ぼんやりと、青い空を見上げていた。
目が覚めた後にも引く気だるさは、先ほど視ていた夢の残滓だろうが、私にはその内容が思い出せない。ただ、嫌な夢を視た、という感想だけが心の中で反響する。
「…………夢の内容なんて、覚えていた試しがないけどね」
澄みきった青い空を見上げる。雲がゆっくりと流れて行っていて、その横を、今一羽の鴉が猛スピードで突き抜けた。
「おいおい、こんな所でお昼寝か?」
声と共に視界が陰った。彼女の金色の輝きが目に痛くて目を細める。彼女は悪戯っぽく笑って屈み込む。当然距離は縮み、近くなる。
私が彼女の言葉に欠伸で応えると、彼女は何やら苦笑したように息を吐いて、私の頬をつつく。相も変わらず楽しそうに目がキラキラとしているので、そのままされるがままにしておいた。
「霊夢ー霊夢ー」
ふむ、夢の内容を思い出した。彼女が包丁持って私を追いかけ回してたんだ。鬼気迫る表情で走ってくるから私はひたすら逃げるんだけど、そのうち何で逃げてるのかも分からなくなって立ち止まる。すると追い付いた彼女が手の物を振り上げ、
「な、なんで睨んでるんだよ。私が何かしたか?」
「したした、夢の中でだけど。でも、お仕置き」
「理不尽だ、流石霊夢理不尽だ! そこに痺れる憧れる!」
急いで離れようとした彼女の腕を素早く掴んで引っ張る。同時に寝転がっていた状態から足を遠心力を使い、彼女の足を払う。
すると体勢を崩した彼女は私の方へ落ちてきて、
「おーらい」
抱き止めた。序でに反動を利用して上下を反転させた。私が上で彼女が下。きっと彼女は戸惑ったような疑問符を浮かべているだろうと想像してちょっと笑った。
押し倒すような格好のまま、彼女の背中に回した腕を強く引き寄せて、首元に顔を埋める。ぎゅっと、ただ抱き締める。
「……………………あれ、お仕置きは?」
酷いことされるとでも思っていたのだろうか。私が彼女を傷付けるようなことするわけないのに。ああ、でも勝負は別だし、付けるなら一生残るのを付けてあげるけれどね。
「今私は魔理沙を逆羽交い締めにした上で身動き出来なくしてる。そして息を止める為に締め上げてる」
「無理すんな非力」
彼女は笑って、私の背中に手を回してきた。頭をぽんぽんと子供をあやすように軽く叩きながら、また笑った。
なんとなく子供扱い、と言うか馬鹿にされている気がしたので、首筋にキスをしてみた。腕の中で彼女の体が強ばったのが分かって、それが面白いので場所を変えて何度もキスを落としていく。
「ちょ、ちょっと待っ」
首、耳、顎、瞼、額、頬、鼻、彼女の制止の声も聞かずに唇を付けていって。例え彼女の身体中に何度も何度でも口付けたところで私の気持ちの表現にはならないんだろうなと思いながら、彼女の額に自分の額を当てて間近でその黄色い太陽みたいな瞳を覗き込んだ。
どうしたら伝わるんだろう。どう言ったら伝わるんだろう。何千回好きと言ったって伝わらないだろうし、何万回愛してると言ったって伝わらないだろう。じゃあどうすればいいのかは、私にはわからなくて。
「ん…………霊夢今難しいこと考えてるだろ」
正確には難しく考えてるだろ、と言って彼女は私の頬に手を当てて、同じくこちらの瞳を覗き込む。心の中まで見通すように、目を細めて。
「大丈夫だって言ったろ? 言葉も、行動も、質はともかくただ重ねろって。それで十分通じるって」
でも私は伝えたくて。やっぱり方法は無くて。行き着く先はあの夢みたいなものなのだろうか。それくらいしか、方法は無くて。
そう考える私の思考を遮るように、彼女は続けた。
「重ねても駄目だったらの話はさ、重ねた後にしようぜ。重ねて、もう上に乗っけられなくまで重ねて、それからそういうこと考えようぜ。それでも遅くないって」
彼女は笑う。いつもの人を食ったような笑みではなく、彼女が時折見せる柔らかい笑みだった。
駄目だったらの話は後で、か。
「…………分かった。その代わり、覚悟はして」
重ねきれるとは思わないで欲しい。彼女が持ちきれなくて潰れそうになるくらい重ねて、それで彼女からも同じだけ受け取れればいい。私が持ちきれなくて潰れそうになるくらい、貰えれば、それで確かに十分かもしれない。
そう思いながら、私は彼女の唇にキスを落とした。
「で、なんで私はお仕置きされたんだ?」
「魔理沙が最後に私を刺せなくて自殺するヘタレだったからよ」
「なにそれ怖い、ってかどんな夢だそれは」
「やるときはちゃんと殺ってね。もしくは私が殺ってあげるから勝手には死なないで」
「なんかヤンデレフラグが立った!?」
目が覚めた後にも引く気だるさは、先ほど視ていた夢の残滓だろうが、私にはその内容が思い出せない。ただ、嫌な夢を視た、という感想だけが心の中で反響する。
「…………夢の内容なんて、覚えていた試しがないけどね」
澄みきった青い空を見上げる。雲がゆっくりと流れて行っていて、その横を、今一羽の鴉が猛スピードで突き抜けた。
「おいおい、こんな所でお昼寝か?」
声と共に視界が陰った。彼女の金色の輝きが目に痛くて目を細める。彼女は悪戯っぽく笑って屈み込む。当然距離は縮み、近くなる。
私が彼女の言葉に欠伸で応えると、彼女は何やら苦笑したように息を吐いて、私の頬をつつく。相も変わらず楽しそうに目がキラキラとしているので、そのままされるがままにしておいた。
「霊夢ー霊夢ー」
ふむ、夢の内容を思い出した。彼女が包丁持って私を追いかけ回してたんだ。鬼気迫る表情で走ってくるから私はひたすら逃げるんだけど、そのうち何で逃げてるのかも分からなくなって立ち止まる。すると追い付いた彼女が手の物を振り上げ、
「な、なんで睨んでるんだよ。私が何かしたか?」
「したした、夢の中でだけど。でも、お仕置き」
「理不尽だ、流石霊夢理不尽だ! そこに痺れる憧れる!」
急いで離れようとした彼女の腕を素早く掴んで引っ張る。同時に寝転がっていた状態から足を遠心力を使い、彼女の足を払う。
すると体勢を崩した彼女は私の方へ落ちてきて、
「おーらい」
抱き止めた。序でに反動を利用して上下を反転させた。私が上で彼女が下。きっと彼女は戸惑ったような疑問符を浮かべているだろうと想像してちょっと笑った。
押し倒すような格好のまま、彼女の背中に回した腕を強く引き寄せて、首元に顔を埋める。ぎゅっと、ただ抱き締める。
「……………………あれ、お仕置きは?」
酷いことされるとでも思っていたのだろうか。私が彼女を傷付けるようなことするわけないのに。ああ、でも勝負は別だし、付けるなら一生残るのを付けてあげるけれどね。
「今私は魔理沙を逆羽交い締めにした上で身動き出来なくしてる。そして息を止める為に締め上げてる」
「無理すんな非力」
彼女は笑って、私の背中に手を回してきた。頭をぽんぽんと子供をあやすように軽く叩きながら、また笑った。
なんとなく子供扱い、と言うか馬鹿にされている気がしたので、首筋にキスをしてみた。腕の中で彼女の体が強ばったのが分かって、それが面白いので場所を変えて何度もキスを落としていく。
「ちょ、ちょっと待っ」
首、耳、顎、瞼、額、頬、鼻、彼女の制止の声も聞かずに唇を付けていって。例え彼女の身体中に何度も何度でも口付けたところで私の気持ちの表現にはならないんだろうなと思いながら、彼女の額に自分の額を当てて間近でその黄色い太陽みたいな瞳を覗き込んだ。
どうしたら伝わるんだろう。どう言ったら伝わるんだろう。何千回好きと言ったって伝わらないだろうし、何万回愛してると言ったって伝わらないだろう。じゃあどうすればいいのかは、私にはわからなくて。
「ん…………霊夢今難しいこと考えてるだろ」
正確には難しく考えてるだろ、と言って彼女は私の頬に手を当てて、同じくこちらの瞳を覗き込む。心の中まで見通すように、目を細めて。
「大丈夫だって言ったろ? 言葉も、行動も、質はともかくただ重ねろって。それで十分通じるって」
でも私は伝えたくて。やっぱり方法は無くて。行き着く先はあの夢みたいなものなのだろうか。それくらいしか、方法は無くて。
そう考える私の思考を遮るように、彼女は続けた。
「重ねても駄目だったらの話はさ、重ねた後にしようぜ。重ねて、もう上に乗っけられなくまで重ねて、それからそういうこと考えようぜ。それでも遅くないって」
彼女は笑う。いつもの人を食ったような笑みではなく、彼女が時折見せる柔らかい笑みだった。
駄目だったらの話は後で、か。
「…………分かった。その代わり、覚悟はして」
重ねきれるとは思わないで欲しい。彼女が持ちきれなくて潰れそうになるくらい重ねて、それで彼女からも同じだけ受け取れればいい。私が持ちきれなくて潰れそうになるくらい、貰えれば、それで確かに十分かもしれない。
そう思いながら、私は彼女の唇にキスを落とした。
「で、なんで私はお仕置きされたんだ?」
「魔理沙が最後に私を刺せなくて自殺するヘタレだったからよ」
「なにそれ怖い、ってかどんな夢だそれは」
「やるときはちゃんと殺ってね。もしくは私が殺ってあげるから勝手には死なないで」
「なんかヤンデレフラグが立った!?」
お仕置きの内容がとても気になるところです
うん、もうお前ら結婚しろ。そして末永く爆発しろ。
零距離のレイマリ楽しませていただきました。
でもそれがちょうど良い。