咲夜がお姉さまのことを好きなのは、ずーっと前から知っていた。
知っていたはずなのに、今ちょうど結ばれた二人が、少し先の廊下でじゃれあってキスをしているところなんか見たら泣きたくもなるものだ。
肉親が女の子になる寂しさと好きな人が大好きな人と結ばれた喜びを考えると、もう死んでしまいたくなってきた。
わたしは必要ないって言われているみたいだった。そんなことはないと分かっているのに落ち込みスパイラルが止まらない。
咲夜の泣きそうなくらいうれしそうな顔が脳裏に焼きついて離れない。お姉さまのやさしい抱え込むような笑顔が忘れられない。
二人が幸せそうで喜ばしいことのはずなのに喜べない自分がいやだ。ぎゅっと握った拳から血が滴った。つめが皮膚に食い込んだのだ。
咲夜のことをお姉さまほどじゃないんだろうけど、ちょっと好きだった私はへこんだ。わたしじゃだめだって思い知って、自分では手に入れられないのだと分かって、涙がぽろぽろとあふれた。
涙声でお幸せになんていってもむなしくて苦しいだけだった。誰も聞いていないのだ。自分を自分で傷つけているようなものだ。
どこか違うところに、遠い場所に行きたいと思った。
「それで、こんなところまで来たのね」
「うん……」
「ずばりそれは失恋とリア充妬ましいわ!という感情よ」
旧地獄で意気投合した橋姫と、私はお互いに慰めあっていた。
「もう死にたい」
「なにいってんのよ、死んだらその大好きな咲夜ちゃんもおねーさまも悲しむでしょーが」
「そうかなぁ…」
幸せな二人にはもうわたしなんていらない気がした。だめだ、すべてが絶望的思考になっている。恐るべし落ち込みスパイラルだ。
そのあとしばしパルスィのジェラシー講座を受けて、私はその場を後にした。
なんだか少し心の毒が流れたようだった。でもまだまだだ。淀んだ気持ちが私の肩にずっしりとのしかかっている。
「それで、こんなところまで来たのね」
「うん…」
「このまま放っておくと精神疾患になりかねないわね」
竹林のお医者さんに、私は死んでしまいたいと言ってみた。入院を勧められた。
「あー、大丈夫です。すみませんでした」
今度来るときは保護者の入院許可証に印を押して来なさいね、と逃げる背中に声を投げられた。もう二度とくるものか。
なんだか来る前よりも心が重くなったようでため息が何度も出る。はぁ。
「それで、ここまで戻ってきたのね」
「うん……」
「二人とも特に気づいていなかったわよ」
紫もやしのパチュリーは、ふたりは楽しそうに自室にしけこんだとか、淡々と私が傷つく言葉を並べた。
「もういやだ」
「でしょうね」
パチュリーは本に目を落としながら答えた。
「死にたい」
「死ねないでしょう、吸血鬼なんて」
なんて、といわれたことよりも、分かってもらえない気持ちがつらかった。
死にたいといっているだけなのだ。死ねる死ねないのはなしじゃないのだ。
やっぱり誰に話してもこのどろどろした心が元に戻らない。
本当に死ぬしかないんじゃないかなぁ、と自殺方法を考えていると、よそでやって、というパチュリーの言葉とともに小悪魔に抱えられて本館のじゅうたんの上まで運ばれてしまった。
「どれくらい息を止めてれば死ねるのかな…」
虚ろに廊下をふらふら歩いていると、一番会いたくない二人組みに出会ってしまった。
「あ…、フラン」
お姉さまが赤い顔でどうしたの?とたずねてくる。あー、もう。
「死にたいもうやだしにたい」
「えぇ?!ふ、フランどうしたの!」
お姉さまが顔面蒼白になって肩を揺さぶってくる。
隣にいる咲夜も驚いて言葉を捜しているようだった。
あー。
「もういいやごめん邪魔してもういいやうんばいばい」
手を振って歩き出すとお姉さまに手首をつかまれて引き寄せられて、抱きしめられた。
この腕でさっきまで咲夜を抱いていたのかなー、なんて思うとなおさら死に急ぎたくなった。
「どうしたのよ…」
お姉さまは不安なようだ。背中に回された手に力がこもっている。
そこで私は恋愛以外にも人をつなぐものってあったんだと思い出した。
あー、馬鹿やったなぁ…。
急に先ほどまでの自分が恥ずかしくなる。
お姉さまと私は家族で、咲夜ももう家族で、そういうつながりかたでつながってるんだと思い出した。
咲夜を手に入れたのが私じゃないっていうのは悲しかったけど、それで悩むのはしばらく仕方がない気がした。
「ごめん、もう大丈夫だから」
お姉さまの肩を押して無理やり離れる。
二人とも心配そうな顔をしていて、不謹慎ながらそれが少しうれしかった。
頬を私がいきなり緩ませたのでお姉さまなんかはもうなにがなんだか、みたいなとんちんかんな顔をしていた。
絨毯を踏みしめて歩き出す。二人は置いてけぼりなんだ。
ちょっと気持ちが晴れた。
けれどまだまだいろんな気持ちは整理し切れなくて、これからもたくさん考えようと思った。
自分で言うのもあれだけど、なんだか大人の階段を上ったような気分だった。
おしまい。
知っていたはずなのに、今ちょうど結ばれた二人が、少し先の廊下でじゃれあってキスをしているところなんか見たら泣きたくもなるものだ。
肉親が女の子になる寂しさと好きな人が大好きな人と結ばれた喜びを考えると、もう死んでしまいたくなってきた。
わたしは必要ないって言われているみたいだった。そんなことはないと分かっているのに落ち込みスパイラルが止まらない。
咲夜の泣きそうなくらいうれしそうな顔が脳裏に焼きついて離れない。お姉さまのやさしい抱え込むような笑顔が忘れられない。
二人が幸せそうで喜ばしいことのはずなのに喜べない自分がいやだ。ぎゅっと握った拳から血が滴った。つめが皮膚に食い込んだのだ。
咲夜のことをお姉さまほどじゃないんだろうけど、ちょっと好きだった私はへこんだ。わたしじゃだめだって思い知って、自分では手に入れられないのだと分かって、涙がぽろぽろとあふれた。
涙声でお幸せになんていってもむなしくて苦しいだけだった。誰も聞いていないのだ。自分を自分で傷つけているようなものだ。
どこか違うところに、遠い場所に行きたいと思った。
「それで、こんなところまで来たのね」
「うん……」
「ずばりそれは失恋とリア充妬ましいわ!という感情よ」
旧地獄で意気投合した橋姫と、私はお互いに慰めあっていた。
「もう死にたい」
「なにいってんのよ、死んだらその大好きな咲夜ちゃんもおねーさまも悲しむでしょーが」
「そうかなぁ…」
幸せな二人にはもうわたしなんていらない気がした。だめだ、すべてが絶望的思考になっている。恐るべし落ち込みスパイラルだ。
そのあとしばしパルスィのジェラシー講座を受けて、私はその場を後にした。
なんだか少し心の毒が流れたようだった。でもまだまだだ。淀んだ気持ちが私の肩にずっしりとのしかかっている。
「それで、こんなところまで来たのね」
「うん…」
「このまま放っておくと精神疾患になりかねないわね」
竹林のお医者さんに、私は死んでしまいたいと言ってみた。入院を勧められた。
「あー、大丈夫です。すみませんでした」
今度来るときは保護者の入院許可証に印を押して来なさいね、と逃げる背中に声を投げられた。もう二度とくるものか。
なんだか来る前よりも心が重くなったようでため息が何度も出る。はぁ。
「それで、ここまで戻ってきたのね」
「うん……」
「二人とも特に気づいていなかったわよ」
紫もやしのパチュリーは、ふたりは楽しそうに自室にしけこんだとか、淡々と私が傷つく言葉を並べた。
「もういやだ」
「でしょうね」
パチュリーは本に目を落としながら答えた。
「死にたい」
「死ねないでしょう、吸血鬼なんて」
なんて、といわれたことよりも、分かってもらえない気持ちがつらかった。
死にたいといっているだけなのだ。死ねる死ねないのはなしじゃないのだ。
やっぱり誰に話してもこのどろどろした心が元に戻らない。
本当に死ぬしかないんじゃないかなぁ、と自殺方法を考えていると、よそでやって、というパチュリーの言葉とともに小悪魔に抱えられて本館のじゅうたんの上まで運ばれてしまった。
「どれくらい息を止めてれば死ねるのかな…」
虚ろに廊下をふらふら歩いていると、一番会いたくない二人組みに出会ってしまった。
「あ…、フラン」
お姉さまが赤い顔でどうしたの?とたずねてくる。あー、もう。
「死にたいもうやだしにたい」
「えぇ?!ふ、フランどうしたの!」
お姉さまが顔面蒼白になって肩を揺さぶってくる。
隣にいる咲夜も驚いて言葉を捜しているようだった。
あー。
「もういいやごめん邪魔してもういいやうんばいばい」
手を振って歩き出すとお姉さまに手首をつかまれて引き寄せられて、抱きしめられた。
この腕でさっきまで咲夜を抱いていたのかなー、なんて思うとなおさら死に急ぎたくなった。
「どうしたのよ…」
お姉さまは不安なようだ。背中に回された手に力がこもっている。
そこで私は恋愛以外にも人をつなぐものってあったんだと思い出した。
あー、馬鹿やったなぁ…。
急に先ほどまでの自分が恥ずかしくなる。
お姉さまと私は家族で、咲夜ももう家族で、そういうつながりかたでつながってるんだと思い出した。
咲夜を手に入れたのが私じゃないっていうのは悲しかったけど、それで悩むのはしばらく仕方がない気がした。
「ごめん、もう大丈夫だから」
お姉さまの肩を押して無理やり離れる。
二人とも心配そうな顔をしていて、不謹慎ながらそれが少しうれしかった。
頬を私がいきなり緩ませたのでお姉さまなんかはもうなにがなんだか、みたいなとんちんかんな顔をしていた。
絨毯を踏みしめて歩き出す。二人は置いてけぼりなんだ。
ちょっと気持ちが晴れた。
けれどまだまだいろんな気持ちは整理し切れなくて、これからもたくさん考えようと思った。
自分で言うのもあれだけど、なんだか大人の階段を上ったような気分だった。
おしまい。
それと、一人死んでいる。
創作上の殺人に善も悪もないもんだが、彼女が死んだ理由が見えない。
だからこの点数で。
パルスィ達が出た辺りは、珍しい組み合わせで楽しめたのですが…
読んでいて、そこだけが不快で残念でした。
そのキャラを知ってる知らないに関わらず、あまり良い思いをする人はいないかと。
うん、すっきりまとまっていて、面白いと思います。
ただ、パルシィ、永遠亭、パチュリーに会いに行ってますが、パルシィ以外に、フランが訪れた意味が読み取れませんでした。
このような作品では、フランがいろんな人に会いに行くことによって、フランの心に変化がおこる必要があると思うのですが、えーりんやパチュリーに会ったことが、フランに何の影響も及ぼしていないように思えます。
そこを改善すると、もっと面白くなったんじゃないかなぁと。
あと、初投稿なんでしょうか? 今後に期待の持てる面白さでした。