―――紅い……
空が赤い霧で覆われたある日の朝のことだ。僕はいつものように店内のカウンター越しの椅子に座りながら本を読んでいた。
「こんなに霧が濃いと、寒くてかなわないな」
僕は寒がりだからね。そう呟きながら季節外れのストーブでも出そうかと考えていたその時、玄関を勢いよく開けて一人の少女がずかずかと乗り込んできた。
「香霖!異変だぜ!」
「言われなくともうすうす感付いていたよ、魔理沙」
魔理沙はニヤニヤしながらカウンターまで近づいてきた。まるであたらしいおもちゃを手にした子供みたいだな。まあ、子供には変わりないかな。
「これから霊夢と一緒に原因を探りに行くんだぜ!」
どうやら物騒なことになるようだ。しかし、この間(いつだったかな?)霊夢が幻想郷のみんなに提案したスペルカードルールが有効になっているようだから、やりすぎるようなことにはならないだろう。
「そんなわけだから、出発の前にコイツの点検をしてくれよ!」
「やれやれ、そんな事だろうと思っていたよ」
魔理沙からコイツもといミニ八卦炉を受け取る。まったく、コイツ呼ばわりするとは、もっと大事に扱ってほしいものだ。
…訂正しよう。魔理沙はこれを思いのほか大事に使ってくれているようだ。目立ったキズもなく、手入れもされている。
「ふむ。問題はないみたいだね。出力も十分だろう」
「そりゃ良かった。これから大活躍するんだからな、コイツは」
一度簡単に分解してから状態を確認し、何度か動作確認をする。僕がこのミニ八卦炉を造ってから何年か経ったが、まだまだ現役だ。
「とはいっても、マスタースパークを連発するような扱いはよしてくれよ、寿命が縮んでしまう。」
「へへっ」と笑う魔理沙。数分後には忘れているのが目に見えている。
「そうだ、霊夢に会うのなら、ついでにこれを渡しておいてくれないか」
一旦店の奥に行き、風呂敷に包んだ巫女服を魔理沙に手渡す。
「…なあ香霖、最近になってなんで霊夢の服はこんなふうになったんだ?」
こんなふうに、と言っているのはおそらく巫女服の袖のことだろう。
「彼女に『この服、普段生活していると袖のところだけ汚れて面倒だから、いっそのこと袖だけ取り外せるようにして』と言われてね。セパレートタイプにしてみたのさ」
霊夢の巫女服は僕が繕っている(それ以外はやっていない)が、彼女はツケにしてもらっているくせに図々しくもあれやこれやと注文をつけてくる。どうやら気に入ってもらっているみたいだが。
「そういえば魔理沙も前に比べるとずいぶんと装いが変わったね。お金さえ払ってくれれば昔みたいに繕ってあげるよ?」
最近はどこからか僕に仕立てを頼みに来るお客も来るようになった。人里に出向いた時なんかは、霧雨の師匠に「お前は仕立て屋にでもなるつもりか」とまで言われるほどに。
「…いや、やめとくぜ。香霖が作ってくれた他所行きの服には嫌な思い出が…」
「…?」
まあいい、魔理沙のことだからどうせ服の代金も踏み倒すに決まっている。
「じゃあ頼んだよ、魔理沙」
「わかったぜ香霖、じゃあな!」
「あっ、そうだ魔理沙」
「何だ香霖?そろそろ神社に行かなきゃ霊夢に置いてかれるぜ」
僕は弾幕勝負も、そもそも激しい運動も得意ではない。ちいさな面倒事ならともかく、こうしたおおきな異変は彼女たちに任せるしかないのだ。
「気をつけて行ってきなさい。僕も早いところ陽の光を拝みたいからね。帰ってきたらお茶でもご馳走しよう」
「珍しいな、香霖がそんなこと言うなんて。いいぜ、ちゃっちゃと終わらせてくるよ!」
そうして元気な白黒魔法使いは紅い空へ飛び立っていった。僕はそれを見送りつつ出迎えの用意でもしてやろうかなと考えるのであった。
おわり。次回へ続く。
空が赤い霧で覆われたある日の朝のことだ。僕はいつものように店内のカウンター越しの椅子に座りながら本を読んでいた。
「こんなに霧が濃いと、寒くてかなわないな」
僕は寒がりだからね。そう呟きながら季節外れのストーブでも出そうかと考えていたその時、玄関を勢いよく開けて一人の少女がずかずかと乗り込んできた。
「香霖!異変だぜ!」
「言われなくともうすうす感付いていたよ、魔理沙」
魔理沙はニヤニヤしながらカウンターまで近づいてきた。まるであたらしいおもちゃを手にした子供みたいだな。まあ、子供には変わりないかな。
「これから霊夢と一緒に原因を探りに行くんだぜ!」
どうやら物騒なことになるようだ。しかし、この間(いつだったかな?)霊夢が幻想郷のみんなに提案したスペルカードルールが有効になっているようだから、やりすぎるようなことにはならないだろう。
「そんなわけだから、出発の前にコイツの点検をしてくれよ!」
「やれやれ、そんな事だろうと思っていたよ」
魔理沙からコイツもといミニ八卦炉を受け取る。まったく、コイツ呼ばわりするとは、もっと大事に扱ってほしいものだ。
…訂正しよう。魔理沙はこれを思いのほか大事に使ってくれているようだ。目立ったキズもなく、手入れもされている。
「ふむ。問題はないみたいだね。出力も十分だろう」
「そりゃ良かった。これから大活躍するんだからな、コイツは」
一度簡単に分解してから状態を確認し、何度か動作確認をする。僕がこのミニ八卦炉を造ってから何年か経ったが、まだまだ現役だ。
「とはいっても、マスタースパークを連発するような扱いはよしてくれよ、寿命が縮んでしまう。」
「へへっ」と笑う魔理沙。数分後には忘れているのが目に見えている。
「そうだ、霊夢に会うのなら、ついでにこれを渡しておいてくれないか」
一旦店の奥に行き、風呂敷に包んだ巫女服を魔理沙に手渡す。
「…なあ香霖、最近になってなんで霊夢の服はこんなふうになったんだ?」
こんなふうに、と言っているのはおそらく巫女服の袖のことだろう。
「彼女に『この服、普段生活していると袖のところだけ汚れて面倒だから、いっそのこと袖だけ取り外せるようにして』と言われてね。セパレートタイプにしてみたのさ」
霊夢の巫女服は僕が繕っている(それ以外はやっていない)が、彼女はツケにしてもらっているくせに図々しくもあれやこれやと注文をつけてくる。どうやら気に入ってもらっているみたいだが。
「そういえば魔理沙も前に比べるとずいぶんと装いが変わったね。お金さえ払ってくれれば昔みたいに繕ってあげるよ?」
最近はどこからか僕に仕立てを頼みに来るお客も来るようになった。人里に出向いた時なんかは、霧雨の師匠に「お前は仕立て屋にでもなるつもりか」とまで言われるほどに。
「…いや、やめとくぜ。香霖が作ってくれた他所行きの服には嫌な思い出が…」
「…?」
まあいい、魔理沙のことだからどうせ服の代金も踏み倒すに決まっている。
「じゃあ頼んだよ、魔理沙」
「わかったぜ香霖、じゃあな!」
「あっ、そうだ魔理沙」
「何だ香霖?そろそろ神社に行かなきゃ霊夢に置いてかれるぜ」
僕は弾幕勝負も、そもそも激しい運動も得意ではない。ちいさな面倒事ならともかく、こうしたおおきな異変は彼女たちに任せるしかないのだ。
「気をつけて行ってきなさい。僕も早いところ陽の光を拝みたいからね。帰ってきたらお茶でもご馳走しよう」
「珍しいな、香霖がそんなこと言うなんて。いいぜ、ちゃっちゃと終わらせてくるよ!」
そうして元気な白黒魔法使いは紅い空へ飛び立っていった。僕はそれを見送りつつ出迎えの用意でもしてやろうかなと考えるのであった。
おわり。次回へ続く。
ただ未プレイって自分から公表しない方がいいですよ。余計なこと言わなければ多少原作と違ってもアレンジとかうっかりミスって誤魔化せますが、未プレイだったらそれみたことかと批判の的になっちゃいますから。
原作未プレイのにわかは低レベル作品の氾濫の原因ってことでどんな界隈でも嫌われる存在ですよ。
ところで原作未プレイでどうやって原作を崩さないように気を使えたのでしょうか?
疑問です。
それに無駄な蛇足は付け加えなかったら良かったのに。