておきました。
7.603削除
お洒落系なSSなのは伝わりましたが、肝心の話の内容が中々難しかったです。