※これは月の涙の欠片シリーズですが、一話完結物です。
予備知識は必要ないので気軽にお楽しみください。
ここは紅魔館のテラス。
私はレミィにお呼ばれして深夜のティータイムを楽しんでいた。
…ええ、あくまで楽しんで『いた』なのよ。
過去形なのよ。
それはどうしてかって言うと…。
「ねえレミィ、月ばっかり見てないで私とお話しましょうよ」
「でも輝夜。満月って綺麗じゃないかい?私はいつまでも見ていたいと思うんだよ」
レミィが月ばっかり見て私の方を全く見てくれないのよ!
貴方は誰とお茶会をしているのよ。
まあ、月見酒とかそういうのもあるらしいけれど…ちょっとは私の方を見てくれないと拗ねちゃうんだから。
「ねえレミィ。月なんか見るより私とお話してる方が楽しいと思わない?」
「あー?輝夜とは月を見ながらでも話せるじゃないか」
…ダメね、これは。
しかし月なんかにレミィを取られるなんて。
なんだか腹が立ってきたわ。
…どうしようかな。
そうだ。
「ねえ、レミィ。貴方はどうして月になんか行きたいの?」
「聞きたいかい?」
ようやく私の方を見てくれる。
以前、レミィが魔女と月に行く方法について話をしている所を聞いたことがあった。
それを今思い出したのよね。
でも…。
「時代に取り残されない為さ」
「…時代に?」
今度は私の方がレミィの話を聞いていなかった。
ううん、聞こうとはしていたのだけれど、出来なかったのよね。
レミィの顔を見て私がショックを受けていたから。
「確か外の世界ではすでに人間が月に行っているんだろう?」
月について語るレミィの顔がすっごい輝いて見えたから。
それはまるで恋する乙女のよう。
ああ、私は月に負けたのか。
辛い現実を思い知らされてしまった。
「私達悪魔も行かなければ時代に取り残されてしまうじゃないか」
私は満月が嫌い。
満月を見て思い出すのは精神を擦り減らす日々。
いつ月から追手が来るのか、ってね。
最も、地上に来た事を後悔なんてしたことは無いけれど。
私は過去を悔むのが嫌いだから。
でも、これでもう一つ月を嫌う理由が出来た。
レミィは月に恋をしているんだ。
月よ、私の愛しい人を奪わないで。
これ以上私の心を削り取っていかないで。
泣きたくなる。
悲しくなる。
私はいつまであの夜空に浮かぶ月に悩まされなければいけないのか。
レミィも私より月を選んでしまうのか。
私は月に残ればレミィと結ばれる事が出来たのだろうか。
そんな馬鹿な考えまで浮かんできてしまう。
いっそレミィを永遠亭に閉じ込めてしまおうか。
そうすれば私だけを見るようになる。
それともレミィから光を奪ってしまおうか。
レミィの身体を永遠にしてしまえば、吸血鬼の再生能力でも眼球は回復しないかもしれない。
でもレミィは私を嫌うだろうか。
殺されるほど憎まれるのは構わない。
むしろそれは好都合。
けど、単純に嫌われるのだけは嫌だった。
私はどうしたら…。
「輝夜!輝夜!」
「…ふえっ?」
気が付くと、目の前にあるのは愛しい人の顔。
私は考えにふけってしまったいたようだった。
レミィは何度も私に呼び掛けていたらしい。
「輝夜、私の話を聞いてないのかい?」
「ご、ごめんなさい…」
私は素直に謝る。
私から問い掛けたのに、私がレミィの話を聞いていないなんて本末転倒ね。
ついつい色々な事を考え過ぎてしまったわ。
「全く、輝夜も月の魅力にやられたのかい?」
「そ、そうかもしれないわね…」
「だろうねえ。あんなに綺麗なんだし、故郷なら尚更だろうねえ」
何だかレミィは一人で納得したようでうんうん頷いてる。
まさか月を憎んでいます、なんて言えないわよね。
レミィは月が大好きなんですもの。
うーん、でもやっぱり月が憎たらしいわ。
何とかならないかしら。
「ほら」
「…え?は、はい」
レミィが私に向かって片手を伸ばす。
私は一瞬戸惑った後、その手を掴んだ。
まるで王子様に手を引かれるお姫様になった気分…なんて御伽話みたいね。
それにしても、一体どうするつもりなのかしら。
「私とお前が弾幕勝負をしたのは満月の下だっただろう?」
そうね。
あの瞬間は決して忘れない。
月の力に適う者が地上にいるなんて思わなかった。
私の目の前にいる吸血鬼は月に魅かれながらも月を克服してみせた。
こんなにも凄い存在がいるんだ、って思い知らされたわ。
レミィに魅かれていったのはそれからね。
「だからさ、もう一度満月の下で弾幕勝負をしないか?」
「えっ」
えっ、なにこの急展開。
もしかして、月が私に味方をしてくれたのかしら。
「や、やりましゅ!やるわ!」
あまりにも慌てて返事をした事でかんじゃったわ。
でもどんなにみっともなくたっていい。
弾幕勝負をしている間はレミィは私から目を離さずにいてくれるんだから。
「じゃあ、行こうか」
「…はい」
なんだか柄にもなく緊張しちゃうわね。
私とレミィは手を繋いで星が輝く夜空へ飛び立つ。
そして、お互い向かい合った。
「こんなにも月が丸いから」
「今まで何人もの地上人が敗れ去っていった五つの問題」
この瞬間、私は幸せだった。
愛しい人と踊れるのだから。
宇宙中の人にお礼を言いたくなるくらいに幸せだった。
そして、この舞台を用意してくれた月にも。
「楽しい夜になりそうね」
「貴方にこの難題をクリア出来るのかしら」
月よ、今だけはありがとう。
予備知識は必要ないので気軽にお楽しみください。
ここは紅魔館のテラス。
私はレミィにお呼ばれして深夜のティータイムを楽しんでいた。
…ええ、あくまで楽しんで『いた』なのよ。
過去形なのよ。
それはどうしてかって言うと…。
「ねえレミィ、月ばっかり見てないで私とお話しましょうよ」
「でも輝夜。満月って綺麗じゃないかい?私はいつまでも見ていたいと思うんだよ」
レミィが月ばっかり見て私の方を全く見てくれないのよ!
貴方は誰とお茶会をしているのよ。
まあ、月見酒とかそういうのもあるらしいけれど…ちょっとは私の方を見てくれないと拗ねちゃうんだから。
「ねえレミィ。月なんか見るより私とお話してる方が楽しいと思わない?」
「あー?輝夜とは月を見ながらでも話せるじゃないか」
…ダメね、これは。
しかし月なんかにレミィを取られるなんて。
なんだか腹が立ってきたわ。
…どうしようかな。
そうだ。
「ねえ、レミィ。貴方はどうして月になんか行きたいの?」
「聞きたいかい?」
ようやく私の方を見てくれる。
以前、レミィが魔女と月に行く方法について話をしている所を聞いたことがあった。
それを今思い出したのよね。
でも…。
「時代に取り残されない為さ」
「…時代に?」
今度は私の方がレミィの話を聞いていなかった。
ううん、聞こうとはしていたのだけれど、出来なかったのよね。
レミィの顔を見て私がショックを受けていたから。
「確か外の世界ではすでに人間が月に行っているんだろう?」
月について語るレミィの顔がすっごい輝いて見えたから。
それはまるで恋する乙女のよう。
ああ、私は月に負けたのか。
辛い現実を思い知らされてしまった。
「私達悪魔も行かなければ時代に取り残されてしまうじゃないか」
私は満月が嫌い。
満月を見て思い出すのは精神を擦り減らす日々。
いつ月から追手が来るのか、ってね。
最も、地上に来た事を後悔なんてしたことは無いけれど。
私は過去を悔むのが嫌いだから。
でも、これでもう一つ月を嫌う理由が出来た。
レミィは月に恋をしているんだ。
月よ、私の愛しい人を奪わないで。
これ以上私の心を削り取っていかないで。
泣きたくなる。
悲しくなる。
私はいつまであの夜空に浮かぶ月に悩まされなければいけないのか。
レミィも私より月を選んでしまうのか。
私は月に残ればレミィと結ばれる事が出来たのだろうか。
そんな馬鹿な考えまで浮かんできてしまう。
いっそレミィを永遠亭に閉じ込めてしまおうか。
そうすれば私だけを見るようになる。
それともレミィから光を奪ってしまおうか。
レミィの身体を永遠にしてしまえば、吸血鬼の再生能力でも眼球は回復しないかもしれない。
でもレミィは私を嫌うだろうか。
殺されるほど憎まれるのは構わない。
むしろそれは好都合。
けど、単純に嫌われるのだけは嫌だった。
私はどうしたら…。
「輝夜!輝夜!」
「…ふえっ?」
気が付くと、目の前にあるのは愛しい人の顔。
私は考えにふけってしまったいたようだった。
レミィは何度も私に呼び掛けていたらしい。
「輝夜、私の話を聞いてないのかい?」
「ご、ごめんなさい…」
私は素直に謝る。
私から問い掛けたのに、私がレミィの話を聞いていないなんて本末転倒ね。
ついつい色々な事を考え過ぎてしまったわ。
「全く、輝夜も月の魅力にやられたのかい?」
「そ、そうかもしれないわね…」
「だろうねえ。あんなに綺麗なんだし、故郷なら尚更だろうねえ」
何だかレミィは一人で納得したようでうんうん頷いてる。
まさか月を憎んでいます、なんて言えないわよね。
レミィは月が大好きなんですもの。
うーん、でもやっぱり月が憎たらしいわ。
何とかならないかしら。
「ほら」
「…え?は、はい」
レミィが私に向かって片手を伸ばす。
私は一瞬戸惑った後、その手を掴んだ。
まるで王子様に手を引かれるお姫様になった気分…なんて御伽話みたいね。
それにしても、一体どうするつもりなのかしら。
「私とお前が弾幕勝負をしたのは満月の下だっただろう?」
そうね。
あの瞬間は決して忘れない。
月の力に適う者が地上にいるなんて思わなかった。
私の目の前にいる吸血鬼は月に魅かれながらも月を克服してみせた。
こんなにも凄い存在がいるんだ、って思い知らされたわ。
レミィに魅かれていったのはそれからね。
「だからさ、もう一度満月の下で弾幕勝負をしないか?」
「えっ」
えっ、なにこの急展開。
もしかして、月が私に味方をしてくれたのかしら。
「や、やりましゅ!やるわ!」
あまりにも慌てて返事をした事でかんじゃったわ。
でもどんなにみっともなくたっていい。
弾幕勝負をしている間はレミィは私から目を離さずにいてくれるんだから。
「じゃあ、行こうか」
「…はい」
なんだか柄にもなく緊張しちゃうわね。
私とレミィは手を繋いで星が輝く夜空へ飛び立つ。
そして、お互い向かい合った。
「こんなにも月が丸いから」
「今まで何人もの地上人が敗れ去っていった五つの問題」
この瞬間、私は幸せだった。
愛しい人と踊れるのだから。
宇宙中の人にお礼を言いたくなるくらいに幸せだった。
そして、この舞台を用意してくれた月にも。
「楽しい夜になりそうね」
「貴方にこの難題をクリア出来るのかしら」
月よ、今だけはありがとう。
考えてることが怖いですよお姫様。
「月が綺麗ですね」
次回も楽しみに待ってます。