※この作品は、作品集152『庭師、山にて白狼天狗と相対すること』の設定を引き継いでいます。
また、作品集171『庭師、森にて大いなる剣と相対すること』の後日談となっています。
じめついた空気、漂う胞子。そして蔓延する瘴気。
幻想郷の魔法の森。その一角、少し開けた場所に建つは“七色の人形遣い”の二つ名を持つ魔法使い、アリス・マーガトロイドの邸宅。家主自前の結界によって、人妖問わずに有害な魔法の森の中で唯一、清潔な空気を保っている場所である。
「わざわざ来てもらっちゃって悪いわね」
玄関先に立つ三人の人妖のうち、一人が微笑みながら言った。
金の髪、金の瞳を持つ端麗な容姿の少女。この邸宅の主――アリス・マーガトロイドである。
「それで、今日はどうしたんですか? まさか、また椛の尻尾を狙って……!?」
「違う違う。もう狙わないから」
アリスと向かい合うように立つ残りの二人――魂魄妖夢と犬走椛のうち、妖夢が楼観剣の柄に手をかけながら身構えると、アリスはぱたぱたと手を振った。
妖夢と椛は友人関係である。妖夢はかつて妖怪の山へと侵入し、山の哨戒をしていた白狼天狗の犬走椛と出会った。剣を交えて、言葉を交わして。やがて二人は友人となって。
そしてつい先日のこと。アリスは白狼天狗――犬走椛の持つ狼の尻尾を人形の装飾の素材にしようと狙い、妖夢と相対した。
戦いのすえ、妖夢はアリスの繰り出した人形を撃退し、椛の尻尾を守ることに成功したのだが……
尻尾争奪戦から数日が経ったある日、二人はアリスの呼び出しを受けていま、ここにいる。妖夢の警戒も無理からぬことだった。
「して、用とは?」
楼観剣の柄尻に手を沿え、抜きかけた刀身を鞘に戻させながら椛は問うた。まあ、椛がそれで良いのなら、と妖夢は構えを解いて、改めてアリスと向き合った。
「この間のお詫びにと思って、プレゼントを用意したのよ」
アリスの言葉に応じるように、邸内から二体の人形が姿を現した。それぞれが、やや縦長の小包を抱えている。どちらも青い紙に包まれ、片方は緑のリボン、もう片方には白のリボンが巻かれていた。
「ぷ、ぷれぜんと?」
「ほら、何だかんだ言っても、結局は二人に迷惑をかけた形になったじゃない?」
「何だかんだも何も最初から……いや、いい……」
「はい、こっちが妖夢ので、こっちが椛の」
人形たちは、緑のリボンが巻かれた小包を椛に、白いリボンが巻かれた小包を妖夢に渡すと、邸内へと戻っていった。
「ありがとうございます」
「中身を確認しても?」
「あ、それは待ってもらっていいかしら」
リボンに手をかけた椛を制止し、アリスは頬に手をあて思案の仕草。
「その包みは、家に帰ってから開けて頂戴。そうね……開封は夜。それも、お互いに就寝時間で一人の時が望ましいかしら」
「えらく具体的だな」
「怪しさ満点なんですけど」
妖夢と椛は、揃って受け取った小包を半眼で睨みつけた。しかしアリスは胸を張って言葉を続ける。
「心配しないで。ちょっとした仕掛けはしてあるけど、悪いものじゃないから」
「椛、この人『仕掛けがある』って自分で言いましたよ」
「いい度胸だな」
「だから悪い仕掛けじゃないってば」
アリスは剣士二人に半眼で睨まれ、少し身を引きながら、
「絶対に気に入ると思うんだけどなぁ……」
「……椛、どうします?」
「ふむ……」
問い、顎に手をあて考える椛の横顔を妖夢は見つめる。
椛は射るような目つきで、あははと引きつった笑みを浮かべるアリスを見つめ、
「悪意はなさそうだが……まあ、いいだろう。私はもらっておこうと思う」
小さくため息をつきながら椛は言った。
「椛がそう言うのなら、私もいただきます」
「あまり信用されてもな……。私だって間違えることもある」
「でも、私よりはずっと正しい選択をしてくれます」
受け取った小包を抱えて微笑みかけると、椛は照れくさそうに頬をかいて。
それを見ながら、妖夢は思う。
――最近の椛は、色んな表情を見せてくれる。
生来の生真面目さもあるのだろう。椛はいつでも妖夢の手本であろうとしていたのだと思う。いつでも冷静で、優しくて。“照れ”のような小さな感情などは、あまり表に出すことはなかった。
それがいまでは、小さなことでも表情に出して、言葉に出して。そんな椛の新しい表情を見ることが、最近の妖夢の楽しみだった。
「良かった。受け取ってもらえるのね」
ともあれと、二人の承諾にアリスは両手をぱんと合わせて笑みを浮かべた。
…………
ひたり、ひたり。
人も、草木も幽霊も。みな等しく眠りにつく時分。しんと静まり返った冥界に響くは、板張りの床を行く素足の足音。
椛と別れて白玉楼に戻った妖夢は、残っていたその日の仕事を片付け、ようやく就寝の途につくところだった。
湯浴みを済ませ、程よく火照った身体を寝間着に包んだ妖夢は、少し足早に自室へと向かう。
――そろそろ、いいかな?
妖夢と椛、互いに就寝時間に開封するように言われた、アリスからの贈り物。もう開けてもよい頃合いだろう。
結局、中身は何かは教えてもらえなかったが、まあ、開けたらいきなり爆発するようなことはないはずだ。
「…………」
たぶん。
魔法使いからの贈り物である。期待と、若干の不安が入り混じった気分のまま、妖夢は自室へと続く襖を開けた。部屋の中は薄暗く、中央付近で点けっぱなしにしておいた行灯の光が、ぼんやりと周囲を照らしている。行灯の傍には、あらかじめ用意しておいた布団一式と、枕の上に件の青い小包。
素早く部屋に滑り込んだ妖夢はくるりと振り向き、自分が通った襖の隙間から頭を覗かせて、部屋の外――縁側の廊下を窺い見た。
右を見て、左を見て、もう一回右を見て。
辺りには人影も、霊の姿も見当たらず。いるのは、庭に立ち並ぶ剪定された木々のみ。
誰もいないことを確認した妖夢は襖を閉めて、一息。
「さて、中身は何かしら、と」
布団の上にぺたんと座り込み、妖夢は包みのリボンを解いた。包装紙を剥がすと、中には白い箱が一つ。
包装紙とリボンを丁寧にたたんで布団の横に置いてから、妖夢は蓋をゆっくりと開けた。
「わあ……!」
箱の中を覗き込んだ妖夢は、感嘆の声をあげながら中身を箱から取り出した。
赤い高下駄、紅い楓模様が裾に散りばめられた藍色のスカートに、白い腋出しの装束。純白の髪の毛と赤みを帯びた黒檀の瞳。そして髪の毛と同じ色の、獣の耳と尻尾は白狼天狗の証。
箱の中身。それは、
「椛だ」
全体的にデフォルメされているが、これは紛うこと無く犬走椛を模した人形だった。
衣装は、その質感までもがよく似ていて、
「もしかして……」
妖夢はごくりと喉を鳴らしつつ、そっと頭を撫でてみると。
「おお!」
少し太めでしっかりとした、しかしそれでいてしなやかな純白。
その髪の毛も、やはり本人のものに近い感触だった。
「つ、つまり……」
ならばと、妖夢は震える手で禁断の領域へと手を伸ばす。
そこは椛にとって、白狼天狗にとってデリケートな部位。たとえ妖夢であろうとも、許可無く触れば怒られてしまうだろう。
だがそれだけに、その触り心地は一級品。どんな動物の毛皮よりも、どんな反物よりも柔らかく、暖かで、癒される部位。
そして妖夢は、そっとその部位に手を這わせる。
「…………まあ、そうですよね……」
小さくため息。
いや、妖夢とて分かっていたことなのだ。さきも言ったとおり、椛の“尻尾”は極上の触り心地。そう易々とその質感を再現することなど不可能であると。これも決して悪いわけではない。悪いわけではないのだが、しかしやはり本物と比較すると、どうしても劣る。
とは言えである。尻尾の質感以外は完璧と言っても差し支えないほどの出来だった。
「さすがは“七色の人形遣い”ってところかしら」
改めて妖夢は人形を抱え上げ、その姿をまじまじと眺めた。
「…………よし」
妖夢は行灯の火を消すと、人形を抱えたまま布団を被った。
「一緒に寝ましょうねー。……なんちゃって」
暗闇の中、妖夢は布団の中で人形を優しく抱きしめ、くすくすと笑った。
――これじゃあ、そこらの子供と変わらないわね。
でも、ここは自室。いわゆる“ぷらいべぇとすぺーす”というやつなのだ。たまには童心に帰るのも、悪くない。
と、
「……んっ?」
身体に違和感を覚え、妖夢は小さく声を上げた。
――なに?
なにやら、わき腹を誰かに触られているかのような、そんな感覚。
がばっと起き上がって辺りを見回すが、自分以外に人影や霊の姿はなく。
「……? ひゃっ!」
いぶかしむ妖夢の身体に、更に異変が起こった。
わき腹に伝わる執拗な感触。これは……
「ちょっ、誰!? あっはははははは! っくっくく……!」
くすぐられている。
「何これっははは! え? えっっははは!?」
ひくつく身体を何とか動かして辺りを見回すも、やはり誰もいない。人形を取り落として自身のわき腹を押さえても、くすぐりの感触は消えず。
――何が起きてるの!? どうすればいいのよ!?
「やめてちょっとわきはっ! アリ、ひっアリス! いったい人形にどんな細工をしたのよ!? っく、ははっ!」
見えざる誰かからのくすぐりに成す術もなく、妖夢はわけも分からぬまますがるように人形を強く抱きしめて耐えるしかなかった。
…………
同刻、妖怪の山。
ベッドの上に胡坐をかいて座る椛は、妖夢よりも少し早く“それ”と対峙していた。
「ふむ」
まじまじとアリスからのプレゼント――デフォルメされた妖夢人形を眺めて、椛は小さく唸る。なお、半霊も別パーツとして箱に入っているが、そちらは取り出していない。
「良くできている。が……」
――受け取るものを間違えただろうか?
普通、誰かに手作りの人形を贈る場合は、贈る相手を模したものにするはずだ。おそらく妖夢の手に渡った小包には、自分の姿を模した人形が入っているのではないだろうか。
もしもそうならば、受け取るものを間違えてしまったことになる。
「アリスに確認したほうがよさそうだな」
独りごちると、椛は箱にしまうべく人形に手を伸ばした。
その時、
「む?」
妙な感覚を覚え、椛は自分の頭に手を乗せた。指の間を、白い髪がさらりと流れる。
「……いま」
――誰かに触られていた気がする……?
しかし、部屋の中には自分しかいない。いまは就寝時間ゆえ、周囲にも不穏なにおいは感じられなかった。
「なん、ひゃう!?」
――今度は尻尾!?
椛は転げるようにベッドから降りると、素早く周囲を見回した。しかし、やはり誰もいない。
「いったい、何が起こって、ぐ……?」
独りごち、しかしさらなる異常に言葉が詰まった。
――身体が、締め付けられている……?
背、肩、腕……身体のあちこちが軽く圧迫されている。だが、不思議なことに身体は自由に動かすことが出来た。それに、この感覚には害意や悪意は感じられない……ような気がする。
――これは……
「なんだ?」
自身の両手を見下ろして呟き、そして椛ははたと思い至る。
『ちょっとした仕掛けはしてあるけど――』
「……成る程、そういうことか?」
椛は立ち上がると、再びベッドの上に胡坐をかいて座った。相対するは、仰向けに横たわる妖夢人形。
「……」
そして椛はゆっくりと、人形のわき腹に手を添えた。その瞬間、身体の締め付けが少し、弱まった気がする。
「……ふむ」
小さく頷き、次いで両手の指をわき腹に立てた。そして椛は両手の指を小刻みに動かし始めた。
「ほれ、ほれ」
いわゆる“くすぐり”である。
身体を締め付ける感覚は完全に消え去った。“向こう”はそれどころではないのだろう。
「ほれ、ほれ」
しかし、自室に籠って独りで人形をくすぐっているこの画はなんだろうなと、椛はふと悲しくなった。
――こんなところ、射命丸さんに見つかりでもしたら……
『白狼天狗、いい年こいて深夜にお人形さんと戯れる!』
天狗人生の終わりである。
などと、軽くブルーになっていた、その時。
「ほうぉ!?」
全身が思い切り圧迫された。今度は先ほどの比ではないほど強く。
――しまった! やりすぎた!
息が詰まる、身体の動きがぎこちない。さすがに、このまま締め上げ続けられたら窒息してしまうかもしれない。
「お、落ち着け、妖夢……!」
椛はくすぐりを止めて、今度は人形を優しく抱きしめてやった。片手は腰に回し、もう片手で頭を撫でてやって。
「ぐ……ぐ……」
やがて少しずつ圧迫は弱くなり、また先ほどの緩い圧迫感に戻った。
「ふう……」
一息ついて、椛はもそもそと布団に潜り込んだ。
――まったく、厄介なものを渡してくれたものだ。
椛は人形を抱擁したまま、独りごちた。
「……そういえば」
おそらく“向こう”もあれを抱いているのだろう。だとすると、間接的にではあるが、これは抱き合っていることになるのだろうか。
考えたら、少し、頬が熱くなった。
「~~と、兎に角」
明日、またアリスの家に行かねばなるまい。アリスに会ったら、まずはどうしてくれようかと考えながら椛は目を閉じた。妖夢人形を抱きしめたまま。
…………
「アリス・マーガトロイド!!」
穏やかな日差しが降り注ぐ昼前。邸宅の前に設置されたテーブルで裁縫をしていたアリスは、降ってきた声に顔を上げた。その眼前に迫るは、銀の刃。
「きゃあああぁぁぁ!!」
悲鳴を上げながらアリスは椅子からひっくり返り。しかし追撃はなく、刃の持ち主――犬走椛は大太刀を構えたままがづんとテーブルの上に仁王立ちした。
「い、いきなり何するのよ!?」
立ち上がったアリスは、倒れた椅子を直さないまま椛に詰め寄った。相手はテーブルの上に立っているので、かなり見上げ形になってしまうが。
対する椛は屈んでアリスと視線を合わせて、抱えていた箱をアリスに突きつけながらぐるると唸り。
「魔法を解け」
「あら、もういいの? もっと楽しめばいいのに」
「ふざけるな」
箱を受け取ってころころと笑うアリスに、今度はテーブルから降りた椛が詰め寄った。その、獣の耳と尻尾は総毛立ち、息は荒く、頬は高潮している。
どうにも様子がおかしい。そう考えるアリスの前で、椛は一歩下がって大太刀を肩に担ぐと、こちらを睨み据えた。
「またくだらない細工をしてくれたな」
「お気に召さなかったかしら?」
「妖夢は、まだ魔法の正体に気づいていない。だから、ンンっ!」
突然、びくんっと身体を震わせて椛はその場に膝をついた。身体に力が入らないのか地に手をついて、がらんと取り落とした大太刀が地面で声を上げた。
「ああ、なるほど……お仕事の最中でもべたべた触ってくるのね」
「こ、答えろ、アリス・マーガトロイド。貴様が人形に施した仕掛けは“感覚の共有”だな……?」
「ご明察。貴女、聡いわね」
そう、アリスが妖夢と椛に渡した人形にかけた仕掛け、それは“感覚の共有”だった。
アリスは手にした箱に目を落としながら楽しげに言う。
「この人形ね、妖夢の毛髪が中に入っているの。それを媒体にして、妖夢との感覚を繋いでいるってわけ。妖夢に渡した貴女の人形にも同じ細工がしてあるわ」
即ち、感覚の共有。人形に与えられた刺激が、媒体となっている毛髪の持ち主にそのまま伝わるのだ。
だからね、とアリスは椛の肩に手を置いて、
「残念だけど、この妖夢人形にかけられている魔法を解いても、貴女に伝わる刺激は消えないのよ」
「んっ……やはりか……」
眉間にしわを寄せて、椛は呻いた。そして、のたりと緩慢な動きで立ち上がると、大太刀を拾って地面に突き刺し、空いている椅子に深く座り込む。
「妖夢のほうへは手紙を送ってある。火急で依頼してあるから、今日中には届けてもらえるだろうが……あぅ!」
気だるげに空を見上げ、椛はびくんと身体を跳ねさせた。つられてアリスも視線を上げて。
夏も終わり、日差しは少しずつ緩やかになっていた。季節は夏から秋へと移り変わっていき。森の木の葉も、その色を一枚、また一枚と紅く染め始めていた。
とはいえ、いまの椛にそれを気にする余裕はないだろう、とアリスは苦笑を浮かべた。
「それまでは大変そうね。っていうか、どこ触られてるのよ?」
「ああ……完全にただの人形だと思っているのだろうな。執拗に尻尾を触ってくぅん!」
そういえば、白狼天狗は尻尾が敏感だったか。予兆もなしに、いきなり尻尾を触られるといういまの状況は、椛にとっては辛いものであろう。
その悲鳴とも嬌声ともとれる声に、なんとなく罪悪感を覚え。
「な、なんか、悪いことしちゃったかしらね。とりあえず、こっちの人形にかけられている魔法は解いておくわ」
「ああ、頼む。それと……」
椛はのたりを椅子から立ち上がると、地に突き刺した大太刀をずしゃりと引き抜いてのろのろと邸宅へ歩を進めた。
「すまないが、中で少し休ませてもらうぞ……。んん、これでは帰ることもままならん」
「え、ええ、どうぞ。リビングのソファを使って」
「それと、妖夢が来ても私がいることは黙っていてくれ」
玄関のドアを開いたところで、椛は肩越しに振り向いてアリスに言った。
「こんな格好悪い姿、恥ずかしくて見せられん」
リビングで休む椛に紅茶とクッキーを出してから、アリスは邸宅前で作業を再開していた。
「別に、そんなこと気にしなくてもいいと思うけどね」
ちらりとリビングのほうへと視線を向けて、独りごちる。
魂魄妖夢は犬走椛をよく慕っている。そんなことは、短い付き合いのアリスでさえ分かった。いまさら少し格好悪いところを見られたところで、その信頼が揺らぐとは思えない。
「まったく、格好つけなんだから」
なんとなく、アリスは思う。
――あの二人って、似たもの同士なのね。
性根が真っ直ぐなところとか、格好つけたがりなところとか……
「あと、すぐに剣がでるところとか?」
くすくすと笑いながら、アリスはのんびりと空を見上げた。
そろそろ昼時だろうか。真上から降り注ぐ陽光にアリスは目を細めながら、あの格好つけの白狼天狗に食事をご馳走してやろうか、などとアリスは考え。
「離れていても、繋がっている……。“絆”って、素敵よね」
「やかましいッ!! 元はと言えば誰のせいだ!!」
「ああん、せっかく綺麗にまとめようとしたのに」
了
また、作品集171『庭師、森にて大いなる剣と相対すること』の後日談となっています。
じめついた空気、漂う胞子。そして蔓延する瘴気。
幻想郷の魔法の森。その一角、少し開けた場所に建つは“七色の人形遣い”の二つ名を持つ魔法使い、アリス・マーガトロイドの邸宅。家主自前の結界によって、人妖問わずに有害な魔法の森の中で唯一、清潔な空気を保っている場所である。
「わざわざ来てもらっちゃって悪いわね」
玄関先に立つ三人の人妖のうち、一人が微笑みながら言った。
金の髪、金の瞳を持つ端麗な容姿の少女。この邸宅の主――アリス・マーガトロイドである。
「それで、今日はどうしたんですか? まさか、また椛の尻尾を狙って……!?」
「違う違う。もう狙わないから」
アリスと向かい合うように立つ残りの二人――魂魄妖夢と犬走椛のうち、妖夢が楼観剣の柄に手をかけながら身構えると、アリスはぱたぱたと手を振った。
妖夢と椛は友人関係である。妖夢はかつて妖怪の山へと侵入し、山の哨戒をしていた白狼天狗の犬走椛と出会った。剣を交えて、言葉を交わして。やがて二人は友人となって。
そしてつい先日のこと。アリスは白狼天狗――犬走椛の持つ狼の尻尾を人形の装飾の素材にしようと狙い、妖夢と相対した。
戦いのすえ、妖夢はアリスの繰り出した人形を撃退し、椛の尻尾を守ることに成功したのだが……
尻尾争奪戦から数日が経ったある日、二人はアリスの呼び出しを受けていま、ここにいる。妖夢の警戒も無理からぬことだった。
「して、用とは?」
楼観剣の柄尻に手を沿え、抜きかけた刀身を鞘に戻させながら椛は問うた。まあ、椛がそれで良いのなら、と妖夢は構えを解いて、改めてアリスと向き合った。
「この間のお詫びにと思って、プレゼントを用意したのよ」
アリスの言葉に応じるように、邸内から二体の人形が姿を現した。それぞれが、やや縦長の小包を抱えている。どちらも青い紙に包まれ、片方は緑のリボン、もう片方には白のリボンが巻かれていた。
「ぷ、ぷれぜんと?」
「ほら、何だかんだ言っても、結局は二人に迷惑をかけた形になったじゃない?」
「何だかんだも何も最初から……いや、いい……」
「はい、こっちが妖夢ので、こっちが椛の」
人形たちは、緑のリボンが巻かれた小包を椛に、白いリボンが巻かれた小包を妖夢に渡すと、邸内へと戻っていった。
「ありがとうございます」
「中身を確認しても?」
「あ、それは待ってもらっていいかしら」
リボンに手をかけた椛を制止し、アリスは頬に手をあて思案の仕草。
「その包みは、家に帰ってから開けて頂戴。そうね……開封は夜。それも、お互いに就寝時間で一人の時が望ましいかしら」
「えらく具体的だな」
「怪しさ満点なんですけど」
妖夢と椛は、揃って受け取った小包を半眼で睨みつけた。しかしアリスは胸を張って言葉を続ける。
「心配しないで。ちょっとした仕掛けはしてあるけど、悪いものじゃないから」
「椛、この人『仕掛けがある』って自分で言いましたよ」
「いい度胸だな」
「だから悪い仕掛けじゃないってば」
アリスは剣士二人に半眼で睨まれ、少し身を引きながら、
「絶対に気に入ると思うんだけどなぁ……」
「……椛、どうします?」
「ふむ……」
問い、顎に手をあて考える椛の横顔を妖夢は見つめる。
椛は射るような目つきで、あははと引きつった笑みを浮かべるアリスを見つめ、
「悪意はなさそうだが……まあ、いいだろう。私はもらっておこうと思う」
小さくため息をつきながら椛は言った。
「椛がそう言うのなら、私もいただきます」
「あまり信用されてもな……。私だって間違えることもある」
「でも、私よりはずっと正しい選択をしてくれます」
受け取った小包を抱えて微笑みかけると、椛は照れくさそうに頬をかいて。
それを見ながら、妖夢は思う。
――最近の椛は、色んな表情を見せてくれる。
生来の生真面目さもあるのだろう。椛はいつでも妖夢の手本であろうとしていたのだと思う。いつでも冷静で、優しくて。“照れ”のような小さな感情などは、あまり表に出すことはなかった。
それがいまでは、小さなことでも表情に出して、言葉に出して。そんな椛の新しい表情を見ることが、最近の妖夢の楽しみだった。
「良かった。受け取ってもらえるのね」
ともあれと、二人の承諾にアリスは両手をぱんと合わせて笑みを浮かべた。
…………
ひたり、ひたり。
人も、草木も幽霊も。みな等しく眠りにつく時分。しんと静まり返った冥界に響くは、板張りの床を行く素足の足音。
椛と別れて白玉楼に戻った妖夢は、残っていたその日の仕事を片付け、ようやく就寝の途につくところだった。
湯浴みを済ませ、程よく火照った身体を寝間着に包んだ妖夢は、少し足早に自室へと向かう。
――そろそろ、いいかな?
妖夢と椛、互いに就寝時間に開封するように言われた、アリスからの贈り物。もう開けてもよい頃合いだろう。
結局、中身は何かは教えてもらえなかったが、まあ、開けたらいきなり爆発するようなことはないはずだ。
「…………」
たぶん。
魔法使いからの贈り物である。期待と、若干の不安が入り混じった気分のまま、妖夢は自室へと続く襖を開けた。部屋の中は薄暗く、中央付近で点けっぱなしにしておいた行灯の光が、ぼんやりと周囲を照らしている。行灯の傍には、あらかじめ用意しておいた布団一式と、枕の上に件の青い小包。
素早く部屋に滑り込んだ妖夢はくるりと振り向き、自分が通った襖の隙間から頭を覗かせて、部屋の外――縁側の廊下を窺い見た。
右を見て、左を見て、もう一回右を見て。
辺りには人影も、霊の姿も見当たらず。いるのは、庭に立ち並ぶ剪定された木々のみ。
誰もいないことを確認した妖夢は襖を閉めて、一息。
「さて、中身は何かしら、と」
布団の上にぺたんと座り込み、妖夢は包みのリボンを解いた。包装紙を剥がすと、中には白い箱が一つ。
包装紙とリボンを丁寧にたたんで布団の横に置いてから、妖夢は蓋をゆっくりと開けた。
「わあ……!」
箱の中を覗き込んだ妖夢は、感嘆の声をあげながら中身を箱から取り出した。
赤い高下駄、紅い楓模様が裾に散りばめられた藍色のスカートに、白い腋出しの装束。純白の髪の毛と赤みを帯びた黒檀の瞳。そして髪の毛と同じ色の、獣の耳と尻尾は白狼天狗の証。
箱の中身。それは、
「椛だ」
全体的にデフォルメされているが、これは紛うこと無く犬走椛を模した人形だった。
衣装は、その質感までもがよく似ていて、
「もしかして……」
妖夢はごくりと喉を鳴らしつつ、そっと頭を撫でてみると。
「おお!」
少し太めでしっかりとした、しかしそれでいてしなやかな純白。
その髪の毛も、やはり本人のものに近い感触だった。
「つ、つまり……」
ならばと、妖夢は震える手で禁断の領域へと手を伸ばす。
そこは椛にとって、白狼天狗にとってデリケートな部位。たとえ妖夢であろうとも、許可無く触れば怒られてしまうだろう。
だがそれだけに、その触り心地は一級品。どんな動物の毛皮よりも、どんな反物よりも柔らかく、暖かで、癒される部位。
そして妖夢は、そっとその部位に手を這わせる。
「…………まあ、そうですよね……」
小さくため息。
いや、妖夢とて分かっていたことなのだ。さきも言ったとおり、椛の“尻尾”は極上の触り心地。そう易々とその質感を再現することなど不可能であると。これも決して悪いわけではない。悪いわけではないのだが、しかしやはり本物と比較すると、どうしても劣る。
とは言えである。尻尾の質感以外は完璧と言っても差し支えないほどの出来だった。
「さすがは“七色の人形遣い”ってところかしら」
改めて妖夢は人形を抱え上げ、その姿をまじまじと眺めた。
「…………よし」
妖夢は行灯の火を消すと、人形を抱えたまま布団を被った。
「一緒に寝ましょうねー。……なんちゃって」
暗闇の中、妖夢は布団の中で人形を優しく抱きしめ、くすくすと笑った。
――これじゃあ、そこらの子供と変わらないわね。
でも、ここは自室。いわゆる“ぷらいべぇとすぺーす”というやつなのだ。たまには童心に帰るのも、悪くない。
と、
「……んっ?」
身体に違和感を覚え、妖夢は小さく声を上げた。
――なに?
なにやら、わき腹を誰かに触られているかのような、そんな感覚。
がばっと起き上がって辺りを見回すが、自分以外に人影や霊の姿はなく。
「……? ひゃっ!」
いぶかしむ妖夢の身体に、更に異変が起こった。
わき腹に伝わる執拗な感触。これは……
「ちょっ、誰!? あっはははははは! っくっくく……!」
くすぐられている。
「何これっははは! え? えっっははは!?」
ひくつく身体を何とか動かして辺りを見回すも、やはり誰もいない。人形を取り落として自身のわき腹を押さえても、くすぐりの感触は消えず。
――何が起きてるの!? どうすればいいのよ!?
「やめてちょっとわきはっ! アリ、ひっアリス! いったい人形にどんな細工をしたのよ!? っく、ははっ!」
見えざる誰かからのくすぐりに成す術もなく、妖夢はわけも分からぬまますがるように人形を強く抱きしめて耐えるしかなかった。
…………
同刻、妖怪の山。
ベッドの上に胡坐をかいて座る椛は、妖夢よりも少し早く“それ”と対峙していた。
「ふむ」
まじまじとアリスからのプレゼント――デフォルメされた妖夢人形を眺めて、椛は小さく唸る。なお、半霊も別パーツとして箱に入っているが、そちらは取り出していない。
「良くできている。が……」
――受け取るものを間違えただろうか?
普通、誰かに手作りの人形を贈る場合は、贈る相手を模したものにするはずだ。おそらく妖夢の手に渡った小包には、自分の姿を模した人形が入っているのではないだろうか。
もしもそうならば、受け取るものを間違えてしまったことになる。
「アリスに確認したほうがよさそうだな」
独りごちると、椛は箱にしまうべく人形に手を伸ばした。
その時、
「む?」
妙な感覚を覚え、椛は自分の頭に手を乗せた。指の間を、白い髪がさらりと流れる。
「……いま」
――誰かに触られていた気がする……?
しかし、部屋の中には自分しかいない。いまは就寝時間ゆえ、周囲にも不穏なにおいは感じられなかった。
「なん、ひゃう!?」
――今度は尻尾!?
椛は転げるようにベッドから降りると、素早く周囲を見回した。しかし、やはり誰もいない。
「いったい、何が起こって、ぐ……?」
独りごち、しかしさらなる異常に言葉が詰まった。
――身体が、締め付けられている……?
背、肩、腕……身体のあちこちが軽く圧迫されている。だが、不思議なことに身体は自由に動かすことが出来た。それに、この感覚には害意や悪意は感じられない……ような気がする。
――これは……
「なんだ?」
自身の両手を見下ろして呟き、そして椛ははたと思い至る。
『ちょっとした仕掛けはしてあるけど――』
「……成る程、そういうことか?」
椛は立ち上がると、再びベッドの上に胡坐をかいて座った。相対するは、仰向けに横たわる妖夢人形。
「……」
そして椛はゆっくりと、人形のわき腹に手を添えた。その瞬間、身体の締め付けが少し、弱まった気がする。
「……ふむ」
小さく頷き、次いで両手の指をわき腹に立てた。そして椛は両手の指を小刻みに動かし始めた。
「ほれ、ほれ」
いわゆる“くすぐり”である。
身体を締め付ける感覚は完全に消え去った。“向こう”はそれどころではないのだろう。
「ほれ、ほれ」
しかし、自室に籠って独りで人形をくすぐっているこの画はなんだろうなと、椛はふと悲しくなった。
――こんなところ、射命丸さんに見つかりでもしたら……
『白狼天狗、いい年こいて深夜にお人形さんと戯れる!』
天狗人生の終わりである。
などと、軽くブルーになっていた、その時。
「ほうぉ!?」
全身が思い切り圧迫された。今度は先ほどの比ではないほど強く。
――しまった! やりすぎた!
息が詰まる、身体の動きがぎこちない。さすがに、このまま締め上げ続けられたら窒息してしまうかもしれない。
「お、落ち着け、妖夢……!」
椛はくすぐりを止めて、今度は人形を優しく抱きしめてやった。片手は腰に回し、もう片手で頭を撫でてやって。
「ぐ……ぐ……」
やがて少しずつ圧迫は弱くなり、また先ほどの緩い圧迫感に戻った。
「ふう……」
一息ついて、椛はもそもそと布団に潜り込んだ。
――まったく、厄介なものを渡してくれたものだ。
椛は人形を抱擁したまま、独りごちた。
「……そういえば」
おそらく“向こう”もあれを抱いているのだろう。だとすると、間接的にではあるが、これは抱き合っていることになるのだろうか。
考えたら、少し、頬が熱くなった。
「~~と、兎に角」
明日、またアリスの家に行かねばなるまい。アリスに会ったら、まずはどうしてくれようかと考えながら椛は目を閉じた。妖夢人形を抱きしめたまま。
…………
「アリス・マーガトロイド!!」
穏やかな日差しが降り注ぐ昼前。邸宅の前に設置されたテーブルで裁縫をしていたアリスは、降ってきた声に顔を上げた。その眼前に迫るは、銀の刃。
「きゃあああぁぁぁ!!」
悲鳴を上げながらアリスは椅子からひっくり返り。しかし追撃はなく、刃の持ち主――犬走椛は大太刀を構えたままがづんとテーブルの上に仁王立ちした。
「い、いきなり何するのよ!?」
立ち上がったアリスは、倒れた椅子を直さないまま椛に詰め寄った。相手はテーブルの上に立っているので、かなり見上げ形になってしまうが。
対する椛は屈んでアリスと視線を合わせて、抱えていた箱をアリスに突きつけながらぐるると唸り。
「魔法を解け」
「あら、もういいの? もっと楽しめばいいのに」
「ふざけるな」
箱を受け取ってころころと笑うアリスに、今度はテーブルから降りた椛が詰め寄った。その、獣の耳と尻尾は総毛立ち、息は荒く、頬は高潮している。
どうにも様子がおかしい。そう考えるアリスの前で、椛は一歩下がって大太刀を肩に担ぐと、こちらを睨み据えた。
「またくだらない細工をしてくれたな」
「お気に召さなかったかしら?」
「妖夢は、まだ魔法の正体に気づいていない。だから、ンンっ!」
突然、びくんっと身体を震わせて椛はその場に膝をついた。身体に力が入らないのか地に手をついて、がらんと取り落とした大太刀が地面で声を上げた。
「ああ、なるほど……お仕事の最中でもべたべた触ってくるのね」
「こ、答えろ、アリス・マーガトロイド。貴様が人形に施した仕掛けは“感覚の共有”だな……?」
「ご明察。貴女、聡いわね」
そう、アリスが妖夢と椛に渡した人形にかけた仕掛け、それは“感覚の共有”だった。
アリスは手にした箱に目を落としながら楽しげに言う。
「この人形ね、妖夢の毛髪が中に入っているの。それを媒体にして、妖夢との感覚を繋いでいるってわけ。妖夢に渡した貴女の人形にも同じ細工がしてあるわ」
即ち、感覚の共有。人形に与えられた刺激が、媒体となっている毛髪の持ち主にそのまま伝わるのだ。
だからね、とアリスは椛の肩に手を置いて、
「残念だけど、この妖夢人形にかけられている魔法を解いても、貴女に伝わる刺激は消えないのよ」
「んっ……やはりか……」
眉間にしわを寄せて、椛は呻いた。そして、のたりと緩慢な動きで立ち上がると、大太刀を拾って地面に突き刺し、空いている椅子に深く座り込む。
「妖夢のほうへは手紙を送ってある。火急で依頼してあるから、今日中には届けてもらえるだろうが……あぅ!」
気だるげに空を見上げ、椛はびくんと身体を跳ねさせた。つられてアリスも視線を上げて。
夏も終わり、日差しは少しずつ緩やかになっていた。季節は夏から秋へと移り変わっていき。森の木の葉も、その色を一枚、また一枚と紅く染め始めていた。
とはいえ、いまの椛にそれを気にする余裕はないだろう、とアリスは苦笑を浮かべた。
「それまでは大変そうね。っていうか、どこ触られてるのよ?」
「ああ……完全にただの人形だと思っているのだろうな。執拗に尻尾を触ってくぅん!」
そういえば、白狼天狗は尻尾が敏感だったか。予兆もなしに、いきなり尻尾を触られるといういまの状況は、椛にとっては辛いものであろう。
その悲鳴とも嬌声ともとれる声に、なんとなく罪悪感を覚え。
「な、なんか、悪いことしちゃったかしらね。とりあえず、こっちの人形にかけられている魔法は解いておくわ」
「ああ、頼む。それと……」
椛はのたりを椅子から立ち上がると、地に突き刺した大太刀をずしゃりと引き抜いてのろのろと邸宅へ歩を進めた。
「すまないが、中で少し休ませてもらうぞ……。んん、これでは帰ることもままならん」
「え、ええ、どうぞ。リビングのソファを使って」
「それと、妖夢が来ても私がいることは黙っていてくれ」
玄関のドアを開いたところで、椛は肩越しに振り向いてアリスに言った。
「こんな格好悪い姿、恥ずかしくて見せられん」
リビングで休む椛に紅茶とクッキーを出してから、アリスは邸宅前で作業を再開していた。
「別に、そんなこと気にしなくてもいいと思うけどね」
ちらりとリビングのほうへと視線を向けて、独りごちる。
魂魄妖夢は犬走椛をよく慕っている。そんなことは、短い付き合いのアリスでさえ分かった。いまさら少し格好悪いところを見られたところで、その信頼が揺らぐとは思えない。
「まったく、格好つけなんだから」
なんとなく、アリスは思う。
――あの二人って、似たもの同士なのね。
性根が真っ直ぐなところとか、格好つけたがりなところとか……
「あと、すぐに剣がでるところとか?」
くすくすと笑いながら、アリスはのんびりと空を見上げた。
そろそろ昼時だろうか。真上から降り注ぐ陽光にアリスは目を細めながら、あの格好つけの白狼天狗に食事をご馳走してやろうか、などとアリスは考え。
「離れていても、繋がっている……。“絆”って、素敵よね」
「やかましいッ!! 元はと言えば誰のせいだ!!」
「ああん、せっかく綺麗にまとめようとしたのに」
了
アリスがなんだか世話焼きおばさんに見えてしかたがないw
いいぞ、もっと!もっとだ!
くそぅ、かわいいな。
ばかじゃないのwww
>>2, 8, 奇声さん
ありがとうございます!
>> 5
いちおう、これまでのフォーマットはだいたい保っていると思うので問題なしです!
アリスは世話焼きだけど、ちょっとおせっかいな“お姉さん”なイメージですね。
>>6
アリス・マーガトロイドはいい子です。面白がってますけど。
>>紳士さん、9
そうだ、もっとやれ(賛同)
>>10
\ひどい/
>>12
ありがとうございます!前作もよろしくお願いします!
今回は短編ということで気軽に読むことが出来たのですが、その代わり二人の
絆、つまりは繋がりがより近しく描かれていて、これは今後の話はどうなってゆく
のだろう、と期待してしまう結びでした。人形に対する妖夢と椛の反応の違いも
面白い。勘の鋭い椛と気づかない妖夢、こういうところは対称的なんですね。