クリスマスイブには様々なドラマが生まれる。
それはそのドラマに関わる人によって万華鏡のように様々な姿を見せる。
「そう、だから私は決めたんだ。今年こそサンタさんに会いに行くって」
瞳を輝かせながら、普通の魔法使いである魔理沙は声も高らかに告げた。
「そして言うんだ。『毎年プレゼントをありがとう』と」
その声に宿るのは確かな決意。
幼い、あまりにも子供染みた決意だが、それは同時に子供の頃からの夢を今でも忘れずに持ち続けていると言うことも出来るだろう。
実際に彼女は子供の頃からの夢である『魔法使いになる』という決意をこうして努力の末に叶えてしまったのだから。
だからこそ、魔理沙の言葉には確かな力が宿っていた。
「だから、私は今日ここに来たのさ。毎年どころかいつも気前良く色々貸してくれる『図書館』という名のサンタさんの下へとっ!」
握った拳に力を込めながら、天に届けと言わんばかりに言い切った魔理沙の前にはやたらと目の座った図書館の主、パチュリーがいた。
「で? その背負った袋にパンパンに詰め込まれた本の言い訳は終わったの?」
「ああ。クリスマスプレゼント、ありがとな」
「プレゼントするなんて一言も言っていないでしょうがっ! そもそも紅魔館はクリスマスとは対極に位置する場所だから! 真夏の雪ダルマ位クリスマスと言う言葉が当てはまらない場所だからっ!」
「それに挑戦するのが私だぜっ!」
「胸を張って言うこと!?」
「もちろんだっ!」
悪びれるどころかむしろ誇らしげにサムズアップしながら持っていた箒に魔力を込め、逃げる準備を始める。
「そんじゃ、メリークリスマス。またよろしくな」
「逃がすとでも……ケホッケホッ……」
スペルカードを取り出そうとしたところで図書館の魔法使いは急に咳き込んだ。
元々喘息持ちの彼女にとって、先程のツッコミは酷だったようだ。
「隙あり!」
当然逃げるほうとしてはその隙を見逃すはずも無く、箒に跨ると全速で逃げ出した。
「ま、待ち……」
後ろの方から何か聞こえるが、それを気にすることなく出口目指して飛んでいく。
あと少しでトンズラ成功という地点で、魔理沙の前に小さな人影が立ちふさがった。
「!?」
慌てて急停止すると、その人影はにっこりと微笑を浮かべる。
「やっほー魔理沙。せっかく来たのに私に会わずに帰るなんて酷いじゃない」
「フランか。いまはちょっと立て込んでいるからまた今度な」
人影の正体は紅魔館の主レミリアの妹、フランドール・スカーレットだった。
「うん。それはいいけど背中の袋はパチュリーの本でしょ? だめだよ魔理沙。人の物を勝手に持っていくのは泥棒だってめーりんから教わったもの」
「へっ。これは泥棒じゃない。死ぬまで借りていくだけだ」
軽口を叩きながらも、内心では気を引き締める。
言動こそ幼いが、フランドールは吸血鬼だけあってかなりの実力を持っているからだ。
だが、次にその吸血鬼の口から出た言葉は魔理沙の予想外のものだった。
「そんな事をいう悪い子にはお仕置きだよ。出でよっ! 地底からの助っ人妖怪……」
両手を高々と掲げ、魔力を集める。
フラン本人の仕掛けたものかこの図書館の防衛機能かは不明だが、その動作に合わせて彼女の足元に光り輝く召喚陣らしき図形が描かれていく。
(助っ人だと!? まさか鬼とか言うんじゃないだろうな、流石にそれはやば過ぎる!)
驚愕する魔理沙を余所に続いた名は、しかし魔理沙が初めて聞くものであった。
「『おでん』っっっ!!」
そのあまりにも珍妙な名前に一気に拍子抜けする普通の魔法使い。
そんな事はお構いなしに、フランドールが振り下ろした両手の先にある魔方陣から新たな人影が浮かび上がってくる。
「何かうまそうな妖怪……だ……なぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!?」
そして魔理沙の前に『ソレ』は現れた。
◇
夜が明けて、クリスマスの当日。
「魔理沙から本を守り抜いたですってっ!?」
「うん。はい、コレ」
「うわ~、本当に魔理沙さんが昨日持ち出そうとした本がそろってますよ」
袋の中身を確認した図書館の司書、小悪魔が感嘆の声を漏らす。
「さすが妹様ですね」
「えへへ、私だけの力じゃないよ。こいしちゃんが貸してくれたペットのおかげでもあるんだから」
「こいしって、あの地底の? なら、後でお礼を言いに行かないとならないわね」
「では、図書館防衛記念に今日はぱぁ~っとお祝いしましょうっ!」
「そうね。せっかくだからレミィ達にも声をかけて皆で祝いましょう」
「ほんと? やったぁ~!!」
そんな笑い声が赤い屋敷でこだましていた。
その頃魔理沙はというと。
「マッチョが、真っ赤なビキニパンツのマッチョが追いかけてくるよぉ~~~……」
「どうしたの魔理沙は?」
「さぁ、なんか今日慌てて飛び込んで来るなりずっとああなのよ」
博麗神社にて部屋の隅で座布団を頭から被ってブルブル震えていた。
その様子を見ながら、神社の巫女と人形使いは互いに首を傾げるのであった。
クリスマスイブには様々なドラマが生まれる。
だから、中にはこんなどーしょーもないドラマも生まれることだってある。
それはそのドラマに関わる人によって万華鏡のように様々な姿を見せる。
「そう、だから私は決めたんだ。今年こそサンタさんに会いに行くって」
瞳を輝かせながら、普通の魔法使いである魔理沙は声も高らかに告げた。
「そして言うんだ。『毎年プレゼントをありがとう』と」
その声に宿るのは確かな決意。
幼い、あまりにも子供染みた決意だが、それは同時に子供の頃からの夢を今でも忘れずに持ち続けていると言うことも出来るだろう。
実際に彼女は子供の頃からの夢である『魔法使いになる』という決意をこうして努力の末に叶えてしまったのだから。
だからこそ、魔理沙の言葉には確かな力が宿っていた。
「だから、私は今日ここに来たのさ。毎年どころかいつも気前良く色々貸してくれる『図書館』という名のサンタさんの下へとっ!」
握った拳に力を込めながら、天に届けと言わんばかりに言い切った魔理沙の前にはやたらと目の座った図書館の主、パチュリーがいた。
「で? その背負った袋にパンパンに詰め込まれた本の言い訳は終わったの?」
「ああ。クリスマスプレゼント、ありがとな」
「プレゼントするなんて一言も言っていないでしょうがっ! そもそも紅魔館はクリスマスとは対極に位置する場所だから! 真夏の雪ダルマ位クリスマスと言う言葉が当てはまらない場所だからっ!」
「それに挑戦するのが私だぜっ!」
「胸を張って言うこと!?」
「もちろんだっ!」
悪びれるどころかむしろ誇らしげにサムズアップしながら持っていた箒に魔力を込め、逃げる準備を始める。
「そんじゃ、メリークリスマス。またよろしくな」
「逃がすとでも……ケホッケホッ……」
スペルカードを取り出そうとしたところで図書館の魔法使いは急に咳き込んだ。
元々喘息持ちの彼女にとって、先程のツッコミは酷だったようだ。
「隙あり!」
当然逃げるほうとしてはその隙を見逃すはずも無く、箒に跨ると全速で逃げ出した。
「ま、待ち……」
後ろの方から何か聞こえるが、それを気にすることなく出口目指して飛んでいく。
あと少しでトンズラ成功という地点で、魔理沙の前に小さな人影が立ちふさがった。
「!?」
慌てて急停止すると、その人影はにっこりと微笑を浮かべる。
「やっほー魔理沙。せっかく来たのに私に会わずに帰るなんて酷いじゃない」
「フランか。いまはちょっと立て込んでいるからまた今度な」
人影の正体は紅魔館の主レミリアの妹、フランドール・スカーレットだった。
「うん。それはいいけど背中の袋はパチュリーの本でしょ? だめだよ魔理沙。人の物を勝手に持っていくのは泥棒だってめーりんから教わったもの」
「へっ。これは泥棒じゃない。死ぬまで借りていくだけだ」
軽口を叩きながらも、内心では気を引き締める。
言動こそ幼いが、フランドールは吸血鬼だけあってかなりの実力を持っているからだ。
だが、次にその吸血鬼の口から出た言葉は魔理沙の予想外のものだった。
「そんな事をいう悪い子にはお仕置きだよ。出でよっ! 地底からの助っ人妖怪……」
両手を高々と掲げ、魔力を集める。
フラン本人の仕掛けたものかこの図書館の防衛機能かは不明だが、その動作に合わせて彼女の足元に光り輝く召喚陣らしき図形が描かれていく。
(助っ人だと!? まさか鬼とか言うんじゃないだろうな、流石にそれはやば過ぎる!)
驚愕する魔理沙を余所に続いた名は、しかし魔理沙が初めて聞くものであった。
「『おでん』っっっ!!」
そのあまりにも珍妙な名前に一気に拍子抜けする普通の魔法使い。
そんな事はお構いなしに、フランドールが振り下ろした両手の先にある魔方陣から新たな人影が浮かび上がってくる。
「何かうまそうな妖怪……だ……なぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!?」
そして魔理沙の前に『ソレ』は現れた。
◇
夜が明けて、クリスマスの当日。
「魔理沙から本を守り抜いたですってっ!?」
「うん。はい、コレ」
「うわ~、本当に魔理沙さんが昨日持ち出そうとした本がそろってますよ」
袋の中身を確認した図書館の司書、小悪魔が感嘆の声を漏らす。
「さすが妹様ですね」
「えへへ、私だけの力じゃないよ。こいしちゃんが貸してくれたペットのおかげでもあるんだから」
「こいしって、あの地底の? なら、後でお礼を言いに行かないとならないわね」
「では、図書館防衛記念に今日はぱぁ~っとお祝いしましょうっ!」
「そうね。せっかくだからレミィ達にも声をかけて皆で祝いましょう」
「ほんと? やったぁ~!!」
そんな笑い声が赤い屋敷でこだましていた。
その頃魔理沙はというと。
「マッチョが、真っ赤なビキニパンツのマッチョが追いかけてくるよぉ~~~……」
「どうしたの魔理沙は?」
「さぁ、なんか今日慌てて飛び込んで来るなりずっとああなのよ」
博麗神社にて部屋の隅で座布団を頭から被ってブルブル震えていた。
その様子を見ながら、神社の巫女と人形使いは互いに首を傾げるのであった。
クリスマスイブには様々なドラマが生まれる。
だから、中にはこんなどーしょーもないドラマも生まれることだってある。
それにしても、「おでん」がこいしに飼われてるとこを想像できぬ…
次回に期待。