最近妹からの愛情が深すぎて困る。
仲の悪い他の姉妹からすればこれは贅沢な悩みなのかもしれないが、私――古明地さとりの中では目下最大の悩みである。
今のうちに断っておくが、私はこいしの事が嫌いなわけではない。
むしろ好きだ。一日のうちに10時間以上はこいしの事を考える。
だが、姉が妹の事を心配するなんて世間一般では当たり前の事であり、私のこいしへの想いはごくごく普通のものである。
だが、こいしのそれは全然違う。
今朝ご飯を食べようとしてスプーンを掴んだら、いつの間にかこいしの使用済みのスプーンに変わっていたとか。
昨日お風呂に入って髪を洗っていたら、いつの間にかこいしが湯船の中に入っていたとか。
昨日寝ようとしてベッドの布団を持ち上げたら、いつの間にかこいしが入り込んでいたりとか。
思い返せばキリがない程である。
これはかなり異常な行為であると言え、姉の私がなんとかしなければいけない事なのだろう。
こいしの行為がエスカレートして、終いには「お姉ちゃんに近づく者はみんな××しちゃう」とか言い出すに決まっている。
だから、今日はこいしを止める一環として、お風呂に鍵をかけてみた。
これでこいしは私と一緒にお風呂に入る事はできず、行為にストップをかけられるはずだ。
――ちゃぷん、と。
湯船に身体を沈めながら考える。
「さて……どうしたものかしらね……」
「んぅ? お姉ちゃん、何か悩み事?」
私の能力を使ってこいしの心が読めれば問題解決までたやすいのだが、もちろんそれはできそうにない。
「ねぇねぇ、私に話してみてよ♪ 私、お姉ちゃんのためならなんでもするよっ」
むぅ……何も案が浮かんでこない。
しかしながら、心を読む以外の方法を思いつかないなんて、私も堕落してしまったものである。
いや、覚り妖怪なのだから当然と言うべきか。
「大丈夫、お姉ちゃんは何の心配もいらないよ。
私がお姉ちゃんの悩み事を全部解決してあげるんだからねっ」
「……あれ?」
私はどこかで聞いた事あるような――というより、一番身近な血縁者の声がしたような……。
そう思って振りかえってみると、案の定こいしがいた。
一度気付いたら今までなぜ気付けなかったのか疑問に思うほど、こいしが私に密着していた。
気付けば感じられるこいしの吐息、ぬくもり、背中に当たる感触。
私はため息を漏らした。
「はぁ~……。
こいし、あなたいつの間に入ってきたのかしら?」
「最初からだよ~。
一緒に着替えたのに覚えてないの?」
「……まったく」
つまりは鍵をかけたのも無駄だったという事だろう。
こいしの何の悪びれていない表情を見て、私は一瞬のうちに怒る気がなくなってしまった。
こいしにとって私と一緒に入浴する事なんて当たり前なのだから、今更怒ったところで意味がないのだ。
……いや違う。
何を諦めているんだ、私は。
ついさっきこの生活を変えようと決意したばかりじゃないか。
ここは一つ。姉として、びしっ! と妹に行ってやらなければなるまい。
「こいし、一緒にお風呂入るなら事前に言いなさいと言ったでしょう?」
「え~、いいじゃん別に。
どうせ一緒に入るんだから前でも後でも一緒でしょ?」
「心構えというものがあります!」
「……もしかしてお姉ちゃん、私の裸見て興奮しちゃってるの?」
「そんな事あるわけがないじゃないのっ!」
「だったらいいじゃない。
さっ、お姉ちゃん。背中洗ってあげるから湯船から出て」
……むぅ、私ではもうこいしは止められないのであろうか。
なら残された方法は一つ。他人に助けてもらおう。
さいわい私にはお空とお燐という優秀なペットがいる。
二人に聞けばどちらかはいい意見を出してくれるはずである。
――こうして、私はこいしの姉離れ計画をスタートさせたのである。
☆ ☆ ☆
まずはお空のところへ行ってみる。
お空は世間のイメージではバカの代名詞のような不等な扱いを受けているが、主の私から言わせてもらうと、それは間違いである。
たしかに的外れな意見も多いが、時々私やお燐でも思いつかないような意見を出したり鋭い指摘をしたりもする。
さらには神に八咫鴉の力をもらうという大胆な行動力も持ち合わせている。
お空ならばきっといい意見を出してくれるはずであろう。
「お空、これは私の友人の話なんだけどね。
その友人は妹から過剰な愛情を受けていて正直まいっているらしいのよ。
でも友人も妹の事が嫌いでもなく、むしろ好きだから穏便に事を片付けたいらしいのよね。
お空ならどうやってこの問題を解決する?」
「えぇっ!? さとり様、こいし様の事が嫌いなんですか!?」
即答だった。
お空の目は爛々と輝いており、その揺ぎ無い自信と態度にはこの私すらも圧倒されかけていた。
「いや、だから友人の話と言ったじゃないの。ちゃんと話を聞きなさい」
「うにゅ~、さとり様とこいし様の話だと思っちゃった……」
お空は変なところで鋭いから困る。
さらには微妙なところで間違っているから手に負えない。
私はこいしの事が嫌いなのではなく、むしろ好きであると言ったばかりなのに。
「え~とね、そういう時はそのお友達の妹を嫌っちゃうのがいいと思うよ?」
「……いや、だから私の話をちゃんと聞いていたのかしら」
私がうめくと、お空は「違う違う」と手をぱたぱた振った。
「違うよ、さとり様。正確には嫌うフリをするんだよ。
お友達に嫌われたら、その妹ちゃんはなんで自分は嫌われちゃったんだろ? って考えるでしょ?
そしたら、きっと妹ちゃんの方からお友達にごめんなさいしてくれるはずだよ」
「……なるほど」
私はお空のアドバイスに素直に感心してしまった。
お空は優秀なペットだが、実のところ私は手掛かりだけでも見つければいい、とそれほどまでに期待はしていなかった。
だが、実際はどうだろう。
お空の話は実際やってみる価値の十分あるものであった。
さらにはお空の話し方はなんだか納得してしまう魅力を持っているから不思議だ。
言われた通りにすればきっと上手くいく――言葉では言い表せない変な自信が湧いてくる。
「えへへっ、偉そうにしゃべっちゃったけどね。これ本当は私がお燐に対していつも使ってる方法なんだよ。
私とお燐が喧嘩しちゃった時は、いつもこの方法で仲直りするの」
「あなた、なかなかの策士だったのね……」
今度お空と喧嘩する時は気をつける事にしよう。
この娘は頭の中が大宇宙だから心が読めない上に、策士とあってはいろいろと厄介になりそうだ。
☆ ☆ ☆
今度はお燐のところへ行ってみた。
私はお燐にものすごく期待していた。
あまり期待していなかったお空があんな名案を出してくれたのだ。
地霊殿の影の頭脳と呼ばれ、私の右腕として日々活躍してくれているお燐はきっと諸葛孔明もびっくりと名案を出してくれるに違いない。
「ふむ……、なるほど。
さとり様はそのご友人のためにアタイにアドバイスをもらいに来たわけですね」
お燐が神妙な表情で肯く。
こんな真剣な顔をしたお燐は久しぶりに見た気がする。
これは私の予想通りに期待できそうだ。
「そうですね……、ではご友人が妹さんの元から家出するというのはどうでしょう?」
「それでっ! どうするのっ!?」
「……そんな期待の籠った目で見つめられても……」
「あら、ごめんなさい。でも、お燐がどんな名案を出してくれるのか楽しみで楽しみで仕方ないのっ」
私の勢いにお燐は圧倒されたようで、二、三歩後ずさりをした。
お燐はこほんっ、と咳払いをしてから続ける。
「アタイの策は至って単純です。
いつも近くにいるはずのご友人が離れてしまえば、その妹さんはきっとご友人の大切さが身に染みる事でしょう。
後は時間が経った頃にご友人が家に帰ってくれば、妹さんも今までの過剰な愛に対して謝罪する事でしょう」
「……終わり?」
「えぇ、終わりです」
「……ちぇ」
「舌打ち!? 今、さとり様舌打ちしましたよね!?」
真剣な表情から一転して、お燐が取り乱した様子で私に迫ってくる。
今度は私が圧倒される番だった。
私は大げさにため息をついてみせる。
「舌打ちもするわよ。
お空がとんでもない名案を出してくれたから、お燐はきっとそれ以上の名案をくれるはずだと期待したのに……。
まさか、そんな、誰でも思いつくようなアイデアを出されても、ね。
ふぅ……っ」
「うわああぁぁぁぁんんっ!!!!! さとり様の小五ロリ~~っ!!!!!!」
意味不明な罵倒を残して去っていくお燐。
私はそれを他人事のように眺めていた。
だが、ふと我に返ってみると、お燐の出してくれた案もなかなかいいような気がした。
私とこいしは当たり前だが生まれてからずっと一緒にいる。
ここで私がこいしの元をしばらく離れてみるというのも、こいしにとっていい刺激になるに違いない。
こいしは私がいなくなった事で、あの愛らしいアーモンドの形をした瞳をうるうると滲ませて「お姉ちゃああぁんっ」と右往左往するのかもしれない。
そこで私が登場し、姉としてびしっ! と言ってやれば……
「うふっ、うふふふっ……。
よくよく考えればお燐の意見もなかなかの名案じゃないの」
私は一人でにやにやしながら考えていた。
問題はお空の意見とお燐の意見のどちらを採用するか、だ。
片方が失敗したからもう片方にする、とか安直な方法は選べない。
片方が失敗した時点でこいしに警戒される可能性が高く、もう片方を実行しても失敗する確率が高くなってしまうからだ。
ここはじっくり考える必要がある。
さて、どちらにすべきか……。
そして、私は選んだ。
① お空の意見『こいしを嫌うフリをする』を選ぶ→ページ2へ
② お燐の意見『私がこいしから距離をとる』を選ぶ→ページ3へ
仲の悪い他の姉妹からすればこれは贅沢な悩みなのかもしれないが、私――古明地さとりの中では目下最大の悩みである。
今のうちに断っておくが、私はこいしの事が嫌いなわけではない。
むしろ好きだ。一日のうちに10時間以上はこいしの事を考える。
だが、姉が妹の事を心配するなんて世間一般では当たり前の事であり、私のこいしへの想いはごくごく普通のものである。
だが、こいしのそれは全然違う。
今朝ご飯を食べようとしてスプーンを掴んだら、いつの間にかこいしの使用済みのスプーンに変わっていたとか。
昨日お風呂に入って髪を洗っていたら、いつの間にかこいしが湯船の中に入っていたとか。
昨日寝ようとしてベッドの布団を持ち上げたら、いつの間にかこいしが入り込んでいたりとか。
思い返せばキリがない程である。
これはかなり異常な行為であると言え、姉の私がなんとかしなければいけない事なのだろう。
こいしの行為がエスカレートして、終いには「お姉ちゃんに近づく者はみんな××しちゃう」とか言い出すに決まっている。
だから、今日はこいしを止める一環として、お風呂に鍵をかけてみた。
これでこいしは私と一緒にお風呂に入る事はできず、行為にストップをかけられるはずだ。
――ちゃぷん、と。
湯船に身体を沈めながら考える。
「さて……どうしたものかしらね……」
「んぅ? お姉ちゃん、何か悩み事?」
私の能力を使ってこいしの心が読めれば問題解決までたやすいのだが、もちろんそれはできそうにない。
「ねぇねぇ、私に話してみてよ♪ 私、お姉ちゃんのためならなんでもするよっ」
むぅ……何も案が浮かんでこない。
しかしながら、心を読む以外の方法を思いつかないなんて、私も堕落してしまったものである。
いや、覚り妖怪なのだから当然と言うべきか。
「大丈夫、お姉ちゃんは何の心配もいらないよ。
私がお姉ちゃんの悩み事を全部解決してあげるんだからねっ」
「……あれ?」
私はどこかで聞いた事あるような――というより、一番身近な血縁者の声がしたような……。
そう思って振りかえってみると、案の定こいしがいた。
一度気付いたら今までなぜ気付けなかったのか疑問に思うほど、こいしが私に密着していた。
気付けば感じられるこいしの吐息、ぬくもり、背中に当たる感触。
私はため息を漏らした。
「はぁ~……。
こいし、あなたいつの間に入ってきたのかしら?」
「最初からだよ~。
一緒に着替えたのに覚えてないの?」
「……まったく」
つまりは鍵をかけたのも無駄だったという事だろう。
こいしの何の悪びれていない表情を見て、私は一瞬のうちに怒る気がなくなってしまった。
こいしにとって私と一緒に入浴する事なんて当たり前なのだから、今更怒ったところで意味がないのだ。
……いや違う。
何を諦めているんだ、私は。
ついさっきこの生活を変えようと決意したばかりじゃないか。
ここは一つ。姉として、びしっ! と妹に行ってやらなければなるまい。
「こいし、一緒にお風呂入るなら事前に言いなさいと言ったでしょう?」
「え~、いいじゃん別に。
どうせ一緒に入るんだから前でも後でも一緒でしょ?」
「心構えというものがあります!」
「……もしかしてお姉ちゃん、私の裸見て興奮しちゃってるの?」
「そんな事あるわけがないじゃないのっ!」
「だったらいいじゃない。
さっ、お姉ちゃん。背中洗ってあげるから湯船から出て」
……むぅ、私ではもうこいしは止められないのであろうか。
なら残された方法は一つ。他人に助けてもらおう。
さいわい私にはお空とお燐という優秀なペットがいる。
二人に聞けばどちらかはいい意見を出してくれるはずである。
――こうして、私はこいしの姉離れ計画をスタートさせたのである。
☆ ☆ ☆
まずはお空のところへ行ってみる。
お空は世間のイメージではバカの代名詞のような不等な扱いを受けているが、主の私から言わせてもらうと、それは間違いである。
たしかに的外れな意見も多いが、時々私やお燐でも思いつかないような意見を出したり鋭い指摘をしたりもする。
さらには神に八咫鴉の力をもらうという大胆な行動力も持ち合わせている。
お空ならばきっといい意見を出してくれるはずであろう。
「お空、これは私の友人の話なんだけどね。
その友人は妹から過剰な愛情を受けていて正直まいっているらしいのよ。
でも友人も妹の事が嫌いでもなく、むしろ好きだから穏便に事を片付けたいらしいのよね。
お空ならどうやってこの問題を解決する?」
「えぇっ!? さとり様、こいし様の事が嫌いなんですか!?」
即答だった。
お空の目は爛々と輝いており、その揺ぎ無い自信と態度にはこの私すらも圧倒されかけていた。
「いや、だから友人の話と言ったじゃないの。ちゃんと話を聞きなさい」
「うにゅ~、さとり様とこいし様の話だと思っちゃった……」
お空は変なところで鋭いから困る。
さらには微妙なところで間違っているから手に負えない。
私はこいしの事が嫌いなのではなく、むしろ好きであると言ったばかりなのに。
「え~とね、そういう時はそのお友達の妹を嫌っちゃうのがいいと思うよ?」
「……いや、だから私の話をちゃんと聞いていたのかしら」
私がうめくと、お空は「違う違う」と手をぱたぱた振った。
「違うよ、さとり様。正確には嫌うフリをするんだよ。
お友達に嫌われたら、その妹ちゃんはなんで自分は嫌われちゃったんだろ? って考えるでしょ?
そしたら、きっと妹ちゃんの方からお友達にごめんなさいしてくれるはずだよ」
「……なるほど」
私はお空のアドバイスに素直に感心してしまった。
お空は優秀なペットだが、実のところ私は手掛かりだけでも見つければいい、とそれほどまでに期待はしていなかった。
だが、実際はどうだろう。
お空の話は実際やってみる価値の十分あるものであった。
さらにはお空の話し方はなんだか納得してしまう魅力を持っているから不思議だ。
言われた通りにすればきっと上手くいく――言葉では言い表せない変な自信が湧いてくる。
「えへへっ、偉そうにしゃべっちゃったけどね。これ本当は私がお燐に対していつも使ってる方法なんだよ。
私とお燐が喧嘩しちゃった時は、いつもこの方法で仲直りするの」
「あなた、なかなかの策士だったのね……」
今度お空と喧嘩する時は気をつける事にしよう。
この娘は頭の中が大宇宙だから心が読めない上に、策士とあってはいろいろと厄介になりそうだ。
☆ ☆ ☆
今度はお燐のところへ行ってみた。
私はお燐にものすごく期待していた。
あまり期待していなかったお空があんな名案を出してくれたのだ。
地霊殿の影の頭脳と呼ばれ、私の右腕として日々活躍してくれているお燐はきっと諸葛孔明もびっくりと名案を出してくれるに違いない。
「ふむ……、なるほど。
さとり様はそのご友人のためにアタイにアドバイスをもらいに来たわけですね」
お燐が神妙な表情で肯く。
こんな真剣な顔をしたお燐は久しぶりに見た気がする。
これは私の予想通りに期待できそうだ。
「そうですね……、ではご友人が妹さんの元から家出するというのはどうでしょう?」
「それでっ! どうするのっ!?」
「……そんな期待の籠った目で見つめられても……」
「あら、ごめんなさい。でも、お燐がどんな名案を出してくれるのか楽しみで楽しみで仕方ないのっ」
私の勢いにお燐は圧倒されたようで、二、三歩後ずさりをした。
お燐はこほんっ、と咳払いをしてから続ける。
「アタイの策は至って単純です。
いつも近くにいるはずのご友人が離れてしまえば、その妹さんはきっとご友人の大切さが身に染みる事でしょう。
後は時間が経った頃にご友人が家に帰ってくれば、妹さんも今までの過剰な愛に対して謝罪する事でしょう」
「……終わり?」
「えぇ、終わりです」
「……ちぇ」
「舌打ち!? 今、さとり様舌打ちしましたよね!?」
真剣な表情から一転して、お燐が取り乱した様子で私に迫ってくる。
今度は私が圧倒される番だった。
私は大げさにため息をついてみせる。
「舌打ちもするわよ。
お空がとんでもない名案を出してくれたから、お燐はきっとそれ以上の名案をくれるはずだと期待したのに……。
まさか、そんな、誰でも思いつくようなアイデアを出されても、ね。
ふぅ……っ」
「うわああぁぁぁぁんんっ!!!!! さとり様の小五ロリ~~っ!!!!!!」
意味不明な罵倒を残して去っていくお燐。
私はそれを他人事のように眺めていた。
だが、ふと我に返ってみると、お燐の出してくれた案もなかなかいいような気がした。
私とこいしは当たり前だが生まれてからずっと一緒にいる。
ここで私がこいしの元をしばらく離れてみるというのも、こいしにとっていい刺激になるに違いない。
こいしは私がいなくなった事で、あの愛らしいアーモンドの形をした瞳をうるうると滲ませて「お姉ちゃああぁんっ」と右往左往するのかもしれない。
そこで私が登場し、姉としてびしっ! と言ってやれば……
「うふっ、うふふふっ……。
よくよく考えればお燐の意見もなかなかの名案じゃないの」
私は一人でにやにやしながら考えていた。
問題はお空の意見とお燐の意見のどちらを採用するか、だ。
片方が失敗したからもう片方にする、とか安直な方法は選べない。
片方が失敗した時点でこいしに警戒される可能性が高く、もう片方を実行しても失敗する確率が高くなってしまうからだ。
ここはじっくり考える必要がある。
さて、どちらにすべきか……。
そして、私は選んだ。
① お空の意見『こいしを嫌うフリをする』を選ぶ→ページ2へ
② お燐の意見『私がこいしから距離をとる』を選ぶ→ページ3へ