「あら、何か食べてる」
「グミよ」
「んん……聞かない名前ねぇ」
「寒天のお菓子って言えば分かる?」
「カンテン、と言うモノ自体がイメージ出来ないわ」
「じゃあ」
ちょいちょいと、指先が椅子へ。つまり座れ、と。
「物だけ寄越してくれたら良いわ、どうせ休憩も短いんでしょう」
「長ければ相席してくれるのかしら」
「私の暇も長いならね」
と言ってもグミやらカンテンやらの食感は気になるモノで……。
また一つ、咲夜は美味しそうに噛み始める。
何度も噛んでいるようだが、あれは堅いのか、それとも柔らかいのか。想像が中々及ばない。
「まぁ……食を知ると言うのは、人生の楽しみ方に沿っていないこともない」
それっぽい事を適当に述べつつ、にこにこ顔の対面へ。
ええ、その顔がなんて言いたいのかよく分かっているわよ、咲夜。だからそろそろ引っ込めなさい、風が欲しくなるわ。
「どれが好い?」
「む……なにやら色とりどりね。味も違うのかしら」
「貰い物だから、残念な事に。いえ、どんな味かと当てはめるのもなかなか癖になりそうよ」
「ふぅん」
テーブルの上へと広がった、透明な包装紙の数々。
咲夜が言うように、その中身は透き通った姿に涼しげな色合いで個性を出している。
キャンディとそう大して変わらない見た目だが、四角だったり三角だったりと何やら固形物では少々刺激の強そうな外見も混じっていて。
これを音も立てずにかみ締めていると言うのは──
「まるで感触が浮かばない……」
「ふふ、食べても死んだりしないわよ」
「一番安心出来る回答だけど、物騒な菓子ね」
「ごめんなさい、言い方が悪かったと思うわ。だって未知の合金でも見ている顔をしているんだもの」
穏やかに微笑まれたのなら赤面だが、腹を抱えてしゃっくり笑いをされたら余計にヘンな顔になってしまう。
ホント、いつまで笑ってるんだ。
「さぁ、貴女の歯が鋼鉄を食む感触へ備える前に、どうぞ」
そして、いつの間にやら包装紙を剥がされ、指で摘ままれた青い一欠片を口許に。まだどれを食べるとも言っていない。
……いやま、食べる事に変わりはないけど。
仕方ないと観念し、自然と目蓋を落としながら──
「……待った、あなたの手ずから食べる必要はないわよね?」
ぴたり、と疑問に止まり上目遣いで睨む。この位置ならそうなってしまう。
しかしその効果はあったのか。咲夜は口許にカンテンを投げ込む手前で動きを固め、
「ん? ああ、それもそうねぇ」
とか言いながら無遠慮に指を突っ込んできた。
「んもふっ?!」
まるで言動の一致しない行動に第一防壁があえなく突破される。
だが決死を友に第二は死守。そっちは乙女として容易いもンじゃないのよ。
「ダメよもう、はしたないわ」
手際よく顎を固定してやがった指が何かを拭っ、やば涎が垂れ何自然に素手で、とか脳が沸騰してる間に。
ちゅぱ、っと。
平然な様でその指を吸い上げ、流石に噛まないと味は分からないか、なんて事を咲夜は的外れに言い出して。
「────あら、綺麗な舌」
呆けているつもりは無かったのに。はっと気つけが出来た時には、狭い口腔を擦る皮膚の温度を感じていて。
頭が真っ白になっていたのはそうだけど、カンテンを運んできた堅い爪と滑らかな指先は、当分舌から上書きされそうにない。
それは私の意識みたいにふやけて、柔らかかった。
────
「グミよ」
「んん……聞かない名前ねぇ」
「寒天のお菓子って言えば分かる?」
「カンテン、と言うモノ自体がイメージ出来ないわ」
「じゃあ」
ちょいちょいと、指先が椅子へ。つまり座れ、と。
「物だけ寄越してくれたら良いわ、どうせ休憩も短いんでしょう」
「長ければ相席してくれるのかしら」
「私の暇も長いならね」
と言ってもグミやらカンテンやらの食感は気になるモノで……。
また一つ、咲夜は美味しそうに噛み始める。
何度も噛んでいるようだが、あれは堅いのか、それとも柔らかいのか。想像が中々及ばない。
「まぁ……食を知ると言うのは、人生の楽しみ方に沿っていないこともない」
それっぽい事を適当に述べつつ、にこにこ顔の対面へ。
ええ、その顔がなんて言いたいのかよく分かっているわよ、咲夜。だからそろそろ引っ込めなさい、風が欲しくなるわ。
「どれが好い?」
「む……なにやら色とりどりね。味も違うのかしら」
「貰い物だから、残念な事に。いえ、どんな味かと当てはめるのもなかなか癖になりそうよ」
「ふぅん」
テーブルの上へと広がった、透明な包装紙の数々。
咲夜が言うように、その中身は透き通った姿に涼しげな色合いで個性を出している。
キャンディとそう大して変わらない見た目だが、四角だったり三角だったりと何やら固形物では少々刺激の強そうな外見も混じっていて。
これを音も立てずにかみ締めていると言うのは──
「まるで感触が浮かばない……」
「ふふ、食べても死んだりしないわよ」
「一番安心出来る回答だけど、物騒な菓子ね」
「ごめんなさい、言い方が悪かったと思うわ。だって未知の合金でも見ている顔をしているんだもの」
穏やかに微笑まれたのなら赤面だが、腹を抱えてしゃっくり笑いをされたら余計にヘンな顔になってしまう。
ホント、いつまで笑ってるんだ。
「さぁ、貴女の歯が鋼鉄を食む感触へ備える前に、どうぞ」
そして、いつの間にやら包装紙を剥がされ、指で摘ままれた青い一欠片を口許に。まだどれを食べるとも言っていない。
……いやま、食べる事に変わりはないけど。
仕方ないと観念し、自然と目蓋を落としながら──
「……待った、あなたの手ずから食べる必要はないわよね?」
ぴたり、と疑問に止まり上目遣いで睨む。この位置ならそうなってしまう。
しかしその効果はあったのか。咲夜は口許にカンテンを投げ込む手前で動きを固め、
「ん? ああ、それもそうねぇ」
とか言いながら無遠慮に指を突っ込んできた。
「んもふっ?!」
まるで言動の一致しない行動に第一防壁があえなく突破される。
だが決死を友に第二は死守。そっちは乙女として容易いもンじゃないのよ。
「ダメよもう、はしたないわ」
手際よく顎を固定してやがった指が何かを拭っ、やば涎が垂れ何自然に素手で、とか脳が沸騰してる間に。
ちゅぱ、っと。
平然な様でその指を吸い上げ、流石に噛まないと味は分からないか、なんて事を咲夜は的外れに言い出して。
「────あら、綺麗な舌」
呆けているつもりは無かったのに。はっと気つけが出来た時には、狭い口腔を擦る皮膚の温度を感じていて。
頭が真っ白になっていたのはそうだけど、カンテンを運んできた堅い爪と滑らかな指先は、当分舌から上書きされそうにない。
それは私の意識みたいにふやけて、柔らかかった。
────
思うままに行け行けなアリスさん可愛いよw