※ご注意!
風見幽香さんとアリス・マーガトロイドさんの二人が、当然のように恋人同士設定です。
『気まぐれ猫と人形遣いの戯れ』
曰く、『メス猫の特徴は、ワガママで気位が高く、好き嫌いも激しく、警戒心が強い。
そして、猫に共通な特徴として挙げられるものは、「気まぐれ」これに尽きるであろう。』――――と。
魔界にいた頃に見た本、あれは図鑑だったか、それとも小説の中の一文だったか。
そんなことを思い出したのは、読書をしていたアリスに幽香が後ろからのしかかってきたからである。
む、重い。本が読みにくいじゃない。ふいっと身体の向きを変えて、振り落す。
そのまま本に目を通していると本を隠すように寝そべられた。
アリスの膝と本の上に仰向けになり、こちらを見てくる幽香の顏はふてぶてしい。
申し訳なさそうな顔の一つでもしたらいいのに。懇願めいた目ですがられれば、アリスとてかまうこともやぶさかではない。
どうでもいいけどこれって何かに似てる。
そうだ、魔界にいたころ一時期飼っていた猫の行動にそっくり。
アリスが本や新聞を読んでいると、わざわざその上に寝そべったり身体を広げて読むのを邪魔したり。まさに今の幽香そのもの。
つまりは冒頭のことが思い出されたわけである。
なぁに?いつもは忠犬のくせに今日は駄目なの?
ふぅとため息を一つ吐いて、本を脇によけ、幽香の頭をわしゃわしゃと撫でる。
幽香は自分の作戦(?)が成功したからか、髪を乱されても嬉しそうな顔をしている。
こういうところはやっぱり犬っぽい。
アリスが飼っていた猫は、こうしてかまわれると逆にぷいっとどこかに行ってしまったりした。
「今度こんなことしたら追い出すわよ」
「何のことかしら?」
ふん、かわいくない。
では、かまえと自分でアピールしたのだから、好きにさせてもらおう。
片手は髪に絡めたまま、もう片方の手をするりと幽香の顏にすべらせる。
額を撫でて、頬を撫でて、鼻をつまむ。む、と鼻声を出すけれど、嫌がる素振りはなく。
ふにふにと唇の上で指を遊ばせる。その指をつかまえようと口が動く。
ふふ、本当じゃれる猫のよう。あむ、と人差し指が口の中へ。
それはそのままに、髪をいじっていた手を下ろし、顎のあたりへ。
くすぐったかったのか、ピクリと反応した幽香が人差し指に噛みつく。痛みはない。
顎から首へ、首から胸元のタイへ手を動かしていく。
タイの結び目をほどいて、着ているシャツのボタンを片手で一つ二つ外す。
そのままするりとシャツの中に手を滑り込ませる。
アリスの人差し指をくわえたまま、嬉しげだった幽香の顏が、初めて戸惑いを見せた。
あらぁ?何を焦っているのかしら?
かまえと言ったのは貴女でしょう?
表情を笑みから崩さぬまま、鎖骨をたどる。
ふ、と幽香がかすれた声を上げる。
幽香の当惑も無理からぬところである。
まだ日は高く、普段のアリスならこういうことはしないからだ。
たとえ幽香がしようとしても、よっぽどのことがない限り基本的には拒絶する。
際どいところを通るいたずらな手に、若干の不安を覚えたのだろう。まさか、という緊張。
だが、はいよる手が首の後ろに回ったところで幽香の戸惑い顔が、また軽やかなものに変わる。
アリスが今、ただ猫にするように幽香を撫でていると理解したからだ。
アリスとて、はじめは煽ってやるつもりだった。性的に。
その気にさせて、まだ昼間だと断るつもりでいた。
それで、読書の邪魔をした意趣返しとしようとしたのだ。
しかし、発情した幽香にそのまま喰われるのは目に見えていたし、今後「アリスも前にしたじゃない」などと同じことをされるようになっては困る。
これくらいの「戯れ」にしておく方がベターだと考えを改めた。
幽香も心得た、とばかりアリスの膝の上に陣取ったままごろりと回転し、背中をアリスに向ける。
なんだ、腹のあたりまで撫でてやろうと思ったのに。まぁご所望なら仕方がない。
背骨のこぶの一つ一つをたどるように指を動かしていく。
くすぐったいのか、嬉しいのかわからない声が聞こえる。
幽香はうつぶせ状態なので、どんな顔をしているのかわからないが、ご機嫌なのは確かだった。
幽香はアリスが自分に触れているだけで気分よく過ごせるのだ。
まったく単純でうらやましい。まぁ、何をしても気難しくて機嫌の悪いよりは遥かに好ましいけれど。
かといって、アリスにしてもそう大差はないけれど。
ただ、アリスの方が時と場合にうるさいくらいで。
もそりもそりと動かしている間にスカートに入れていたシャツの裾はとっくにはずれていた。
チラリとのぞく肩や腰が大変エロティックだ。
背中から腰にかけてのあたりを指が這うとさすがに悩ましい声が出た。
逆にアリスの方に火がついてしまいそうになる。
頃合いとみて、終了の合図をする。
「……はい、おしまい」
言葉とともに、背中を軽くたたく。
が、どかない。
「幽香」
声をかけるとまたごろりと仰向けになった。
手が伸びて、アリスの頬を撫でた。先ほど自分がされたみたいに。
手はそのままアリスの頭に回り、少しの力が加わった。
下向きに。幽香の方へ。
「仕方がない」はまるで魔法の呪文のようだ。
今までに、アリスが何度言葉にしたり、心中で唱えたか知れない。
「……しょうがないわね」
くちびるまであと少しのところでいったん止めて囁く。
これで本当に終わりよ、の意味合いを伝えるためにその呪文を口にした。
幽香の小さな、それこそ吐息みたいな「ん……」という返答を聞いて、くちづけた。
いち、に、さん、で終わりにしようと思ったのに、アリスの頭に回った手はそれを許さない。
んー、とくぐもった唸り声で抗議の声をあげるけれど幽香は腹筋と背筋だけで身体を起こしているのか、ぐいぐいと下から押し付けてくる。
身体を起こすならちゃんと起こしてくれればいいのに、片手はアリスの後頭部を押さえたまま。
ちょ、この体勢しんどい。ついでに呼吸も苦しい。
どう考えても幽香の方がつらい体勢のはずなのに!
「ぶ、はぁっ」
我ながらまったく色気のない声を上げて、ぴったりと合わされていた顔を背けた。
はぁはぁと肩で息をする。幽香だって楽な姿勢だったわけではないくせに、そんな素振りなどまったく見せていない。
むしろきょとんとしてアリスを見た後、ケラケラと笑いだした。
「アリス、顏真っ赤よ」
「どこのどいつのせいよ!」
まだ半分アリスに乗せていた幽香の身体をぐいぐいと押しのける。
人の読書の邪魔をしておいて、しかもそれを中断してアリスとしては「ちゃんと」かまってやったつもりだ。
なのにこの仕打ち。かまってやるんじゃなかった。
いや、当初の予定通りもっといじめてやれば……いやいや、それはよくない。自分にとって。
押しのけたのに、またぴったりアリスに寄り添うみたいに幽香が横になる。
幽香の頭が、アリスの腰のあたりだけくっついている状態だ。
手でも伸ばしてきたら、厳しく払いのけてやるつもりだったが、なにもせず大人しくしている。
きまぐれでわがままな猫が、忠犬に戻ったようだ。
このまましばらくアリスの読書が終わるまで待つ気でいるという態度だろう。
こういう、小さないじらしさを見せられると不機嫌になった気持ちがやわらかくなってしまう。
幽香にはそんな打算とかはなくて、ただ自分がアリスのどこかに触れていたいだけなのだろうけど。
ついつい頭を撫でたくなる。が、今それをすると調子に乗るのは明らかなのでぐっと我慢をする。
おかしい。さっきわがままし放題だったのだから、今度我慢をするのは幽香の方だというのに。
まるでアリスの方が我慢をすることになるとはどういうことだ。
聞こえよがしにため息を一つ吐いて、中断していた読書を再開させることにした。
はたしてどこまで物語の内容が頭に入ってくるかはさだかではないが。
アリスのため息のせいか、幽香が頭をぐり、と一回すりつけた。
たぶん幽香なりの、「ごめんね」の合図。
さっきはケラケラと笑って不敵な態度だったが、ため息を聞いて、思いのほかアリスが怒ってるかもと不安になったのだろう。
まったくいちいちいじらしい。
まったく、まったく、まったくもう。
今さっきは我慢したのに、結局幽香の頭を撫でてしまった。
怒ってないわよ、のサイン。
実際怒ってないのだから始末に負えない。
幽香がもう一度ぐりぐりと頭をすりよせた。
こちらを見ていませんように、と願いながら視線を本から移すと、幽香は目をつぶっていた。
けれど、口元が笑みの形になっていて、酷く嬉しそうだった。
ハッキリ言ってかわいい。どうみてもかわいい。
たぶんそう時を経ずにこの読書は終わりになるだろう。
最後まで読み切るつもりだったのに。幽香にしてみれば気まぐれで仕掛けた戯れに過ぎないというのにまんまとやられてしまった。
悔しいけれど、今日はアリスの完敗だ。
End.
風見幽香さんとアリス・マーガトロイドさんの二人が、当然のように恋人同士設定です。
『気まぐれ猫と人形遣いの戯れ』
曰く、『メス猫の特徴は、ワガママで気位が高く、好き嫌いも激しく、警戒心が強い。
そして、猫に共通な特徴として挙げられるものは、「気まぐれ」これに尽きるであろう。』――――と。
魔界にいた頃に見た本、あれは図鑑だったか、それとも小説の中の一文だったか。
そんなことを思い出したのは、読書をしていたアリスに幽香が後ろからのしかかってきたからである。
む、重い。本が読みにくいじゃない。ふいっと身体の向きを変えて、振り落す。
そのまま本に目を通していると本を隠すように寝そべられた。
アリスの膝と本の上に仰向けになり、こちらを見てくる幽香の顏はふてぶてしい。
申し訳なさそうな顔の一つでもしたらいいのに。懇願めいた目ですがられれば、アリスとてかまうこともやぶさかではない。
どうでもいいけどこれって何かに似てる。
そうだ、魔界にいたころ一時期飼っていた猫の行動にそっくり。
アリスが本や新聞を読んでいると、わざわざその上に寝そべったり身体を広げて読むのを邪魔したり。まさに今の幽香そのもの。
つまりは冒頭のことが思い出されたわけである。
なぁに?いつもは忠犬のくせに今日は駄目なの?
ふぅとため息を一つ吐いて、本を脇によけ、幽香の頭をわしゃわしゃと撫でる。
幽香は自分の作戦(?)が成功したからか、髪を乱されても嬉しそうな顔をしている。
こういうところはやっぱり犬っぽい。
アリスが飼っていた猫は、こうしてかまわれると逆にぷいっとどこかに行ってしまったりした。
「今度こんなことしたら追い出すわよ」
「何のことかしら?」
ふん、かわいくない。
では、かまえと自分でアピールしたのだから、好きにさせてもらおう。
片手は髪に絡めたまま、もう片方の手をするりと幽香の顏にすべらせる。
額を撫でて、頬を撫でて、鼻をつまむ。む、と鼻声を出すけれど、嫌がる素振りはなく。
ふにふにと唇の上で指を遊ばせる。その指をつかまえようと口が動く。
ふふ、本当じゃれる猫のよう。あむ、と人差し指が口の中へ。
それはそのままに、髪をいじっていた手を下ろし、顎のあたりへ。
くすぐったかったのか、ピクリと反応した幽香が人差し指に噛みつく。痛みはない。
顎から首へ、首から胸元のタイへ手を動かしていく。
タイの結び目をほどいて、着ているシャツのボタンを片手で一つ二つ外す。
そのままするりとシャツの中に手を滑り込ませる。
アリスの人差し指をくわえたまま、嬉しげだった幽香の顏が、初めて戸惑いを見せた。
あらぁ?何を焦っているのかしら?
かまえと言ったのは貴女でしょう?
表情を笑みから崩さぬまま、鎖骨をたどる。
ふ、と幽香がかすれた声を上げる。
幽香の当惑も無理からぬところである。
まだ日は高く、普段のアリスならこういうことはしないからだ。
たとえ幽香がしようとしても、よっぽどのことがない限り基本的には拒絶する。
際どいところを通るいたずらな手に、若干の不安を覚えたのだろう。まさか、という緊張。
だが、はいよる手が首の後ろに回ったところで幽香の戸惑い顔が、また軽やかなものに変わる。
アリスが今、ただ猫にするように幽香を撫でていると理解したからだ。
アリスとて、はじめは煽ってやるつもりだった。性的に。
その気にさせて、まだ昼間だと断るつもりでいた。
それで、読書の邪魔をした意趣返しとしようとしたのだ。
しかし、発情した幽香にそのまま喰われるのは目に見えていたし、今後「アリスも前にしたじゃない」などと同じことをされるようになっては困る。
これくらいの「戯れ」にしておく方がベターだと考えを改めた。
幽香も心得た、とばかりアリスの膝の上に陣取ったままごろりと回転し、背中をアリスに向ける。
なんだ、腹のあたりまで撫でてやろうと思ったのに。まぁご所望なら仕方がない。
背骨のこぶの一つ一つをたどるように指を動かしていく。
くすぐったいのか、嬉しいのかわからない声が聞こえる。
幽香はうつぶせ状態なので、どんな顔をしているのかわからないが、ご機嫌なのは確かだった。
幽香はアリスが自分に触れているだけで気分よく過ごせるのだ。
まったく単純でうらやましい。まぁ、何をしても気難しくて機嫌の悪いよりは遥かに好ましいけれど。
かといって、アリスにしてもそう大差はないけれど。
ただ、アリスの方が時と場合にうるさいくらいで。
もそりもそりと動かしている間にスカートに入れていたシャツの裾はとっくにはずれていた。
チラリとのぞく肩や腰が大変エロティックだ。
背中から腰にかけてのあたりを指が這うとさすがに悩ましい声が出た。
逆にアリスの方に火がついてしまいそうになる。
頃合いとみて、終了の合図をする。
「……はい、おしまい」
言葉とともに、背中を軽くたたく。
が、どかない。
「幽香」
声をかけるとまたごろりと仰向けになった。
手が伸びて、アリスの頬を撫でた。先ほど自分がされたみたいに。
手はそのままアリスの頭に回り、少しの力が加わった。
下向きに。幽香の方へ。
「仕方がない」はまるで魔法の呪文のようだ。
今までに、アリスが何度言葉にしたり、心中で唱えたか知れない。
「……しょうがないわね」
くちびるまであと少しのところでいったん止めて囁く。
これで本当に終わりよ、の意味合いを伝えるためにその呪文を口にした。
幽香の小さな、それこそ吐息みたいな「ん……」という返答を聞いて、くちづけた。
いち、に、さん、で終わりにしようと思ったのに、アリスの頭に回った手はそれを許さない。
んー、とくぐもった唸り声で抗議の声をあげるけれど幽香は腹筋と背筋だけで身体を起こしているのか、ぐいぐいと下から押し付けてくる。
身体を起こすならちゃんと起こしてくれればいいのに、片手はアリスの後頭部を押さえたまま。
ちょ、この体勢しんどい。ついでに呼吸も苦しい。
どう考えても幽香の方がつらい体勢のはずなのに!
「ぶ、はぁっ」
我ながらまったく色気のない声を上げて、ぴったりと合わされていた顔を背けた。
はぁはぁと肩で息をする。幽香だって楽な姿勢だったわけではないくせに、そんな素振りなどまったく見せていない。
むしろきょとんとしてアリスを見た後、ケラケラと笑いだした。
「アリス、顏真っ赤よ」
「どこのどいつのせいよ!」
まだ半分アリスに乗せていた幽香の身体をぐいぐいと押しのける。
人の読書の邪魔をしておいて、しかもそれを中断してアリスとしては「ちゃんと」かまってやったつもりだ。
なのにこの仕打ち。かまってやるんじゃなかった。
いや、当初の予定通りもっといじめてやれば……いやいや、それはよくない。自分にとって。
押しのけたのに、またぴったりアリスに寄り添うみたいに幽香が横になる。
幽香の頭が、アリスの腰のあたりだけくっついている状態だ。
手でも伸ばしてきたら、厳しく払いのけてやるつもりだったが、なにもせず大人しくしている。
きまぐれでわがままな猫が、忠犬に戻ったようだ。
このまましばらくアリスの読書が終わるまで待つ気でいるという態度だろう。
こういう、小さないじらしさを見せられると不機嫌になった気持ちがやわらかくなってしまう。
幽香にはそんな打算とかはなくて、ただ自分がアリスのどこかに触れていたいだけなのだろうけど。
ついつい頭を撫でたくなる。が、今それをすると調子に乗るのは明らかなのでぐっと我慢をする。
おかしい。さっきわがままし放題だったのだから、今度我慢をするのは幽香の方だというのに。
まるでアリスの方が我慢をすることになるとはどういうことだ。
聞こえよがしにため息を一つ吐いて、中断していた読書を再開させることにした。
はたしてどこまで物語の内容が頭に入ってくるかはさだかではないが。
アリスのため息のせいか、幽香が頭をぐり、と一回すりつけた。
たぶん幽香なりの、「ごめんね」の合図。
さっきはケラケラと笑って不敵な態度だったが、ため息を聞いて、思いのほかアリスが怒ってるかもと不安になったのだろう。
まったくいちいちいじらしい。
まったく、まったく、まったくもう。
今さっきは我慢したのに、結局幽香の頭を撫でてしまった。
怒ってないわよ、のサイン。
実際怒ってないのだから始末に負えない。
幽香がもう一度ぐりぐりと頭をすりよせた。
こちらを見ていませんように、と願いながら視線を本から移すと、幽香は目をつぶっていた。
けれど、口元が笑みの形になっていて、酷く嬉しそうだった。
ハッキリ言ってかわいい。どうみてもかわいい。
たぶんそう時を経ずにこの読書は終わりになるだろう。
最後まで読み切るつもりだったのに。幽香にしてみれば気まぐれで仕掛けた戯れに過ぎないというのにまんまとやられてしまった。
悔しいけれど、今日はアリスの完敗だ。
End.
幽香さんはアリスの読書を邪魔する程度の能力をお持ちでしたかw
ああ、実家に帰って撫でくり回したい…
じゃれつく幽香もかまってあげるアリスも素敵で甘々ですね
まさに猫ですね~
たのしかったです