私に与えられた部屋は一人で使うにはだいぶ広いと思う。
この部屋で本を読んだり、魔法の練習をしたり、世話してくれるメイドに挨拶したり。たまにお父様と話したり。
そんな日々を過ごして、どれくらい時間が経っただろう。
私、フランドール・スカーレットは、常人には知覚できない物質の「目」を破壊することでその物質自体を破壊する能力を持っている。物事の善悪の判断ができない年頃の少女がそんな力を持っていれば、閉じ込めるという考えに至るのは当たり前の事だった。正直殺されなかっただけでも自分は運がいいと思う。
閉じ込められた私は、最初はただひたすら能力の訓練に明け暮れた。何十年かかけて能力は自在にコントロール出来るようになった。それをお父様に話したが、外に出してくれることは無かった。
次に私は本読んで常識と教養を身に付けようとした。それでも、お父様が外に出してくれることは無かった。
最初は外に出たいと思った。本の登場人物みたいに冒険したり、学校っていうのに行ったり…。けど、長くこんな生活をしていれば私でもわかる。
それは本の中の出来事。
この部屋から出ることができない私にとって、別の世界の話。それは少しさみしいことだけど、だから死にたいと思うほど悲しいことでもない。
*****
「暇だなあ…。」
人生で一番と言えるほど暇だった。本の内容は頭に入らず、新しい魔法も思いつかない。本を投げてベッドに倒れる。ふと横を見ると、扉が目に入る。
あそこからこっそり外に出たら…。
お父様、怒るだろうなあ。殺されちゃうかもしんないなあ。それは嫌だなあ。
でも、このまま暇に殺されちゃうぐらいならそれもいいかもなあ。そんな考えが頭に浮かぶ。正直に言うと、私はもうなんで生きてるのかよくわからなくなっていた。
いつかはお父様が私を必要としてくれると思っていた。けど、結局いくら努力してもお父様の反応は変わらなかった。私の事を褒めてくれても、出してくれるか聞けばうんとは必ず言わない。
きっと、お父様は私が怖いんだ。
万が一にでも自分を殺すかもしれない存在を、ずっと閉じ込めておきたいだけなんだ。
なら私は、そんなつもりないと、おとなしくしてるからさっさと殺してくれと、伝えないといけない。
そうすれば、お父様の役に立てる。
お父様を恐怖から救うことができるんだ。
どうしようもなく役立たずな私が役に立つことができるのなら、こんなつまらない人生は捨てていい。
死ぬ恐怖にも耐えてみせる。
でも、扉から視線を外せない。
あの先には本で見た世界が広がっていて。みんなが楽しそうに、笑って、怒って、悲しんで、学校に行ったり冒険に出かける世界。
どうせ死ぬなら一度でいいからその景色を見てみたいなあ。
思い立ったら、方法を決めるのは簡単だった。
ちょっと前に分身を作る魔法を開発していた。これを使おう。さすがに本体と分身を同時に動かすのは大変だから、ここに残す分身は寝たふりをさせておこう。脱出には霧状になる魔法を使えばいい。
…本当に、本当にやるの?
そんな言葉が脳裏によぎる。
他の人が見たら馬鹿なことはやめろと止められるのかな?それとも、可能性は低くてもいっそ館自体から脱出して自由を手に入れるべきだと言うのかな?
でも、不思議なんだけど、私はやめるという選択肢が頭に無かった。
お父様のいない自由なんていらない。
ただ、どうしても、本で読んでみたあの世界を見てみたいのだ。
*****
番人が入れ替わる時間帯を狙い、私は薄い赤い霧になって部屋を抜け出す。霧になってるときは視界もぼやけるし、感覚も変になるからあまりやりたくない。
この辺でいいかな。
私は辺りに誰もいないことを確認して、身体を作り直す。長い通路を抜けた先には、また扉があった。ドキドキしながら扉を少しだけ開けて、中をのぞいてみる。
そこには、大量の本棚と、数個のテーブルが置いてあった。本棚は規則正しく並べて置かれてあって、奥の見えない辺りまで続いていた。
ただ、重要なところはそこじゃなくて…
テーブルの所に、一人の少女がいた。
歳はどれくらいだろう。妖怪は見た目から年齢が把握できないことが多いので、本に登場する人間に換算すると、10歳ぐらいじゃないかな。
私は自分の身体全体を見たことが無いからわからないけど、多分私と同じくらいじゃないかな。
いや、多分私の方が大きい。
少しウェーブのかかった短めの青い銀髪に、紅い瞳を持った少女。
時々本に出てくる『精巧な人形のような容姿』っていうのはこんな感じなんじゃないかな。
目を引くのは身体に対して少し大きい、ナマモノっぽい羽だ。その一点が、人形のような少女を異形の者だと警告しているようだった。
そんな少女が、物憂げな表情で本を読んでいた。
本の世界が、目の前に広がっていた。
ハッ!?こんな状況なのに少し見とれてしまった。これが私の期待していた何かなのだろうか?で、でも、彼女以外他の人もいなさそうだし…。いやとにかく、何をするにしても早く行動しないと!どうする!声をかけるか、逃げるか、声をかけるか、逃げるか…。ああ頭が真っ白で考えが纏まらない!思い出せ!思い出すのよ私!ここには確か死ぬ気で来たはず。こんな所で逃走は無しよ!
意を決して、扉を開ける。
扉の開いた音に反応して、彼女は目を見開いて私を見る。
私は気にせず彼女の所へ歩いていく。そして、彼女の対面に座り、会話を始めるにあたって最初に言うべきであろう言葉を言った。
「こんにちは!」
…あれ?反応が無い。何か間違ったかな。
そう思っていると、彼女は本をテーブルに置いた後、納得を表すように両手でポンッと音をたてた。
「こんにちは。貴女、新しくここにやってきた方かしら?」
彼女は柔らかく微笑んでそう言った。
私の舌足らずな子供っぽい声じゃない、凄く綺麗な声だった。
「まあ…。そんなかんじ。」
流石に『地下からやってきました!』とは言えないよね。
「歓迎するわ。と言っても私の館じゃないけど。」
「えっと、ありがとうございます。でいいのかな?」
「そうね、いいんじゃないかしら。あ、私はレミリア。よろしくね。」
「あ、フランど」
ってマズい。もしかしたらお父様、私が脱走した時のために私の名前を館のみんなに知らせてるかも。私の部屋の前に番人を置くくらいだし。
この子は私の容姿を見ても変な反応はしなかったから、たぶん私の正体にはまだ気付いてないんだろうけど、名前は知ってるかもしれない。
「フランド、ちゃん?」
「フラン!フランっていいます!よろしく!」
「フランちゃんね。可愛らしい素敵な名前ね。」
セーフ!どうやら名前も知らないみたい。
「そ、そうかな。レミリアの方が、なんかいい感じだと思うけど。貴族っぽくて。」
「貴族っぽくていいことなんてあんまりないわ。」
彼女は笑う。きっと彼女にとってはよくある日常の一コマでしかないんだろうな。
でも私は、心臓が爆発しそうなくらいドキドキしていた。
目の前には本の中でしか知らない少女という生物がいて、いや私も少女だけど、私以外のね。
それが微笑みながら話しかけてくるの!
しかも飛びっきりの美少女が!
なにこれ夢?本の読み過ぎで空想と現実がごちゃごちゃになっちゃった?
「ねえ大丈夫?なんかボーっとしてるけど。」
「うぇ!?だ、だいじょうぶですよ!」
「そう?あんまり大丈夫そうに見えないけど。」
「だいじょうぶだいじょうぶ。」
ハハハ…と私は乾いた笑いを作る。
正直言うと全然大丈夫じゃ無い。頭はクラクラするし視界はぶれるし体は熱いし、明らかに大丈夫じゃない。
でも、この機会を逃すともう一生この子と話す機会がなくなっちゃうかもしれない。
だから気力でなんとか耐えるのよ私!
「ねえフランちゃん。」
彼女はテーブルにある本の表紙を指でなぞりながら言う。
「な、なに?」
「実はね、私、同世代の友達って一人もいないの。」
「そうなの?意外。こんなに話上手なのに。」
私の言葉に「ありがとう。」と彼女は返答する。
「それでね、もしよかったら、私とお友達になってくれないかな?」
「わ、私が、レミリアさんの友達に!?」
「呼び捨てでいいわよ。それで、どう?」
彼女は天使のように微笑んでそう言う。
友達…本の世界でよく出てくる、仲のいい者たちを指す言葉。でも彼女は本の世界の住人だけど、私は違うわけで。もうなんだかよくわからなくなってきた。
私がこの子と友達。友達。トモダチ。ともだち。
コウイウトキハホンデハナンテイエバイインダッケ?
「あ、あの、トモダチ?」
「うん。」
「え、えーと、フツツカモノデスガヨロシクオネガイシマス。」
「フランちゃん、それは使い方が違うわ。」
彼女が声を出して笑う。
「じゃあ私とフランちゃんは友達ね。」
「うん。ともだち。」
「これからよろしくね。」
「うん。」
「…フランちゃん本当に大丈夫?なんだかボーっとしてるみたいだし、今日はもう休んだ方がいいと思うよ?」
「そうする。」
私は促されるままフラフラと席を立ち、入ってきた扉の方へ足を運ぶ。
一つ、どうしても聞いたおきたいことがあった。
「また、ここで会える?」
振り向いてそう聞くと、レミリアは羽をゆらして答えた。
「私はよくここに来るから、来てくれればね。」
そう言った彼女の笑顔は、私の少ない語彙では上手く表現できないくらい、綺麗だった。
*****
結果的に言えば、私はまだ死なずにこの部屋で暮らしている。
お父様ごめんなさい。
私はまだお父様の役には立てないようです。
ただ、どうしようもなく役立たずな私でも、必要としてくれる人はいるみたいです。
番人が入れ替わる時間。いつものように魔法を使い、私は部屋から出てあの場所に行く。
幾多の本棚と少しのテーブルが置かれてる図書館で、彼女がコウモリの羽をゆらして本を読んでいる。
そこには、本の世界のような、本で見たことない世界が広がっている。
この部屋で本を読んだり、魔法の練習をしたり、世話してくれるメイドに挨拶したり。たまにお父様と話したり。
そんな日々を過ごして、どれくらい時間が経っただろう。
私、フランドール・スカーレットは、常人には知覚できない物質の「目」を破壊することでその物質自体を破壊する能力を持っている。物事の善悪の判断ができない年頃の少女がそんな力を持っていれば、閉じ込めるという考えに至るのは当たり前の事だった。正直殺されなかっただけでも自分は運がいいと思う。
閉じ込められた私は、最初はただひたすら能力の訓練に明け暮れた。何十年かかけて能力は自在にコントロール出来るようになった。それをお父様に話したが、外に出してくれることは無かった。
次に私は本読んで常識と教養を身に付けようとした。それでも、お父様が外に出してくれることは無かった。
最初は外に出たいと思った。本の登場人物みたいに冒険したり、学校っていうのに行ったり…。けど、長くこんな生活をしていれば私でもわかる。
それは本の中の出来事。
この部屋から出ることができない私にとって、別の世界の話。それは少しさみしいことだけど、だから死にたいと思うほど悲しいことでもない。
*****
「暇だなあ…。」
人生で一番と言えるほど暇だった。本の内容は頭に入らず、新しい魔法も思いつかない。本を投げてベッドに倒れる。ふと横を見ると、扉が目に入る。
あそこからこっそり外に出たら…。
お父様、怒るだろうなあ。殺されちゃうかもしんないなあ。それは嫌だなあ。
でも、このまま暇に殺されちゃうぐらいならそれもいいかもなあ。そんな考えが頭に浮かぶ。正直に言うと、私はもうなんで生きてるのかよくわからなくなっていた。
いつかはお父様が私を必要としてくれると思っていた。けど、結局いくら努力してもお父様の反応は変わらなかった。私の事を褒めてくれても、出してくれるか聞けばうんとは必ず言わない。
きっと、お父様は私が怖いんだ。
万が一にでも自分を殺すかもしれない存在を、ずっと閉じ込めておきたいだけなんだ。
なら私は、そんなつもりないと、おとなしくしてるからさっさと殺してくれと、伝えないといけない。
そうすれば、お父様の役に立てる。
お父様を恐怖から救うことができるんだ。
どうしようもなく役立たずな私が役に立つことができるのなら、こんなつまらない人生は捨てていい。
死ぬ恐怖にも耐えてみせる。
でも、扉から視線を外せない。
あの先には本で見た世界が広がっていて。みんなが楽しそうに、笑って、怒って、悲しんで、学校に行ったり冒険に出かける世界。
どうせ死ぬなら一度でいいからその景色を見てみたいなあ。
思い立ったら、方法を決めるのは簡単だった。
ちょっと前に分身を作る魔法を開発していた。これを使おう。さすがに本体と分身を同時に動かすのは大変だから、ここに残す分身は寝たふりをさせておこう。脱出には霧状になる魔法を使えばいい。
…本当に、本当にやるの?
そんな言葉が脳裏によぎる。
他の人が見たら馬鹿なことはやめろと止められるのかな?それとも、可能性は低くてもいっそ館自体から脱出して自由を手に入れるべきだと言うのかな?
でも、不思議なんだけど、私はやめるという選択肢が頭に無かった。
お父様のいない自由なんていらない。
ただ、どうしても、本で読んでみたあの世界を見てみたいのだ。
*****
番人が入れ替わる時間帯を狙い、私は薄い赤い霧になって部屋を抜け出す。霧になってるときは視界もぼやけるし、感覚も変になるからあまりやりたくない。
この辺でいいかな。
私は辺りに誰もいないことを確認して、身体を作り直す。長い通路を抜けた先には、また扉があった。ドキドキしながら扉を少しだけ開けて、中をのぞいてみる。
そこには、大量の本棚と、数個のテーブルが置いてあった。本棚は規則正しく並べて置かれてあって、奥の見えない辺りまで続いていた。
ただ、重要なところはそこじゃなくて…
テーブルの所に、一人の少女がいた。
歳はどれくらいだろう。妖怪は見た目から年齢が把握できないことが多いので、本に登場する人間に換算すると、10歳ぐらいじゃないかな。
私は自分の身体全体を見たことが無いからわからないけど、多分私と同じくらいじゃないかな。
いや、多分私の方が大きい。
少しウェーブのかかった短めの青い銀髪に、紅い瞳を持った少女。
時々本に出てくる『精巧な人形のような容姿』っていうのはこんな感じなんじゃないかな。
目を引くのは身体に対して少し大きい、ナマモノっぽい羽だ。その一点が、人形のような少女を異形の者だと警告しているようだった。
そんな少女が、物憂げな表情で本を読んでいた。
本の世界が、目の前に広がっていた。
ハッ!?こんな状況なのに少し見とれてしまった。これが私の期待していた何かなのだろうか?で、でも、彼女以外他の人もいなさそうだし…。いやとにかく、何をするにしても早く行動しないと!どうする!声をかけるか、逃げるか、声をかけるか、逃げるか…。ああ頭が真っ白で考えが纏まらない!思い出せ!思い出すのよ私!ここには確か死ぬ気で来たはず。こんな所で逃走は無しよ!
意を決して、扉を開ける。
扉の開いた音に反応して、彼女は目を見開いて私を見る。
私は気にせず彼女の所へ歩いていく。そして、彼女の対面に座り、会話を始めるにあたって最初に言うべきであろう言葉を言った。
「こんにちは!」
…あれ?反応が無い。何か間違ったかな。
そう思っていると、彼女は本をテーブルに置いた後、納得を表すように両手でポンッと音をたてた。
「こんにちは。貴女、新しくここにやってきた方かしら?」
彼女は柔らかく微笑んでそう言った。
私の舌足らずな子供っぽい声じゃない、凄く綺麗な声だった。
「まあ…。そんなかんじ。」
流石に『地下からやってきました!』とは言えないよね。
「歓迎するわ。と言っても私の館じゃないけど。」
「えっと、ありがとうございます。でいいのかな?」
「そうね、いいんじゃないかしら。あ、私はレミリア。よろしくね。」
「あ、フランど」
ってマズい。もしかしたらお父様、私が脱走した時のために私の名前を館のみんなに知らせてるかも。私の部屋の前に番人を置くくらいだし。
この子は私の容姿を見ても変な反応はしなかったから、たぶん私の正体にはまだ気付いてないんだろうけど、名前は知ってるかもしれない。
「フランド、ちゃん?」
「フラン!フランっていいます!よろしく!」
「フランちゃんね。可愛らしい素敵な名前ね。」
セーフ!どうやら名前も知らないみたい。
「そ、そうかな。レミリアの方が、なんかいい感じだと思うけど。貴族っぽくて。」
「貴族っぽくていいことなんてあんまりないわ。」
彼女は笑う。きっと彼女にとってはよくある日常の一コマでしかないんだろうな。
でも私は、心臓が爆発しそうなくらいドキドキしていた。
目の前には本の中でしか知らない少女という生物がいて、いや私も少女だけど、私以外のね。
それが微笑みながら話しかけてくるの!
しかも飛びっきりの美少女が!
なにこれ夢?本の読み過ぎで空想と現実がごちゃごちゃになっちゃった?
「ねえ大丈夫?なんかボーっとしてるけど。」
「うぇ!?だ、だいじょうぶですよ!」
「そう?あんまり大丈夫そうに見えないけど。」
「だいじょうぶだいじょうぶ。」
ハハハ…と私は乾いた笑いを作る。
正直言うと全然大丈夫じゃ無い。頭はクラクラするし視界はぶれるし体は熱いし、明らかに大丈夫じゃない。
でも、この機会を逃すともう一生この子と話す機会がなくなっちゃうかもしれない。
だから気力でなんとか耐えるのよ私!
「ねえフランちゃん。」
彼女はテーブルにある本の表紙を指でなぞりながら言う。
「な、なに?」
「実はね、私、同世代の友達って一人もいないの。」
「そうなの?意外。こんなに話上手なのに。」
私の言葉に「ありがとう。」と彼女は返答する。
「それでね、もしよかったら、私とお友達になってくれないかな?」
「わ、私が、レミリアさんの友達に!?」
「呼び捨てでいいわよ。それで、どう?」
彼女は天使のように微笑んでそう言う。
友達…本の世界でよく出てくる、仲のいい者たちを指す言葉。でも彼女は本の世界の住人だけど、私は違うわけで。もうなんだかよくわからなくなってきた。
私がこの子と友達。友達。トモダチ。ともだち。
コウイウトキハホンデハナンテイエバイインダッケ?
「あ、あの、トモダチ?」
「うん。」
「え、えーと、フツツカモノデスガヨロシクオネガイシマス。」
「フランちゃん、それは使い方が違うわ。」
彼女が声を出して笑う。
「じゃあ私とフランちゃんは友達ね。」
「うん。ともだち。」
「これからよろしくね。」
「うん。」
「…フランちゃん本当に大丈夫?なんだかボーっとしてるみたいだし、今日はもう休んだ方がいいと思うよ?」
「そうする。」
私は促されるままフラフラと席を立ち、入ってきた扉の方へ足を運ぶ。
一つ、どうしても聞いたおきたいことがあった。
「また、ここで会える?」
振り向いてそう聞くと、レミリアは羽をゆらして答えた。
「私はよくここに来るから、来てくれればね。」
そう言った彼女の笑顔は、私の少ない語彙では上手く表現できないくらい、綺麗だった。
*****
結果的に言えば、私はまだ死なずにこの部屋で暮らしている。
お父様ごめんなさい。
私はまだお父様の役には立てないようです。
ただ、どうしようもなく役立たずな私でも、必要としてくれる人はいるみたいです。
番人が入れ替わる時間。いつものように魔法を使い、私は部屋から出てあの場所に行く。
幾多の本棚と少しのテーブルが置かれてる図書館で、彼女がコウモリの羽をゆらして本を読んでいる。
そこには、本の世界のような、本で見たことない世界が広がっている。
ここで終わり?っていう物足りなさが
不幸な妹様に幸あれ。
やさしくて好みな雰囲気でした。
ただ、2人の関係性や背景が掴みづらいと感じたのが残念。