Coolier - 新生・東方創想話

狐独のグルメ 「人間の里のきつねうどんといなり寿司」

2012/04/12 06:30:37
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 「人間の里の豚カルビ丼と豚汁」(作品集162)
 「命蓮寺のスープカレー」(作品集162)
 「妖怪の山ふもとの焼き芋とスイートポテト」(作品集163)
 「中有の道出店のモダン焼き」(作品集164)
 「博麗神社の温泉卵かけご飯」(作品集164)
 「魔法の森のキノコスパゲッティ弁当」(作品集164)
 「旧地獄街道の一人焼肉」(作品集165)
 「夜雀の屋台の串焼きとおでん」(作品集165)
 「人間の里のきつねうどんといなり寿司」(ここ)
 「八雲紫の牛丼と焼き餃子」(作品集166)











 紫様は、今日もお目覚めにならなかった。
 冬眠中の主の床の間には、何人たりとも足を踏み入れることは許されない。だから私にできることといえば、その襖を前に立ち尽くすことだけだ。
 弥生も終わり、暦は卯月。あれだけ幻想郷を白く覆い尽くしていた雪もとっくに消え去り、季節はもう春そのものだ。それなのに、この八雲の家だけが、まだ冬が続いているかのように、しんと静まりかえっている。

「……紫様」

 襖の向こうに、小声でそう呼びかけてみるが、もちろん返事のあろうはずもない。
 例年に比べて、あまりにもお目覚めが遅すぎる。確かに今年は寒が長引いたが、それにしたところで、卯月までお目覚めにならなかったことは、記憶の限り、無い。
 もちろん、いつお目覚めになるかは紫様の決めることであって、私の干渉していいことではない。それは解っている。解っているのだが――知らず、襖に手を掛けようとしていた自分に気付いて、私は小さく首を横に振った。
 踵を返し、居間に戻る。紫様の冬眠中は、私以外の紫様の式たちも半ば眠っているように大人しい。その静けさはとっくに慣れきったつもりでいたが――不意に、がらんとした家に取り残されたような気分になって、私は落ち着かずに居間をうろうろと歩き回った。
 私は何に狼狽しているのだ? 紫様が寝坊しているというだけのことだろう。私はただ、紫様に命じられた役割をこなしていればいいだけのことなのだ。
 そう、頭では理解していても、ぐるぐると得体の知れない靄が、私の頭の中に渦巻く。
 その靄の正体がどうしても解析できずに、私はその場に座り込んで溜息をついた。
 座卓の上に、紫様の帽子が置かれている。紫様がお目覚めになったときのために、繕っていたものだ。私はそれを手にとって、知らず胸元に抱き寄せていた。
 力なくたわむ帽子は、被るべき主の不在を、私の手の中に否応なく伝えてくる。
 ――いや、眠っているだけで、襖の向こうに紫様はいる。いる、はずだ。

「紫様――」

 応える声の無い呼びかけは、淀んだ空気の中に溶けて消えていく。











時間や社会に囚われず、幸福に空腹を満たすとき、つかの間、彼女は自分勝手になり、自由になる。
誰にも邪魔されず、気を遣わずにものを食べるという、孤高の行為。
この行為こそが、人と妖に平等に与えられた、最高の“癒し”と言えるのである。





狐独のグルメ

「人間の里のきつねうどんといなり寿司」













 外はあいにくの雨だったが、寺子屋は天気にかかわらず開かれている。

「はい、今日の授業はここまで。みんな、次の授業までに、今配った宿題をしっかりやってくること。いいね?」

 はーい、と教室に子供たちの声が唱和し、授業時間の終わりを告げる鐘が鳴る。私は資料をまとめて立ち上がった。子供たちは思い思いに帰り支度を始めたり、談笑したりしている。どうやら、今日は質問をしてくる子は無さそうだ。尻尾にじゃれついてくる子供たちをいなして、私は教室を出る。
 寺子屋での算術の授業も、今ではすっかり生活の一部と化していた。子供たちが果てしない数字の世界に触れ、その一端を少しずつ理解し、真理の尻尾を掴もうとする過程を見守るのは、やりがいのある仕事だ。

「お疲れ様です」

 寺子屋の職員室に用意された自分の机で帰り支度をしていると、上白沢慧音女史が顔を見せた。会釈した私の顔を見留めて、慧音女史は小さく眉を寄せる。

「何かありましたか?」
「え?」

 私は目をしばたたかせた。慧音女史はひとつ首を傾げる。

「いえ、何か難しい顔をしていたので。生徒たちに何か問題でもあったのかと」
「ああ、いや――」

 私は小さく首を振り、それから軽くお腹を押さえた。時計を見れば、正午過ぎ。昼食時だ。

「少し、お腹が空いて」

 苦笑して答えた私に、慧音女史は小さく噴き出すように笑った。
 ――まあ、それもまた真実の一面ではある。口に出すと、空腹感はますますはっきりと実感をもって迫ってきた。参ったな、本当にお腹が空いてきたぞ。
 ここはやっぱり、あの店できつねうどんにしよう。もちろん大盛りで。うん、そうしよう。

「たまにはうどんでも、ご一緒にいかがです?」

 ふと、私は慧音女史にそう声を掛けていた。しかし、彼女は首を横に振る。

「すみません、私はこれがあるので」

 風呂敷に包まれた弁当箱を取り上げて、慧音女史はひとつ頭を下げた。「そうですか」と私は頷き、立ち上がる。「ではまた」と会釈して職員室を出、ふと振り返ると慧音女史が笑って手を振っていた。私は軽く笑い返す。
 外は相変わらずの本降りだった。間断なく雫が地面を打ち据え、土の上にいくつもの水たまりと小さな川を形作っている。玄関で、私は番傘を手に、軒先からどんより灰色に沈んだ空を見上げ、知らず小さく息を吐いていた。

「藍せんせー、さよーならー」
「ああ、さようなら。気をつけて帰るんだぞ」

 長靴を履き、合羽を着た子供たちが、私の横を駆け抜けていく。雨の中、構わずに泥を跳ね散らかして駆けていく子供たちに手を振り、私も番傘を広げた。
 雨は、あまり好きではない。橙のようにそれで式が剥がれるようなことは無いが、尻尾は濡れるし泥は跳ねるし、洗濯物は乾かないし、湿気が籠もれば家の掃除も手間が増える。春雨の情緒よりも、そういう即物的な事象に先に思考がいってしまうあたり、自分でも所帯じみているとは思うが、それも式の仕事だから仕方が無い。
 ただ――今の、少々気詰まりな気分は、雨のせいというだけでもなかったが。

「きつねうどんだ、きつねうどん」

 私は自分を奮い立たせるように、そう口に出す。頭の中に、大きな油揚げが載ったきつねうどんの姿を思い浮かべた。口の中によだれが満ちる。うん、今は昼飯だ、きつねうどんだ。
 行きつけの蕎麦屋は、しっかり暖簾が下がっていた。からからと引き戸を開け、店内を見回し――私は小さく眉を寄せた。席が埋まっている。
 どうも最近、この店は混雑していることが多い。別に味が大きく変わったということもないのに、このところ随分と商売繁盛のようだ。なにやら福の神が訪れたなんていう噂もある。もちろん、行きつけとしては潰れられては困るので、繁盛するのは大いに結構なのだが――これはちょっと、座れないかもしれないな。私は傘を畳んで、小さく肩を竦めた。

「いらっしゃいませー。あ、どうも」

 店員がやってきて、そう言って笑った。すっかり常連扱いである。

「相席ならすぐご用意できますが、どうなさいますか?」
「いや――」

 カウンターが空くまで待とう、と思ったが、立ちこめてくる匂いに胃が情けなく空腹を訴えてきた。いかん、外は雨だし、ここで他の客が食べているのを見ながら待つのは拷問だ。

「……相席でいいです」
「はい、ではこちらへどうぞー」

 店員に案内された先は、四人掛けのテーブル席だった。ふたりの少女が腰を下ろしている。店員が「申し訳ありません、混雑しておりますので相席をお願いできますでしょうか」と尋ねると、「ああ、はい」と片方の少女が顔を上げ――私と目が合った。

「あら、藍さんじゃないですか。こんにちは」
「――阿求殿?」

 思いがけない顔に、私は思わず目をしばたたかせた。紫様のご友人でもある阿礼乙女、稗田阿求だ。ということは、もうひとりは。

「どうぞ、空いてるわよ」

 隣の席を示して、その人物は優雅に微笑む。獰猛さを感じさせない、花のような笑み。
 ――どういう経緯でか、今は阿求の伴侶として稗田邸に暮らす妖怪、風見幽香であった。




「最近、この店が評判というのを聞きまして」

 どうしてここに、という私の問いに、阿求はそう答えた。阿礼乙女も、たまには里の店で食事をしたりもするのだろう。幽香を見やれば、ただ静かにお茶を啜っている。
 一昔前は血気盛んで知られた風見幽香も、随分と丸くなったものである。そんなことを思いながら、私もお茶を啜った。すっかり春模様とはいえ、まだ雨は冷たい。お茶の熱はほっと身体に心地よかった。

「本当に繁盛していますね」

 店の中をきょろきょろと見回して、阿求はどこか楽しそうに言う。誰かが立ち上がったと思えば、すぐに新しい客がその席に着く。なんだかその様子は流れ作業のようだった。

「ご注文は? いつもので?」

 店員が私の元に現れ、そう尋ねる。いつものとは、きつねうどん大盛りのことだ。もうすっかりこれで通じてしまう。今日ももちろん、それ以外の選択肢などあろうはずもない。私は頷こうとして――ふと、壁に貼られた張り紙に気付いた。
 ――いなり寿司はじめました。胸躍る言葉が、そこに記されている。
 いなり寿司! おお、とうとういなり寿司がこの店に! これほど嬉しいことはない。きつねうどんにいなり寿司、最強の組み合わせがついに実現してしまう。この日をどれほど待ちわびたことか。よくぞやってくれた店主。

「いつものと、いなり寿司で」
「はーい、かしこまりましたー」

 勇んで注文した私に、店員は笑って下がっていく。それを見送っていると、ふと阿求がどこか興味深そうに私を見つめているのに気付いた。

「……何か?」
「いえ、常連なんですね。いつもの、とは?」
「ああ、いや――」
「きつねうどんでしょう」

 横から幽香が口を挟んで、「なるほど」と阿求がしきりに頷く。私は肩を竦めた。
 ああ、しかしきつねうどんといなり寿司。これほど待ち遠しいものはない。雨で気詰まりな気分も、春一番で吹き飛ぼうかというものだ。
 ――いや、少々気詰まりな理由は、雨だけでもないのだが。
 私はお茶を啜る。いなり寿司で吹き飛んだはずの靄が、思い出せばまた思考に這い寄ってきた。正体不明のそれは、頭の後ろの方にどんよりとのししかって、妙に重たい。
 何がこの靄の原因なのかも解らないから、別のことで気を紛らわすしかないのだ。

「藍さん?」

 阿求が不思議そうに声をあげて、私は顔を上げた。阿求はどこか心配そうに目を細めた。

「どうかしたんですか? 難しい顔をしてましたが」
「――――」

 またか。慧音女史にも言われたし、今日の自分はどうもおかしいようだ。
 私は誤魔化すように小さく口の端を歪めた。もっとも、それで何が誤魔化せるわけでもない。

「そんなに解りやすかったですか」
「まあ、貴方の主よりは」

 阿求はそんなことを言う。それはそうだろう。紫様の真意など、常に紫様以外には知り得ない。たとえ式の私といえども――。

「いえ、ただ、紫様がいつまでたってもお目覚めにならないので、少し疲れているだけです」
「それはそれは、ご苦労様です。まだ寝ているんですか、彼女は」

 私の答えに、阿求は愉快そうに笑った。――そう、紫様はまだ眠られている。もう、卯月になって数日が経とうというのに、未だにお目覚めになる気配が無い。
 ひょっとして、と、縁起でもない想像さえ、頭をよぎる。――このまま、もしも、紫様がいつまでもお目覚めにならなかったら、私はどうすればいいのだろうか、と。
 私、八雲藍という存在は、紫様の式であり、それ以上でも、それ以下でもない。
 紫様の式となる前のことなど、遠い昔のことで、もうほとんど思い出せない。紫様の配下となって以来、私は常に八雲藍であり、紫様の式であった。その定義は不変のものだった。
 だとしたら――紫様の式という存在の定義をはぎ取ったとき、私には、何が残るのか。

「お待たせしました、こちら、月見そばの小盛りです」
「あ、はい、私です」

 店員がそばの器をふたつ抱えてやってきた。阿求と幽香の頼んでいた分らしい。小盛りの月見そばが阿求へ、普通盛りの天ぷらそばが幽香へ差し出される。横目に見ていると、また胃が現実に立ち返り、私は視線を逸らした。

「では、お先にいただきます」

 私に一礼して、阿求と幽香は箸を手に取る。ずずず、と蕎麦を啜る音。「……意外と普通ですね」「そうね」「でも、美味しいです」「ええ」そんなふたりの会話を聞き流しつつ、私は小さく息をついた。詮無い思考に囚われていたって仕方ないことぐらいは解っているのだ。しかし、解っていても簡単に振り払えれば苦労はしないわけで――。

「お待たせしました、きつねうどん大盛りといなり寿司です」

 おっと、来た来た来た。黄金タッグがついに私の目の前に姿を現した。
 色の薄いつゆの中、うどんが見えないほどに器を埋める大きな油揚げ。その下で、白く太いうどんが悠然とたゆたっている。油揚げの上にちょこんと置かれたなるとが、どこか可愛らしいアクセントだ。いなり寿司はやや小ぶりのものが三つ。油揚げ、油揚げ、油揚げ。これは茶色い三連星だ。いなりのジェットストリームアタックだ。

「いただきます」

 箸を手に取り、手を合わせる。七味唐辛子をぱらりと散らして、まずは油揚げにかぶりついた。ふわっとした食感のあとに、じゅっとしみ出る甘辛さと、しみこんだうどんのつゆの味。ああ、これだよ、これこれ。このいかにもって味付けがたまらない。
 油揚げの下に身を潜めたうどんをすすれば、歯ごたえのある食感と、その中の柔らかさが口の中でハーモニーを奏でる。つるつる、シコシコ、こしのあるうどんというのはこういうことを言うのだろう。うん、今日もいいうどんだ。
 昔も、繁盛している今も、特別、味が変わることはない。いつ来ても、いつも通りの味が出てくる。それがこの店のいいところだと私は思う。確かに驚くほど美味いわけではないかもしれないが、繁盛しても慢心したり、雑になったりして味が落ちるということがない。その安定感にこそ、この店の誠実さを感じるところだ。

「ほふ、はふ」

 さて、いなり寿司はどうだ。俵状の油揚げの包みを箸でつまんで、口に運ぶ。中身は……ゴマを散らしたシャリか。うん、甘い。油揚げじたいはかなり甘いが、シャリの酸っぱさとしょっぱさがうまく中和して、いい味わいになっている。いかにも、いなり寿司って感じのいなり寿司だ。こういうのでいいんだよ、こういうので。

「あむ、むぐ……ずずぅ」

 一気に食べきれないほどの大きな油揚げって、やっぱりロマンの塊だな。食べても食べても油揚げだ。うどんのボリューム感と、油揚げのボリューム感。七味唐辛子の風味が、ぴりりとそれを引き締めて、さらに食欲をそそる。傍らからはいなり寿司の援軍。濃いめのいなり寿司の味は、薄口のつゆともよく合うな。これもまた食欲増進だ。おお、美味い、美味い。箸が止まらない。きつねうどんといなり寿司、私の命の源だ。
 気付けば油揚げの一枚天井を攻略し、残った僅かのうどんをすする。最後のいなり寿司を口に放り込み、器に残ったつゆを、そのまま傾けて飲み干した。――はぁ、満足。

「ごちそうさまでした」

 綺麗に空になった器の前、私は手を合わせる。――と、隣で阿求と幽香がこちらを見つめていることに気付き、私は眉を寄せた。

「……何か?」
「いいえ、随分といい食べっぷりだと思って」

 幽香が笑って言い、阿求も頷く。私はなんと答えたものか、小さく首をすくめた。

「本当に好きなんですね、この店のうどんが。他の何も目に入っていませんでしたよ」

 箸を置いて、阿求はそんなことを言う。――ああ、言われてみればその通りだ。食べている間は、きつねうどんといなり寿司の美味しさに頭がいっぱいで、もやもやとした何かのことも全てどこかにいってしまっていた。
 簡単に振り払えたら、なんて言っておいて、全く単純なことだと、私は自嘲する。
 そうして、空になった器を見下ろして思う。――やっぱり、この食事のひとときは、私にとって何にもかえがたい救いの瞬間なのかもしれない、と。






 蕎麦屋を出る頃には、雨は小降りになっていた。
 歩く方角が同じだったため、阿求と幽香と、三人傘を並べて歩く格好になる。

「では、私は先に」

 稗田の家の前で、阿求が立ち止まり、ひとつ頭を下げた。「ええ」と幽香は頷く。

「夕方までには戻るわ」
「はい、では、藍さんもまた」
「あ、ああ」

 ぺこりともう一度礼をして、阿求は門の中に消えていく。私は幽香の横顔を見やった。

「太陽の畑の様子を、見に行こうと思ってね」

 私の視線に答えるように、幽香がそう呟き、また歩き出した。次の十字路までは私も方角が一緒なので、私はなんとなく小走りにそれを追いかける。
 いつもの日傘ではなく、今は雨傘を揺らして歩く、風見幽香の姿。彼女の昔をよく知っているわけでもないが、花畑の方の血気盛んな妖怪としては記憶している。かつては己の強さを誇示し、強大な妖怪であることに己の存在意義を見いだしていた彼女が、今は人間の――生まれ変わる阿礼乙女とはいえ、数十年の時間しかない小さな命とともに寄り添い、穏やかに笑い合っている。それはいったい、どれほどの変化だろう。

「……貴方はどうして、彼女のそばにいる?」

 ふと、私は幽香にそう尋ねていた。幽香がゆっくりと振り向き、雨傘にその顔を隠した。

「さあ、どうしてかしら。――その花を愛してしまったから、と言うのは簡単だけれど、そう一口で説明できることでもないわ」

 雨に手をかざし、幽香は静かにそう答える。雨音にかき消されそうなほどに儚く。

「ただ、私は自らそれを選んだし、阿求も自らそれを選んだの。たとえ、永遠に似た刹那でしかないのだとしてもね。だからそれは、どこまでも私と阿求だけの問題だわ」

 やがて、十字路に辿り着く。太陽の畑と、私の帰り道は全くの逆方向。幽香は十字路で足を止め、傘を翻して、私を見つめた。

「貴方たちの問題は、貴方たちのものでしかない。そうじゃないかしら?」
「――――――」
「同じ油揚げだからって、きつねうどんといなり寿司は、全く別の食べ物でしょう?」

 それだけを言い残し、幽香は私に背を向けた。ゆっくりと遠ざかっていくその背中をぼんやりと見つめながら、私は傘を叩く雨粒のリズムをただ聞いていた。
 ――私の問題は、私のものでしかない。確かに、その通りだ。
 私は空を見上げる。曇り空の隙間から、微かに昼の陽光が差し込んでいた。
 その光に目を細めて、私はたったひとつの根源的な問いを、己に投げかける。
 答えは、水たまりに広がる波紋のように、拡散して消えるだけで、明確な形を為さなかった。

 ――私は、どうして、八雲藍という存在なのだろうか?
次回、狐独のグルメ(終) 「八雲紫の牛丼と焼き餃子」


というわけで、次回で終わります。
浅木原忍
[email protected]
http://r-f21.jugem.jp/
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コメント



0.3610点簡易評価
1.100点名前が無い程度の能力 削除
いなりのジェットストリームアタックww

安心と信頼のメシテロごちでしたー
あぁ、きつねうどんが食べたい…
4.90点名前が無い程度の能力 削除
ゆかりんごはん来るよ!これで勝つる!
結構重い憂いより遥かに比重の高い油揚げに脱帽しました。それでは最終回楽しみにさせていただきます。
7.80点奇声を発する程度の能力 削除
面白かったです
11.80点名前が無い程度の能力 削除
次回にも期待
13.100点名前が無い程度の能力 削除
毎度、安心と信頼のメシテロw
最終回楽しみにしてます~
14.100点名前が無い程度の能力 削除
次回最終回かー…。
作者さまの判断だし、長々と続けりゃいいもんでもないからしょうがないけど、永遠亭の和定食とか紅魔館のスイーツとかの話も読んでみたかった…。
しかし、そんなことよりおうどんたべたい
15.100点名前が無い程度の能力 削除
そんなことよりおうどんたべたい
こんなコメントがぴったりはまる作品も珍しい。
しかも藍様の味の好みがよく合うから困らない。
グダグダ書いちゃったけど、おうどんたべたい。
16.90点名前が無い程度の能力 削除
狐うどんは大好物です。むぁ~、食いたくなってきたじゃないか!
藍様と相席で狐うどん食いたいでござる!
18.100点白銀狼 削除
よっしゃ今日の夜ご飯はうどんに決定!!!
いなり寿司も食べたいけど我慢我慢…!
次回作も楽しみに待ってます。
19.100点名前が無い程度の能力 削除
次回のゆからん、いやらんゆかに期待大です。
24.100点名前が無い程度の能力 削除
次回の紫飯に期待
25.100点名前が無い程度の能力 削除
ジェットストリームアタックワロタwww
よし、明日は学食のきつねうどん食べよう
26.100点名前が無い程度の能力 削除
いつも楽しみにしてます。
今回はいつもと物語の雰囲気が違って読んでてちょっと不安な気持ちになりましたが、いつもの藍さんが見えて安心しました。
次回ついに最終回と言う事でドキドキしながら待とうと思います。
32.100点終焉刹那 削除
皆の者、飯テロでござるっ!出前っ出前―!!
38.100点名前が無い程度の能力 削除
ジェットストリームアタックにワロタと思ったら、米欄の出前出前ーっ に腹筋持ってかれたwwww
次回最終回かぁ、楽しみにしています!!
……少し寂しいのは内緒。
39.100点名前が無い程度の能力 削除
前もってきつねうどんを食べた後で読んでみた。
結果は逆効果だった。
食べたばかりのきつねうどんの味が思い出されて、それが何重にも美化されて、またお腹が鳴った。
飯テロおそるべし……。
40.100点名前を忘れた程度の能力 削除
本当に、安心と信頼のメシテロだわw
とりあえず、コンビニにどん兵衛大盛りきつねを仕入れに行くか・・・
43.100点名前が無い程度の能力 削除
いつも通りの安定感。
おうどん食べたくなってきた…。

食後に読んだから何とかセーフ。
45.90点名前が無い程度の能力 削除
家路に腹が減って立ち食いうどん屋に入り、家に帰ったら晩飯がうどんだったこの俺が通りますよっと。
藍さまが狂喜乱舞するかと思いきや、ゆかりん寝坊で初っぱなからダウナーとは…。

一時とはいえ、救いを得られたのだから、食事とは素晴らしい。
次回には、ひとりの「藍」としての自分を見つけられるのかな。
51.100点名前が無い程度の能力 削除
飯テロ理解w
昼飯食った後とはいえこれはなかなか垂涎物ww
52.80点藍田 削除
けつねうどんおいしそうですね。ちょうど風邪気味の体にはとくにアツアツのうどんに惹かれます。とてもおいしそうで、ご馳走様でした。
あと、これはあくまで個人的な考えなんですが、ここまで描けるのであれば原典からもっと離れてもいいんじゃないかな、と思いました。なんとなくパロディ具合が中途半端で、ちょっと安っぽくなっちゃっててもったいないなあ、とおもったのです。でも離れすぎるとこの作品の存在意義がなくなりそうで、難しいところですね。
54.100点名前が無い程度の能力 削除
こんな時間に読むんじゃなかったよチキショウww
狐うどん食いてぇ・・・
57.100点名前が無い程度の能力 削除
毎度ごちそうさまでした。そしておうどんたべたい。
今回はいつもに比べて重い感じでしたね。まあ浅木原さんの作品らしいと言えばそれまでですがw
次回で一旦終了というのは寂しいですが、気が向いたら単発でも是非新作を書いて欲しい作品ですね。最終回も楽しみにしています。
62.100点名前が無い程度の能力 削除
何が嬉しかったってゆうかりんとあっきゅんの夫婦っぷりが、もうねたまらんね
63.100点名前が無い程度の能力 削除
夕飯食った後じゃないとこのSS読むのは拷問でしかないな……
64.100点名前が無い程度の能力 削除
ゴローモードになったときの雰囲気の違いにちょっとウケた。
しかし相変わらずおもしろいですな。
70.100点名前が無い程度の能力 削除
相変わらず藍は美味しそうに食べるなぁ…
76.100点名前が無い程度の能力 削除
男は黙って油揚げ。
ああ、お腹減ったよう…
99.100点名前が無い程度の能力 削除
もはや只単に好物と言うのではなくて哲学の世界