※作品の一部に設定の独自解釈や改変があります。
2013/11/22 諸事情により全作品における名義を変更しました。今後ともよろしくお願い致します。
冬の寒々とした空気の流れる曇り空の下。
見渡す限りの木々や山々は昨夜の内に降り積もった雪によって、一面の銀色に美しく彩られている。
とはいえやはり気候の厳しい冬の様相。目を凝らせばやはり、自然に住まう植物達はどこか萎縮して見えた。
そんな中、冬の厳しさをものともしない元気な声が響く。
「れ~い~む~!」
声のする方へと目を向けてみると、可愛らしい服装に身を包んだ数人の少女達が、鳥居の前に立っている。
彼女たちは一様に鳥居の奥にあるどこか寂れた……いや実際立地場所が立地場所だけに、閑居といってもいいだろう。
小ぢんまりとした神社に向かって声を出し、神社に住む者を呼んでいた。
「呼ばれてるぜ?」
「聞こえないわ」
神社本殿の奥に建てられた居間に、炬燵で暖を取りながら緑茶をすする影が二つ。
一人は勿論巫女の霊夢。
もう一人は、おそらく大晦日を霊夢と共に過ごしていたと考えられる魔理沙である。
「霊夢、おかわり」
早くもお茶を飲み干した魔理沙が湯のみを霊夢の前にポンと置き、さも当然のように要求をする。
「自分で淹れなさい」
「何だよケチだな……ってそれより、ホントに出なくていいのか?」
「だから私は誰にも呼ばれてないって言ってるでしょ」
「それは聞こえたと自白してるようなもんだぜ」
返事の通りというべきか、霊夢に呼び出しへ応じる様子はなく、無視を決め込んでいた。
とはいえ、事情を知ってさえいればそれも無理からぬこと……。
一部の妖怪は例外だが、幻想郷の大半は外界と変わらぬ太陽暦を用いて年月を数えている。
そして、本日の日付は……1月1日。
つまり元旦である。
普段、神社での業務は境内の掃除程度しかやっていないとはいえ、霊夢はれっきとした巫女だ。
信仰の希薄な博霊神社にかきいれ時なんてものはないものの……ましてや妖怪が相手ではあるが、それでも新年の始まりくらい神社の顔として挨拶、その他にも何か催事を執り行うことも、本来であればやぶさかではない。
もう少し日が高く昇ったら、殆ど唯一霊夢が真剣に向き合う神事「天香香背男命討伐の儀」も行う予定だ。
繰り返すが、本来であれば妖怪であろうと来訪に問題はない。
が、今回の場合は新年早々に訪ねてきた妖怪達に問題があった。
姿が見えずとも声色で分かるが、先ほど霊夢を呼び、彼女が現れるのを鳥居の前で待っているのは数人の妖精達である。
彼女達は人間よりもはるかに長生きをするので、実際の年齢は一応の人間である霊夢や魔理沙よりも遥かに上ではあるものの、同時に精神や肉体の成長も人間に比べて遥かに遅い。
そんな彼女達の年齢は、人間に換算するとわずか9歳程であった。
そんな人間的に幼い彼女達が、新年早々年上の霊夢の元を訪ねてきた理由といえば……霊夢が考える限り一つしかない。
「……さっさと顔出してやらないと、いつまでも呼ばれ続けるぜ?」
「うっさいわね。大体なんで私があんなイタズラ妖精共にお年玉をやらなきゃいけないわけ!?」
と、いうわけである。
幻想郷で彼女と関わりを持つものなら、霊夢の経済状況を知らぬものはいない。
神社だけは最近立て直されて新しくはなっているが、それは単に倒壊させられたから新築せざるを得なくなっただけの話であって、決して霊夢の財布が潤っているからではない。
早い話、霊夢は元旦から既に金欠なのだ。
しかし、そんな大人の事情等よく分からない妖精達が、恐れ多くも幻想郷で最強を誇り、しかも金に困る巫女の元へお年玉を強請りに来ているのである。
霊夢は普段なら妖精達を皆力づくで退治していそうだが、生憎今日は正月。
さすがの霊夢も一年の初めに、ましてや力の少ない妖精達を相手に暴力を振るう気にはならず、こうして居留守を決め込んでいるというわけだった。
「いきなり大声出すなよ……本当随分堂々とした居留守だな」
「何も聞こえてないっていってるでしょう」
「ああ、はいはい……」
普段は努力なんてしない癖に、幼女達相手に必死の努力を惜しまない霊夢を横目に見ながら、魔理沙が深いため息をつく。
彼女も霊夢とあまり変わらない年齢だとは思うが、パッと見ただけでも分かる大きな違い。
彼女の手元には中身の入ったポチ袋がいくつか準備されていた。
魔理沙は女性らしからぬ捻くれた喋り方とは裏腹に、中々人間が出来ている。
「やれやれ……。しょうがないから、私は先に渡してくるぜ。いつまでもこう叫ばれてたらかなわんからな」
「あ、そう。いってらっしゃい」
こんな状態の霊夢が一層冷たい態度になることは、長年の付き合いでよく分かっているのだろう。
魔理沙は特に何も言うことなく、襖を開けて外へと出て行った。
▼
魔理沙が出て行き、わずかに締め切らなかった戸の隙間から、乾燥した冷気が部屋に流れ込んでくる。
「さっむ……ちゃんと閉めなさいよ」
自分が閉めればそれで済む話なのだけど、そんな気力も湧かない私は戸を閉める代わりに炬燵の布団をぎゅっと身に寄せた。
ほんの気持ち程度だが、暖かさが増した気がする。
「……」
魔理沙がこの場からいなくなり、いつの間にか妖精達の声も止んでいる為、聞こえてくる物音は寒風の流れる音くらいとなった。
そんな場所に一人閉じこもっていると、やることは考え事くらいしかない。
「もう新年、かあ……」
思い返せばここ数年、色んな出来事がめぐるましく私の周りに起こった。
「……大体ロクでもないことばっかだけどね」
思わず飛び出す独り言。
私にとって元旦というのは本来、「人間」の参拝者や信仰者を増やす為の祭事を行う日だった。
山奥に位置し、人の足では参拝が難しいというのは分かっていたけど、何もしないよりは行動をした方が良いに決まっている。
元旦に行う伝統的な神事に始まり、他にも様々な事を私なりにしてきたつもり。
全てはさっきも言ったけど、人間の信仰を増やすためにね。
そんな目的へと向かう大きな手段の1つが、今生業にしている異変解決……のはずだった。
ところが、そうして私がしてきた行動は、私が望んだものとはほとんど逆の結果をもたらしていた。
118季の紅霧異変から始まり、そこから終わらない冬、明けぬ夜と、1季2季の間に立て続けに起こる異変。
傍目に見えた神社に映る光景の、なんと嘆かわしいことか……。
異変を解決する度に、神社に顔を出す「妖怪」の数が増えていったのである。
今日に限らずここ最近は本当に妖怪ばかりが訪れてくる。
対称的にに最もひどい時の人間の参拝者は、それまで極少数であったのが絶無といえる程になってしまった。
どこかの現代っ子が連れてきた神様のおかげで、少しだけマシにはなったんだけどね。
「どうして、こんなことになっちゃったのかしらねぇ……」
今更と言えば今更な疑問だが、こればかりは自分の行いに原因があると考えるしかない。
なんせ神主がいないから住んでるのは自分一人なのだ。責任転嫁のアテすらない。
「ずずっ……」
少し考え事をしている間に隙間風に奪われる体温を、緑茶でそっと温めなおす。
――そういえば、紅い霧が幻想郷を包み込む異変が起きる少し前の話……。
私は幻想郷を統治するべく、ある妖怪と共同して新しいルールの制定に携わっていたことがある。
人と妖怪とが平等に過ごせる世界をという名目の下で数々の法案が提案されたが、最終的に幻想郷に広がり、絶対的ルールとして採用されたのはたった一つ。
いわずもがなの命名決闘法案、通称「スペルカードルール」である。
他にも様々な法が採用こそされたものの、妖怪は勿論、人間にすら受け入れられたものは少なく、最終的にスペルカードルールのみが残る結果となった。
その直後に起こったあの紅霧異変は、幻想郷規模でスペルカードルールが広まる大きな要因として語られることとなるわけなんだけど……。
この異変に、私は当時疑問というか、もやもやとした違和感を感じていたのを覚えている。
というのもスペルカードの制定は、妖怪達から俗に「吸血鬼異変」と呼ばれている、妖怪征服が行われたことに起因していた。
吸血鬼の征服に反対した妖怪達によって鎮圧こそされたものの、今でも吸血鬼は幻想郷で屈指の大妖怪である。
記録として残されてはいないけれど、十中八九征服を目論んだ吸血鬼と、紅い霧を起こした吸血鬼は同一人物だろう。
あの自称カリスマ幼女以上の力を持ってる吸血鬼なんて、満495歳の一匹しか知らないし、そいつはそもそも外に出て来れないしね。
一時期は妖怪……果てには幻想郷そのものの征服すら目論んだ妖怪が、負けを認めれば否応なしに引き下がらざるを得ない法案の制定を待ってから再び異変を起こしたことに、今更の疑問を感じるのだ。
アイツを鎮圧した妖怪から、アイツへと協議の話が届かないはずはないんだし。
「……分からないなあ」
朝から妖怪絡みで嫌な思いをしたからかしら?
今日の自分はやけに、私にとって理解に苦しむ妖怪の行動に対して、不自然なほど思慮深い。
半ば合法的に異変を起こせるようになったのだから、それで動いたという理由も考えられるけど……。
「……サッパリね」
いつの間にか、一人でブツブツ呟き始めている私。
気づけば大分時間も経っていたようで、お茶も飲みきってしまった。淹れなおしはめんどくさいのでしない。
……。
「お嬢様のただの自己満足だったのかしら……?」
……。
ダッダッダッダッ。
「あいつ普段から何考えてるか分からないしなあ……」
……
ガタガタガタ。
「…………」
……。
……。
「……ドカーン!」
「うるさい!!」
人が真面目に考え事をしている時に何よ!
急に表の方がやたらと騒がしくなった。明らかに人為的な物音で、果てには何かの爆発音まで響き渡った。
まじめに考え事をしていたのに、うざいったらありゃしない。
というか騒音を止めに行った魔理沙は何をしてるわけ!?
私がいきり立っていると、縁側を足早にこちらへと歩いてくる音が聞こえる。
少しして……。
ガラガラッ!
「おーい霊夢!ちょっとそ……あいたっ!」
とりあえず、やっぱりという感じで騒がしく戻ってきた魔理沙を、グーで一発殴らせてもらった。
「いきなり何すんだよ!」
たんこぶを押さえて文句を言う魔理沙の顔には「私には殴られる謂れはない!」としっかり書かれていた。
「うっさいのよさっきから!あんたはあのガキ共を黙らせるんじゃなかったの?」
そう言うと魔理沙の表情から私への恨めしさがパッと消えて
「そうそう、ちょっと外に出てみろよ!きっとビックリするぜ?」
と笑顔で私に指示する。
しかも質問の答えになっていない。
「何でこの寒い中早朝に外出ないといけないのよ……」
「まあまあ。少なくとも、さっきの騒音に対する慰謝料くらいの価値はあると思うから見てみろよ」
「間違いなくロクなもんじゃないわね」
私がそう噛み付いても魔理沙は変わらずニコニコとしている。
「はあ……」
全開の扉から入り込む外気があまりに寒すぎて思わず「嫌よ」と喉元まで出掛かったが、拒否してもどうやらこのままでは終わりそうにない。
私は部屋に掛けてあるちゃんちゃんこを羽織って、外に出ることにした。
先に外に出ている魔理沙は変わらずのテンションで、まるで子供のように「はやくはやく」と私を急かしている。
「ロクなものじゃなかったらもっかい殴るからね。で、なんなのよ」
「そいつはゴメンだ。まあ表に来たらすぐさ」
「はいはい」
適当に流して、魔理沙と並んでくねった縁側を歩く。
その短い間に「何があるのよ」ともっかい聞いたが見事に無視された。
少しずつ表の境内が視界に入ってきた。
間もなくして、私の目に映ったのは――
――雪。
昨日降り積もったであろう、雪だった。
勿論ただの雪ではない。
人為的にいくつかに分けられたと思われる雪の塊が、それぞれ元旦というテーマにそって様々に形作られていたのである。
しかも雪といえば真白い化粧を想像するけど、神社を彩る彼らには淡く光る不思議な色彩が施されていた。
おそらくこれは魔理沙によるものだろう。
まず目に入ったのは鳥居につけられた巨大な門松。
ご丁寧に輪飾りまでぶら下がっている凝りようである。
次にお賽銭箱の横飾られている可愛らしい生け花。
決して人里で売られているような安っぽい詰め込み感がなく、雪で作られているなんて思うどころか、そこから和を意識した彩が醸し出す独特の気風さえ感じられた。
他にも境内に立ち並ぶ、雪製の松や竹――
――いや、狭い境内だけに留まらない。
ふと見上げた空には、境内にあるよりもはるかに巨大な雪の創造物が、魔方陣で足場を得てふんわりと宙を漂っていた。
境内にあるよりも何倍もの雪を使って作られた鏡餅や破魔矢等が、無秩序に神社の周りに浮かべられている。
無秩序とはいっても、朝日を浴びて輝く彼らから言葉に表現できない美しさを孕んでいるのか感じ取れて……。
あまりにも予想していなかったこの光景に、私はただ目を奪われていた。
「あ、霊夢だ!」
宙に浮かぶ鏡餅の影から顔を出した妖精が、私を指差してはしゃぎだす。
私に気づいた声につられて、餅の右や左や上から続けて小さな影が5つ飛び出した。
いわずもがなのチルノ、大妖精、サニーミルク、ルナチャイルド、スターサファイアの5人。
彼女達はいつもの衣装ではなく、可愛らしい着物を着ていた。
やがて一人から「あ、ホントだ!」という声が聞こえたかと思うと、彼女達はパッと飛び出してひらひらとこちらに向かってきた。
やがてたどり着き、ちょこんっと目の前に着地する。
「あ、あんた達……」
何か言うことがあるはずなんだけど、言葉が上手く出てこない。
そうこうしているうちに、妖精たちはサッと整列したかと思うと口を揃えて――
「霊夢!明けましておめでとう!」
と挨拶をした。
「……!」
「こいつら最初はお年玉強請りにきただけだったらしいんだけどさ。先に来た私を見たら、霊夢にはお世話になってるからってちょっとお礼がしたいとか言い出してな。勿論脅かしを含めて」
顔を見ていないのに、呆気にとられている私を見て魔理沙がニヤついているのが分かる。
大成功だぜ!とか絶対思ってるわねこいつ……。
で、目の前の5人は、子供ならではの無垢な笑顔を満面に出していた。
喜んでくれた!?とか、そんな心の声すら聞こえてくる。
それなのに、私と来たら……。
無意識に握り拳に力が入る。
さっきまで妖怪ばかりが来ることを訝っていたばかりだってのに……。
何なの?こいつら。
それに比べて私は当の妖怪……まあ考えたのは魔理沙でしょうけど。
こいつらの似つかわしくないことにこいつらの作った物なんかに感動しちゃって。
……。
次に映った笑顔を見ていたら、さっきまで考えていたことがどこかへ吹き飛んでしまった。
……。
あ、分かった。
いきなりだけど、分かったわ。
何がって?
今日の自分が、何をするべきなのかがよ。
「……ぷっ、あははははは!」
ようやく理解が出来た私の口からは、何故か笑いしか出てこなかった。
「なんだなんだ……?」
「いきなりどうしたの?」
彼女達は私の不可思議な様子にきょとんとしているけど「何でもないわ」と笑いながら答えるくらいしか出来ない。
本当に可笑しい。
この子達を邪魔扱いしてたさっきまでの自分とか、お金の心配なんかしてた自分の何もかもが可笑しくて……。
あはは!
やめたやめた!
今日はお正月でしょ?
馬鹿馬鹿しい。
確かに考えるべきことや、向き合うべきことは山ほどあるかもしれない。
でも、それは今やるべきことじゃない。
せっかくの正月に……。
それもこんな小さい子達が神社の為に来てくれてる横でめんどくさい考え事なんかして、ホント馬鹿みたい!
似合わないったらありゃしないわ。
あ、それはそうと……。
「ねぇ魔理沙」
ようやく笑いが収まった私は、魔理沙に用を頼む。
「あん?」
「ちょっと部屋の机の引き出しのあるものをとってきてくれるかしら?」
あるものってなんだよ……。
と、魔理沙は私に聞こうとしていたようだったが、間もなくして理解したのだろう。
再び彼女らしい意地悪な笑みを浮かべたかと思うと「分かったぜ」と一言だけ残し、神社の奥へと消えていった。
別に私だって用意しなかったわけじゃないわよ?
渡さずに済んだら嬉しいなと思っていただけの話。
それも今となっては正直恥ずかしいわね。
さてと……。
私は改めて妖精達の方を向いた。
「あんた達」
「……?」
「片付けはしっかりしなさいよ?……それとどうもありがとう」
直接目を見て言うのがなんだか恥ずかしくて、途中から私は妖精達から目をそらして言った。
「うん!どういたしまして!」
彼女達の返事は、やはり元気いっぱいだった。
にしても、これだけ派手に飾られていると遠目からでもよく分かるのだろうか。
目をそらしていて必然的に目に映る山際から見覚えのある天狗をはじめ、興味を惹かれた妖怪達が次々にこちらへと向かってくるのが見える。
はあ……。
この狭い神社は中も外も飾りと顔見知りで埋まるのかしら……。
改めて視線を真横に落とせば、境内にも広がる数々の飾り。
「この境内、後で儀式に使うんだけどなあ……」
……。
ま、いっか。
くだらないことを考えるのはやめにしたばかりだったわ。
今日は正月、世界の休日よ。
今はとにかく、気楽にいきましょう!
▼
――今となってはどの人間すら知る由もないが、特に当の霊夢に全く気づいていないことがあった。
それは……妖怪達にとって、それまでの博霊の巫女がどれだけ遠い存在であったか、ということである。
そしてその博霊の巫女がスペルカードを制定し、妖怪達にとって身近な存在となったことを喜ぶ存在は少なくないということも。
妖怪達にとって霊夢は絶大な力を誇り、しかも殺してはならない存在。
妖怪達と霊夢の関わりが少なかった時、それは恐怖の対象でしかなかった。
そんな恐怖の存在が、自分達と人間とを同じ高さで見てくれて、直接の態度にはださねど時には歓迎すらもしてくれるようになった。
幻想郷の吸血鬼にとって日光など、本来であればたかが日傘1本ですら凌げてしまう程度の脅威でしかない。
にも関わらずに起こしたあの異変は、スペルカードルールと……ひいては誰からも孤独だった霊夢を歓迎するものだという、そんな似合わない意図があったのだという想像すら出来る。
そんな人妖の隔たりを超えて関わりあう光景は、誰が見ても心温まる。
……ま、霊夢だけじゃなくて妖怪にも多分、そんな自覚ないんですけどね。
感動の余韻に加えて、これから集まってくる妖怪達と行われるであろう宴の楽しさを想像してか、霊夢はそっと微笑んでいた。
今年も一年、笑顔の絶えぬ幻想郷でありますように――。
『魑魅(すだま)の初詣?』
-完-
2013/11/22 諸事情により全作品における名義を変更しました。今後ともよろしくお願い致します。
冬の寒々とした空気の流れる曇り空の下。
見渡す限りの木々や山々は昨夜の内に降り積もった雪によって、一面の銀色に美しく彩られている。
とはいえやはり気候の厳しい冬の様相。目を凝らせばやはり、自然に住まう植物達はどこか萎縮して見えた。
そんな中、冬の厳しさをものともしない元気な声が響く。
「れ~い~む~!」
声のする方へと目を向けてみると、可愛らしい服装に身を包んだ数人の少女達が、鳥居の前に立っている。
彼女たちは一様に鳥居の奥にあるどこか寂れた……いや実際立地場所が立地場所だけに、閑居といってもいいだろう。
小ぢんまりとした神社に向かって声を出し、神社に住む者を呼んでいた。
「呼ばれてるぜ?」
「聞こえないわ」
神社本殿の奥に建てられた居間に、炬燵で暖を取りながら緑茶をすする影が二つ。
一人は勿論巫女の霊夢。
もう一人は、おそらく大晦日を霊夢と共に過ごしていたと考えられる魔理沙である。
「霊夢、おかわり」
早くもお茶を飲み干した魔理沙が湯のみを霊夢の前にポンと置き、さも当然のように要求をする。
「自分で淹れなさい」
「何だよケチだな……ってそれより、ホントに出なくていいのか?」
「だから私は誰にも呼ばれてないって言ってるでしょ」
「それは聞こえたと自白してるようなもんだぜ」
返事の通りというべきか、霊夢に呼び出しへ応じる様子はなく、無視を決め込んでいた。
とはいえ、事情を知ってさえいればそれも無理からぬこと……。
一部の妖怪は例外だが、幻想郷の大半は外界と変わらぬ太陽暦を用いて年月を数えている。
そして、本日の日付は……1月1日。
つまり元旦である。
普段、神社での業務は境内の掃除程度しかやっていないとはいえ、霊夢はれっきとした巫女だ。
信仰の希薄な博霊神社にかきいれ時なんてものはないものの……ましてや妖怪が相手ではあるが、それでも新年の始まりくらい神社の顔として挨拶、その他にも何か催事を執り行うことも、本来であればやぶさかではない。
もう少し日が高く昇ったら、殆ど唯一霊夢が真剣に向き合う神事「天香香背男命討伐の儀」も行う予定だ。
繰り返すが、本来であれば妖怪であろうと来訪に問題はない。
が、今回の場合は新年早々に訪ねてきた妖怪達に問題があった。
姿が見えずとも声色で分かるが、先ほど霊夢を呼び、彼女が現れるのを鳥居の前で待っているのは数人の妖精達である。
彼女達は人間よりもはるかに長生きをするので、実際の年齢は一応の人間である霊夢や魔理沙よりも遥かに上ではあるものの、同時に精神や肉体の成長も人間に比べて遥かに遅い。
そんな彼女達の年齢は、人間に換算するとわずか9歳程であった。
そんな人間的に幼い彼女達が、新年早々年上の霊夢の元を訪ねてきた理由といえば……霊夢が考える限り一つしかない。
「……さっさと顔出してやらないと、いつまでも呼ばれ続けるぜ?」
「うっさいわね。大体なんで私があんなイタズラ妖精共にお年玉をやらなきゃいけないわけ!?」
と、いうわけである。
幻想郷で彼女と関わりを持つものなら、霊夢の経済状況を知らぬものはいない。
神社だけは最近立て直されて新しくはなっているが、それは単に倒壊させられたから新築せざるを得なくなっただけの話であって、決して霊夢の財布が潤っているからではない。
早い話、霊夢は元旦から既に金欠なのだ。
しかし、そんな大人の事情等よく分からない妖精達が、恐れ多くも幻想郷で最強を誇り、しかも金に困る巫女の元へお年玉を強請りに来ているのである。
霊夢は普段なら妖精達を皆力づくで退治していそうだが、生憎今日は正月。
さすがの霊夢も一年の初めに、ましてや力の少ない妖精達を相手に暴力を振るう気にはならず、こうして居留守を決め込んでいるというわけだった。
「いきなり大声出すなよ……本当随分堂々とした居留守だな」
「何も聞こえてないっていってるでしょう」
「ああ、はいはい……」
普段は努力なんてしない癖に、幼女達相手に必死の努力を惜しまない霊夢を横目に見ながら、魔理沙が深いため息をつく。
彼女も霊夢とあまり変わらない年齢だとは思うが、パッと見ただけでも分かる大きな違い。
彼女の手元には中身の入ったポチ袋がいくつか準備されていた。
魔理沙は女性らしからぬ捻くれた喋り方とは裏腹に、中々人間が出来ている。
「やれやれ……。しょうがないから、私は先に渡してくるぜ。いつまでもこう叫ばれてたらかなわんからな」
「あ、そう。いってらっしゃい」
こんな状態の霊夢が一層冷たい態度になることは、長年の付き合いでよく分かっているのだろう。
魔理沙は特に何も言うことなく、襖を開けて外へと出て行った。
▼
魔理沙が出て行き、わずかに締め切らなかった戸の隙間から、乾燥した冷気が部屋に流れ込んでくる。
「さっむ……ちゃんと閉めなさいよ」
自分が閉めればそれで済む話なのだけど、そんな気力も湧かない私は戸を閉める代わりに炬燵の布団をぎゅっと身に寄せた。
ほんの気持ち程度だが、暖かさが増した気がする。
「……」
魔理沙がこの場からいなくなり、いつの間にか妖精達の声も止んでいる為、聞こえてくる物音は寒風の流れる音くらいとなった。
そんな場所に一人閉じこもっていると、やることは考え事くらいしかない。
「もう新年、かあ……」
思い返せばここ数年、色んな出来事がめぐるましく私の周りに起こった。
「……大体ロクでもないことばっかだけどね」
思わず飛び出す独り言。
私にとって元旦というのは本来、「人間」の参拝者や信仰者を増やす為の祭事を行う日だった。
山奥に位置し、人の足では参拝が難しいというのは分かっていたけど、何もしないよりは行動をした方が良いに決まっている。
元旦に行う伝統的な神事に始まり、他にも様々な事を私なりにしてきたつもり。
全てはさっきも言ったけど、人間の信仰を増やすためにね。
そんな目的へと向かう大きな手段の1つが、今生業にしている異変解決……のはずだった。
ところが、そうして私がしてきた行動は、私が望んだものとはほとんど逆の結果をもたらしていた。
118季の紅霧異変から始まり、そこから終わらない冬、明けぬ夜と、1季2季の間に立て続けに起こる異変。
傍目に見えた神社に映る光景の、なんと嘆かわしいことか……。
異変を解決する度に、神社に顔を出す「妖怪」の数が増えていったのである。
今日に限らずここ最近は本当に妖怪ばかりが訪れてくる。
対称的にに最もひどい時の人間の参拝者は、それまで極少数であったのが絶無といえる程になってしまった。
どこかの現代っ子が連れてきた神様のおかげで、少しだけマシにはなったんだけどね。
「どうして、こんなことになっちゃったのかしらねぇ……」
今更と言えば今更な疑問だが、こればかりは自分の行いに原因があると考えるしかない。
なんせ神主がいないから住んでるのは自分一人なのだ。責任転嫁のアテすらない。
「ずずっ……」
少し考え事をしている間に隙間風に奪われる体温を、緑茶でそっと温めなおす。
――そういえば、紅い霧が幻想郷を包み込む異変が起きる少し前の話……。
私は幻想郷を統治するべく、ある妖怪と共同して新しいルールの制定に携わっていたことがある。
人と妖怪とが平等に過ごせる世界をという名目の下で数々の法案が提案されたが、最終的に幻想郷に広がり、絶対的ルールとして採用されたのはたった一つ。
いわずもがなの命名決闘法案、通称「スペルカードルール」である。
他にも様々な法が採用こそされたものの、妖怪は勿論、人間にすら受け入れられたものは少なく、最終的にスペルカードルールのみが残る結果となった。
その直後に起こったあの紅霧異変は、幻想郷規模でスペルカードルールが広まる大きな要因として語られることとなるわけなんだけど……。
この異変に、私は当時疑問というか、もやもやとした違和感を感じていたのを覚えている。
というのもスペルカードの制定は、妖怪達から俗に「吸血鬼異変」と呼ばれている、妖怪征服が行われたことに起因していた。
吸血鬼の征服に反対した妖怪達によって鎮圧こそされたものの、今でも吸血鬼は幻想郷で屈指の大妖怪である。
記録として残されてはいないけれど、十中八九征服を目論んだ吸血鬼と、紅い霧を起こした吸血鬼は同一人物だろう。
あの自称カリスマ幼女以上の力を持ってる吸血鬼なんて、満495歳の一匹しか知らないし、そいつはそもそも外に出て来れないしね。
一時期は妖怪……果てには幻想郷そのものの征服すら目論んだ妖怪が、負けを認めれば否応なしに引き下がらざるを得ない法案の制定を待ってから再び異変を起こしたことに、今更の疑問を感じるのだ。
アイツを鎮圧した妖怪から、アイツへと協議の話が届かないはずはないんだし。
「……分からないなあ」
朝から妖怪絡みで嫌な思いをしたからかしら?
今日の自分はやけに、私にとって理解に苦しむ妖怪の行動に対して、不自然なほど思慮深い。
半ば合法的に異変を起こせるようになったのだから、それで動いたという理由も考えられるけど……。
「……サッパリね」
いつの間にか、一人でブツブツ呟き始めている私。
気づけば大分時間も経っていたようで、お茶も飲みきってしまった。淹れなおしはめんどくさいのでしない。
……。
「お嬢様のただの自己満足だったのかしら……?」
……。
ダッダッダッダッ。
「あいつ普段から何考えてるか分からないしなあ……」
……
ガタガタガタ。
「…………」
……。
……。
「……ドカーン!」
「うるさい!!」
人が真面目に考え事をしている時に何よ!
急に表の方がやたらと騒がしくなった。明らかに人為的な物音で、果てには何かの爆発音まで響き渡った。
まじめに考え事をしていたのに、うざいったらありゃしない。
というか騒音を止めに行った魔理沙は何をしてるわけ!?
私がいきり立っていると、縁側を足早にこちらへと歩いてくる音が聞こえる。
少しして……。
ガラガラッ!
「おーい霊夢!ちょっとそ……あいたっ!」
とりあえず、やっぱりという感じで騒がしく戻ってきた魔理沙を、グーで一発殴らせてもらった。
「いきなり何すんだよ!」
たんこぶを押さえて文句を言う魔理沙の顔には「私には殴られる謂れはない!」としっかり書かれていた。
「うっさいのよさっきから!あんたはあのガキ共を黙らせるんじゃなかったの?」
そう言うと魔理沙の表情から私への恨めしさがパッと消えて
「そうそう、ちょっと外に出てみろよ!きっとビックリするぜ?」
と笑顔で私に指示する。
しかも質問の答えになっていない。
「何でこの寒い中早朝に外出ないといけないのよ……」
「まあまあ。少なくとも、さっきの騒音に対する慰謝料くらいの価値はあると思うから見てみろよ」
「間違いなくロクなもんじゃないわね」
私がそう噛み付いても魔理沙は変わらずニコニコとしている。
「はあ……」
全開の扉から入り込む外気があまりに寒すぎて思わず「嫌よ」と喉元まで出掛かったが、拒否してもどうやらこのままでは終わりそうにない。
私は部屋に掛けてあるちゃんちゃんこを羽織って、外に出ることにした。
先に外に出ている魔理沙は変わらずのテンションで、まるで子供のように「はやくはやく」と私を急かしている。
「ロクなものじゃなかったらもっかい殴るからね。で、なんなのよ」
「そいつはゴメンだ。まあ表に来たらすぐさ」
「はいはい」
適当に流して、魔理沙と並んでくねった縁側を歩く。
その短い間に「何があるのよ」ともっかい聞いたが見事に無視された。
少しずつ表の境内が視界に入ってきた。
間もなくして、私の目に映ったのは――
――雪。
昨日降り積もったであろう、雪だった。
勿論ただの雪ではない。
人為的にいくつかに分けられたと思われる雪の塊が、それぞれ元旦というテーマにそって様々に形作られていたのである。
しかも雪といえば真白い化粧を想像するけど、神社を彩る彼らには淡く光る不思議な色彩が施されていた。
おそらくこれは魔理沙によるものだろう。
まず目に入ったのは鳥居につけられた巨大な門松。
ご丁寧に輪飾りまでぶら下がっている凝りようである。
次にお賽銭箱の横飾られている可愛らしい生け花。
決して人里で売られているような安っぽい詰め込み感がなく、雪で作られているなんて思うどころか、そこから和を意識した彩が醸し出す独特の気風さえ感じられた。
他にも境内に立ち並ぶ、雪製の松や竹――
――いや、狭い境内だけに留まらない。
ふと見上げた空には、境内にあるよりもはるかに巨大な雪の創造物が、魔方陣で足場を得てふんわりと宙を漂っていた。
境内にあるよりも何倍もの雪を使って作られた鏡餅や破魔矢等が、無秩序に神社の周りに浮かべられている。
無秩序とはいっても、朝日を浴びて輝く彼らから言葉に表現できない美しさを孕んでいるのか感じ取れて……。
あまりにも予想していなかったこの光景に、私はただ目を奪われていた。
「あ、霊夢だ!」
宙に浮かぶ鏡餅の影から顔を出した妖精が、私を指差してはしゃぎだす。
私に気づいた声につられて、餅の右や左や上から続けて小さな影が5つ飛び出した。
いわずもがなのチルノ、大妖精、サニーミルク、ルナチャイルド、スターサファイアの5人。
彼女達はいつもの衣装ではなく、可愛らしい着物を着ていた。
やがて一人から「あ、ホントだ!」という声が聞こえたかと思うと、彼女達はパッと飛び出してひらひらとこちらに向かってきた。
やがてたどり着き、ちょこんっと目の前に着地する。
「あ、あんた達……」
何か言うことがあるはずなんだけど、言葉が上手く出てこない。
そうこうしているうちに、妖精たちはサッと整列したかと思うと口を揃えて――
「霊夢!明けましておめでとう!」
と挨拶をした。
「……!」
「こいつら最初はお年玉強請りにきただけだったらしいんだけどさ。先に来た私を見たら、霊夢にはお世話になってるからってちょっとお礼がしたいとか言い出してな。勿論脅かしを含めて」
顔を見ていないのに、呆気にとられている私を見て魔理沙がニヤついているのが分かる。
大成功だぜ!とか絶対思ってるわねこいつ……。
で、目の前の5人は、子供ならではの無垢な笑顔を満面に出していた。
喜んでくれた!?とか、そんな心の声すら聞こえてくる。
それなのに、私と来たら……。
無意識に握り拳に力が入る。
さっきまで妖怪ばかりが来ることを訝っていたばかりだってのに……。
何なの?こいつら。
それに比べて私は当の妖怪……まあ考えたのは魔理沙でしょうけど。
こいつらの似つかわしくないことにこいつらの作った物なんかに感動しちゃって。
……。
次に映った笑顔を見ていたら、さっきまで考えていたことがどこかへ吹き飛んでしまった。
……。
あ、分かった。
いきなりだけど、分かったわ。
何がって?
今日の自分が、何をするべきなのかがよ。
「……ぷっ、あははははは!」
ようやく理解が出来た私の口からは、何故か笑いしか出てこなかった。
「なんだなんだ……?」
「いきなりどうしたの?」
彼女達は私の不可思議な様子にきょとんとしているけど「何でもないわ」と笑いながら答えるくらいしか出来ない。
本当に可笑しい。
この子達を邪魔扱いしてたさっきまでの自分とか、お金の心配なんかしてた自分の何もかもが可笑しくて……。
あはは!
やめたやめた!
今日はお正月でしょ?
馬鹿馬鹿しい。
確かに考えるべきことや、向き合うべきことは山ほどあるかもしれない。
でも、それは今やるべきことじゃない。
せっかくの正月に……。
それもこんな小さい子達が神社の為に来てくれてる横でめんどくさい考え事なんかして、ホント馬鹿みたい!
似合わないったらありゃしないわ。
あ、それはそうと……。
「ねぇ魔理沙」
ようやく笑いが収まった私は、魔理沙に用を頼む。
「あん?」
「ちょっと部屋の机の引き出しのあるものをとってきてくれるかしら?」
あるものってなんだよ……。
と、魔理沙は私に聞こうとしていたようだったが、間もなくして理解したのだろう。
再び彼女らしい意地悪な笑みを浮かべたかと思うと「分かったぜ」と一言だけ残し、神社の奥へと消えていった。
別に私だって用意しなかったわけじゃないわよ?
渡さずに済んだら嬉しいなと思っていただけの話。
それも今となっては正直恥ずかしいわね。
さてと……。
私は改めて妖精達の方を向いた。
「あんた達」
「……?」
「片付けはしっかりしなさいよ?……それとどうもありがとう」
直接目を見て言うのがなんだか恥ずかしくて、途中から私は妖精達から目をそらして言った。
「うん!どういたしまして!」
彼女達の返事は、やはり元気いっぱいだった。
にしても、これだけ派手に飾られていると遠目からでもよく分かるのだろうか。
目をそらしていて必然的に目に映る山際から見覚えのある天狗をはじめ、興味を惹かれた妖怪達が次々にこちらへと向かってくるのが見える。
はあ……。
この狭い神社は中も外も飾りと顔見知りで埋まるのかしら……。
改めて視線を真横に落とせば、境内にも広がる数々の飾り。
「この境内、後で儀式に使うんだけどなあ……」
……。
ま、いっか。
くだらないことを考えるのはやめにしたばかりだったわ。
今日は正月、世界の休日よ。
今はとにかく、気楽にいきましょう!
▼
――今となってはどの人間すら知る由もないが、特に当の霊夢に全く気づいていないことがあった。
それは……妖怪達にとって、それまでの博霊の巫女がどれだけ遠い存在であったか、ということである。
そしてその博霊の巫女がスペルカードを制定し、妖怪達にとって身近な存在となったことを喜ぶ存在は少なくないということも。
妖怪達にとって霊夢は絶大な力を誇り、しかも殺してはならない存在。
妖怪達と霊夢の関わりが少なかった時、それは恐怖の対象でしかなかった。
そんな恐怖の存在が、自分達と人間とを同じ高さで見てくれて、直接の態度にはださねど時には歓迎すらもしてくれるようになった。
幻想郷の吸血鬼にとって日光など、本来であればたかが日傘1本ですら凌げてしまう程度の脅威でしかない。
にも関わらずに起こしたあの異変は、スペルカードルールと……ひいては誰からも孤独だった霊夢を歓迎するものだという、そんな似合わない意図があったのだという想像すら出来る。
そんな人妖の隔たりを超えて関わりあう光景は、誰が見ても心温まる。
……ま、霊夢だけじゃなくて妖怪にも多分、そんな自覚ないんですけどね。
感動の余韻に加えて、これから集まってくる妖怪達と行われるであろう宴の楽しさを想像してか、霊夢はそっと微笑んでいた。
今年も一年、笑顔の絶えぬ幻想郷でありますように――。
『魑魅(すだま)の初詣?』
-完-
それにしても、妖精達の作り物にしてはレベルが高いな…ww
>本来であればたかが日傘1本ですら凌げてしまう程度の
“すら”は余分かも?
吸血鬼の弱点の程度に関しては、紅魔郷EDの独自解釈を元に多少大袈裟にさせていただきました、といったところです。
読了及びコメントありがとうございました(´ω`)
やることが可愛いぜ!
霊夢が驚くくらいものを考えているけれど、新年だし霊夢だってもの思う時くらいはあるかw
霊夢に思慮深いは合わないので、投げ出させました。
キャラがイメージと合わないというのは回避されてるかと思います。
お読みいただきありがとうございました♪
あけましておめでとう
キャラ付けの背景にあるものが見えていいですね。
お返事が遅くなりまして、申し訳ございません。
原作である程度キャラは形作られてるものかと思いますが、私なりの霊夢っぽさなんかも出せてるとうれしいですが・・・!
お読みいただきありがとうございました