放課後の寺小屋に紙芝居屋のおじさんが来ました。大きな、ハンドベルを鳴らしながら子供達を集めます。
そして、一つ3文で水あめを売って、買った子供は前に、買わない子供は後ろに並ばせて紙芝居を始めます。
『黄金魔理沙』
ばばばばばば、山から飛び出た黄金魔理沙! 今日も郷のみんなを守るため、紅い悪魔レミリアと戦う。
おじさんが3週間かけて手書きで描いた絵には、山より大きい魔理沙が金色の箒を持って立っている姿が描かれています。どうみても、軽く3000mくらいはありそうなのです。背景にはごごごごごと描いてあります。
「はい! 拍手!」
ぱちぱちぱち、ぱちぱちぱち、ぱちぱちぱち、
おじさんに促されて、子供たちは拍手しました。なぜここで、拍手なのかは理解できませんが。いつもの、ことなので反射的にしてしまいます。
おじさんは、表紙絵をめくり次の絵を出しました。
ジャババババ、レミリアは赤い色が大好き川にペンキを流して川を真っ赤にしてしまう。
絵には、川より大きいフランが、大きな金属のバケツに真っ赤なペンキを入れて流しています。おじさんは、レミリアとフランの見分けがついていないのです。
「いけない、これは、いけない! 川が真っ赤になってしまった! そこの君このまま、レミリアがペンキを川に流し続けるとどうなる?」
おじさんは、前列で熱心に話しを聞いていた少年に聞きました。聞かれた子供は少し考え答えました。
「今回の問題は、ペンキに含まれている成分がわかりませんが、成分の中に魚毒性があったら大変ですね」
ちょっと、おじさんが求めている答えと違う回答が帰ってきました。おじさんは川が真っ赤になってお魚さん達、前が見えなくなって泳ぎにくそうとかお魚さんかわいそうとか言って欲しかったのです。
おじさんは、無言で絵めくりました。
川は真っ赤になってしまった。レミリアはご機嫌で、水遊びを始めた何しろレミリアは川より大きいのでレミリアが水をすくって投げると周辺には赤い雨がふる。
さっきより、幾らか縮んでいるように見えるフランが川で遊んでいます。ちょっと、全体的に赤い色で描かれていて怖いです。
「これは大変だ! みんな! こういうときは誰を呼べば良いんだっけ?」
当然のごとくおじさんは子供達に聞きました。答えは決まっているのです。
「黄金魔理沙!」
「警察!」
「児童相談所!」
「あばれる将軍!」
「慧音先生!」
「こういうやからとは、関わらないほうが安全だよ!」
「スイカマン」
若干、本当に若干違う答えが返ってきましたが、気にしちゃ駄目だとおじさんは思い生ました。ちなみにスイカマンは前回のお話のヒーローです。
「そうだ! こういうときは、黄金魔理沙を呼ぶんだ!」
おじさんは、ちょっと間をかけて絵をめくりました。
川で遊んでいる、レミリアの前に黄金魔理沙が現れた。おい! レミリアこういうことは、やめるんだ!
いーやーだーあーそーぶーのー、レミリアは黄金魔理沙の言うことを聞かなかった。こうなったら、鉄拳制裁しかない!
「戦え! 黄金魔理沙! 頑張れ黄金魔理沙! みんなのために!」
おじさんは無言で、オルゴールを取り出した。ゼンマイを回して、音楽を流し始めた。それは、なぜかレミリアのテーマだった。
おじさんは、なんだかすごい形相で絵をめくりました。
黄金魔理沙の右ストレート! おっと、レミリアも負けじと急所狙いの追尾弾だ! 黄金魔理沙はかわしながら、ニンニク攻撃だ! 見事ニンニクがレミリアに命中した! レミリアは、ニンニクが大嫌いもう悪いことしないから許して欲しいと謝った。
絵には、魔理沙とフランが戦っているさまが描かれています。お話の中で決め手だったニンニクが妙にでかく描かれています。もともと、二人も大きく描かれているのでおかしくはないのですが。おじさんの語りというのか、形相がすごい変わるので絵よりも子供達はおじさんを見ていました。ちなみに、ニンニクは裏設定の中で美味しく魔理沙が料理して食べました。
「どうだ! 黄金魔理沙は格好良いだろう!」
さっきとは、違う飴を買った子供に聞きました。さっき、黄金魔理沙と言った子供です。
「黄金魔理沙格好良い!」
期待道理の返事が返ってきておじさんは内心大喜びでした。
おじさんは、少し疲れたのかゆっくり絵をめくりました。
紅い悪魔レミリアは、改心して郷より大きい紅魔館に帰って行った。
ありがとう、黄金魔理沙! ありがとう、黄金魔理沙!
なぜか、川はきれいになっていて魔理沙がフランの頭をなでている絵でした。そして、さっきまで描かれていなかった紅魔館が普通に背景に描かれています。
「ありがとう! 黄金魔理沙!」
さっきの子供が、おじさんが聞いてもいないのに言いました。少し興奮気味に子供は言っています。
おじさんは満足そうに絵をめくり最後の絵を出しました。
今日も、黄金魔理沙は事件を解決! ……次回、瀟洒メイド美鈴現る!
魔理沙が金色の箒に乗って、飛び立つところが描かれています。さっきまで山より大きかった魔理沙が普通サイズになっています。背景には、ちゃんと咲夜の絵が描いてあるのにおじさんは名前を間違えています。
それをいくらかの、子供は気付いていましたが黙っていることにしました。
おじさんの話が終わると、子供達は少し名残惜しそうに別々のところに遊びに戻って行きます。
それを見送っておじさんは、荷物を片付け帰ろうとしました。
「ところで、おじさん。吸血鬼って川とか大丈夫なの?」
そこに飴を買わなかった少年が近寄って来て聞きました。おじさんは、無言でその少年に飴を与えて帰って行きました。
ところどころ句読点のつけ方に違和感。ちょっと読みにくかったりテンポが悪かったりしたのがもったいなかった。
星空だけーが知っている♪