・・・私にだってできるんだ・・・・。お姉様に完全に見捨てられ、ついに私の従者にまで「働け。」と言われた私にだって・・・牛丼屋で働くくらい出来るんだよ・・・。
「おーいチーズ牛丼まだー?」
「は、はい!すぐお持ちいたします!!!」
私の名前はフランドール・スカーレット。軽く400年以上は引きこもってる悪魔です。最近までお姉様と咲夜以外の人と話したことのなかった生粋のコミュ障です。
そんな私がなんでこんな牛丼屋さんで働いてるのかと言うと・・・。
事は先週、お姉様に部屋に呼ばれました。
「フラン、あなたは働かないの?私はもう企業まで立ち上げてるのよ。それなのにあなたは・・・」
「・・・お姉様は私の気持ちを理解してるんですか?私だって働きたいです・・・。でも怖いんです・・・外に出るのが・・・人に出会うのが・・・パチュリーとすらまともに話せないんです・・・。」
しばらく続く沈黙。私は知らずの内に泣いていました。
「・・・じゃあなんで私と話せるのかしら?」
「・・・。」
お姉様から放たれたきつい言葉。しかしよく考えるとそう、お姉様や咲夜とは普通に話せる。お姉様や咲夜は怖くないからなんでしょうか。でもお姉様はともかく咲夜だって人間、怖いはずです。一体なんで・・・。
「フラン、とりあえずパチュリーや門番の・・・美鈴だっけ、とりあえずあの二人からでいいから他の人とも話せるようになりなさい。ゆっくりでいいわ。話せるようになったら自然に話せる人も増えるから。がんばりなさい。」
「・・・はい。」
この日の夜、私はパチュリーの元へ向かいました。
「あら・・・フランね、久しぶり。」
「あ・・・こんばんは・・・あの・・・その・・・。」
「レミィから話は聞いてるわよ。人と話す練習をしにきたのよね。」
「は・・・はい・・・。」
しばらく沈黙。どうすればいいんだろう・・・。
「フラン、好きな食べ物とかある?」
食べ物・・・そういえば調理された人肉しか食べたことないんだよね・・・。
「人肉・・・です・・・。」
「どんな人肉料理が好きなのかな?」
「えっと・・・。」
言えませんでした、生で味付けなしで食べてるなんて。嫌われるのが嫌だからとにかく誤魔化しました。
「えっと・・・人肉丼です・・・。」
自分で言っておきながらなんですかそれ。
「えっと、どんなものなのかしら、見たことないんだけど。」
わからない、食べたことないですし。とにかく誤魔化すことで精一杯でした。
「牛丼の味付けで人肉を煮るどんぶりです・・・。」
だめだ、完全に嫌われた、そう確信しました。
「へー、なかなか美味しそうじゃない。それだったら牛丼とかも好きなんじゃないかな。」
「牛丼・・・食べたことないんです・・・。」
人肉丼すら食べたことないんですけどね。もうだめだ。
「ちょっと待っててね、牛丼買ってくるから。」
「え、あの、ちょ、まって!!!!」
一人残されました。嫌われたと思い、図書館の中の本を手に取ろうとしました。しかし適当に手に取ったのは。
「タウンワ○ク・・・」
ついてない、とりあえず眠いので図書館のままで寝ることにしました。
「フラン、牛丼買ってきたわよ、起きて。」
この声は・・・パチュリー?
「あ・・・ごめんなさい私・・・こんなところで寝ちゃって・・・。」
ぎゅるる~。
お腹がなった、朝から何も食べてなかったっけ・・・。
「じゃあ牛丼食べようか。プリズム屋の牛丼、なかなか美味しいのよ。」
「いただきます・・・」
人肉以外のものを食べるのは初めてだった。恐る恐る口に牛丼を入れた。
「・・・。」
「あれ、口に合わなかったかな?」
なんなんだこれは、こんなに美味しいもの初めてでした。適度なしょっぱさのあるつゆ、ホカホカのご飯、トロトロの玉ネギ、そしてしつこくないお肉。
「いえ・・・凄く美味しくて感動してます・・・。」
「よかった~口に合って、合わなかったらどうしようかなって。」
とりあえず自室に戻って寝ることにしました。
「あんな美味しいもの毎日食べれたら天国だろうな・・・。」
「えっ?働きたいですって?」
次の日、お姉様にプリズム屋で働きたいということを伝えました。あの牛丼を毎日食べたい。その思いが私の就職を支援してくれました。
「えっと・・・だめですか・・・?」
「いやいいわよ、むしろ大歓迎なんだけど・・・ちょっと心配ね、続ける自信はあるのかしら?」
「・・・牛丼のためなら頑張ります。」
という経緯があって私は牛丼屋で働くことになりました。正直不安で一杯でしたが、店長や先輩方ともすぐに打ち解け、大きなミスもなくて続けていけてます。
「・・・ありがとう・・・パチュリー。」
「おーいお茶まだか~?」
「はい、只今!」
「スカーレットさん、もう上がって結構ですよ~。」
「あ、はい、お先失礼します。」
フランドール・スカーレット、手際は良くないけどお客さんから人気なのよね。妬ましい。
あ、紹介遅れました。最近このプリズム屋で働くことになりました水橋パルスィです。好きな牛丼メニューはメンマ牛丼です。
「ちょっと~水橋さんなにボーっとしてるの~夜ピーク3人なんだから全力でいかないときついよ~。」
「すみません、店長。」
「オーダー入ります」
「「はーい」」
6時から9時まで、夕食の時間のことを夜ピークって言うの。夕食を食べにくる人たちが一杯なのよね。
そんな夜ピークを私、店長、ミスティアさんと回してる訳なんだけど・・・。
「480円になりまーす。」
「店長さん可愛いねえ、こんど一緒に飲まない?」
・・・。
「お待たせいたしました~焼鳥丼です~。」
「いつもありがとねミスティアちゃん。」
・・・。
爆発しろ。なんで私だけチヤホヤされねんだよ。そりゃ店長もミスティアさんも可愛いよ。けどよ?私が一番胸でかいんだよ?もうちょっと私のところにきてもいいじゃない。というかなんで私だけバックなの?カウンター私がいたら迷惑なの?なんで私だけがこんな目n
「水橋さん!オーダー4つたまってますよ!!!」
「はい、すみません。」
また怒られた。泣きたい・・・。
「はあ・・・疲れた・・・。」
店長の仕事とは大変なものだ、クレーム処理に清算、新人の教育と忙しいったらありゃしない・・・。
「こんばんは~。」
「あらメルラン、今日はシフト入ってないわよ。」
「へへへ、ルナ姉最近忙しそうだから差し入れをあげよっかなって。」
ありがたい、こういう時には甘い物を食べるのが一番だ。
「あら、気が利くわね、ありがと・・・あれ?」
メルランは期待をことごとく裏切る。甘いものが欲しい。さらに差し入れと聞いて頭の中が甘くなっている。そんなときに・・・。
「これは・・・いったい?」
「青汁だよ~元気だして~。」
「えっと・・・甘いものを期待してたんだけど?」
「ルナ姉最近虫歯ひどいでしょ~甘いものばっか食べてちゃだめだよ~。」
口の中が苦い。昨日青汁6杯飲んだからかな。もうあんなもの飲みたくない。甘いものがほしい。ギブミースイーツ。
「すみませーん。」
「只今お伺いいたします。」
今日もお店の売り上げは好調です。
続きも楽しみにしています。続いてよかった!
私はこういうノリの文章に惹かれるたちの人間なので、ぜひ今後も続きを書いて欲しいです。
ただテンポが早いため文章量の少なさが気になったかな、と。
次回はさらに読みごたえのある作品を期待しています。
おそらく、性格の問題。だろうなぁ…はははは(流し目