○月×日 金曜日
ついに試作型が完成した。処理速度は遅いが、それなりの出来だ。
いくつか改良を加えていけば処理速度の問題も解決するだろう。
しかし、思っていたよりもスムーズにここまで辿り着くことが出来た。研究を始めたのは何年前だったか………まぁいい。
明日からは動作チェックと非常時の反応を確かめてみようと思う。
後、今日も魔理沙が押しかけてきた。珍しく自分からお茶菓子を持ってきていたので、少し茶葉を奮発してやった。それなのに「変な味だぜ」は無いでしょう馬鹿魔理沙。
○月□日 火曜日
自己成長機能に若干の不備を発見。第三術式の五行目を書き間違えていたらしい。
しかしまぁ、本体に異常は見られなかったため、大した影響は出ていないようだ。
ソフト面の問題は些少だが、ハード面の問題は難航している。ただの人形ならお手の物なのだが……。
少し癪だが、パチュリーに聞きに行く方がいいかも知れない。
○月△○日 土曜日
やってしまった。
負担をかけ過ぎたらしく、術式がクラッシュしてしまった。やはり、本物よりも脆くなってしまう傾向にあるらしい。
とはいえ、術式自体に問題は無く、むしろ私の負担のかけ過ぎが原因のようだ。もう少し慎重にやるべきだったと反省する。
どうにも順調に行きすぎて慢心している。これからは気を引き締めたい。
□月○日 水曜日
魔理沙に宴会に誘われた。随分と久しぶりな気がしたし、研究も行き詰っていたところなので、参加することにした。
それなりに楽しかったのだが、宴会芸で人形劇をやるはめになった。まぁ、そつなくこなせたが。
人形劇が終わった後、霊夢に「少し雰囲気変わった?」と聞かれた。「長年の研究が実りそうでちょっと浮かれてるのかもしれないわね」と答えると「ふーん……ま、頑張んなさい」と興味無さそうに返された。
それより魔理沙、貴女は女の子なのになんで腹踊りなんてしてるのよ、恥ずかしくないの?
□月×△日 日曜日
どうしてもハード面の成長問題が解決出来ないため、パチュリーに相談に向かう。
彼女は当初面倒くさそうだったが、襲撃に来た魔理沙を二人で撃退すると、お礼だと言って解決方法を提示してくれた。
錬金術は専門外だが、頑張ってみようと思う。
そういえば、パチュリーが「前にも教えた記憶があるのだけれど…」と呟いていた。すぐさま使い魔の小悪魔が「最近ぼけてきてますからねぇ、パチュリー様」と突っ込み、アグニシャインで焼かれていた。
追記
お茶をたかりにきた魔理沙が言っていたが、どうやら天気がコロコロ変わるあの異変の時はパチュリーはボケボケだったらしい。…教えてもらった方法が合っているのか、少し不安になってきた。
×月▽日 金曜日
駄目だ。どうしても上手くいかない。
成長途中で不備が起きてクラッシュするのはコレで何度目だろうか。
仕方が無いので少し単純化させることにする。と、言ってもほんの少しだが。
雛形が完成した時に比べ、モチベーションの低下が否めない。明日辺り、気分転換に掃除でもしようか。
×月□日 土曜日
家の掃除をしていると見慣れない本が出てきた。魔理沙が置いていったものだろうか。
厳重にプロテクトが掛かっているため、禁書の類かもしれない。
暇つぶしに解除にいそしんでいたら、掃除の途中で日が暮れてしまった。あぁもう私の馬鹿。
▽月×日 木曜日
久しぶりに人里で人形劇を披露する。子供達が楽しんでくれたようで何よりだ。
慧音さんも来ていたが、忙しいらしくぺこりと会釈をしただけで去っていってしまった。
それにしても、なんであんな変な顔で此方を見ていたのだろう?
例の本だが、魔理沙も見覚えが無いらしい。プロテクトは7割方解除したが、怪しいのでさらに念入りに調べてみることにする。
▽月○□日 火曜日
香霖堂に日記帳を買いに行く。道中で氷の妖精に会ったが、あり合わせの人形を渡すと上機嫌で去っていった。
店主さんに「君は随分と筆が進むみたいだね、ことらとしては非常に助かるよ」と言われた。まぁ、書くことは嫌いじゃないし。
そういえば、日記帳もこれで何冊目だろう。随分長い間書いている気がする。
△月○×日 金曜日
研究は壁にぶち当たったまま進むことが出来ないでいる。
こういう時は焦っても仕方ないので長い目で見ることにした。
術式を自動操縦モードに切り替え、様子を見ることにする。
△月○△日 金曜日
研究が最終段階に入った。
半ば諦め半分で自動モードにしていたのが功を奏したらしい。それにしては早すぎる気もするが。
後はハードだが、都合のいいことに培養は三日後に終わる。錬金術は専門外だったが、一番よく知っている生物…自分を模すことでなんとか形にすることは出来た。
さて、気合を入れていこう。
△月○□日 日曜日
ついに明後日に迫った。今までの研究の集大成が形になると思うと緊張する。
思えば長かった。研究を始めて随分と長いこと経っている。それがついに実を結ぶとなると感慨深い。
自動人形の作成、私の悲願。
楽しみだ。
……そういえば、私はいつから研究をしていたっけ?
追記
明日は調整以外なにもやることは無い。せっかくなので、プロテクトを解除したあの本の解読を試みることにする。
そして人形はページをめくる。
パラリ、パラリ、パラリ。
なんでもない、ただの日記の内容を、読み進めていく。
引っ掛かる、何かが。
見覚えのある内容。見覚えのある文体。見覚えのある、全て。
知ってはいけない。気付いてはいけない。頭が割れるように痛い。
パラリ、パラリ、パラリ。
書いてある。自動人形の作成についてが。
違う、同じ、違う。これは、自分が書いたものではない。
それなのに、どうして。
最後のページには、こう、書かれてあった。
×月○▽日 火曜日
ついに明後日に迫った。今までの研究の集大成が形になると思うと緊張する。
思えば長かった。研究を始めて随分と長いこと経っている。それがついに実を結ぶとなると感慨深い。
自動人形の作成、私の悲願。
楽しみだ。
追記
明日は調整以外なにもやることは無い。せっかくなので、プロテクトを解除したあの本の解読を試みることにする。
気付く。気付いてしまう。
全てを理解する。なにも理解出来ない。
あぁ、あぁ、あぁ。書かれている、何もかも。
今までの、全て。
同じ、違う、同じ。知ってしまっては、もう帰れない。還れない。孵れない。
糸の切れた操り人形は、壊れた。
△月○▽日 月曜日
今回は中々の出来だったと思う。
うん、流石に16体目ともなると途中で不審に思えるみたい。クラッシュしたデータを元に再構築してるんだから当然と言えば当然だけど。
でも、まだまだ完璧には程遠いなぁ。高性能のAIを導入しないと。生まれてから、すぐにでも自分が人形だと理解出来るようなのを。
しっかし、霊夢には毎回肝を冷やされるわ。人里の半人半獣みたいに能力で怪しむようになるならまだしも、勘だけで気付きそうになるんだもの。いやぁ、怖い怖い。
さてさて、早速次のAIの実験に移りますか。
インストールして、齟齬が出ないようにいじくって。完成っと。
起動して、っと。
お、早速日記を書き始めた。生まれたばっかりなのに、なんかちょっと笑えるわね。
貴女の前任者は駄目でしたが、次の「アリス・マーガトロイド」は上手くやってくれるでしょう、なんちゃってね。
△月○▽日
ついに試作型が完成した。処理速度は遅いが、それなりの出来だ。
いくつか改良を加えていけば処理速度の問題も解決するだろう。
しかし、思っていたよりもスムーズにここまで辿り着くことが出来た。研究を始めたのは何年前だったか………まぁいい。
明日からは動作チェックと非常時の反応を確かめてみようと思う。
しかし、最近寝てないせいか記憶があやふやで困る。研究が一段落したら、ゆっくり休むことにしよう。
かくして人形は踊り続ける。
糸に操られていることすら、気付けぬままに。
ついに試作型が完成した。処理速度は遅いが、それなりの出来だ。
いくつか改良を加えていけば処理速度の問題も解決するだろう。
しかし、思っていたよりもスムーズにここまで辿り着くことが出来た。研究を始めたのは何年前だったか………まぁいい。
明日からは動作チェックと非常時の反応を確かめてみようと思う。
後、今日も魔理沙が押しかけてきた。珍しく自分からお茶菓子を持ってきていたので、少し茶葉を奮発してやった。それなのに「変な味だぜ」は無いでしょう馬鹿魔理沙。
○月□日 火曜日
自己成長機能に若干の不備を発見。第三術式の五行目を書き間違えていたらしい。
しかしまぁ、本体に異常は見られなかったため、大した影響は出ていないようだ。
ソフト面の問題は些少だが、ハード面の問題は難航している。ただの人形ならお手の物なのだが……。
少し癪だが、パチュリーに聞きに行く方がいいかも知れない。
○月△○日 土曜日
やってしまった。
負担をかけ過ぎたらしく、術式がクラッシュしてしまった。やはり、本物よりも脆くなってしまう傾向にあるらしい。
とはいえ、術式自体に問題は無く、むしろ私の負担のかけ過ぎが原因のようだ。もう少し慎重にやるべきだったと反省する。
どうにも順調に行きすぎて慢心している。これからは気を引き締めたい。
□月○日 水曜日
魔理沙に宴会に誘われた。随分と久しぶりな気がしたし、研究も行き詰っていたところなので、参加することにした。
それなりに楽しかったのだが、宴会芸で人形劇をやるはめになった。まぁ、そつなくこなせたが。
人形劇が終わった後、霊夢に「少し雰囲気変わった?」と聞かれた。「長年の研究が実りそうでちょっと浮かれてるのかもしれないわね」と答えると「ふーん……ま、頑張んなさい」と興味無さそうに返された。
それより魔理沙、貴女は女の子なのになんで腹踊りなんてしてるのよ、恥ずかしくないの?
□月×△日 日曜日
どうしてもハード面の成長問題が解決出来ないため、パチュリーに相談に向かう。
彼女は当初面倒くさそうだったが、襲撃に来た魔理沙を二人で撃退すると、お礼だと言って解決方法を提示してくれた。
錬金術は専門外だが、頑張ってみようと思う。
そういえば、パチュリーが「前にも教えた記憶があるのだけれど…」と呟いていた。すぐさま使い魔の小悪魔が「最近ぼけてきてますからねぇ、パチュリー様」と突っ込み、アグニシャインで焼かれていた。
追記
お茶をたかりにきた魔理沙が言っていたが、どうやら天気がコロコロ変わるあの異変の時はパチュリーはボケボケだったらしい。…教えてもらった方法が合っているのか、少し不安になってきた。
×月▽日 金曜日
駄目だ。どうしても上手くいかない。
成長途中で不備が起きてクラッシュするのはコレで何度目だろうか。
仕方が無いので少し単純化させることにする。と、言ってもほんの少しだが。
雛形が完成した時に比べ、モチベーションの低下が否めない。明日辺り、気分転換に掃除でもしようか。
×月□日 土曜日
家の掃除をしていると見慣れない本が出てきた。魔理沙が置いていったものだろうか。
厳重にプロテクトが掛かっているため、禁書の類かもしれない。
暇つぶしに解除にいそしんでいたら、掃除の途中で日が暮れてしまった。あぁもう私の馬鹿。
▽月×日 木曜日
久しぶりに人里で人形劇を披露する。子供達が楽しんでくれたようで何よりだ。
慧音さんも来ていたが、忙しいらしくぺこりと会釈をしただけで去っていってしまった。
それにしても、なんであんな変な顔で此方を見ていたのだろう?
例の本だが、魔理沙も見覚えが無いらしい。プロテクトは7割方解除したが、怪しいのでさらに念入りに調べてみることにする。
▽月○□日 火曜日
香霖堂に日記帳を買いに行く。道中で氷の妖精に会ったが、あり合わせの人形を渡すと上機嫌で去っていった。
店主さんに「君は随分と筆が進むみたいだね、ことらとしては非常に助かるよ」と言われた。まぁ、書くことは嫌いじゃないし。
そういえば、日記帳もこれで何冊目だろう。随分長い間書いている気がする。
△月○×日 金曜日
研究は壁にぶち当たったまま進むことが出来ないでいる。
こういう時は焦っても仕方ないので長い目で見ることにした。
術式を自動操縦モードに切り替え、様子を見ることにする。
△月○△日 金曜日
研究が最終段階に入った。
半ば諦め半分で自動モードにしていたのが功を奏したらしい。それにしては早すぎる気もするが。
後はハードだが、都合のいいことに培養は三日後に終わる。錬金術は専門外だったが、一番よく知っている生物…自分を模すことでなんとか形にすることは出来た。
さて、気合を入れていこう。
△月○□日 日曜日
ついに明後日に迫った。今までの研究の集大成が形になると思うと緊張する。
思えば長かった。研究を始めて随分と長いこと経っている。それがついに実を結ぶとなると感慨深い。
自動人形の作成、私の悲願。
楽しみだ。
……そういえば、私はいつから研究をしていたっけ?
追記
明日は調整以外なにもやることは無い。せっかくなので、プロテクトを解除したあの本の解読を試みることにする。
そして人形はページをめくる。
パラリ、パラリ、パラリ。
なんでもない、ただの日記の内容を、読み進めていく。
引っ掛かる、何かが。
見覚えのある内容。見覚えのある文体。見覚えのある、全て。
知ってはいけない。気付いてはいけない。頭が割れるように痛い。
パラリ、パラリ、パラリ。
書いてある。自動人形の作成についてが。
違う、同じ、違う。これは、自分が書いたものではない。
それなのに、どうして。
最後のページには、こう、書かれてあった。
×月○▽日 火曜日
ついに明後日に迫った。今までの研究の集大成が形になると思うと緊張する。
思えば長かった。研究を始めて随分と長いこと経っている。それがついに実を結ぶとなると感慨深い。
自動人形の作成、私の悲願。
楽しみだ。
追記
明日は調整以外なにもやることは無い。せっかくなので、プロテクトを解除したあの本の解読を試みることにする。
気付く。気付いてしまう。
全てを理解する。なにも理解出来ない。
あぁ、あぁ、あぁ。書かれている、何もかも。
今までの、全て。
同じ、違う、同じ。知ってしまっては、もう帰れない。還れない。孵れない。
糸の切れた操り人形は、壊れた。
△月○▽日 月曜日
今回は中々の出来だったと思う。
うん、流石に16体目ともなると途中で不審に思えるみたい。クラッシュしたデータを元に再構築してるんだから当然と言えば当然だけど。
でも、まだまだ完璧には程遠いなぁ。高性能のAIを導入しないと。生まれてから、すぐにでも自分が人形だと理解出来るようなのを。
しっかし、霊夢には毎回肝を冷やされるわ。人里の半人半獣みたいに能力で怪しむようになるならまだしも、勘だけで気付きそうになるんだもの。いやぁ、怖い怖い。
さてさて、早速次のAIの実験に移りますか。
インストールして、齟齬が出ないようにいじくって。完成っと。
起動して、っと。
お、早速日記を書き始めた。生まれたばっかりなのに、なんかちょっと笑えるわね。
貴女の前任者は駄目でしたが、次の「アリス・マーガトロイド」は上手くやってくれるでしょう、なんちゃってね。
△月○▽日
ついに試作型が完成した。処理速度は遅いが、それなりの出来だ。
いくつか改良を加えていけば処理速度の問題も解決するだろう。
しかし、思っていたよりもスムーズにここまで辿り着くことが出来た。研究を始めたのは何年前だったか………まぁいい。
明日からは動作チェックと非常時の反応を確かめてみようと思う。
しかし、最近寝てないせいか記憶があやふやで困る。研究が一段落したら、ゆっくり休むことにしよう。
かくして人形は踊り続ける。
糸に操られていることすら、気付けぬままに。
さすがに手垢のついた題材なんで、オチがわかっててなお楽しめるようにキャラを面白おかしくするみたいな工夫があったら満点入れてた。パチュリーがいい感じ。
パチュリーの「前にも教えた記憶があるけど…」の発言と、今回のは16体目というのがちょっと気になりました
パチュリーのアドバイスにたどり着いたのが2回程度というのも、パチュリーがあまりにガチでボケボケなのもちょっと考えづらかったので…
あと魔理沙はかわいい