博麗霊夢は悩んでいた。
彼女を悩ませていたのは、幻想郷の各地から博麗の巫女宛に寄せられた陳情の数々。
『祖父の遺言で弾幕は止めなさいって』『格好良いカード名が思いつかない』『息が切れる』『実は私飛べないんです』『少女なら拳ひとつで勝負せんかい!』『スペルカード用の紙を削減することでエコロジーがうんたらかんたら』
陳情というよりはツイートに近いレベルだが、一応の共通点はある。スペルカードルールに対する不平不満である。
普段の霊夢ならば、このような陳情は毅然と無視する。
だが、彼女自身にも思うところがあったのか、それともただの気まぐれか、この日ばかりは、新たなルールを考える時が来たのではないかと突発的に思い込んでしまったのだ。
霊夢が自ら動く機会は少ない。だが、一旦動き始めたならば、その行動は極めて迅速だ。
かくして、霊夢はスペルカードルールに変わる新たな決闘法を貫徹で発案。明朝には独断と偏見で公布と相成った次第である。
幻想郷における新たな決闘のルール。
その名を、ジャンケンと言った。
そして、ジャンケンルール公布より数時間後。
幻想郷を紅の霧が包み込んだ。
◇
昼下がりの博麗神社。
身支度を終えた霊夢が境内に出たところを、魔理沙が仁王立ちで出迎えた。
予測していたのか、霊夢に驚きはない。
「ようやくお出ましか、随分とのんびりしたもんだな。行くんだろ? 紅魔館に」
「そうよ」
「意図的に同じ異変を起こすくらいだ。連中に何か別の魂胆があるのは間違いないだろう。罠だって張っているかもしれない。それでもか」
「ええ」
「そうか……なら、やるしかないな」
魔理沙はにやりと笑い、右の拳を上げ、それを誇示するかのように構える。
それの意味するところは、一つ。
「確かに異変の解決は博麗の巫女の役目だ。だが、私はそれを黙して見ている事なんて出来ない。そんなお前が先へと進む為には……」
「……」
「戦うしか無いんだ。そう、お前が決めたジャンケンでな」
「そうね」
頷くと霊夢もまた右手を持ち上げ、中段に構えた。
「まあ、安心しろ。お前が博麗の巫女であるなら、お前が勝つ筈だ」
「……」
「よし、私はパーを出す。パーだ。だからお前はチョキを出せ。そして全てを切り開いて進め」
「……」
魔理沙の表情はまったく変わらない。何時もどおりの不敵な笑みのままだ。
故に、その言葉の意味するところを読み取る事は出来ない。
だが、それは特に問題とはされなかった。
魔理沙の意図に関わらず、最初から霊夢の行動は決まっていたのだ。
「「さーいしょーはぐー」」
言葉通りに、魔理沙の握り拳が突き出される。
そして霊夢の拳は開かれていた。
即ち、最初からパーである。
勝敗は決した。
「パー? パーだと!? 霊夢、お前はその掌で何を掴み取る気だ!」
「……」
「……いや、敗者の私にそれを知る意味も権利も無いか。それが決闘というものだからな」
「……」
「行け、霊夢。敗者になんか目もくれず、ただ前だけを見て進むんだ」
「……」
魔理沙の言葉通り、霊夢はそのまま振り返ることなく、博麗神社を飛び立った。
此度の異変の元凶、紅魔館を目指して。
◇
霧の湖の上空で、霊夢は一人の妖怪に遭遇した。
そう、妖怪である。この周辺をテリトリーとした妖精ではない。
「え? 何であんたがここに? ですか」
「……」
「貴方の意思が何処にあるのかを知りたかった、とでも言いましょうか。決闘のルールとしてジャンケンを採用したその意思を、ね」
「……」
古明地さとり。
地底にいるはずの彼女が、なぜここに現れたのか。
だが、その謎は棚上げされる。
「……そういう問題じゃないでしょ暇人、ですか。確かに」
「……」
「でも、貴方は戦わなければならない。サトリ妖怪である私とジャンケンで。すべて貴方が決めたことなのですから」
「……」
異変を解決するべく動いた巫女。そしてその前に立ちはだかる妖怪。
導き出される答えなど、最初から一つしかない。
戦うだけだ。
「その通り、これは絶対のルールだ。しかし私はこいつに勝てるのだろうか。読まれてしまう。私の手がすべて読まれてしまう。怖い」
「……」
「違う、嘘だ。私はそんな事は考えていない。いや、これは私だ。心の奥底にある弱い私の本音だ」
「……」
「黙れ。私を誘導しようとするな。勝負、これは勝負だ。すべて自分で決めたことだ。勝てない。助けて。倒す。怖い。殺す」
「……」
「もういい、始めよう。相手はさとりだ。小細工なんて無意味だ。そう、グーだ。グーを出そう。この拳ですべてを打ち壊して進むんだ」
「……」
それは果たして霊夢の心の声だったのか、それともさとり自身の言葉だったのか。
すべてはジャンケンという世界の理に内包された。
「「じゃんけん、ぽん」」
さとりの手は、パー。
霊夢の手は、チョキ。
勝敗は決した。
「これは……行動と意思を矛盾させたのですか。これでは選択肢の縛られる私が負けるのは必然」
「……」
「なるほど、どうやら貴方はジャンケンという世界においても空を飛んでいるという訳ですね。そこに意思の介入する余地など無いのかもしれません」
「……」
「いいでしょう。行きなさい。私はまた、地の底で事の顛末を見守らせてもらいます」
「……」
さとりが言葉を切ると同時に、霊夢は紅魔館へと向けて飛び立った。
決して後ろを振り返ることなく。
◇
程なくして霊夢は、紅魔館の門前まで辿りついた。
紅魔館の門番である妖怪、紅美鈴の姿はそこにあった。
だが、その身体と視線は霊夢へとは向いてない。
彼女が対峙していたのは、開かれてた門の内側に立つ人物。十六夜咲夜である。
「何故ですか咲夜さん! 今は私達が争っている場合ではないでしょう!?」
「今だからこそ争わねばならないのよ。弱者は淘汰される。それがお嬢様の意思。そして、この新たな秩序をもった世界の意思」
「狂ってる……いえ、それとも適応出来ない私のほうが狂っているの……?」
「どうかしらね。さあ、始めましょう美鈴。強固な門を破るもっとも有効な手段は、内側から開け放つ事よ」
「咲夜さんっ!」
二人は構える。
美鈴は、このジャンケンという勝負において、絶対的な優位を誇っていた。
それは、気を使う能力と、彼女自身が持ちうる身体能力が合わさって、初めて成り立つもの。
対戦相手の気の流れ、そして僅かな手の筋肉の動きから繰り出されるであろう手を読み取り、それに対応した手を神速で繰り出すという妙技。
限りなく後出しに近い正攻法。である。
「「じゃんけん、ぽ」」
果たして美鈴は見た。
咲夜が繰り出さんとしている手は、パーで間違いない。
いかな奇術師とて、この手を欺くことは不可能だ。
だからチョキを出せば勝てる。勝てるのだ。
「「ん」」
美鈴の手は、チョキ。
咲夜の手は、グー。
勝敗は決した。
「そう、全てはわかっていた筈。貴方は私に勝つことは出来ない」
「……」
「それでも貴方は戦わなければいけなかった。……ごめんなさい」
「謝らないで下さい。私だってわかっていたんです。でも、それでも引く事は出来なかった。それが私の意志。私が私である理由なんです」
「美鈴……」
「咲夜さん……お嬢様を、紅魔館をお願いします」
そして、美鈴は地に伏した。
もう彼女が起き上がる事はない。
紅魔の門は、皮肉にも悪魔の狗の手によって食い破られた。
「待たせたわね、霊夢」
「……」
「言葉は不要、という事かしら。貴方らしいわね」
「……」
「始めましょう。お嬢様の邪魔はさせない。それが私の……私達の役目」
「……」
二人の距離が近付く。
「「じゃんけん、ぽん」」
咲夜の手が、事務的に突き出される。そこに意味はなく、意図すらない。
彼女にとってジャンケンとは、互いに手を出し合って優劣をつけるものではない。
静止した世界の中で、相手の繰り出した手を確認し、それに対応した手を出すという流れ作業。美鈴のそれとは立つ次元が違う。十六夜咲夜のジャンケンとは後出しそのものなのだ。
故に咲夜は此度も、自らの手に意識を向ける事はせず、止まった時の中で霊夢が出した手を目視するだけであった。
だからこそ、彼女は驚愕した。
霊夢の手。
それは、親指を上に、人差し指と中指を前に、残りの二本を閉じるという形だった。
(エンペラー!!)
手が震える。足元がおぼつかない。視界が揺らぐ。
パーを出す。
だが、その掌は、皇帝の絶対的な力で容易に両断される。
チョキを出す。
だが、その指先は、皇帝の強固なる守りの前に拍子抜けするほど簡単に折れる。
グーを出す。
だが、その拳は、皇帝の慈悲深き心の前にあっさりと懐柔され無力化される。
「ああああああああああああああああああああああああああっ!!」
閉じた世界に一人、咲夜は絶叫した。
彼女の心は、その現実に耐えられなかった。
動き始めようとした世界の中で、咲夜はまるで、救いを求めるかのごとく手を伸ばした。
咲夜の手は、パー。
霊夢の手は、エンペラー。
勝敗は決した。
「これが……これが世界の、私の運命だと仰られるのですか、お嬢様……」
「……」
「私は……どうして……美鈴、許して……」
そして、咲夜は倒れ伏した。
ここに紅魔の門は無力化されたのだ。
「……」
美鈴と咲夜。
折り重なるように地に伏した二人から視線を切ると、霊夢は紅魔館の門を潜った。
◇
重厚な扉を開け放ち、霊夢は紅魔館内部へと足を踏み入れる。
咲夜が倒れたからか、組織だった抵抗は見られない。
だが、直ぐに気付く。
もう紅魔館には、組織として構成されるような戦力など残っていないことに。
「あはは、やっと来たね霊夢」
「……」
「メイド達で暇潰ししてたけど、あんまり遅いから在庫切れになっちゃったわ。本当、酷いことさせるわね」
「……」
まるで血の色のような深い紅の絨毯が続く通路。
二階に向かう階段の前に、ここにいる筈のない一人の少女が立っていた。
狂気の破壊者、フランドールである。
「でも、もう大丈夫ね。霊夢ならそう簡単に壊れたりしないもんね」
「……」
「さ、遊ぼう? 賭けるチップもちゃんと用意してるんだよ」
「……コインいっこ?」
「大正解! ジャンケンだものね!」
待ちきれない、とばかりにフランドールが躍り出た。その拳は硬く握り締められている。
だが、それはただの準備動作に過ぎない。
全てを破壊する程度の能力とは、比喩表現にあらず。
それは、ジャンケンの世界においても彼女の武器足りえたのだ。
「「じゃん、けん」」
そしてフランドールは、この日何度目ともしれない破壊の手を繰り出した。
「どっかーん!」
エンペラー。
それは、思うがままに力を振りかざし、破壊の限りを尽くした暴虐の皇帝。
その絶対的な力の前に、逆らえるものなど誰もいない。
だが、逆らった自覚すら無いものがいたとしたら?
「ぽん」
人差し指と小指を伸ばし、中指と薬指を親指につけるという、狐の影絵を思わせる手。
それは、フール。
何も知らぬ愚かしき放浪者である。
だが、愚かであるが故に、その者は皇帝を恐れることはなかった。
その愚者は、酔いの勢いにまかせて、皇帝を刺し殺したのだ。
「え……?」
「……」
フランドールの手は、エンペラー。
霊夢の手は、フール。
勝敗は決した。
「嘘、フール……? 負けた……? 私、負けたの?」
「……」
「ねぇ、何とか言ってよ霊夢……」
「……」
「嫌だ、嫌だよ、こんなの嫌だ! 私は、こんなのっ! 違う! 違うのっ!」
「……」
「助けて、助けてお姉さまっ! 助け……」
言葉が不自然に途切れ、フランドールは階段の支柱にもたれかかるように腰を落とす。
その瞳は硬く閉じられていた。
「……」
霊夢はフランドールに一瞥もくれることなく、ゆっくりと階段を上り始めた。
その歩みに、迷いは無い。
◇
長い階段を上り続け、ようやく開けた場所へと辿りつく。
そこは吹き抜けとなっている巨大なホールだった。
正面には僅かな月明かりに照らされた、小ぶりながらも重厚な扉がある。
この中に、異変の首謀者たるレミリアがいる。
そう確信した霊夢は、まるで物怖じすることなく扉へと歩み寄り、その取っ手に手を掛けた。
「そこまでよ」
「……」
いたのか、とばかりに霊夢は横目に視線を飛ばす。
薄闇の中から、まるで浮き出すかのように、その存在が姿を現した。
パチュリー・ノーレッジ。
動かない大図書館こと彼女も、この時だけは動くことを選択していた。
「門番も、咲夜も、妹様も、皆、貴方に倒されたようね。流石は博麗の巫女といったところかしら」
「……」
「そして、その中には恐らく私も加えられる事になる」
「……?」
霊夢の表情が、一瞬だけ怪訝なものを帯びる。
が、パチュリーは我関せずとばかりに、言葉を紡ぎ続けた。
「私はレミィとは違う。妹様とも違う。私は私の意志、そして目的に従ってここに立っている。だからこそ私は倒される。霊夢、貴方にね」
「……」
「わからなくてもいい。わかる必要なんてない。博麗の巫女は、異変を解決することにのみ注力すれば良い」
「……」
「私はそれを妨害する妖怪。故に、答えは一つ。さあ、戦いましょう、この拳一つで。ジャンケンで」
「……」
そう、問答など無意味だった。
霊夢は異変を解決する為にここにいる。
そしてパチュリーは、間違いなく退治しかるべき対象なのだから。
「「じゃんけん、ぽん」」
パチュリーの手は、フール。
霊夢の手は、パー。
勝敗は決した。
「そして愚かしき者は、容易く捕らえられた。でも、果たしてそれは正解だったのかしら?」
「……」
「まあ、どうでも良い事ね。敗者の私は、ただ引き下がるのみ。そして勝者である貴方は、異変を解決すべく首謀者の下へと向かう。実に分かり易いわね」
「……」
「またいつか会いましょう、博麗霊夢」
そしてパチュリーは、先ほどとは逆に、まるで闇の中に溶け込むかの如く、その姿を消した。
しばらくその方向を眺めていた霊夢だったが、やがて興味を失ったかのように視線を切ると、再び扉へと手をかける。
その重厚な佇まいとは裏腹に、扉はいとも容易く開かれた。
◇
紅魔館の最上層に位置するテラス。
普段は夜の茶会でも楽しむ為に使われているであろう場所に、彼女はいた。
「ごきげんよう霊夢」
「……」
紅く怪しい月明かりの元で、レミリアが朗らかな笑顔を見せた。
対する霊夢はというと、まったくの仏頂面。
そう、仏頂面である。決して、無表情ではないのだ。
「あら、ご機嫌斜め? せっかくの素晴らしい夜だというのに、興が削げてしまうわね」
「……ったく、どいつもこいつも、私が黙ってるのを良いことに、好き放題言ってくれちゃって。そんなの私の知ったことじゃないっての」
それまでの無口振りが嘘のように、霊夢は言葉を紡ぐ。
もっとも、殆どが愚痴の類であったが。
「それもそうね。失礼したわ」
「私が欲しいのは謝罪の言葉なんかじゃ……ああ、もういいわ面倒臭い」
そう言うと霊夢は、かぶりを振ってレミリアへと向き直る。
感情よりも、博麗の巫女としての本分を優先したといったところか。
「一応聞くわ、レミリア。何で二度も同じ異変を起こしたの?」
「ふふっ、わかってる癖に。霊夢。貴方とまた、本気で戦いたかったからよ」
「……ジャンケンで?」
「ええ。ジャンケンで」
レミリアの表情には、一点の曇りも無い。
それは、確固たる自信を持つ者のみが成し得るものであった。
「あらゆる身分の違い、能力の違いを超えて、平等に二者の勝敗を明確に分けてくれる、素晴らしき決闘方法。それがジャンケン」
「……」
「突然の決闘ルール変更に殆どの者は戸惑いを見せた。順応できずに淘汰された者も少なからずいる。だが、それでも私は私であり続けられた。何故だかわかる?」
「……さあね。解りたくもないわ」
その瞬間。
レミリアの手が疾風の如く動く。
巫女としての本能か、霊夢もまた、同時に手を繰り出していた。
「「ちっけった!!」」
レミリアの手は、エンペラー。
霊夢の手は、エンペラー。
勝敗、決せず。
「私が強者であるからよ。故に力を持たぬ連中が私に膝を屈すは必然。面白くもないただの事実」
「……」
「霊夢は違う。常に孤高を保つ貴方は、私と対等の存在足りえた」
「……」
「でも、皇帝とは二人存在してはならないもの。故に、決着を着けることは出来ない」
再び、レミリアと霊夢の手が動く。
示し合わせた訳でも無いのに、まったく同時に。
「「いんじゃんほいっ!!」」
レミリアの手は、フール。
霊夢の手は、フール。
勝敗、決せず。
「愚者とは、愚かであると同時に、型に囚われない自由な者でもある。これもまた、貴方に相応しいと言えるわね」
「……」
「とはいえ、所詮は愚者。その事実に気付いてしまえば並の者にすら劣る。そんなものが生み出す結末など到底認められない」
「……」
「では、結局のところ、私と霊夢の間で、決着を着けるに相応しいものはなに?」
「……それは」
「そういう事。答えなんて、最初から出ていたのよ」
三度、レミリアが動く。
これまでのような慌しい動きではなく、その存在を誇示するかの如く重厚に。
「さあ、決着をつけましょう霊夢。貴方が強いのか、私が強いのか、それを決めるただ一つの手段をもって!」
「……ええ、行くわよレミリアっ!」
霊夢もまた、それに応えるかのように、はっきりと口にする。
赤き月が力強く輝く夜空の元、二人の少女が交錯した。
「「じゃん」」
永遠の巫女、博麗霊夢は、己の矜持に従い。
「「けん」」
永遠に紅い幼き月、レミリア・スカーレットは、己の本能に従い。
「「ぽんっ!」」
勝敗は、決した。
◇
博麗神社に朝が来る。
地平線の向こう側からは、丸一日振りとなる太陽が、その姿を表そうとしてた。
異変は、終わったのだ。
「……ふぅ」
紅魔館からの帰路を踏破した霊夢は、鳥居を潜った辺りで、些か景気の悪い表情のまま、深いため息を吐く。
実質二日続けての貫徹が、心身共に堪えている。といったところだろうか。
気を張っている内はともかくとして、異変を解決した今、彼女は博麗の巫女ではなく、ただの一人の少女である。疲労が表に出たところで不思議はない。
「無茶をするものね。まあ、らしいと言えばその通りだけど」
故に、出迎えの声があった事には多いに驚いていた。声を聞くまで存在に気付かない程に疲弊していたのだ。
が、それを表に出すほど霊夢も抜けてはいない。
相手が相手であるからだ。
「別に、いつもの事よ」
と、ぶっきらぼうに答える霊夢。
その相手……紫は、拝殿へと繋がる階段に腰掛けていた。扇子で口元を隠している為、表情は読み取れない。
だが、霊夢は知っていた。
そんな特徴的な仕草をしてる時点で、何か含むものがあると言っているようなものだ、と。
「いつもの事ねぇ。まあ、程々にしておきなさいな。お肌に悪いわよ」
「誰かと違ってまだまだ若いから平気よ」
「くっ」
益体も無い会話を交えつつ、霊夢は紫の近くまで歩み寄る。
この時、霊夢はある種の期待感のようなものを覚えていた。
ずっと自分の中でくすぶっていたもの。その答えを、紫ならば知っているのではないか。何故かそう思ったのだ。
「それで紫。あんたはこんな朝っぱらから何の用よ」
「用、ね。……霊夢」
霊夢の心情を知ってか知らずか、紫は強い口調で名前を呼ぶと扇子を下ろす。
その表情は、険しいものだった。
「ジャンケンで決闘とか無いでしょ。馬鹿なの?」
「ゆかりん大好き!!」
かくして霊夢は、爆発した感情を声へと乗せ、勢い良く紫の胸へと飛び込んだのだった。
博麗霊夢が求めていた、ただひとつのもの。
それが、突っ込みである。
ボンガロネタを使う相手なら、これはもう読まざるを得ない。
そして言いたい…「少女ならグーチョキパーだけで勝負せんかい!」
このような激作者(おとこ)がいるから、創想話はやめられん。
まるで親近感を感じますよ
ジャンケンで決着がつくこの世界は……新(ネオ)幻想郷だ!(ニマァ)
しかし紅魔の方々、ノリがいいわあ。
霊夢が奇跡の力を持つ早苗とジャンケンしたらどうなるのか…
まず魔理沙からしてバカだし、さとりもわざわざ何しに来たんだ。
紅魔勢ノリ良すぎる!
あと、さとりは本当になんだったのかw
無謀すぎる……
この発想には脱帽だわ
・・・道中、半眼で勝ち続ける霊夢が見えましたw